【社説①・08.01】:海外からの津波 甘くみず脅威に備えを
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・08.01】:海外からの津波 甘くみず脅威に備えを
夏休みの日本列島沿岸に、津波が押し寄せた。酷暑の中での避難や対応は適切だったか、点検して生かしたい。
30日朝、ロシア・カムチャツカ半島付近を震源に、推定でマグニチュード(M)8・7の大規模地震があった。
気象庁は、津波の襲来を予測して太平洋側を中心に警報と注意報を発表し、避難を呼びかけた。
津波は、岩手で1・3メートルを観測し、北海道から沖縄まで22都道府県に到達した。全国自治体の「避難指示」対象者は、一時約200万人に上った。きのう夕方までに注意報もすべて解除された。
沿岸部の住民ら多くが高台や避難所へ移り、直接的な被害がほぼなかったのは、14年前の東日本大震災の教訓が一定生かされたといえるだろう。
だが、高台へ向かう車が集中し、立ち往生も起きた。車で移動中に崖下に転落した女性が死亡したほか、転倒事故もあった。平時から複数の避難ルートや手段を検討、確認しておくことが必要だ。
海水浴客ら土地勘のない人たちの避難もスムーズだったとは言い難い。観光客への災害リスクや避難情報の周知、多言語対応の発信は欠かせない。
猛暑下での避難の問題も浮き彫りになった。
避難中に、熱中症とみられる症状で病院に運ばれる人が相次いだ。日陰のない高台やエアコンのない避難所といった環境は、高齢者や子どもをはじめ、体調異変にもつながる。
京都府と滋賀県で、災害時避難所になる小中体育館のうち冷暖房設備は計819校の2%しかない。本年度末に向け、15%に増やしている段階である。
災害は季節を問わない。不安なく過ごせる環境づくりが急務だ。
震源地が遠い「遠地津波」に対する注意喚起の難しさも、改めて直視しておきたい。
波が沿岸部や海底で反射し、さまざまな場所に繰り返し押し寄せるのが特徴で、最大波は遅れてやってくる。1960年の南米チリ地震では発生翌日に大津波が日本を襲い、140人近い犠牲者を出した。歴史を忘れてはならない。
今後、カムチャツカ半島周辺でM7級の余震の可能性もある。
南海トラフ地震「臨時情報」発表からまもなく1年。京滋も被災対象エリアだ。今回も散見されたSNS(交流サイト)上の根拠のない情報に惑わされず、冷静に判断できるよう準備を心がけたい。
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