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単騎、千里を走る。(劇場)

2006-02-07 12:23:26 | 中国映画 (19)

Tan

英題:Riding Alone for Thousannds of Miles
監督: 張藝謀 降旗康男
音楽: ガゥオ・ウェンジィン
出演: 高倉健 寺島しのぶ 中井貴一(声のみ)
     リー・ジャーミン ジャン・ウェン
     チュー・リン ヤン・ジェンポー
2005年、日本 中国

まごころは国境を越え、父と子の絆を結ぶ

>>漁師の高田(高倉健)は、東京で民俗学を研究している息子が病で倒れたと聞き上京する。
しかし長年の確執もあり、訪れた高田に対して息子は会おうとしない。
息子の命がもう長くないことを知った高田は、息子がやり残した仕事である中国・雲南省の民俗舞踊の撮影を決意。単身で中国の奥地へと旅立つのだった。

無骨で不器用な父親とまた父に似た息子の確執から、心の通うまでの過程を描いた映画です。
映画を見ていて、ああ、これは父親の”贖罪”の旅なのだと思った。
息子も自分も仮面をつけたまま、正直になれなかった。

お話はさして目新しいものではないかもしれない、涙も出はしないけれど、何かを感じた。
それは張藝謀の俳優、高倉健に対する熱い想いかもしれないし。

高倉健のこれまで生きてきた年輪の重さ・・そんなものを時がゆっくりと流れているような壮大な中国の景色を背景に重ね合わせる。
数々のよい場面が準備されているのだけど、高倉健がいて、この物語は成立したのだと思う。

それが嫌な人もいるかもしれないけれど。
高倉健って、こんなに大きい人だったっけ。
この人は不思議に険しい中国の風景に溶け込んでいる。

ヤンヤンを演じたオーディションで選ばれた子供が可愛いのは勿論、日本語を勉強中のひょうひょうとしたガイドをそのまま演じたチュー・リンが素晴らしかった。
シリアスな面持ちの健さんの傍らにいつも彼が映し出されて、それが画面をほのぼのとする。
調べると、この人も本物の現地のガイドさんだという。

この映画の影の主役はチュー・リンさんだと思う!

いつもいつも、うまく話しが通じない。
実際、ほとんど同時通訳なのは少ししんどかった。

お話はゆっくり進むけれど、言葉の壁が立ちはだかって先が読めず、お陰で退屈はしない。
日本語を勉強中というガイドの設定が、うまくもどかしさを演出している。
この中国の奥地でも、携帯が大活躍なのが面白かった。

チャン・イーモウ監督は一般の人を使うのが巧いなあと思う。
私はこの映画を見ていてチャン・イーモウ作ではないけれど、『思い出の夏 王首先的夏天』を思い出した。
一般の子供の中からオーデションで子役を探し、映画を撮るという筋書きだった。

寺島しのぶさん、彼女は健さんと共演した『緋牡丹お龍』の寺島純子さんの娘だ。
これも計算されたことなのだろう。
息子の姿を出さなかったのはなぜかな?
中国での健さんだけに焦点を当てて、物語をシンプルにしたかったのかと思う。

ヤンヤンを高田がしっかりと抱きしめる場面がある。
高田はヤンヤンを通して息子、健一を想っただろう。
そして、私は健さんに子供、家族がいないことをおもった。

麗江の村で客を迎えるための村の道に、それは長々と卓を連ねて開かれる宴は壮観で暖かい眺めだった。
日本にだって、いえ、地方には今もお客を大歓迎する気持ちは残っているはず。
村の長老は道理を説く。
しかし、一旦決めたら高田への協力を惜しまない。

高田も強いけれど、中国の人もまた温かくて強い。
道に迷った高田とヤンヤンを探すために人々が手に手に松明を持って、橋を渡ってくる場面が幻想的で一番好きだ。
『初恋のきた道』で亡き先生の棺を大人になった教え子だちが担いで歩く場面と同じ感動があった。

なぜヤンヤンの父親が「単騎、千里を走る。」を舞えなかったか、これは映画を見ている間は判らなかった。
映画を見ている時はきっと、何か訳があると思って見たけれど。

この仮面劇は三国志の関羽が義兄弟の劉備の子、阿斗を懐に抱いて、
曹操の手から千里の道を独り騎馬で逃げ延びたくだりの舞踊だったのだ。
だから、父は子を思い出して、どうしても踊れなかった。

静かに流れる中国楽器を使った音楽は自分も麗江にいるような気持ちにさせてくれる。
心地いいです。

以下、結末に触れています。
*****************************************

健一は亡くなったけれど、遠い麗江の人々のまごころを想って高田の心は安らかではなかったか。

お父さん、会いましょう!
健一の手紙はそう結んであった。

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18 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
とてもシンプルな映画ですが、心に響く何かがあり... (rabiovsky)
2006-02-07 23:13:07
とてもシンプルな映画ですが、心に響く何かがありますね。
健さんは立っているだけで存在感ありますしね!
健さんじゃないと成立できない映画だと思います。
私もチュー・リンと健さんの絡みは抜群だと思いますよ。
>『緋牡丹お龍』の寺島純子さんの娘だ。
これは気づきませんでした。あいりさん、鋭い!
なるほど~。まあ日本のパートは東映の人たちが撮っているので
関係あるかもしれませんね。
とても好印象な映画でした。
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個人的には、イーモウちゃんに限っては、こういう... (まっき~)
2006-02-08 01:09:02
個人的には、イーモウちゃんに限っては、こういうタイプの映画の方が好きです。だから嬉しかった、『秋菊の物語』っぽいところもあるし。

ついしん。
カーワァイの新作、アメリカのハリケーン(去年の、大きなやつね)を題材にするそうです
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>>まっき~さん (あいり)
2006-02-08 09:11:50
>>まっき~さん

そうなの?
まっき~さんは監督の初期の作品、赤いシリーズが好きかな(私は見てない^^)と思ってました。
『赤いコーリャン』はちと見てみたいです。
>カーワァイの新作、アメリカのハリケーン(去年の、大きなやつね)を題材にするそうです
そうなの?時代は今なのかな?
カーワァイ監督とハリケーン???笑
創作するという仕事は大変なんだろうなあと思います。
見るほうは楽だけどね~。。
返信する
>>ラビオさん (あいり)
2006-02-08 09:24:25
>>ラビオさん

好印象でしたか。良かった!^^
健さんに捧ぐ、チャン・イーモウの映画!でした!
日本の映像は麗江の風景との対比のため、あっさり味になった?のかなと思いましたけど~。
『単騎、千里を走る』この題の響きがいいですよね。
チュー・リンさんは演技してなくて、素のままだったんですね。
どんなに著名な俳優さんかと思った。笑
私はちょこっと、非牡丹のお龍さんのファンだったんですよ。笑
健さんはいつもお龍さんのお助けマンでした。
男前でした。
この映画でも、キャップをかぶった健さんに往年の男前を見ました。★
イーモウ監督の”子役じゃない一般の子供使ったシリーズ”は可愛い小品な感じの映画かな。
期待しないで、ふ~~~んと思って見ると正解かもしれませんよ!笑
ありがとう!


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うんうん、紅シリーズ大好きよ。全部、凄い。『コ... (まっき~)
2006-02-08 12:21:31
うんうん、紅シリーズ大好きよ。全部、凄い。『コーリャン』から『秋菊』あるいは『上海ルージュ』までを一連のシリーズで括ってあるのは、全部、コン・リーとのタッグだからだよねー。
ダメだったのは、『HERO』からなの。いいじゃん、アン・リーとかが撮るんだから、あなたはもっと退廃美にこだわってーって思ってしまった笑
今回のは、そういう意味で先祖がえりかなって。
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>>まっき~さん (あいり)
2006-02-08 18:12:09
>>まっき~さん

先祖がえりなの?
とても分かりやすい映画で、見ながらゆったりできました。笑
神戸のハーバーランドって海の側の「シネモザイク」で見ました。
シートがふかふかでいい気分だった。
ちょっと不便なところなんで採算とれてるかなあなんて変な心配してしまった;ヘヘ
赤いシリーズ、突入するか?!^^
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こんばんは。 (にこ)
2006-02-08 19:28:36
こんばんは。
公式サイトは見たのに、チュー・リンさんのインタビューがあるなんて見落としてました。チュー・リンさんはおもしろかったですね。
この映画は「字幕あり」と「字幕なし」があるらしくて。
私は何も知らずに「字幕あり」を見ました。
「単騎、千里を走る。」がどんな踊りかお調べになったんですか。すごい。勉強になりました。

赤いシリーズって、うまい。私も全部見てます。チャン・イーモウ監督とチェン・カイコー監督のおかげで、コン・リーというと赤のイメージ。
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>>にこさん (あいり)
2006-02-08 21:48:45
>>にこさん
「字幕あり」と「字幕なし」があったのですか?
神戸は字幕なしだけだったようです。
何かで「単騎~」の舞踊が「三国志」と関係があると見かけたので、
「単騎」と「三国志」で検索したらすぐに判りました。
関羽は張飛とともに劉備の家来です。
関羽は劉備のために子供を懐にくくりつけるようにして曹操の追っ手から逃げたんですね。
それが千里だったのはすっかり忘れてました。
これが映画鑑賞中に分かっていれば、感動もまた深くなったかな。笑
チュー・リンさんはすぐに検索できました。
本当にガイドさんで、驚きました。
イーモウ監督は一般の人を使うのが上手ですね。

にこさんの感想
>「抱きしめる」というのは何て素晴らしい愛情表現。
この感想の文を読んで、うっと、涙が出そうになりました。(;;)
にこさんのお陰で、この映画を見にいけたようなものです。
見て良かった!感謝です!ありがとうございました。^^


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何かのCMで、 (にこ)
2006-02-09 18:07:34
何かのCMで、
「子育てに悩んでるお母さん、お子さんを抱きしめましょう」
というようなのがあって、(うろ覚え)
印象に残っていました。
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>>にこさん (あいり)
2006-02-09 19:22:26
>>にこさん

にこさんはいいパパになれますね。^^

ミニ知識:
にこさんは知ってると思うけれど、この関羽は人々に崇められて神様”関帝”になったそうです。
商売に霊験あらたかで、香港の映画などに出てくる神棚にまつってあるのは関帝らしいですよ。
思い出しました。笑

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