山頭火つれづれ-四方館日記

放浪の俳人山頭火をひとり語りで演じる林田鉄の日々徒然記

これ、まことに得たりし花なるが故に

2005-02-24 10:49:17 | 文化・芸術
Hitomaro-012-1

風姿花伝にまねぶ-<9>

<五十有余>

 この比よりは、大方、せぬならでは手立あるまじ。
 麒麟も老いては鷺馬に劣ると申す事あり。
 さりながら、まことに得たらん能者ならば、物数は皆々失せて、善悪見所は少なくとも、花は残るべし。
 亡父にて候ひし者は、五十二と申しし五月十九日に死去せしが、
その月の四日、駿河の国浅間の御前にて、法楽仕り、その日の申楽、殊に花やかにて、見物の上下、一同に褒美せしなり。
 凡そこの比、物数をば、はや初心に譲りて、安き所を、少々と色へてせしかども、花は弥増しに見えしなり。
 これ、まことに得たりし花なるが故に、能は枝葉も少く、老木になるまで、花は散らで残りしなり。
 これ、眼のあたり、老骨に残りし花の証拠なり。


真の花を得た者は、たとえ老骨の身となったとしても、その存在自体が「花」たるものだ。
世阿弥の父、観阿弥が五十二才で没する直前の最後の舞台、富士山麓は駿河の国浅間神社で舞った奉納能に、世阿弥はその老木ならではの「花」をみる。
「麒麟も老いては驢馬に劣る」と陰口を囁かれないためにはどうすべきか、
世阿弥は冒頭に「大方、せぬならでは手立あるまじ」と掲げる。
老いの花の工夫とは、逆説的な方法である。
四十代の「少な々な」と削っていって、「せぬ」までに至れというのである。
せずしてなお花を感得せしめる、これが老骨に残りし花の証拠だ、と。


 参照「風姿花伝-古典を読む-」馬場あき子著、岩波現代文庫

だまつて遊ぶ鳥の一羽が花のなか

2005-02-21 12:51:33 | 文化・芸術
ichioka-ten-2005

<四方の風だより>

本日(2.21)から一週間、27日の日曜まで
市岡高校OB美術展が大阪現代画廊で行われている。


美術展とはいうものの、肩の凝らない、なんでもありの会。
本格絵画や彫刻から、書やパッチワークに至るまで、ごった煮の展示。
毎年この頃に行われ、最終日は賑やかに飲みあうOB会。
今回は、私-四方館からも初見参。
昨年8月に、盟友・中原喜郎氏が滋賀県立美術館で開いた個展会場で、
ダンス・パフォーマンスをした際の記録ビデオを置くことにした。
設営にこぎつけるまでに苦労をしたが、会員の仲間たちを大いに煩わせて、なんとか無事間に合った。


題して、絵画とダンスのCOLLABORATION
ビデオによるパフォーマンス・アートという次第。


大阪現代画廊の地図はこちら
旧の老松通り、所在は西天満4-6-24
地下鉄南森町2番出口、または淀屋橋1番出口から、各々徒歩8分。
問合せのTellは 06-6361-6088


お時間つぶしに、ご来臨あれ。

しぐるるや石をきざんで仏となす

2005-02-16 13:41:50 | 文化・芸術
Grand-Zero-2

<LETTER OF GRAND ZERO
 ―世界のサダコたちへー>



  ひとつの舞台を創りあげていくプロセスというものは
  いつもながら山あり谷ありで、その分苦労も多いが、
  時に僥倖とも言い得る出来事にも出くわすものだが‥‥。


  稽古はすでに佳境に入ってきた。
  本番の上演まで残すところ2週間だ。



「レター・オブ・グランド・ゼロ」 
    -世界のサダコたちへ-


    作・広島友好 / 演出・熊本一 / 演出補・林田鉄

● Date
2005年 3月4日(金) pm6:45
 々 5日(土) pm2:00 pm6:45
々 6日(日) pm2:00
● Admission
一 般  3000円 (当日券 3500円)
中・高・シニア・障害者 2000円 (当日券 2500円)

(シニアは70歳以上)
● Place
エル‐シアター(大阪府立労働セン夕―)
地下鉄谷町線・京阪電車「天満橋」駅から西ヘ7分
● ローソンチケット
Lコード 59582 Tell 0570-663-005
● お問合せ
  劇団大阪 Tell 06-6768-9957



テロ‥‥、9.11‥‥、グランドゼロ‥‥、
廃墟‥‥、原爆‥‥、
死者たちの群れ‥‥、


グランドゼロを、あるいはヒロシマ、爆心地を、
逃げ惑う人びとの群れ‥‥。
口々に怨嗟の声をあげ、呻き苦しむ人々‥‥。


よみがえる、サダコ‥‥、
折り鶴の、サダコ‥‥、リトルボーイ‥‥。


此処は、廃墟と化したグランドゼロ、
いや、ヒロシマ、ナガサキの爆心地か‥‥、
あるいは、いまなお戦火たえぬイラクの地か‥‥。


だれか知りませんか、
どうしたらいいかわかりませんか。


そういえば、
原爆の子の像に捧げられた何万何十万の折り鶴を焼いてしまった少年がいた。


サダコ、おンなじだ、名前。
十二歳で死んだぼくのお婆ちゃんと。


身体中から血が噴き出すの。止まらないの。髪も抜けるの、こんなに、こんなに。
髪が、こんなに!


火事だ、火事だぁー。

イヤー! 
折り鶴が燃えている。折り鶴が燃えている。
わたしの希望、わたしの未来、わたしの祈りが‥‥。
まだ、千羽折れてないのに、まだ、千羽折れてないのに‥‥。


燃えているのは、果てしなく遠い大地。わがふるさと。
戦火途絶えることのない砂漠の大地。貧しい国、飢えた国。
おまえたちの想像力の及ばないはるか遠くの国。
大地に鋼鉄を刺しつらぬく放射能の塊が降り注いでくる。
子どもたちの足や手が、きょうも地の雷に吹き飛ばされる。
男たちは銃を取る。女たちは顔を隠す。涙も涸れた、血も涸れた。
言葉は死に絶え、怒りだけが大地を覆っている。
これはわたしたちの祈りです!
これはぼくらの叫びです!
世界に平和を築くための!


ここにもサダコはいるんだ!
白血病のサダコは、折り鶴を折るサダコは!


千羽折れば命が助かると信じたヒロシマの少女の話を聞いて、わたしも鶴を折りました。
644羽折りました。けど、わたしは死んでしまいました。
わたしは死んでしまいました。
わたしは‥‥、わたしは‥‥。


ああ、
なぜ、折り鶴を焼いたんですか。
なぜ折り鶴を焼いたんですか、なぜ。


あの日、空の向こうから銀色に光る飛行機が来て、ピカッと光る美しい玉を放り投げた。
その姿は生まれたばかりの赤ん坊に似ていた。おお、わが子よ、小さき子よ!
その子は生まれた瞬間にピカと光り、しかし生まれたことを呪うかのように激しくドンッ!と爆発した。
その産声は人々を吹き飛ばし、その熱は影を焼き、形あるものを壊し、
形のない美しいもの‥‥命を奪った。
黒いキノコ雲の下、あらゆるものが焼き尽くされ、壊れ、くずおれた。
そしてわたしは黒い涙を流すのです。黒い涙を流すのです。
黒い涙を‥‥。



「グランド・ゼロ」の創作意図 -広島友好

9.11アメリカ同時多発テロ以後、世界は変わったと言われる。
確かにそれに続くアフガン戦争、イラク戦争、そして日本のイラクへの自衛隊派遣と、
世界は新しい「戦争の世紀」に入つたかのようである。
また、日本国内でも有事法制の整備や憲法9条改正論議など、
「普通の国」づくりへの流れ加速している。
しかし一方では、世界各地でアメリカの戦争への大規模な抗議デモが行われるなど、
反戦・非戦への思いは強まっている。
日本国内でも、例えぱ演覿人による非戦の集いなど、
戦争反対、戦争加担反対への取り組みが根強く行われてる。
                       

しかしながら、そんな世界や日本の流れとは切り離されたような
危機感とは無縁な世相が一方ではある。
日本の国がどこへ行こうが、あまり関心がないように思える雰囲気や空気が確かにある。
(それを一番強く感じるのは、国の行く末を左右する国政選挙での投票率の低下である。)
私の周りでも、この国のあり方、進み行きに強い危機感を抱いている人と、
世界や日本の出来事に無頓着で、自分の小さな周辺のことだけで日常を遇ごしてぃる人と、
両極端に分かれている。
私はというと、ひとりの物書き、戯曲書きとして、この世界の大きな流れに、
書<ことを通して棹ささねばという強い思いがある。
が、また、どこか私の日常とは切り離されたような遠くの出来事、
テレビの中の出来事にしか思えない自分もいる。
そんな自分の思いをわりに素直に出してみょうと思った。
ひとつは、世界をとらえるにしても、この足元の日常から出発することしかできなぃのだから、
自分のよく知つている日常というものを描こうとした。
私は、私とその周りの出来事の真実感(リアリティ)を描<ことで、
この世界と対峙してみたいと思った。
しかし、それだけでは世界を射程にとらえる力が弱いので、
「グランド・ゼロ」というまったく寓意の劇中劇を挿入することで、
日本という国と戦争のあり方を描いてみようと思った。
つまり、日常と寓意の二つの照明を当てることで、この世界、戦争、日本、
その未来、そして私の真実を描いてみようと意図した。

母よ、しみじみ首に頭陀袋をかけるとき

2005-02-15 12:29:08 | 文化・芸術
ichibun98-1127-093-1

<歩々到着> - 2

 山頭火=種田正一の母フサは、明治25年3月、自宅の井戸に身を投げ自殺をした。
時に正一数えの11歳、尋常高等小学校の三年生だった。
母フサはなかなかの美人だったという。父竹治郎が、フサと結婚したのが明治13年で、
竹治郎25歳、フサ21歳の時であった。
フサの自殺の動機についてはよく判らないらしい。
一説には、三男信一を産んでから婦人病に罹り、ノイローゼになっていたともいう。
また、自殺の直前、衆議院議員総選挙があり、夫の竹治郎はある候補者を応援、選挙運動に熱中するあまり、家に殆ど帰らない日々が続いていたという。
いずれにせよ、二代目で苦労知らず惣領の夫は家に不在がちで、嫁姑の仲もギクシャクしていたのかもしれない。大家族のなかで孤立感を深め、被害妄想が嵩じたのか、種田家の敷地内の井戸に突然身を投げたのだ。
「お母さんは、とても美しい人でしたが、正一さんが11歳のときに、井戸に飛び込んで自殺せられました。その井戸は、たしかこの辺であったと思います。すぐに土を入れてつぶされましたが。あのとき、わしや正一さんは、納屋のようなところで芝居ごっこをして5.6人で遊んでおったのです。「わあ」とみなが井戸の方へ走っていったので、猫が落ちたのじゃ、子どもはあっちへ行け、と寄せ付けてくれませんでした。」と、そのときの模様について、ある古老が回想している。


後年、山頭火は母の自殺に
「ぼくが十一の時にこの母は、おやじの道楽を苦にして、おやじが妾を連れて別府へ遊山に行ったその日、井戸へ飛び込んで自殺したんだ。母屋がさわがしいので、ぼくは遊んどったのを、パアッと走って行ったら、母は紫の顔色になって土間へ引き上げられていた。そしたら親戚の者が来て、子供はあちらへ行けと引きはなされた。それが母の最期だった。」と語っている。


ある日突然の、母の自殺。
母の無惨な死骸が眼に焼きついて、その像は死ぬまで忘れ去ることはできなかったろう。
十一歳の少年の心に、終生つきまとう暗い影が生じた。


「あゝ亡き母の追懐! 私が自叙伝を書くならばその冒頭の語句として―、
 私一家の不幸は母の自殺から初まるーと書かなければならない」


「母に罪はない、誰にも罪はない、悪いといへばみんなが悪いのだ、
 人間がいけないのだ」

それは死の前のてふてふの舞

2005-02-11 01:29:22 | 文化・芸術
zintainofushigi

<世間虚仮>

<「人体の不思議展」の不思議??>
*http://www.jintai.co.jp/main.html

東京で「人体の不思議展」という催しが大層評判を呼んで連日大入りだそうな。
プラストミック標本なる新技術で、あまりにもリアルな実物の人体標本に触れられるというので、評判が評判を呼び、昨年の9月から開催中の東京国際フォーラムではすでに2月末日まで会期の延長をしている。
ところがこの催し、なんともいかがわしく胡散臭いのである。
3年も前から全国的に展開しているイベントだというのに、
そのタイトルどおり、どうにも不思議なこと、怪異なことが多いのだ。
ネット探索してみると、どうしても以下のような疑問点なり怪異な情報が浮かびあがってくる。


1. 主催団体の実態がよく判らないということ。

「人体の不思議展」HPを閲覧しても、主催-人体の不思議展実行委員会とあり、総合企画・運営のマクローズ社なるものも実態は詳らかでない。販売出版物の連絡先となっている㈱日本アナトミー研究所もこれまた実態が明らかでない。
しかし、この催し、2002年3月の大阪を皮切りに、広島、福岡、名古屋、東京、札幌、静岡と経てきて、現在開催中の東京、さらにこの後、京都、新潟での開催が予定されている。日本の大都市をほぼ網羅して巡回しているというイベントなのに、実態のない団体が主催しているとはあまりにもミステリアスだ。


2. プラスティネーションからプラストミックへ、
その標本技法の名称が変化していること。


この人体標本の技法を発明考案した人物は、ドイツのフォン・ハーゲン博士なる人物らしく、彼の標本技法は「プラスティネーション」というのが考案者自ら名付けた名称のようだ。ところが、この人体不思議展では同じ技法でありながら「プラストミック」標本と別称を名乗っているのは何故か、これまた奇妙ではないか。
*ドイツにおける人体不思議展
http://hotwired.goo.ne.jp/news/news/culture/story/20010521207.html


ところで、1995年9月から11月に、日本解剖学会主催で国立科学博物館において「人体の世界」という名称の展覧会が開催されているのだが、この時の標本技法の名称は「プラスティネーション」であり、後援にドイツ大使館が名を連ね、また協力にハイデルベルク大学」の名があるところを見ると、標本開発者であるフォン・ハーゲン博士との結びつきも明らかだろう。しかるに、現在進行中の「人体不思議展」では同じ標本技法でありながら「プラスティネーション」の語もフォン・ハーゲン博士の名前も一切触れられていないのは何故か、頗る疑惑がつのる。
*日本解剖学会主催「人体の世界」展http://www.kahaku.go.jp/special/past/human/human.html


3. ハーゲンス博士のドイツでも、国内各地で展覧会開催中で、
且つ、アメリカでも西海岸を中心に展開中とか。


日本で開催中の昨年、同時期に、ハーゲンス博士はドイツ国内においてと同様、アメリカにおいても「人体の不思議展」を開催しているが、これらの記事には、日本での三年間に及ぶ同様の開催に触れた記載はまったくない。
*フォン・ハーゲン博士が仕掛けたアメリカにおける人体不思議展。上
http://hotwired.goo.ne.jp/news/news/culture/story/20040910201.html


4. 中国には、標本技法開発者フォン・ハーゲンス博士の経営する、
社員200人を抱えるプラスティネーション製造の会社があるとのこと。


さらに、この記事の末尾には、上記のごとく、ハーゲンス博士のプラスティネーション製造会社があるという。
*フォン・ハーゲン博士が仕掛けたアメリカにおける人体不思議展。下
http://hotwired.goo.ne.jp/news/news/culture/story/20040913207.html


そして、日本の「人体不思議展」に展示されている標本の献体者はすべて中国人だということだが、ここにも大きな疑念が起こる。献体といえば医学発展のためと聞こえは良いが、日本のような「献体に関する法律」に則って為されていれば問題なかろうが、この場合、生前の契約に金銭の授受が介在することは大いに可能性としてあるとみるのが妥当だろう。もしそうだとしたら、あまりにも人道上問題ではないだろうか
*A.K氏のDiaryより
http://homepage2.nifty.com/treknz/diary_031101_human_body.html


5. 東京開催と同時に、現在、北京でも開催中との情報もあり、
且つ、これらの主催団体は、ハーゲンス博士から抗議を受けているという情報。


現在、日本だけでなく、同様の開催が北京においてもなされているという。
しかも、これらの主催団体、日本の場合は㈱日本アナトミー研究所なのだろうが、ハーゲンス博士から抗議を受けているというのだ。
*ブログ「okey-dokey」より
http://www.nora.co.jp/mt/turkey/archives/000185.html


上掲の事柄を総合勘案するに、浮かび上がってくる事実は、この標本技法を開発したフォン・ハーゲン博士本人もとかく問題の人であり、賛否両論、賞賛と非難の渦中にあるようだが、
日本における「人体の不思議展」なるものは、かのハーゲン氏が経営するといわれる中国の標本製造会社が日本の主催者サイドと結託し、ハーゲン氏に秘密裏に仕掛けているのか、或は、標本を横流ししているケースが考えられるのではないか。
いずれにしも、いかがわしく胡散臭いもので、これに対して週刊誌などのマスコミも取り上げた形跡もなくひっそり感としているのも、まったく腑に落ちない。
なにやら闇の事情があるのか、裏世界が絡んだイベントやもしれぬなどと、穿った観方も否定しきれない、と思うのだが如何。