本日、快晴。

映画中心雑記。後ろ向きなポジティブが売りです。

ぼんとリンちゃん【映画】

2014年10月17日 | 【映画】


@シネマカリテ

「荒野の千鳥足」の時にちょっと思っただけですが、
もうすぐ終わる、とのことで、思いつきで見に行ってきました。
行っといて良かったです。

余談ですが、上映後にトークショーがありまして。
小林監督と、ベビちゃん役の落語家さんがお話ししていたのですが、
観賞後、ものすごく考察欲が上がってしまった私にとって、
役者さんの撮影中のエピソードに興味が沸かず。
どうせなら監督さんにもっと映画の話を聞きたかったなあ…。
もっと時間があれば、ちょっと質問もしたかったよ、無念。
(※語弊がありますがトークショー自体がつまんなかったわけではないですよ。)


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ある地方都市に暮らすぼんこと女子大生の四谷夏子(佐倉絵麻)は、
恋人からのDVに苦悩する親友みゆちゃん(ヒガリノ)を救うため、
アニメやゲームが大好きなオタクの
幼なじみリンこと友田麟太郎(高杉真宙)と一緒に上京。
二人はネットゲームで知り合った友人の協力を得た後、
意を決してみゆちゃんの家に向かうが……。
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ざっくり言うと『理論武装した処女が、デリヘル嬢に言い負かされる話』です。
これだけ書くと、変なコメントが増えそうだ・・・。

いや、それだけじゃないっすよ。


DVを受けている親友を助けようと上京する主役の「ぼん」ちゃんは、
いわゆる腐女子で、まあ端的に言うと、発言がものすごくイタイです。
ずっと隣にいる「りんちゃん」は対照的で、
オタクだけれど、どこか達観していて現実的。
物事を冷静に捉えているのに、ぼんちゃんのイタさにも付き合ってあげる、という
かなり出来た彼氏(なんだろう。おそらく。)

彼らに協力する「ベビちゃん」は郵便局員の40代アダルトチルドレン。
典型的に、世間から迫害されるタイプのオタクであるけれど、
年齢的にはしっかりと成人男性なので、
そのギャップの中で自身がうまく立ち回れず、悶々としながらどこかで諦めている。
デリヘル嬢をしているぼんちゃんの親友みゆちゃんは、
いまどきの若者風でドライな反面、生きることにも一生懸命で、
一見器用なのに、その実は不器用。

大人になれない、ぼんちゃんと、
大人になろうとしない、りんちゃんと、
年齢的には大人に見える、ベビちゃんと、
図らずも大人になってしまった、みゆちゃん。

話はシンプルなのですが、
会話の展開させ方とか、描写の切り取り方が非常に秀逸で。
もっと上手く言えないかなあ、とか、もう一歩踏み込んで、とか、
何でそこで引くのよ、とか、ムキにならない方が伝わるのに、とか。
いちいち、登場人物の不器用さに心配しつつも共感してしまう。


なんというか、題材はオタクだけど、結構リアルな話なのではないかなと。


この作品においてのオタク用語は、
用語自体がどうというわけではなく、使われ方に意味があって。

「魔法使いのくせに生意気なんすよ」「不惑の童貞」から始まる、
ベビちゃんに対する、よくそんなにポンポン思いつくなあ、という罵倒の数々から、
所謂オタクさん達の使う理論武装に類似する言葉が、まー、クドイ(笑)。
最初は『イタタタタタタ・・・』と思ってるのに、
本編進むにつれて観客も慣れてきちゃってるから、
ベビちゃん罵倒のシーンは、タイミング的にも言葉的にも絶妙にツボついてるんです。
狙ってやってたらスゴイ。

みゆちゃんに「全部自分の言葉じゃないじゃん!!」と言われてしまって以降、
自らの正義を貫きたいんだけれど、上手く言い返せずに、結局逃げ出すぼんちゃん。
都会の雑踏で、次から次へと人にぶつかりながら放つ、
「ハートが、クソいてーーーーーー。」という言葉の意味と重み。
これが、初めての自分の言葉になったわけですよね。


妄想と現実の乖離を描いた映画は結構ありますが、
最後は、現実側に一歩踏み出して終わることが多い気がします。

然しながら、本作は、ぼんちゃんは悩んだまま、結論は出ない。
その後、りんちゃんに対して、再び理論武装で自分の気持ちをぶつけるのですが、
「●●●(ゴメンナサイ、書けない・・・)は出口じゃないよ、入り口だよ。」というセリフは結構キモではないかと。
無自覚ながら、ようやく自分の殻を脱して、
大人になるために"悩む"ことのスタートラインに立った、と個人的には思えました。
ガンバレ、ぼんちゃん。道は長く険しいけれど。


こうしてブログを書きながら、ようやく少し見えてきたなー。
何言ってるか分からない分、『今のどういう意味??』と
考えれば考えるほど、深みにはまる作品な気がします。
浅いように見えて、意外と、深かった。


俳優さん達については文句ないです。

監督のキャスティングについてのインタビューを読みましたが、
佐倉さんも高杉くんも、意図にピッタリで。
絶妙に不細工(顔は可愛いのにそうみえない)ぼんちゃんと、
性の臭いが一切しないけどカッコイイりんちゃん。
(余談ですが、高杉真宙くんの顔が、個人的にとても好きです。)
清潔感ギリギリ残るベビちゃんと、いい感じに田舎出身の雰囲気があるみゆちゃんもピッタリで、
全員、演技もすばらしかったです。
加えて特筆すべきは、妹達。
あー、田舎の女子高生ってこんなんだわー、という100点満点の演技。
渋谷にいる、所謂"ギャル"と、似て非なる動物、というか、
そこをしっかり笑いポイントに据えているのも、非常に巧いです。
監督すげーな。すごく控えめに見えたのに。


最後に個人的にひとつ。

ポスター記載のキャッチコピーが、
本編のぼんちゃんのセリフと繋がるんですが、
凄く、好きです。

「心にいつも妄想です
 でないと、タフになれない」

何か、ある種の言い訳というか回答を貰った気分で、
一人で頷いてました。



考察しながら書いたので長くなりましたが、
時間が経つにつれ、考えれば考えるほど、面白くなる映画だと思います。
東京は明日で上映終了ですが、機会があれば是非見てください。
オタクじゃない人の方がある意味楽しめるかもしれません。

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