観自在

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最高の映画の原作本

2015-01-20 23:29:48 | 読書
『バベットの晩餐会』(イサク・ディーネセン著)

 私はこの作品を映画で見ました。ロードショーで感動したことを覚えています。私が、お気に入りの映画は?と尋ねられたら、おそらくこの映画を挙げるでしょう。静かで、素晴らしい作品でした。今回読んだのは、その原作です。
 ノルウェーの田舎町に住むオールドミスの姉妹、マチーヌとフィリッパは、牧師であった亡き父の遺志を継いで、地域の人たちの信仰を守っていました。そこへ、かつてフィリッパに求婚したことのあるアシーユ・パパンの紹介で、バベットという女性がパリから亡命して来ます。彼女は、家事の一切を引き受け、倹約をし、貧者に美味しい食事を提供します。
 14年後、バベットは宝くじで1万フランを当てます。そして、亡き牧師を偲ぶ会に合わせて晩餐会を開き、料理の腕を振るいます。その会には12名が招待されましたが、その中に、かつてマチーヌに求愛したレーヴェンイェルム将軍がいました。彼は、ただ一人だけ、その夜のディナーの価値に気づきます。それは、若い頃、パリのカフェ・アングレで食べたオリジナル料理と同じだったのです。さらに、コックが女性だったことも思い出します。
 皆はいつもと同じように食べ、ワインや料理を褒める者もいませんでした。しかし、皆幸福な気持ちになり、食後には、仲たがいしていた者同士が仲直りし、将軍とマリーヌと言葉を交わし、素直に好意を伝え合いました。
 姉妹が台所に行って、バベットに感謝を伝えると、バベットは、身の上を明かし、自分は芸術家なのだと宣言します。そして、芸術家は最善を求め、次善には耐えられないというオペラ歌手だったパパンの言葉を紹介します。パパンはかつてフィリッパの歌の才能に感動し、彼女をプロにしたいと申し出、その気持ちをずっと持っていたのでした。
 バベットは、その夜の晩餐会に10万フランをすべて使ったのでした。そこで料理の価値に気づいたのは将軍だけでしたが、皆が、幸福に満たされ、別世界に遊ぶことができたのでした。料理が芸術になると、食べる人の世界を変えるのです。料理の持つ力には、確かにそういう部分があるように思います。
 料理に関わるすべての方に、読んでいただきたい本だと思いました。
 文庫本に入っているもう1つの作品『エーレンガート』は絶筆だそうですが、こちらも美しく幻想的な作品でした。


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