たんぽぽの心の旅のアルバム

旅日記・観劇日記・美術館めぐり・日々の想いなどを綴るブログでしたが、最近の投稿は長引くコロナ騒動からの気づきが中心です。

『ちひろのアンデルセン』より『絵のない絵本』

2015年05月06日 22時45分03秒 | いわさきちひろさん
「アンデルセンの『絵のない絵本』、私は前からこの話が好きだったのですが、先日さしえを描きあげたばかりなので、なお印象がふかいのです。貧しい屋根裏住まいの絵描きの青年に、月が毎晩訪れて語ってくれた物語です。

 ガンジス川に灯をながして愛する人の生死をうらなう少女の話、フランス革命のとき玉座で死んでいった少年の話、パンにバターをたくさんつけてと祈る小さな女の子の話など、一夜から三十三夜までの短い話が集まっています。詩集のようにふとひらいて、一つ二つよむとまた味わいが深いと思います。

 今から何百年も前にかかれたものですが、人の世の真実が書かれていて、それは今の世と全く同じです。アンデルセンは神の信じていた人ですが、神の力ではどうにもならない人の不幸をリアルにえがき出しているところも面白いと思います。大人の世界がわかりかけてきた少年や少女に一度は読んでもらいたい愛と詩の絵本です。

                     ちひろ 1966年」

(いわさきちひろ絵本美術館/編 『ちひろのアンデルセン』講談社、1994年発行より。)


 ちひろさんのたしかなデッサン力に裏打ちされた筆は、因果関係では説明のつかない、人が生きることの哀しさ、切なさ、どうすることもできない別れの場面を物語以上に物語っている一冊だと思います。いろんなことがあってから戻っていくと、若い頃にはわからなかった、ちひろさんが共感し描こうとしたアンデルセンの世界に少しは近づけたような気がします。
 悲しいことや苦しいこととの出会いは、なぜそうなのかではなく、私を大きくしてくれていると思いたいです。プラスになる時が訪れると思いたいです。人生が私に何を問いかけているのか、手探りの日々は続いていきます。本当にこれでいいのか、今は自分でもわからないですが自分を信じてみるしかありません。


絵のない絵本 (若い人の絵本)
アンデルセン
童心社

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