【主張①・12.25】:臨時国会閉幕 問題先送りで大丈夫か 安全保障をもっと議論せよ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【主張①・12.25】:臨時国会閉幕 問題先送りで大丈夫か 安全保障をもっと議論せよ
臨時国会が閉幕した。
石破茂政権は野党に振り回され、30年ぶりの少数与党という厳しい現実を突き付けられたといえる。
石破首相は24日の記者会見で「可能な限り幅広い合意形成を図るように一生懸命努力した。熟議の国会にふさわしいものになった」と語った。
政治改革関連3法が可決、成立した参院本会議=24日午後、国会・参院本会議場(春名中撮影)
だが、重要課題を先送りしたのが臨時国会の最大の特徴だった。「決められない政治」に陥ったとみることができる。これで国政は大丈夫なのか。
来年夏には参院選が控えている。1月召集の通常国会で、野党は対決色を強めるだろう。石破首相と与党にとっていばらの道は続く。
◆いばらの道はなお続く
令和6年度補正予算は、日本維新の会や国民民主党の賛同も得て成立させた。その見返りとして、与党は国民民主に対し、年収103万円を超えると所得税が生じる「103万円の壁」の引き上げを約束した。維新とは教育無償化で実務者協議を始めた。
だが、103万円の壁をめぐっては所得税の非課税枠の引き上げについて、「178万円」を求める国民民主との隔たりは大きく、物別れの危機に陥った。与党はとりあえず「123万円」の水準で令和7年度税制改正大綱をまとめた。
このままでは7年度予算案への国民民主の賛成は得られない。協議は来年へ持ち越すことになった。
法人、たばこ、所得の3税を対象とする防衛力強化のための増税でも、所得税の増税時期決定を先送りした。「手取り増」を訴える国民民主の政党支持率が伸びる中、与党内からも慎重論が強まったことが背景にある。国防という重要分野で財源の確保を決めないでよいのだろうか。
7年度予算案の採決に向け、維新と国民民主を天秤(てんびん)にかけるような形になっているのも感心しない。安定した政権運営へ向かうには、信頼の積み重ねが不可欠だからだ。
先送りした課題は政治とカネの問題でも存在する。本来はこの国会で決着をつけるべきだった。そうでなければ政策の推進に負の影響を与えるからだ。
企業・団体献金の是非の結論は、来年3月に持ち越しとなった。通常国会でも与党を攻撃する材料を残したい野党側の思惑に与党は乗ってしまったようである。
個人献金が定着していない日本で企業・団体献金を禁止すれば、業界団体や宗教団体など大きな組織を背景に持たない人にとって選挙活動は著しく不利になる。一般の国民が国政を目指すことが難しくなり、議会制民主主義が後退することさえ懸念される。野党側は禁止を求めているが、首相と自民は譲るべきではない。透明性を確保すればよい。
◆政治改革も決着できず
使途公開が不要な政策活動費の全廃が決まったのは歓迎したい。ただし、支出先を例外的に非公開にできる「公開方法工夫支出」の創設を自民が取り下げたのはおかしい。
議員外交には公開すると国益が害されることがある。例えば台湾の要人が来日し、日本政府の関係者が面会できない場合、政党や国会議員が果たす役割は大きいのだ。国益を害さないよう工夫をこらすべきだ。
質疑が集中した「政治とカネ」の問題とは対照的に、国家国民を守るための外交安全保障の議論は低調だった。
安保情勢は厳しさを増している。反日的な専制国家の中国、ロシア、北朝鮮に囲まれている日本は冷戦後、最も過酷な環境に置かれている。ウクライナ侵略を続けるロシアは核兵器使用の脅しを強め、北朝鮮との軍事協力を進めている。中国は台湾併吞(へいどん)をにらみ、軍事挑発を重ねている。米国では1月にトランプ前大統領が再登板する。
外交安保の議論に重きを置かないのはバランスを欠く。あるべき国会の姿とはいえない。
これで首相や国会は国民を守ることに責任を持てるのか。
憲法改正も進展はなかった。衆院選の結果、改憲に前向きな勢力が発議に必要な3分の2を下回った。与党は衆院憲法審査会の会長ポストを、改憲にブレーキをかけてきた立憲民主党に譲ってしまった。
しかし、足踏みしていいわけがない。来年こそ与野党は、改憲原案の条文化に着手すべきである。
元稿:産経新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【主張】 2024年12月25日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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