彼と会うのは数年ぶりだ。
前は母親が亡くなられて大阪へ戻ってきたときだった。
普段は電話も年賀状のやり取りもしないけれど、大阪に帰ったらいつも誘ってくれて飯を食いにいく。
あれから数年たったが奴もずいぶん歳をくった(笑)(そういう僕もだろう)
いまは大阪より永く東京に住んでいても会うと大阪弁で楽しく語ってくれる。
この前のときは新世界の名物串かつ屋で食べるより話しに夢中になって店員から注文の催促で小言を言われてしまった(笑)
彼の職業はピンの舞台監督だ。
若いころ、とつぜん大阪の会社を辞めて人形劇団に入りましたと五島列島だったか最果ての宿から絵葉書をくれた。
今の奥様はそのころに出会った同じ劇団員だそうだ。
会えば、うちのカミさんは東北でも指折りのりんご農家の一人娘だけど、こんな男に引っかかってしまってと笑い話をする。
その後、演劇の世界に入って舞台一筋だ。
僕は演劇のことなんてさっぱり分からないが、自分の知らない世界を聞くのはとっても楽しい。
こんな門外漢でさえ日本でトップの演出家の名前くらいは知っているが、そんな彼らとも仕事をするらしい。
たまたま彼の職業で名前をググってみたら彼が手がけた舞台の仕事がたくさん載っていたのには正直おどろいた。
あいつヤルなぁ!って感じだ。
今も昔も演劇の世界はお金にはならないらしい。
家に居るのは一年のうち地方公演で空けているより短くても若く貧しい劇団員たちと熱く演劇論を語りながら飲み明かし、
地方都市へ明日も旅をする彼の生き方にいつも憧れを抱く。