原子炉の中の状態は今もほとんどわかっておらず
放射性物質の大量放出がどのように起きたのか
詳しくはわかっていない!
にもかかわらず
政府や国などの事故調査委員会は活動を終え
事故の検証の動きは弱まる中で
ゲンパツを再稼働を強行する!
民意は「賛成」は17%しかいないぞ!
「どちらとも言えない」30%もいる!
「反対」は46%だ!
「丁寧な説明不足」と対策不十分浮き彫り!
WEB特集 原発再稼働1年 安全性なお議論
8月12日 19時30分
http://www3.nhk.or.jp/news/web_tokushu/2016_0812.html?utm_int=detail_contents_tokushu_002
東京電力福島第一原子力発電所の事故の影響で、長期間停止した国内の原発。去年8月11日、鹿児島県にある川内原発1号機が新しい規制基準のもと、全国で初めて再稼働し、それから1年がたちました。 その後、福井県にある高浜原発、愛媛県にある伊方原発と再稼働しましたが、高浜原発は司法の判断によって運転を停止するなど、安全性をめぐる議論はなお続いています。 また今年度からは、電力の小売りが自由化され、さまざまな業界が新規参入するなど、電力を取り巻く環境も大きく様変わりしています。 原発をめぐるこの1年の動きや今後に向けた課題について、科学文化部の岡本賢一郎記者が解説します。
再び動き出した原発
去年8月11日、川内原発1号機は原子炉を起動する操作が行われ、再稼働しました。国内の原発が稼働するのは、福島第一原発の事故を踏まえて作られた新しい規制基準の下では初めてで、事故後、政治判断で一時的に稼働した福井県にある大飯原発が3年前の9月に停止して以来、1年11か月ぶりでした。
こうして“原発ゼロ”の状態は終わり、その後、川内原発2号機、ことしに入って高浜原発3号機と4号機、そして今月12日には伊方原発3号機と再稼働が続きました。
これらの原発では、周辺で想定される最大の地震の揺れの強さ「基準地震動」を引き上げたうえで、設備の耐震強度が見直され、非常用の発電機の増設など重大事故への備えが強化されました。こうした安全対策が、新しい規制基準の審査に適合しているという、原子力規制委員会の判断を受けての再稼働でした。
司法判断が原発を止める
しかし、高浜原発は運転停止に追い込まれました。それは司法判断によるものでした。高浜原発3号機と4号機について、ことし3月、大津地方裁判所が滋賀県内の住民の申し立てを認め、稼働中の原発に対して初めて、運転の停止を命じる仮処分の決定を出したのです。
決定では「住民の生命や財産が脅かされるおそれが高いにもかかわらず、関西電力は安全性の確保について説明を尽くしていない」などと指摘しています。
関西電力は決定を不服として大阪高等裁判所に抗告していますが、決定が覆らないかぎり運転できません。
関西電力は運転停止が長期化する可能性があるとして、今月、原子炉から核燃料を取り出すことにしています。
分かれる司法判断
原発の運転停止を求める申し立ては、原発事故をきっかけに全国で相次ぎ、裁判所の判断は分かれています。
高浜原発3号機と4号機をめぐっては、福井地裁も去年4月に再稼働を認めない仮処分の決定を出しましたが、去年12月には、別の裁判長が関西電力の異議を認めて、この決定を取り消しました。
また川内原発1号機と2号機については、去年、鹿児島地裁が住民の申し立てを退け、ことし4月の決定で福岡高裁宮崎支部も申し立てを認めませんでした。
司法判断が分かれていることについて、科学史が専門の千葉大学の神里達博教授は「福島第一原発の事故がもたらした被害や教訓を重視するのか、それとも各原発の安全対策に限って判断を下すのかで、おのずと結論は変わってくるように、裁判官の問題の捉え方に大きく左右され、司法も迷っているように見える」という見方を示しています。
そのうえで神里教授は「原発の再稼働は、私たちがどのような社会を実現したいかに関わるもので、裁判所や専門家だけに議論を丸投げしていい問題ではなく、今も続く福島第一原発事故の大きな影響を見ても、社会全体でより真剣に議論しなくてはならない問題になっている」と指摘しています。
熊本地震も影響を及ぼす
ことし4月に発生した熊本地震も原発の安全性をめぐる議論に影響を及ぼしました。原子力規制委員会で自然災害を担当し、おととし退任した地震学が専門の島崎邦彦元委員は、熊本地震のデータを踏まえ、一部の原発の地震の想定が過小評価になっているおそれがあるとして、審査などの見直しが必要だと指摘しました。
これに対し、規制委員会は島崎元委員との議論もしたうえで、これまでの審査は十分、安全側に立った評価をしているとして、従来の想定を見直さないことを決めました。
この問題をめぐっては、専門家からより詳しい検討や今の想定の手法が妥当かどうか、規制委員会による検証の必要があるという指摘も出ていますが、田中俊一委員長は、学会など専門家の間で新たな知見が示されないかぎりは、審査で使っている手法を見直さない考えを示しました。
科学的な新しい知見をどのようなプロセスで取り入れるか、重要な課題であることが改めて示されました。
また、先月行われた鹿児島県知事選挙では、「原発を一時停止し安全性を確認すべきだ」と訴えた三反園訓氏が4期目を目指した現職を抑えて当選。
就任後は、「熊本地震を受けて県民は不安に思っている。県民の不安を解消するのがトップの役割だ」と述べ、川内原発を再点検のため一時停止するよう九州電力に対し、申し入れる意向を示しています。
国民の理解は
確かに、国民の理解が得られているかと言うと、そうとは言えない状況です。
NHKが今月行った世論調査で、原発の再稼働について聞いたところ、「賛成」が17%、「反対」が46%、「どちらとも言えない」が30%でした。この傾向はここ数年、あまり変わらず、反対が賛成を大きく上回る状況が続いています。
原発が選別される時代に
一方、電力会社も選択を迫られています。ことし4月から家庭向けの電力小売りの自由化も始まり、競争が激しさを増す中、電力会社にとっては、原発の停止によって火力発電の燃料費が経営を圧迫している状況から、一刻も早く抜け出したいという事情があります。再稼働した伊方原発3号機についても、四国電力の試算では、年に80%ほど稼働した場合、収益が250億円程度改善するとして、早期の再稼働を目指してきました。ただ、原発を再稼働させる場合、電力会社は新しい規制基準に適合させるよう追加の安全対策をとる必要があり、1000億円を超える規模の多額の費用がかかります。
福島第一原発の事故後、安全を重視する世論の高まりを受けて、原発の運転期間を原則40年とする制度も導入されました。
40年を超えて原発を運転しようとする場合、原子炉などの劣化状況を調べる特別点検を行ったうえで、別途、規制委員会の審査を受け、期限までに必要な許認可が得られなければ、延長することはできません。
運転延長の審査に合格しても、追加の工事が終わるまでは再稼働できないため、延長後の稼働期間が、最大認められている20年より短くなる可能性もあります。
実際に延長が認められた高浜原発について、関西電力は再稼働には安全対策の追加工事などを終える必要があり、それに3年以上かかるとしています。
こうしたことから、伊方原発1号機や福井県にある敦賀原発1号機など5原発6基について、各電力会社は運転を延長せずに廃炉にすることを決めました。
これまでに運転期間の延長を申請したり、廃炉を決めたりした原発を除くと、今後10年以内に運転開始から40年を迎える原発は、合わせて9原発14基あり、選別はさらに進むとみられます。
原発の将来像は
今後の原発について、政府は2年前にまとめたエネルギー基本計画の中で、「依存度を可能なかぎり低減する」としています。
そして、経済産業省の有識者会議が去年示した2030年度時点の電源構成の見通しでは、原発の比率を20%から22%としています。原発ごとに出力や稼働率が異なるため、一概には言えないものの、この数字を達成するには30基前後の稼働が必要だということです。
このため有識者会議では「原発依存度を可能なかぎり低減させる」という方針に応えていないとして、一部の委員からは反対意見も出され、引き続き議論になるとみられます。
安全の観点からの規制委員会の審査や経営の観点からの電力会社の判断など、不確実な要素もあり、原発の将来像は見通せない状況が続きそうです。
求められる事故検証と安全の向上
原発の再稼働から1年がたった8月11日は、東日本大震災の月命日でもあります。
事故を起こした福島第一原発に目を向けますと、40年とも言われる長い廃炉の作業が続けられています。
さらに、いまだ人を寄せつけない強い放射線によって原子炉の中の状態は今もほとんどわかっておらず、放射性物質の大量放出がどのように起きたのか詳しくはわかっていません。
にもかかわらず、政府や国などの事故調査委員会は活動を終え、事故の検証の動きは弱まる一方です。
こうした中で、原発の再稼働は今後も続くとみられます。国や電力会社には、事故の十分な検証とそこで見いだされた教訓を生かす取り組みを緩めることなく、安全対策の向上や十分な説明に継続して取り組むことが求められます。
- 科学文化部 岡本 賢一郎 記者