監督:長澤雅彦
原案:最相葉月
出演:真中瞳 (相葉志乃)堺雅人(前野悦朗)
中村育二 (山田武史)小市慢太郎 (大伴尚之)
島木譲二 (丸山亀吉) 笑福亭鶴瓶 (大門幸三)
歌:スガシカオ
2001年、日本
目をつむると、会える人がいる。
>>東京の中堅広告代理店に勤務する駆け出しのコピーライター・相葉志乃は、不倫相手の上司・橋爪常務の夫人から手切れ金50万を渡された上、大阪支社の営業部へ転属された。
志乃は子供の頃、父を病気で亡くした。星に願った。なのに・・
「願っても叶わない、信じても無駄」そうやって自分を傷つけずに生きてきた。
これからも私はそうやって生きていく。
ボロボロの心を引きずって、大阪支社の営業部へ転属された志乃。
彼女はそこで、「まっ、ええのんとちゃいますか」が口癖のどこか肩の力の抜けた、星を眺めることと、阪急ブレーブスが好きな青年、前野に出会う。
前野クンはいつも微笑んでいるようで、人生を楽しんで見える。
大阪が舞台で、関西人の私は親しみを感じて笑って見ているうちに、惹きこまれた。
関西人ではないのに、関西弁をほぼ完璧に話す堺雅人の存在が大きいと思う。
得意先相手の接待で、失敗をした志乃を前野は意外に男っぽく救った。
彼はまた、人を見抜く目を持っていた。
言いたいこともはっきり言えず、心にしまう孤独な志乃。
彼女の怒りを、代わって前野は大声で叫んでやる。
「(買ってくれた靴はサイズが合ってない)外反母趾が痛いねん!」
「留守電、何万回チェックしたとおもてんねん!アホ~!」
これは女性にはたまらない。嬉しいけど、泣けてしまう。
この映画、どこかコメディタッチで関西風小ネタもいっぱい。クスッと笑えます。
さりげない前野の労わりが志乃を包み込み、志乃は笑顔を取り戻してゆく。
「まっ、ええのんちゃいますか」は投げやりなのではなく、肯定と励ましなのだ。
諦めもはいっているのだろうか。
毎日の小さないいこと、それが幸せにつながってゆくのくのかもしれない。
「願うこと、そのこと自体が幸せなんちゃう?」
でも、前野にはある秘密があった。
ここから結末に触れています。
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彼は心臓の病いで12年前に手術をして助かった。
そう言えば、ほっそりした前野はどこか儚い感じがした。
やはり、生き急いでいたのかな。
人生を取り戻した目で見たら、骨董品やガラクタもいとおしい。
なんで、星はあんなに綺麗んや。
今日は昨日と違うはず。
日常が変わって見えるなら、それは素晴らしいことだと思う。
生死を超えた透明な目で見たら、人のこともよく見えるんだろうな。
前野は病状がまた悪化して入院する。
「僕は12年前に1回死んだ筈の人間や」
もう手術はしないと言い張る前野のために、夜、神社への階段なのだろうか、ひとり、志乃は手を組んで祈る。
厳かで胸に迫る場面です。
彼女はもう一度、願い、信じることにしたんだ。
願えば通じる。願わなければ通じないのだ。
「どうや、叶ったやろ」天国から聞こえてくるような電話の声・・
イヤ、天国からだったかもしれない。
でも、奇跡はそう何度もおきない。
手術を前にして、前野は志乃に奇跡をプレゼントして、満点の星の下、静かに逝ってしまった。
いい人ほど早く逝ってしまう気がする。
でも、前野の与えられた12年はひとりの人間を救ったことになる。
前野の死も無駄ではない。
前野が愛す小さな世界がトタンの穴の星なのは切なかったけど。
でも、こういう、人知れぬ美しさに気がつく人がどのくらいいるだろうか。
ココには彼の暖かさがまだ残っている。 ココニイルコト
志乃は自問自答する。
「私、もう少しココにいてもいいかな」
「ええんとちゃいますか」
そして、志乃の「笑顔」
エンドロールの途中の志乃に、見ているこちらも微笑む。エンドロールは最後まで見てください。
勝負!勝った!前野のやりかた。
頑張れ志乃!
笑福亭鶴瓶さんが素敵な使われ方をしています。
生きてるだけでまるもうけ。
いつもの毎日が違って見える。
そんな発見が幸せな気分にさせてくれる映画だった。
好きなように生きたら、ええんちゃいますか。