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「黒い雨」裁判 上告せず 政府が決定 被爆者健康手帳を交付へ
NHK 2021年7月26日 18時43分
広島に原爆が投下された直後に放射性物質を含むいわゆる「黒い雨」を浴びて健康被害を受けたと住民などが訴えた裁判で、政府は、上告しないことを決め、原告に被爆者健康手帳を交付することになりました。
広島に原爆が投下された直後に放射性物質を含むいわゆる「黒い雨」を浴びて健康被害を受けたと住民などが訴えた裁判で、2審の広島高等裁判所は、今月14日、原告全員を法律で定める被爆者と認める判決を出しました。
28日の上告期限を前に、菅総理大臣は、26日午後、総理大臣官邸で、田村厚生労働大臣や上川法務大臣と対応を協議しました。
このあと菅総理大臣は記者団に対し「判決について、私自身、熟慮した結果、84名の原告の皆さんについては、被爆者援護法に基づいて、その理念に立ち返り、救済すべきであると考えた。そういう考え方のもと、上告しないこととした」と述べ、上告しないことを明らかにしました。
その上で「原告の皆さんには、直ちに被爆者手帳を交付させていただきたい。同じような事情の方々についても、救済すべくこれから検討をしたい」と述べ、原告に被爆者健康手帳を交付する考えを示しました。また、「多くの方が高齢者で、病気をお持ちの方もいらっしゃるので、速やかに救済させていただくべきだという考え方に至った」と述べました。
このあと菅総理大臣は、総理大臣官邸で、広島市の松井市長、広島県の湯崎知事と面会し、上告しないことを伝え「判決は、政府として問題点はあるが、談話なりで整理したい。田村大臣と上川大臣に対応を指示した。国、県、市が連携して救済に向けて取り組むため、協力をお願いしたい」と述べました。
これに対し松井市長は「ご英断に心の底から感謝を申し上げたい。被爆から76年がたつが、皆さんの思いをいったんは叶えられるもので、 残る課題は、引き続き、国、県、市が一緒になって解決すべく、努力させていただく」と述べました。
湯崎知事は「被爆者の皆さんの長年にわたる痛みや不安、苦しみなどに思いをはせていただいた。同様の状況にある皆様についても救済の検討を急ぐということで、心の底から、ありがとうと、ほっとされているのではないかと思う」と述べました。
広島県 湯崎知事 広島市 松井市長「感謝申し上げたい」
また、広島市の松井市長は菅総理大臣と面会したあと総理大臣官邸で記者団に対し、「英断に心から感謝申し上げたい。なかなか乗り越えられなかった行政判断で、総理の総理決断に感無量だ。一刻も早く一緒になって対策を講じていきたい」と述べました。
原告団長の高野正明さん「国の英断に感謝」
広島県被団協 箕牧智之理事長代行「この上なくうれしい」
判決を受けた政府・与党内の動きは
判決について、政府内からは「『黒い雨』を浴びていなくても空気中の放射性微粒子を吸い込むなどして、内部被ばくによる健康被害を受けた可能性があるという判決は、被爆者の定義を変えるもので、受け入れられない」などとして上告せざるをえないという声が出ていました。
田村厚生労働大臣は、今月20日の記者会見で「判決は非常に重い」とする一方「判決の内容が、ほかのいろいろな事象に影響することになるなら、なかなか容認しづらい」と述べていました。
一方で、広島県選出の与党議員などからは来月6日には原爆の日も控えており、県民の気持ちを考えて、上告すべきでないという声が出ていました。
これに対し、被告の広島県と広島市は「人道的な視点に立って救済方法を考えていくという政治判断が優先されるべきタイミングだ」などとして、田村大臣に、上告せずに裁判を終結することを認めるよう要請していました。
自民 岸田前政調会長「歓迎し評価したい」
立民 泉政調会長「広い意味での最大限の救済を」
共産 小池書記局長「上告見送りは当然 幅広い救済を」
判決の影響の範囲は
援護区域の範囲は、原爆が投下された直後の昭和20年に当時の気象台の職員が行った「黒い雨」に関する調査により、激しい雨が降ったとされる「大雨地域」と判定された地域をもとに国が指定しましたが、この区域の外でも「黒い雨」を浴び、健康被害を訴える人たちの救済を求める声が高まりました。
これを受けて広島市は広島大学の教授などと共同で調査を行い、平成22年には援護区域のおよそ6倍の範囲で「黒い雨」が降ったとする報告書をまとめ、市によりますとこの範囲で当時「黒い雨」を浴びた住民は、去年(R2)8月の時点でおよそ1万3000人いると推定されています。
また、広島市によりますと、援護区域の中にいたため無料で健康診断を受けられるものの、国が指定したがんなどの11種類の病気をいずれも発症していないことなどから、被爆者健康手帳の交付を受けていない人は、ことし3月時点で市内だけで115人いるということです。
2審の判決が確定する見通しとなったことを受けて、こうした人たちも被爆者として救済される可能性があるということです。
日本被団協 「現行の法律は原爆被害の実相とかけ離れたもの」
談話では、上告しない判断を評価した上で、「黒い雨の被害者が長年、被爆者と認められなかったのは、現行の法律が原爆被害の実相とかけ離れたものであることに起因している。原爆被害者は、多数の死没者、熱線、爆風、放射線の被害者、救援や家族捜しのため街に入った人々など多用だが、現行法では、距離、時間など一定の条件を満たす人のみを援護の対象と狭く定めている」と指摘しています。その上で、「被爆者は、『ふたたび被爆者をつくらない』ことを願い、『原爆被害への国家補償』と『核戦争起こすな、核兵器なくせ』を求めてきた。この二つの要求を実現し、核兵器による人類絶滅の危機を救うために、さらに努力することを決意する」としています。
裁判続く長崎の原告団長は
原告団長の岩永千代子さんは、いわゆる「黒い雨」をめぐる裁判で、菅総理大臣が上告しない考えを明らかにしたことを受けて、「原告のこれまでの苦しみ、願いが伝わったと思うと歓喜の気持ちでいっぱいです。広島市や県が上告しないよう国に要望するなど原告の立場に立っていて、それが今回の決定につながったのだと思う」と話していました。その上で自分たちの裁判については、「長崎の被爆体験者も高齢化しているので、裁判で戦っている私たちや埋もれている被爆者の救済にいち早く繋がってほしい」と述べ、国などに対し早期の救済を訴えました。(引用ここまで)