山頭火つれづれ-四方館日記

放浪の俳人山頭火をひとり語りで演じる林田鉄の日々徒然記

<二上山夢験-ふたかみやま-ゆめのあらわれ>

2019-02-08 02:08:45 | 文化・芸術

――語り・舞ひ・奏で――  折口信夫「死者の書」より

 

彼の人の眠りは、徐かに覚めていった

真っ黒い夜の中に

更に冷え圧するものの澱んでいるなかに

眼のあいて来るのを、覚えたのである

した した した ―― 

した した した ――

 

耳に伝うように来るのは、水の垂れる音か

ただ凍りつくような暗闇の中で

おのずと睫と睫とが離れて来る

膝が、肱が

徐ろに埋れていた感覚を取り戻して来るらしく―― 

全身に強ばった筋が、微かな響きを立てて

掌、足の裏に到るまで

引攣れを起しかけているのだ

―― そうして、なお深い闇

ぽっちりと眼を開いて見廻す瞳に

まず圧しかかる黒い巌の天井を意識した

次いで、氷になった岩床

両脇に垂れ下がる荒石の壁

―― したしたと、岩伝う雫の音

 

 -今月の購入本-2017年05月

◇安藤優一郎「西郷隆盛の明治」 歴史新書.洋泉社

◇国立新美術館「ミュシャ展」求龍堂

◇佐藤彰一.他「世界の歴史 <10> 西ヨーロッパ世界の形成」中央公論社

◇伊藤公一朗「データ分析の力 因果関係に迫る思考法」 光文社新書

 


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