【卓上四季】:危険を意識する
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【卓上四季】:危険を意識する
危険があることを意識し、行動する。富士山火山防災研究センターの吉本充宏センター長が伝える火山から身を守る要諦だ▼当たり前のようなことを強調するのは、それが容易ではないから。戦後最悪の火山災害犠牲者を出した御嶽山(長野、岐阜県)の噴火を例にあげる▼山小屋に逃げた人のほとんどが助かった。犠牲になった人は、写真を撮ったりして逃げ遅れた事例が多かったという。「噴煙から時速300キロもの石が飛んでくることを知っていたら、登山者はすぐに山小屋に逃げ込んだのではないか」―。こうした思いから講演などで情報発信を続けている▼58人が死亡し、5人が行方不明となった惨事からきのうで5年。危険を意識し行動する大切さは、火山防災に限るまい▼痛ましい事件が続く児童虐待では、子どもの「危険」を関係機関が共有し、対処する体制づくりが急がれる。札幌市児童相談所、道警は機構改革し対応を強化する。時に、再び親子で暮らせなくなる懸念から、一時保護をためらうケースもある。だが、まず目の前の子どもの命を救うことを第一に臨んでもらいたい▼北大出身の吉本さんは道内の火山にも詳しい。「駒ケ岳なら火山灰と火砕流、十勝岳は融雪泥流というように、噴火の被害は火山によって違う。共生するためには、火山の性格を知ってほしい」。同じ境遇はない、虐待の現場にも通じる忠告だろう。2019・9・28
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【卓上四季】 2019年09月28日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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