山頭火つれづれ-四方館日記

放浪の俳人山頭火をひとり語りで演じる林田鉄の日々徒然記

寒ン空、二人連れは男と女

2009-12-28 10:40:41 | 文化・芸術
Dc090926108

―山頭火の一句― 「三八九-さんぱく-日記」より-15-
1月11日、曇つて晴れる、雪の後のなごやかさ。

いつものやうに、御飯を炊いて、そして汁鍋をかけておいて湯屋へ。-
あんまり寒いから一杯ひつかける、流行感冒にでもかかつてはつまらないから、といふのはやつぱり嘘だ、酒好きは何のかのといつては飲む、まあ、飲める間に飲んでおくがよからう、飲みたくても飲めない時節があるし、飲めても飲めない時節がある。‥

事実を曲げては無論いけない、といつて、事実に囚へられては、また、いけない-句作上に於て殊に然り-。

※表題句の外、8句を記す

-四方のたより- 今日から

一年の垢落としという訳ではないけれど、ちょいと小旅行に出かけます。
元日に帰阪の予定、それまでブログはお休み。

-今月の購入本-
・藤井直敬「つながる脳」NTT出版
脳科学の行く手にたちはだかる大きな壁-、技術の壁、スケールの壁、こころの壁、社会の壁。これらの壁に対して、最前線の脳科学者たちは、どのように問題を解決しようとしているのか。自由意志や社会的適応、ココロの理論、あるいは脳科学の実験環境や、話題のブレイン-マシン、インターフェイスなどを押さえながら、「脳と社会」の関係性から脳の解明を目指す気鋭の論考。

・東浩紀・北田暁大編集「思想地図 vol.3-アーキテクチャ-」NHKブックス
建築から社会設計、コンピュータ・システムまで、私たちの「生」をコントロールする、その多様なあり方に迫る。アーキテクチャの権力にどう対峙するべきか。イデオロギーが失効した時代の批評の新たなる可能性を切り開こうと‥。

・東浩紀・北田暁大編集「思想地図 vol.4-想像力-」NHKブックス
情報や消費環境の変化により、個人はそれぞれの「心地よい」島宇宙に自閉し、社会は分断されてしまった。「大きな物語」が機能不全に陥ったこの時代、 われわれの想像力は、はたしてどのような未来を描きうるのか。村上春樹から政権交代、折口信夫からエヴァまで、さまざまな領域を横断しながら、ときに「未成熟」と批判される日本的想像力のありかたを徹底的に吟味することで、未来を切り開く知の可能性を。

・池澤夏樹「ぼくたちが聖書について知りたかったこと」小学館
池澤夏樹が自身の従兄弟でもある聖書学者・秋吉輝雄に聞く聖書の読解法。どちらかといえば旧約が専門の秋吉は、ユダヤ人とは何なのか?という解等困難な問いを常に意識しつつ、彼らの言語や生活習慣や世界認識の特殊性を様々な角度から説明し、その物語が発生した同時代の文化状況や、それが「書」として編集され人々に受容されていく過程での政治的な諸力の、いわば織物として出来上がっているという歴史的な事実を平易に伝えてくれる。

・渡辺公三「闘うレビュ=ストロース」平凡社新書
レヴィ=ストロースの壮大な思想は、安易で図式的な理解を拒む。百年を超える生涯を通じて、彼は何と闘ってきたのか。野性の生きものとの接し方に看取されるレヴィ=ストロースの「世界との接し方」と、構造主義と呼ばれる「ものの見方」とのあいだに存在する関係とは何か。 あるいは、「彼らとの出会いの場」を「私によって私の位置」において作出するというレヴィ=ストロースにとっての人類学の企図が、どのような種類の、どれほどの知的な作業を必要とされるものだったか。

・スガ秀実「1968年」ちくま新書
世界史を画する歴史的なTurning Pointだった-1968年、前史としての<60年安保>から、ベ平連や全共闘運動を経て三島事件と連合赤軍事件に終わるまでの激しい時代を、新たに発掘した事実を交えて描く。

・山城むつみ「文学のプログラム」講談社学芸文庫
「書くこと」でいかに「戦争」と拮抗しうるのか、小林秀雄、坂口安吾、保田與重郎の戦時下における著述を丹念に辿ることで、時局に追従する言説と彼らとの距離を明らかにし、保田の「万葉集の精神」を起点に、日本文を成立せしめた「訓読」というプログラムの分析へと遡行する評論。1995年の大田出版刊が底本。

・関幸彦「百人一首の歴史学」NHKブックス
中世史を専門とする歴史学者ならではの、栄華を誇った王朝の記憶のTapestryたる「百人一首」の歴史的読解。

他に、広河隆一編集「DAYS JAPAN -2010/01」

-図書館からの借本-
・野田正彰「教師は二度、教師になる」太郎次朗社
子どもとの関わりのなかで、人はいかにして「教師になる」のか。副題に「君が代処分で喪ったもの」とあるように、国旗・国家の強制と処分によって精神の危機に曝された教師たち13人への詳細な聞取りを通して、彼らの教育観と生き方を伝え、その葛藤のありようを精神医学の視点から読み解く。

・石川九楊「書の終焉-近代書史論-」同朋社
毎日新聞の書評「今週の本棚」における年末特集、評家書誌による「今年の三冊」で、何人もがともに挙げていた「近代書史」。おそらくはその助走の著と目されよう「書」の近代史論考。

・石川九楊「一日一書 -02-」二玄社
歴史・文化・芸術・生活‥、あらゆる分野を縦横に駆けめぐりつつ、毎日一文字の「書」との出会いが一日を豊かにしてくれる。「京都新聞」連載のコラムに大幅に加筆、単行本化したシリーズの第2弾。


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吹雪吹きこむ窓の下で食べる

2009-12-27 23:58:34 | 文化・芸術
Santouka081130058

―山頭火の一句― 「三八九-さんぱく-日記」より-14-
1月10日、雪が積んでゐる、まだ降つてゐる、風がふく、寒く強く。

近来にない寒さだつた、寒が一時に押し寄せたやうだつた、手拭も葱もご飯も凍つた、窓から吹雪が吹き込んで閉口した。

ありがたいことには炬燵があつた、粕汁があつた。

朝湯朝酒は勿体ないなあ。

今日は金比羅さんの初縁日で。おまゐりの老若男女が前の街道をぞろぞろ通る、信仰は寒さにもめげないのが尊い。

隙洩る風はこの部屋をいかにも侘住居らしくする、そしてその風をこらへて、せくぐまつてゐる自分をいかにも侘人らしくする。‥

寒いにつけても、ルンペン時代のつらさを思ひ出さずにはゐられない。

酒ほどうまいものはない、そして酒ほどにがいものはない、-酒ではさんざ苦労した、苦労しすぎた。‥

※表題句の外、4句を記すが、その中に
「安か安か寒か寒か雪雪」がある。

-四方のたより-

ささやかながら、新しい年へと踏み石ともなる、本年最後のDance Cafeでありました。

私自身、「山頭火」に加えて、やっと第二のレパートリーを獲たという僥倖に感慨もひとしお、祭りのあとの余韻にひたりおります。

しかもこの新しい演目は融通無碍、あるいは変幻自在、さまざまいかようにも取り組みようがあるとも思えるところ、いかにもたのしみ多く、心中快哉の声をあげんばかりの境。


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縫うてくれるものがないほころび縫つてゐる

2009-12-26 23:56:00 | 文化・芸術
Dc090926241

Information – 四方館の DANCE CAFE –’09 Vol.4-
出遊-二上山夢験篇-

あそびいづらむ-ふたかみやまゆめのあらはれへん-
Date :12/27 –Sun- PM2:30 Space : 弁天町市民学習センター

愈々、明日に迫ったDANCE CAFEだが、偶々、毎日新聞の今夕刊「万葉のとびら」に採られた歌は、有間皇子の
「岩代の浜松が枝を引き結びま幸くあらばまた帰り見む」

大津皇子と同じように、謀反の罪に捕らえられ、悲運の死を遂げたのは紀州藤白坂-現在の和歌山海南市-、658年のことだが、これは大津の死に先立つこと26年だ。
蘇我赤兄に謀られた孝徳天皇の子、有間皇子を死に追いやったのは中大兄皇子、後の天智天皇だが、
天武天皇崩御の直後、謀反の疑いをかけられ賜死した大津皇子は、叔母にあたる鵜野讃良皇女-後の持統天皇-が自身の子、草壁皇子を皇位に即かせるために謀ったとされる説が有力だ。

―山頭火の一句― 「三八九-さんぱく-日記」より-13-
1月9日、雨、曇、晴、曇、雨。

起きると、そのままで木炭と豆腐とを買ひに行く、久しぶりに豆腐を味はつた、やつぱり豆腐はうまい。

あんまり憂鬱だから二三杯ひつかける、その元気で、彼女訪ねて炬燵を借りる、酒くさいといつて叱られた。
帰家穏坐とはいへないが、たしかに帰庵閑坐だ。

昨夜も今夜も鶏が鳴きだすまで寝なかつた、寝られなかつた。

※表題句の外、3句を記す

-四方のたより- 「鎮魂と飛翔-大津皇子」二上山の章Scene.7
「山越の阿弥陀」

 光り、始源の
 響き、生誕の
 山の端に伸しあがる日輪の思われる
 金色の雲気


林田鉄、往年の仕事「鎮魂と飛翔-大津皇子-」二上山の章-Scene.7


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送つてくれたあたゝかさを着て出る

2009-12-24 23:56:54 | 文化・芸術
Dc09092625

Information – 四方館の DANCE CAFE –’09 Vol.4-
出遊-二上山夢験篇-

あそびいづらむ-ふたかみやまゆめのあらはれへん-
Date :12/27 –Sun- PM2:30 Space : 弁天町市民学習センター

―山頭火の一句― 「三八九-さんぱく-日記」より-12-
1月8日、朝のうちはうららかな晴だつたが、午後は曇つた。

今朝は嫌な事と嬉しい事とがあつた、その二つを相殺しても、まだまだ嬉しさが余りあつた、-略-、嬉しい事といふのは、郷里の妹からたよりがあつたのだ、ゲルトも送つてくれたし、着物も送つてくれた、私はさつそくその着物をつけて、そのゲルトで買物しいしい歩いた、ああ何といふ肉親のあたたかさだらう!

米を買つた、一升16銭だ、米はほんたうに安い、安すぎる、粒々辛苦、そして損々不足などと考へざるをえないではないか。

どうも通信費には困る、毎日葉書の5.6枚、手紙の2.3本書かないことはない、今日は葉書6枚、手紙3本書いた。

※表題句の外、3句を記す

-四方のたより- 「鎮魂と飛翔-大津皇子」二上山の章Scene.5
「死者と生者の相交」

 天空の光りの輪が仄かに揺れて
 招来と歓喜
 彼の人にとって、おもいびとがそこに在り
 女にとって おもかげびとがそこに在った
 うねり、流れ、交わり
 可視の空間の向こうに、見いだす拡がりのなかに
 ともにやすらうのだ


林田鉄、往年の仕事「鎮魂と飛翔-大津皇子-」二上山の章-Scene.6


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尿する月かくす雲のはやさよ

2009-12-23 23:43:27 | 文化・芸術
Dc090926226

Information – 四方館の DANCE CAFE –’09 Vol.4-
出遊-二上山夢験篇-

あそびいづらむ-ふたかみやまゆめのあらはれへん-
Date :12/27 –Sun- PM2:30 Space : 弁天町市民学習センター

―山頭火の一句― 「三八九-さんぱく-日記」より-11-
1月7日、曇、后晴、寒くなつた、冬らしくなつた-昨日から小寒入だ-

銭がなくなつた、餅もなくなつたし米もなくなつた、-銭は精確にいへば、まだ13銭残つてゐるが-。

朝は腹も空いてゐないからお茶を飲んですます、午後は屑うどんを少しばかりかつて買つて食べる。夜は蜜柑の残つたのを食べる、お茶がやつぱり一等うまい。

昨日も今日もアルコールなしだつた、飲みたいとも思はなかつた、私もやつとアルコールだけは揚棄することが出来たらしい、そして昨日も今日も私一人だつた、訪ねてもゆかず、訪ねてくる者もなかつた、ただ一人ぢつとして読んでゐた、考へてゐた、そして平静だつた。

※表題句の外、9句を記す

-四方のたより- 最後の‥

27日の日曜は、本年の掉尾となるDANCE CAFEゆえ、20日に続き今日も稽古とした。今年最後の稽古だ。

是れにインド舞踊の茶谷祐三子が姿を見せた。3人がそれぞれ交互に踊ってみせる即興の申し合いともいうべき小一時間の稽古は、若いAyaも含め、互いにいい刺戟となったようだった。

本人の弁に因れば、最近いささか行き詰まりの如きものを感じているといっていた茶谷祐三子に、私はある感想とともに一つのSuggestionを与えてみたのだが、その後の即興では別人の観さえある表象をものしていた。

こういう刺戟に富んだ稽古をしたあとは、爽やかな気に充たされてすこぶるここちよいものだ。
あと3日、こんどは私の番、自ずから気力を高め、語り世界へと充填せしめねばならぬが、さてさて‥。

「鎮魂と飛翔-大津皇子」二上山の章Scene.5
「幻影的な旅」その2


林田鉄、往年の仕事「鎮魂と飛翔-大津皇子-」二上山の章-Scene.5


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