野分日記  ~Mint★Drop!のブログ~

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五月花形大歌舞伎!

2017年05月27日 | 野分日記

  5月の大阪松竹座は「五月花形歌舞伎」興行で連日満員の大盛況です。何と言っても当代の人気役者中村勘九郎・中村七之助・市川猿之助が大活躍するので人気も当然ですね。来月は名古屋で「平成中村座」興行がありますが、こちらも発売早々完売と言う状況で、改めて中村兄弟の人気の凄まじさを実感しています。

 前回の「團菊祭大歌舞伎」は「大歌舞伎」、今回は「花形歌舞伎」。違いは何かと言うと「大歌舞伎」は座頭=中心となる役者が歌舞伎界の中心にいるベテラン役者の興行です。一方、「花形歌舞伎」はその名の通り、若手で花のある役者が中心となる興行です。ベテランの至芸を楽しむ大歌舞伎、次代を担う若手の溌溂とした舞台を楽しむ花形歌舞伎という訳です。

今回の花形歌舞伎は中村勘九郎と市川猿之助が、それぞれ「お家の芸」と言える演目を持って来ました。

昼の部は「金幣猿島郡」(きんのざい さるしまだいり)。鶴屋南北の絶筆であり、三代市川猿之助四十八選に選ばれている「澤瀉屋(おもだかや)のお家の芸です。江戸時代に初演されて以来長く上演されていませんでしたが、三代猿之助が昭和39年に復活上演させた演目です。その後8回上演されましたが、全て三代猿之助と四代猿之助が主演しています。安珍・清姫の物語に平将門・田原藤太が絡み「蛇の化身」までが登場し、鶴屋南北特有の奇想天外な世界が繰り広げられます。最大の見せ場は清姫と清姫に横恋慕する忠文、そして蛇の化身の3役を演じる猿之助の演技であり、特に終盤の踊りながらの「宙乗り」です。鍛え抜かれた澤瀉屋のお弟子さん達立ち回りの見事です。大阪では前回の新歌舞伎座(平成6年)以来2度目、松竹座では初演、4代猿之助自身にとっては3度目の上演になります。

嫉妬に狂った清姫と忠文の霊は蛇の化身となって暴れ狂います!猿之助のもっとも得意とする役柄ですよ。

 

 夜の部は)「怪談乳房榎」(かいだん ちぶさのえのき)と「新版歌祭文 野崎村」。

「怪談乳房榎」は明治期に大活躍した三遊亭円朝原作の「落語」を歌舞伎化したものです。「落語」の歌舞伎化も「らくだ」「文七元結」など案外あり、最近では鶴瓶の落語の歌舞伎化も上演されています。

この演目の見所は「早変わり」「本水(ほんみず)」です。歌舞伎の早変わりは、それはそれは見事なもので、マジックの様に鮮やかに観客の眼の前で入れ替わって見せます。「本水」は舞台上に本当の水を流してバシャバシャやる演出です。前方の観客には水除けのビニールシートが配られます。この演目は昭和32年の復活以来、実川延若→十八代中村勘三郎→中村勘九郎に引き継がれた演目です。今ではしっかり「中村屋」のお家芸の一つです。

今回は敵役を猿之助が演じました。一見二枚目の正義感らしく振る舞い、実は悪人であるという歌舞伎記用語でいうところの「色悪(いろわる)」です。前回、私が赤坂歌舞伎でこの演目を観た時は、中村獅童(病気心配ですね・・・)がこの役を演じましたが、悪い役をやらせたら猿之助に軍配が上がります。

勘九郎は水には飛び込むし、場内を走り回るし(二階席にも、三階席にも)大活躍です。今後大人気演目の一つになっていくでしょうね。

「本水」も歌舞伎の「ケレン」の一つです。勘九郎の声は時に勘三郎そっくりに聞こえます。

「野崎村」はもともと人形浄瑠璃・文楽の人気演目を歌舞伎化したもので、良く知られた「お染・久松」の心中事件に至るまでの物語です。今ではその中でもこの「野崎村」が主にが上演されます。

お染・久松とお光の三角関係を軸にお光の父親、お染の母親の「情」が絡み合う上方世話物の代表的な一編です。坂東弥十郎の父親役が渋く良いですね… 弥十郎は亡き勘三郎とほぼ同い年、娘役を演じる七之助との掛け合いは、さながら勘三郎を彷彿とさせ一層涙を誘います。ラスト、愛する久松を諦めたお光が感極まって「ととさん!」と嘆く台詞は胸に迫るものがありました。派手な歌舞伎も好きですが、こういった味わい深い上方の世話物を味わいがあって大好きです。

七之助のお光。若手女形ではNO.1ですね。切っている大根は、本物です。

 

朝早くから当日の幕見席を求めて並んでいるお客様がいるほどの人気です!

 

芝居がはねた後は「法善寺横丁」で軽い食事を楽しみました。

7月は松嶋屋の座頭公演。仁左衛門が当たり役の一つ薩摩源五衛門を演じる「盟三五大切」がでます。相手役のお万はこれも当たり役の中村時蔵さんです。ちなみに三五は染五郎です。今から楽しみです。