数年前のことを急に思い出しました。
都心の勤務地は、問屋街に近く、いろいろな店が軒を連ねていました。JRの高架下も店舗になっており、商品が所狭しと並んでいる店が数多くありました。ある日、勤め帰りに、ふらりと瀬戸物店に入りました。昔から興味があって、湯飲みや猪口を集めたりしていましたので、店内を回って見物しました。お世辞にもきれいとは言えない店内で、並んでいる商品も手頃な価格が多く、ほとんどバーゲン品という感じでした。見るべきモノもない中で、大ぶりの砥部焼の雛人形が目にとまりました。桃の節句には無関係な時期でしたので、売れ残って処分するのだろうと思われました。母がそんな置物が好きだろうと考え、内裏雛とおひな様を眺めてみると、まあそれなりによいかと思えました。店の方に注文すると、奧から不釣り合いなほど立派な箱を持ち出してきて、包装はどうするかと尋ねられました。こんな安物に包装でもあるまいと思い、箱に入れるだけでよいと答えました。
そして、支払いになって、私は凍りつきました。1200円だとばかり思っていた雛人形は1万2千円だったのです。一緒に並んでいた商品がどれも安価だったために、あるいは、汚い店構えの安売り店とばかり思いこんでいたために、値札の0を、ひとつ少なく見ていたのでした。謝って断ることもできたでしょうが、ちょうど持ち合わせもあり、見栄坊の私は、それを購入しました。先入観ほど怖いモノはないという教訓を得ましたが、高い授業料を払ったものです。
それは、母にプレゼントしたはずですが、あれから一度も飾ってあるのを見たことがありません。
都心の勤務地は、問屋街に近く、いろいろな店が軒を連ねていました。JRの高架下も店舗になっており、商品が所狭しと並んでいる店が数多くありました。ある日、勤め帰りに、ふらりと瀬戸物店に入りました。昔から興味があって、湯飲みや猪口を集めたりしていましたので、店内を回って見物しました。お世辞にもきれいとは言えない店内で、並んでいる商品も手頃な価格が多く、ほとんどバーゲン品という感じでした。見るべきモノもない中で、大ぶりの砥部焼の雛人形が目にとまりました。桃の節句には無関係な時期でしたので、売れ残って処分するのだろうと思われました。母がそんな置物が好きだろうと考え、内裏雛とおひな様を眺めてみると、まあそれなりによいかと思えました。店の方に注文すると、奧から不釣り合いなほど立派な箱を持ち出してきて、包装はどうするかと尋ねられました。こんな安物に包装でもあるまいと思い、箱に入れるだけでよいと答えました。
そして、支払いになって、私は凍りつきました。1200円だとばかり思っていた雛人形は1万2千円だったのです。一緒に並んでいた商品がどれも安価だったために、あるいは、汚い店構えの安売り店とばかり思いこんでいたために、値札の0を、ひとつ少なく見ていたのでした。謝って断ることもできたでしょうが、ちょうど持ち合わせもあり、見栄坊の私は、それを購入しました。先入観ほど怖いモノはないという教訓を得ましたが、高い授業料を払ったものです。
それは、母にプレゼントしたはずですが、あれから一度も飾ってあるのを見たことがありません。