【社説①・04.05】:韓国大統領罷免 民主主義を守る判断だ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・04.05】:韓国大統領罷免 民主主義を守る判断だ
韓国の憲法裁判所は、昨年12月に「非常戒厳」を宣言した尹錫悦(ユンソンニョル)大統領を罷免する決定を全員一致で言い渡した。野党の国会戦術を理由に、軍隊を国会などに送った非常戒厳を「民主主義を否定し、憲法を無視した」と判断した。妥当な決定と受け止める。
尹氏は失職し、60日以内に大統領選が行われる。非常戒厳の宣言後、保守、進歩(革新)両陣営は激しく対立し、社会の分断が深まった。両陣営とも市民生活を第一に冷静に議論し、新大統領を円滑に選出してほしい。
韓国憲法77条は非常戒厳宣言の条件を「戦時・事変またはこれに準ずる国家非常事態」と定めているが、憲法裁は当時の状況は条件を満たさないと判断した。
最大野党「共に民主党」など国会で多数を占める野党が、閣僚らの弾劾訴追を繰り返す手法には批判もあったが、三権分立の原則に反して力で抑え込むことが許されないのは当然だ。非常戒厳は社会や経済、外交に混乱をもたらし、国民の信頼を裏切った。尹氏は異なる意見に耳を傾け、時に妥協することも必要ではなかったか。
尹氏は内乱を首謀した罪でも起訴されており、近く初公判が行われる。民主主義の破壊行為が繰り返されないためにも、非常戒厳宣言に至った動機や経緯を解明することが不可欠だ。
6月上旬までに行われる大統領選に向けて懸念されるのは、分断や対立がさらに深まることだ。
非常戒厳以降、各地で保守、進歩双方が大規模デモを開催。影響力のあるユーチューバーや宗教者に加え、政治家も参加して気勢を上げた。大統領権限を代行する韓悳洙(ハンドクス)首相が政治家に「違法なデモや暴力をあおる発言を慎んでほしい」と訴えるほどの状況だ。
韓国を取り巻く国際情勢は厳しさを増すばかりだ。
英誌の調査部門は昨年末からの政治情勢を踏まえ、韓国の民主主義指数を大きく下方修正。トランプ米大統領は、自由貿易協定(FTA)を結ぶ韓国にも25%の相互関税をかけると発表した。いずれも輸出主導型の韓国経済には大きな打撃となるのは必至だ。
国際秩序が流動化する中、韓国国内社会や経済の停滞につながる分断を放置すべきではない。新しい指導者選びを和解の機会と位置付け、暮らしを最優先にした民主的な論戦を期待したい。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年04月05日 07:35:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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