山頭火つれづれ-四方館日記

放浪の俳人山頭火をひとり語りで演じる林田鉄の日々徒然記

死ねない人の鈴が鳴る

2009-10-31 04:19:24 | 文化・芸術
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Information – CASO版/四方館 Performance
「二上山夢験」-ふたかみやまゆめのあらはれ-
折口信夫「死者の書」より
語り-林田鉄/舞い-末永純子/奏で-田中康之
10/31-SAT- PM7:00~

―山頭火の一句― 昭和5年の行乞記、12月6日の稿に
12月6日、雨、福岡見物、彷徨5里、時雨亭居。

眼がさめて、あたりを見まはすと、層雲文庫の前だ、酒壺洞は寝たままでラヂオを聞いてゐる、私にも聴かせてくれる、今更ながら機械の力に驚かずにはゐられない、9時、途中で酒君に別れて、雨の西公園を見物する、それからまた歩きつづけて、名島の無電塔や飛行場見物、ちようど郵便飛行機が来たので、生れて初めて、飛行機といふものを近々と見た。

時雨亭さんは神経質である、泊るのは悪いと思つたけれど、やむなく今夜は泊めて貰ふ、酒壺洞君もやつて来て、12時頃まで話す。

今夜は朝のラヂオから夕の飛行機まで、すつかり近代科学の見物だつた、無論、赤毛布! いや黒合羽だつた!
時雨亭さんは近代人、都会人であることに疑いない、あまり神経がこまかくふるへるのが対座してゐる私の神経にもつたはつて、時々私自身もやりきれないやうに感じるけれど、やつぱり好意の持てる人である。

※表題句の「鈴」は-レイ-と訓む、外17句を記す

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Information-土曜の夜-10/31-は、Candle Night Performance

絵画・造型、写真、音楽、舞踊、演劇
多ジャンルの多彩な顔ぶれが集合
CASOにおける「デカルコマニィ的展開/青空」展
野外篇パフォーマンス
When?-10.31-SAT- PM8:00~PM8:45
Where?-CASOのある海岸通散歩道埠頭広場にて


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十二月の風も吹くにまかさう

2009-10-29 23:57:02 | 文化・芸術
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Information - CASOにおける「デカルコマニィ的展開/青空」展

「土曜の夜-10/31-は、Candle Night Performance」
絵画・造型、写真、音楽、舞踊、演劇
多ジャンルの多彩な顔ぶれが集合
CASOにおける「デカルコマニィ的展開/青空」展の
野外篇パフォーマンス
When?-10.31-SAT- PM8:00~PM8:45
Where?-CASOのある海岸通散歩道埠頭広場にて

―山頭火の一句― 昭和5年の行乞記、12月5日の稿に
12月5日、曇、時雨、行程3里、福岡市、句会、酒壺洞居。

お天気も悪いし、気分もよくないので、一路まつすぐに福岡へ急ぐ、12時前には、すでに市役所の食堂で、酒壺洞君と対談することが出来た、-略-、退庁まではまだ時間があるので、後刻を約して札所めぐりをする、九州西国第三十二番龍宮寺、第三十一番は大乗寺、どちらも札所としての努力が払つてない、もつと何とかしたらよささうなものだと思ふ。

夜は酒壺洞居で句会、時雨亭さん、白楊さん、鳥平さん、善七さんに逢つて愉快だつた、散会後、私だけ飲む、寝酒をやるのは良くないのだけれど。‥

さすがに福岡といふ気がする、九州で都会情調があるのは福岡だけだ-関門は別として-、街も人も美しい、殊に女は! 若い女は! 街上で電車切符売が多いのも福岡の特色だ。

存在の生活といふことについて考へる、しなければならない、せずにはゐられないといふ境を通つて来た生活、「ある」と再認識して、あるがままの生活、山是山から山非山を経て山是山となつた山を生きる。‥

-略-、ただこの二筋につながる、肉体に酒、心に句、酒は肉体の句で、句は心の酒だ、‥この境地からはなかなか出られない。‥

※表題句の外、21句を記す

―四方のたより― おいそが氏、昨日・今日

昨日の午後は、河内長野のラブリーホールへ、車でちょうど1時間。用向きは、茶谷祐三子が出演する「亜細亜RONDO」の打合せだったが、一時間ほどで了るとみていた此方の目算が外れて、帰宅が6時半になってしまった。

その所為で泣きべそをかく羽目になったのがKAORUKO。この日初めて鍵っ子体験をさせたわけだが、「5時に帰るから」と書置きしておいたのに、一時間半も遅くなったのだから、そりゃさぞかし心細かったにちがいない。帰路の家も近づいた頃に電話を入れたら、私の声を聞くなり泣き出していた。

今朝は先ず、大阪府議会が85億円で買取りを決議したばかりのWTCへ。市港湾局が39~41階に入っており、先日来手続きしていた、土曜日の埠頭使用許可証を貰うためだったのだが、地上55階建、高さ256mで、総事業費1193億円をかけた超高層ビルも、’95年の竣工からわずか14年、85億という安値で売り飛ばされるかと思えば、なんだか妙な感懐を覚えつつ、エレベータの窓外からの風景を眺めたものだ。

その後は待ち合せていたCASOへ。二時間ばかりビラ配布に精を出したのだが、24℃の陽光の元ではすぐにも汗ばむほどで、ちょっぴり疲れた。

CASOでは2時頃、大竹徹さんの演奏で、高島明子が踊るのを観た。どうやらシチュエーションを想定しているものと覗えるが、その所為であろう、動きが身振り的レベルで終始している。動きがそれ自身動きを紡ぎ出すように、もっと踊って欲しいものだが‥。

昨日に続いて子どもを鍵っ子にさせるわけにはいかないから、一旦帰宅して、夕刻から、今度はKAORUKOを連れて、本日二度目のCASO推参。

6時30分からの森島Ekoや井下ヒデらによる「ダンス&能管のコラボ!」は、CASO玄関前でのPerformanceとなった。踊り手は7人、ほぼ振付構成されたもの、管理者側からのクレームで止むなく屋外に出たのだが、踊りとしては夜景を取り込めて、かえってそのほうがよかっただろう。演奏メンバーが充実していたのに、彼らのSessionがノリきらぬままに踊りが終わってしまったのは、いかにも勿体ない。こういう場合、前もって描き込まれたものがそれまでであったとしても、endを決め込まずに、ノリに委せる柔軟さが欲しい。あと10分とはいわぬまでも、最低5.6分は、演奏とのSessionを愉しんで貰いたい。


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また逢ふまでの霜をふみつつ

2009-10-27 23:58:58 | 文化・芸術
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Information – CASO版/四方館 Performance

「二上山夢験」-ふたかみやまゆめのあらはれ-
折口信夫「死者の書」より
語り-林田鉄/舞い-末永純子/奏で-大竹徹・田中康之
10/31-SAT- PM7:00~

―山頭火の一句― 昭和5年の行乞記、12月4日の稿に

12月4日、晴、行程6里、汽車でも6里、笹栗町、新屋。
冷たいと思つたら、霜が真白だ、霜消し酒をひつかけて別れる、引き留められるままに次良居4泊はなんぼなんでも長すぎた。

11時の汽車に乗る、乗車券まで買つて貰つてほんたうにすまないと思ふ、そればかりぢやない、今日は行乞なんかしないで、のんきに歩いて泊まりなさいといつて、ドヤ銭とキス代まで頂戴した、-略-

次良さんよ、幸福であつて下さい、あんたはどんなに幸福であつても幸福すぎることはない、それだのに実際はどうだ、次良さんは商売の調子が良くないのである、日々の生活も豊かでないのである。-略-

此宿はよくない、お客さんは私一人だ、気儘に読んだり書いたりすることが出来たのは勿怪の幸だつたが。
さみしいなあ-ひとりは好きだけれど、ひとりになるとやつぱりさみしい、わがままな人間、わがままな私であるわい。

※表題句の外、16句を記す

―四方のたより― CASO週間の幕開け

兪々、CASOにおける「デカルコマニィ的展開/青空」展が、幕を開けた。
今日はPM5:00頃から、小嶺由貴がデカルコ・マリィと踊っている筈だ。

私は、夕刻からはインド舞踊の茶谷祐三子の稽古に付合うと約していたので、昼間に冷やかし気味のお邪魔をしてきた。今回は作品を出品している松石君も顔を出していた。

「2時過ぎに帰らなくちゃならないから」と言ったら、デカルコ・マリィが「それじゃ」と、帰る間際に、短い時間ながら踊って観せてくれた。相変わらずのサービス精神、これが彼の真骨頂だ。

なにより関係者自身がそれぞれに、この一週間を愉しめばいい、そういうイベントだ。


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雑巾がけしてる男の冬

2009-10-26 18:00:05 | 文化・芸術
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Information-土曜の夜-10/31-は、Candle Night Performance

絵画・造型、写真、音楽、舞踊、演劇
多ジャンルの多彩な顔ぶれが集合
CASOにおける「デカルコマニィ的展開/青空」展の
野外篇パフォーマンス
When?-10.31-SAT- PM8:00~PM8:45
Where?-CASOのある海岸通散歩道埠頭広場にて

―山頭火の一句― 昭和5年の行乞記、12月3日の稿に
12月3日、晴、一日対座懇談、次良居滞在。

今日は第48回目の誕生日だつた、去年は別府附近で自祝したが、今年は次良さんが鰯を買つて酒を出してくださつた、何と有難い因縁ではないか。-略-

ポストへ行く途上、若い鮮人によびとめられた、きちんとした洋服姿でにこついてゐる、そしておもむろに、懐中時計を買はないかといふ、馬鹿な、今頃誰がそんな詐欺手段にのせられるものか、-しかし、彼が私を認めて、いかさま時計を買ふだけの金を持つてゐたと観破したのならば有難い、同時にさういふイカサマにかかる外ない男として、或は一も二もなくさういふものを買ふほどの-世間知らず!の-男と思つたのならば有難くない。

夜は無論飲む、次良さん酔うて何も彼も打ち明ける、私は有難く聴いた、何といふ真摯だらう。
※表題句の外、5句を記す

―四方のたより― 歩々到着

昨日、CASOのある築港界隈を歩いた、ビラを持って、AyaちゃんとKAORUKOを連れて。
午後になる頃を見計らって、「みなアート会」を主導されていると聞く、築港温泉の店主、福田さんを訪ねた。
一見の不躾な訪問にもかかわらず、2階の広い居間に3人を招じ入れて、丁重に応接して下さった。

ほぼ私と同年配、2歳くらい上かなと思われるこの街場の銭湯を営む主人は、意想外のダンディな御仁であった。いわゆる趣味人であることが、細身の身体を上下のジーンズで包んだその風采や物腰、会話の様子から匂い立つ。

港区の街場の人々には、かなり広く見知ってきたつもりだったが、まだまだ狭いと、つくづく感じさせられた遭遇であった。

人は、やはり、よく歩かねばならない、といまさら思いいたる。
歩けばこそ、日々、いたるところ、歩々到着があるというものだ。


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猫もいつしよに欠伸するのか

2009-10-24 15:16:16 | 文化・芸術
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Information – CASO版/四方館 Performance
「二上山夢験」-折口信夫「死者の書」より
語り-林田鉄/舞い-末永純子/奏で-大竹徹・田中康之
10/31-SAT- PM7:00~

―山頭火の一句― 昭和5年の行乞記、12月2日の稿に
12月2日、曇、何をするでもなしに、次良居滞在。

毎朝、朝酒だ、次良さんの行為をありがたく受けてゐる、次良さんを無理に行商へ出す、私一人猫一匹、しづかなことである、夜は大根膾をこしらへて飲む、そして遅くまで話す。-略-

或る友に与へて-
私はいつまでも、また、どこまでも歩きつづけるつもりで旅に出たが、思ひ返して、熊本の近在に草庵を結ぶことに心を定めた、私は今、痛切に生存の矛盾、行乞の矛盾、句作の矛盾を感じてゐる、‥私は今度といふ今度は、過去一切-精神的にも、物質的にも-を清算したい、いや、清算せずにはおかない、すべては過去を清算してからである、そこまでいつて、歩々到着が実現せられるのである、‥自分自身で結んだ草庵ならば、あまり世間的に煩はされないで、本来の愚を守ることが出来ると思ふ、‥私は歩くに労れたといふよりも、生きるに労れたのではあるまいか、一歩は強く、そして一歩は弱く、前歩後歩のみだれるのをどうすることも出来ない。‥

※表題句の外、19句を記す

―日々余話― 朱の海と、彷徨える山頭火

この数日、ゆっくり新聞を読む暇がない、ニュースを見る時間もない、もちろん読書からも遠離っている。時ならぬ閑中忙?である。

そそくさと拾い読みした昨日の朝刊、丹砂-水銀朱-で赤く塗り込められた、桜井市にある茶臼山古墳の石室の模様が報じられていたが、この水銀朱の使用量が200㎏に相当するという破格のものらしい。丹は、道教でいえば、不老長寿の仙薬、始皇帝の墓にはこの朱色の海があるという史記の故事もある。3世紀末から4世紀初頃とされる茶臼山古墳にも、規模の彼我はあれど、その石室一面に朱色の海がひろがっていた、というのは驚き。

こうして、山頭火の行乞記を追って綴っていると、彼のバイオリズムといったものがほの覗えてくる。句作の知人・友人たちの歓待にしばしのやすらぎを得ては、却って一所不在の徹底が揺らぎだし、自身の矛盾撞着が露呈してくる。自ら草庵を結び、孤高に生きんとする理想形に執着する念が、どうしても頭を擡げてくる。

山頭火は、この後、月末にも、別れたサキノも居る、長年親しみ住んだ熊本市内に「三八九居」を構えることとなるが、わずか半年ほどで、おのれの甘さゆえ、またも取り返しのつかない失態を演じては、窮地に追い込まれ、挙げ句の果て、新しい草庵を求めて、またも旅に出る。

彼が、生まれ育った故郷近くの小郡に、ようやく「其中庵」と名づけられた安住の地を得たのは、昭和7年9月のことである。


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