山頭火の一句-昭和8年初夏の頃か
―四方のたより― 赤と緑と水と風と
澄み切った空の青さと
映えわたる山脈の新緑とが
満面と水をたたえた八条池の、風そよぐ風景のなかで
群れなすキリシマツツジの深紅が、みごとな対照をなす
此処、長岡天満宮は、二、三日前からの涼しさがつづいて絶好の行楽日和
今年、桜の花見はとうとう享受ならなかっただが、その代わりとてやっと得た休日に繰り出した、初お目もじの躑躅の名所
赤と緑と水と風のなかに、呼吸することしばし
忙中閑あり、まことひさかたぶりの、至福のひととき
これまさに、気の養生
―今月の購入本―
・白川静「字統」-新訂普及版-平凡社
ご存じ文字学-漢字-の泰斗白川静の三部作の内、本書「字統」と「字訓」の普及版が’07年に出版された。中古書。
・岡田明子・小林登志子「シュメル神話の世界」中公新書
ティグリス・ユーフラテス流域に栄えた最古の都市文明シュメル。粘土板に刻まれた楔形文字群が伝える神話の数々、ギルガメシュ叙事詩や大洪水伝説など‥。旧約聖書やギリシア神話に連なる祖型としての神々が詳述される。
・山森亮「ベーシック・インカム入門」光文社新書
基本所得を無条件給付とするベーシック・インカムについて近現代200年を概観することを通して、労働・ジェンダー・グローバリーゼーション・所有といった問題のパラダイム転換を試みる。
・原田信男「江戸の食生活」岩波現代文庫
江戸期の食文化を、列島の空間的ひろがりのなかで大きく網羅的に捉えた著作。武士から町人・農民まで、何が食卓にのぼり、タブーは何だったか、医食同源思想や飢饉時の対応、アイヌ・琉球の多様な食まで。
・松井今朝子「吉原手引草」幻冬舎
著種曰く「いい意味でも悪い意味でも、今も日本社会には金銭を介在した男女関係が、ある種の文化として存在する。それを代表するのが吉原で、一度書いておきたかった。当時の習俗を忠実に再現することによって現代を逆照射するものがあると思う」と。中古書
・松井今朝子「仲蔵狂乱」講談社文庫
存分に舞い狂うてみせてやる‥、江戸は安永・天明の頃、下積みの苦労を重ね、実力で歌舞伎界の頂点へ駆けのぼった中村仲蔵。浪人の子としかわからぬ身で、梨園に引きとられ、芸や恋に悩み、舞の美を究めていく。
他に、広河隆一編集「DAYS JAPAN 」4月号
―図書館からの借本―
・内村剛介「見るほどのことは見つ」恵雅堂出版
「シベリア獄中11年、あれは今にして思えばわたしの人生のもっとも充実した時間帯だったようです。大げさに言えば、平知盛ではありませんが、わたしもまた 若く稚くして「見るべきほどのことは見つ」ということになったようです。その見るべきものとはわたしたちの20世紀の文明—なんといおうとそれはコムニズ ム文明であるほかなかった—そのわたしたちの文明の行きつくさきです。その向う側を見てしまったという思いがするのです」-本書より-
・「ファーブルにまなぶ」ファーブルにまなぶ展実行委員会
「昆虫記」刊行100に因んで、一昨年から昨年にかけ、日仏共同企画として全国を巡回した「ファーブルにまなぶ」展に際し上梓された解説誌。
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