【 週刊誌からみた「ニッポンの後退」】:吉田茂元首相の国葬を当時の「週刊読売」は厳しく批判! 今のマスコミに読ませたい
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【 週刊誌からみた「ニッポンの後退」】:吉田茂元首相の国葬を当時の「週刊読売」は厳しく批判! 今のマスコミに読ませたい
国民に何の相談もなく安倍晋三元首相の「国葬」が9月27日に決まった。全額国費でやるそうだが、岸田文雄首相は、なぜ国葬にするのかを国民に説明しない。
選挙応援中に“暗殺”されたのは気の毒だとは思うが、それを理由に国葬するのはどう考えても無理がある。南日本新聞が実施したアンケートでは、「国葬に反対」「どちらかといえば反対」を合わせた反対が計72.2%になったという。
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長男吉田健一氏から遺骨を受け取る佐藤栄作首相(国葬委員長)=1967(昭和42)年10月31日/(C)共同通信社
安倍政権というのはただ長かったというだけで、実績はほとんど残していない。あれだけ大見えを切った拉致被害者救出は1ミリも前進させることができなかった。アベノミクスというネーミングは受けたが、“子分”の黒田東彦を日銀の総裁に据えてまでやったのは「株式投資」。年金積立金までつぎ込んで株価をつり上げただけだった。
デフレからの脱却もできず、実質賃金は下がり続け、非正規労働者は増え続けた。
「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」と嘯(うそぶ)いて、国会もろくに開かず世界中を飛び回ったが、成果は上がらなかった。第一、安倍の地球儀には中国と韓国は存在しなかった。プーチンに北方領土返還をほのめかされ、カネも心も捧げたが、土壇場で裏切られた。
トランプとはゴルフを何度かやっただけで、いつも帰り際に超高額な戦闘機などを買わされ、総額は6兆~7兆円にもなるといわれている。アメリカによる植民地化をさらに推し進め、集団的自衛権まで容認して、アメリカと一緒に「戦争のできる国」へと日本を変容させてしまった。
実績はないが、疑惑の数なら歴代首相“ナンバーワン”だ。森友、加計、桜を見る会
と挙げればきりがないが、どれひとつとして説明責任を果たすことがなかった。
森友学園疑惑では、「自分と妻が関わっていれば首相も議員も辞める」と発言したため、文書改ざんが行われ、加担したことを苦にした財務省職員が自殺してしまう。「霊感商法」で悪名高い旧統一教会とは、安倍の祖父・岸信介時代から“関係”が続いてきたはずである。
◆唯一のレガシーは「アベノマスク」
だが、忘れてはいけない! 唯一のレガシーがある。税金を大量に浪費して作った“無駄の象徴”「アベノマスク」である。国民は何十年後まで語り継いでいくことだろう。
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今回、官邸前で(C)日刊ゲンダイ
では、1967年10月31日に行われた吉田茂の国葬はどのようだったのか。完全無宗教。競馬も競輪もテレビの娯楽番組も中止。全国でサイレンが鳴り響き、それに合わせて「黙祷」するよう強制された。東大には「するな黙祷、許すな国葬」の立て看。
週刊読売(1967年11月15日・臨時増刊号)はその模様を、「この日の吉田氏の国葬には『悲しみ』や『一億鉄火となって』という言葉のないかわりに、一億国民の総意というものが感じとれなかった」と報じている。
同誌の中で風刺漫画家の近藤日出造は、「吉田政治は、繁栄の土台とともに、明らかに腐敗の土台も築いた。(中略)吉田さんは、白足袋を灰色によごして、のたれ死にしたのである」と厳しく批判している。安倍元首相に飼いならされてしまった今の大マスコミには、絶対言えないセリフである。
先日の朝日川柳に載ったこの句が秀逸である。
「死してなお税金使う野辺送り」 (文中敬称略)
(元木昌彦/「週刊現代」「週刊フライデー」元編集長)
元稿:日刊ゲンダイ DIGITAL 主要ニュース ライフ 【暮らしニュース・話題・連載「週刊誌からみた「ニッポンの後退」」】 2022年07月31日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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