《社説②・04.05》:韓国の尹大統領を罷免 混乱に終止符打つ契機に
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・04.05》:韓国の尹大統領を罷免 混乱に終止符打つ契機に
国民の分断を癒やし、政治の混乱に一日も早く終止符を打つことが重要だ。
昨年12月に「非常戒厳」を出した韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領の罷免を、同国の憲法裁判所が決めた。国会から弾劾訴追されていた。
憲法裁は、戒厳令の発動要件である「戦時やそれに準じる国家非常事態」には当たらないと断じ、正当な権限行使だったという尹氏の言い分を退けた。

尹氏は、国会で圧倒的多数の議席を持つ野党が閣僚らの弾劾訴追を乱発して国政をまひさせ、「亡国の危機的状況」に陥れたと主張していた。だが、政治的な行き詰まりを打開するための強権発動は許されない。罷免は、当然の判断である。
懸念されるのは、尹氏糾弾派と擁護派の対立によって社会の分断が深まったことだ。尹氏に近い与党議員らは「罷免ありきの拙速な審理だ」と憲法裁を批判し、司法への不信をあおってきた。
この日も、双方が憲法裁周辺などで大規模な集会を開いてにらみあった。
尹氏はこの間、SNS(交流サイト)上の陰謀論に乗る形で、野党が圧勝した昨春の総選挙で不正があった可能性があると言い募ってきた。民主主義の基盤である選挙を巡って、権力者が疑惑をたき付けるのは言語道断である。
失職した尹氏に代わる大統領を選ぶ選挙は60日以内に実施される。誰が次期大統領になっても、今回の混乱を教訓に政治の安定を図ることが最優先課題となる。
韓国を取り巻く国際情勢は厳しさを増している。
自国第一を掲げるトランプ米政権は、高関税政策を強行して国際経済秩序を揺るがす。安全保障面でも同盟国との関係を見直そうとしている。北朝鮮とロシアは軍事面での協力関係を強めており、中国の動向と合わせて東アジアのリスク要因となっている。
世界では極端な主張を展開する政治勢力が影響力を増し、民主主義の後退が懸念されている。
日本と韓国は民主主義という価値を共有し、安全保障や通商などで利害を共にする。協力関係をさらに強めることが必要だ。そのためにも、韓国政治が早期に安定を取り戻すことが望まれる。
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