goo blog サービス終了のお知らせ 

観自在

身辺雑感を気ままに書き込んでいます。日記ではなく、随筆風にと心がけています。気になったら是非メールください!

桜と頬の傷

2009-04-09 21:37:35 | コラム
 ふた昔も前のことである。私は営業で新しい地区を担当することになった。そこは各社が参入を始めた地域で、山間の地区が多く、保守的な気風が色濃く残っていると聞いた。私は、新しい人間関係が円満に築けるか、不安で一杯だった。
 初めてその地区へ行く前日、先輩社員と酒を飲んだ。ちょうど今頃の季節であった。祇園のスナックがはねるまでねばり、コンパニオンのフィリピン女性たちと食事をし、最後は円山公園の夜桜見物と洒落こんだ。
 私は、嫌なことを忘れたいために、かなりの量を飲んだ。それまで洋酒をあまり飲まなかったので、水割りをどの程度飲んだら酔うかといった計算もできなかった。深夜の公園に行く頃には、ほとんど目が回っていた。酔った目に、枝垂れ桜は、天から流れ落ちる滝のように見えた。それが重なりあったり、ぼやけたり、ぐるぐると回って見える様は、異次元的な幻想であった。
 タクシーを拾って帰途についた頃にも、酔いは深まっていた。私が一番最初に降りることになった。私はタクシーを降りて、何度も頭を下げながら先輩方に挨拶していたという。それが突然見えなくなり、皆慌てたらしい。私は、道から1メートルほど下の休耕田に落下して、もがいていたそうである。落ちた時に、落ちていた針金か何かの先が頬に刺さり、かなり出血していた。運転手さんが、応急措置としてキズバンを貼ってくれたのをかろうじて覚えている。
 翌日、私は、打ちつけた腰をさすりながら、絆創膏を貼ったままで、営業車を運転してかの地へ向かった。頬の傷は今も残っており、姉からは「田んぼエクボ」と呼ばれてからかわれていた。
 毎年、枝垂れ桜の頃になると思い出す、ばかばかしい思い出である。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。