山頭火つれづれ-四方館日記

放浪の俳人山頭火をひとり語りで演じる林田鉄の日々徒然記

死ぬときはひとり

2018-12-01 23:36:52 | 文化・芸術
  生きることをやめてから
  死ぬことをはじめるまでの
  わずかな余白に‥‥

<死ぬときはひとり> -表象の森- 2006.05.01記
   ――― 菅谷規矩雄「死をめぐるトリロジイ」より



 私にとってはかけがえのない書のひとつである「詩的リズム-音数律に関するノート」を遺した詩人の菅谷規矩雄は、1989(H1)年の暮も押し迫った12月30日に53歳の若さで死んだ。
直接の死因は食道静脈瘤破裂、肝硬変の末期的症状を抱え、死に至る数年は絶えず下血に悩まされていたという。
この年の春頃からか、彼は上記の3行を冒頭に置いて「死をめぐるトリロジィ」と題した手記を遺している。トリロジィとは三部作というほどの意味だが、古代ギリシアでは三大悲劇を指したようだ。

  悲しみはどこからきて、どこへゆく。
  死は、どこではじまって、どこで終るか。
  胎児は<生れでぬままの永世>を欲している。

 死ぬときはひとり―――
いまここにいたひとりが、いなくなってしまったとしたら、それはそのひとが消えてしまったからではなく、どこかへ行ってしまったからだ。
死がいなくなることであるなら、死んでもはやここにいないひとは、どこかへ行ってしまった、ということなのだ。
どことさだかにできずとも、どこかへゆく、そのことをぬきにして、死をいなくなることと了解することは、できないだろう。
じぶんにたいして、じぶんがいなくなる――ということは了解不能である。
だから、わたしは、<いま・ここ>を「どこか」であるところの彼岸へ、やはり連れ込みたいのだ。
どこへも行かない。この場で果てるのだとすれば、死とはすなわち物質的なまでの<いま・ここ>の消滅である。
だから<いま・ここ>を、あたうかぎりゼロに還元してゆけば、その究みで<わたし>はみずからをほとんど自然死へと消去してゆくことになる。
彼岸ではなく、どこまでもこちらがわで死を了解しようとすれば、それは<いま・ここ>の成就のすがたなのだとみるほかはあるまい。
外見はどのようにぶざまで、みすぼらしくみにくくとも、死は、私の内界に、そのとき、<いま・ここ>の成就としてやってきているのだ。
生きていることは悪夢なのに、なお生きている理由は、ただひとつ、死をみすえること。
死が告知するところをあきらめる-明らめる-こと。



<今月の購入本>-2013年06月

◇鈴木 淳「維新の構想と展開 <日本の歴史>20」講談社
◇陳 舜臣「中国の歴史 <1>」講談社文庫
◇陳 舜臣「中国の歴史 <2>」講談社文庫
◇陳 舜臣「中国の歴史 <3>」講談社文庫
◇陳 舜臣「中国の歴史 <4>」講談社文庫
◇陳 舜臣「中国の歴史 <5>」講談社文庫
◇一橋 文哉「未解決―封印された五つの捜査報告」新潮文庫
◇伊藤 遊「鬼の橋-<福音館創作童話シリーズ>」福音館書店
◇和辻 哲郎「孔子」Kindle版
◇アルチュール.ランボー「ランボオ詩集」Kindle版
◇宮沢 賢治「雨ニモマケズ」Kindle版
◇萩原朔太郎「月に吠える」Kindle版
◇武田 祐吉「古事記 03 現代語訳」Kindle版
◇武田 祐吉「古事記 04現代語訳」Kindle版
◇鴨 長明「方丈記」Kindle版
◇河口 慧海「チベット旅行記」Kindle版
◇高神 覚昇「般若心経講義」Kindle版
◇知里 幸恵「アイヌ神謡集」Kindle版
◇西田幾多郎「善の研究」Kindle版
◇小林多喜二「蟹工船」Kindle版
◇中原 中也「山羊の歌」Kindle版
◇中原 中也「在りし日の歌」Kindle版
◇三木 清「親鸞」Kindle版
◇折口 信夫「死者の書」Kindle版
◇夢野 久作「少女地獄」Kindle版
◇「日本国憲法」Kindle版
◇佐藤 秀峰「ブラックジャックによろしく <1>~<13>」Kindle版

<閉店セール>の効果テキメン!!

2018-12-01 00:02:18 | 文化・芸術
案内文の末尾近く
「この公演を最後の舞台公演にしたいと思っています。
 これからは “勝手気儘におどり旅” を続けていきます。」と

‘90年頃からか、神沢創作舞踊研究所を離れ、
独自の舞踊活動を続けてきた高山明美――

最後の公演と謳い、おまけに神澤宅最寄りの学園前ホールとあらば
茂子夫人も不自由の身を押してでもお出ましなさろう
コレは面倒でも出かけねばなるまい……

なるほど、閉店セールの宣言効果は侮りがたいものだ
舞台のほうは見るほどのこともないのだが
客席のほうはなかなかの賑やかさで
その顔ぶれも多士済々、よく知る人の多かったこと――



「ご免なさい、おケイさん!」 -2008年10月08日記
アーア、またも失敗である。
こんどこそ是非この機会にと思っていた、河東けいさんのひとり芝居「母」を、またも見逃してしまった。

ワーキングプアの社会問題化からにわかに注目を集めた戦前のプロレタリア作家小林多喜二の母を描いたもので、原作は三浦綾子、脚色と演出をふじたあさやが担当、もう十数年前から全国を廻って演じられてきたものだ。

たしか10月の公演だったが、はていつだったかと気になりだして、午後になって原稿作りも一段落したところで、ここ3ヶ月ばかりの間に、机の上に溜りに溜った書面や資料などの整理を始めたのだが、件のチラシを見た途端、顔色を失ってしまった。公演は10月4日、先週の土曜だったのだ。これからも近場で観る機会などそう多くはないだろうに、まったくドジな野郎だ、「おケイさん、ご免なさい」と、心のなかで手を合わせる始末である。嗚呼!

もう一つ、高山明美の舞踊公演「水の環流」も同じ日にあった。
こちらは夜の6時開演だから、仮におケイさんの芝居を茨木で午後3時から観て、その帰りに立ち寄ることも可能だった訳である。とはいってもこちらのほうはそう食指が動いたものでもなかったから、彼女には悪いが忘れてしまっていても後悔するほどのことはない。

<今月の購入本>-2013年05月



◇アレハンドロ.ホドロフスキー「リアリティのダンス」文遊社
◇加治 将一「幕末-維新の暗号」祥伝社
◇「逆引き広辞苑-普通版」岩波書店辞典編集部
◇井上 勝生「開国と幕末変革 <日本の歴史>18」講談社
◇佐々木 隆「明治人の力量 <日本の歴史>21」講談社
◇伊藤 之雄「政党政治と天皇 <日本の歴史>22」講談社
◇有馬 学「帝国の昭和 <日本の歴史>23」講談社
◇河野 康子「戦後と高度成長の終焉 <日本の歴史>24」講談社
◇広岡 敬一「戦後性風俗大系―わが女神たち」小学館文庫
◇鈴木三重吉「古事記物語」Kindle版
◇和辻 哲郎「古寺巡礼」Kindle版
◇「宇宙図2013-A1判」 科学技術広報財団
◇「ヒトゲノムマップ-A1判」 科学技術広報財団