【中山知子の取材備忘録・08.28】:ミングを間違い、立憲民主党は「禁断の先祖返り」 どっちも締まらない人事
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【中山知子の取材備忘録・08.28】:ミングを間違い、立憲民主党は「禁断の先祖返り」 どっちも締まらない人事
夏の終わりから秋にかけて、永田町にとっては人事の季節となることが多い。この15年ほど、9月に自民党総裁選が行われ、立憲民主党の前身、民主党の代表選もこの時期に行われることが多く、今の時期は永田町がワサワサし始める季節という認識だ。今年も当初は、9月上旬に自民党役員人事と内閣改造が行われるという見通しだったが、岸田文雄首相がさまざまな政治状況を見据えて8月10日に突然前倒しして実施。しかし、安倍晋三元首相の銃撃死であぶり出された旧統一教会と自民党議員との深いかかわりが新旧閣僚や党役員、そのほかの議員にも相次ぎ、まったく収拾がつかない状況に陥っている。
自民党が旧統一教会や関連団体との関係について所属議員に配布したアンケート用紙(関係者提供)
続々と関係が明らかになっても、これまでは議員個人個人の「自己申告」に丸投げし、党としての対応を行わない開き直りのような対応に終始していた自民党だが、各議員に調査を求めることに方針転換。8月26日、茂木敏充幹事長名で「旧統一教会及び関連団体との関係について」と題した要請文とアンケート用紙を配布した。「会合への祝電・メッセージ等の送付」「広報雑誌へのインタビューや対談記事などの掲載」「旧統一教会関連団体への出席」など8項目で、有無を問う内容。9月2日に党職員が回収に回るそうだが、一部では、後から後から団体側との新たな関係が明らかになる現状で、「この調査に意味があるのか」と懐疑的な声もあると聞く。
旧統一教会の問題がきっかけになった側面が大きい、内閣や党の支持率急落を受けて、9月に予定される賛否両論渦巻く安倍氏の国葬を控え、これまでの開き直り感から「きちんと調査してます感」の演出にかじを切ったのはミエミエだ。団体側との関係が指摘される議員の数が多すぎることもあり、ある議員は「人事と調査のタイミングが逆」と指摘。岸田首相の前倒し人事失敗説は固定化している。
一方、かろうじて野党第1党となっている立憲民主党も、さきの参院選敗北を受けた党役員人事の見直しが行われたが、よく言えばベテランの有効活用、悪く言えば「先祖返り」のような顔ぶれがそろった。
というのも、立民の前身の民主党、民進党では一部の同じ幹部による主要ポストのたらい回し、「メリーゴーラウンド」と揶揄(やゆ)されるような人事が多く見られ、今回登用された顔ぶれにも「かつての党幹部」が登場したからだ。
立民の創始者である枝野幸男前代表が昨年の衆院選に敗北し、ドラスチックな党刷新の必要性に追い込まれた。現在の泉健太代表体制では、これまで主要ポストをほとんど経験していないメンバーを幹部に取り込み、フレッシュさで人心一新をはかったが、「経験不足」の指摘にさらされ続け、参院選でも国民の支持は広がらなかった。現実を前に、再び「禁断」(立民関係者)の先祖返りに活路を見いださざるを得ない皮肉な状況になった。
今回、幹事長に就任した岡田克也氏は民主党以降4度目の幹事長職。「握りの安住」といわれることもあった巧妙な駆け引き術で知られた安住淳国対委員長、「ミスター年金」と呼ばれた長妻昭政調会長も、見知ったベテラン組だ。党の関係者は昨年末、「今の泉体制で党の立て直しができないなら厳しい」と危機感を示していたが、党勢のじり貧ぶりがベテランにすがらざるを得ない形をつくった。
新幹事長の岡田氏には、党代表の経験もある。自民党では、第2次安倍政権で総裁経験者の谷垣禎一氏が幹事長に起用されたケースはあるが、今回のように代表経験者が4度目の幹事長登板となっては、単に「人材難」と言わざるを得ない。ベテランは経験も深く、さまざまな難局でも立ち回る術を身につけているため、どこかふんわり系だったこれまでの立民執行部と雰囲気は変わるかもしれない。一方で、また「同じ顔」批判を浴びるリスクは必至。「泉代表はお飾り、現実的な党運営はベテランたちの指導体制になるだろう」という党内のささやきにも、なんとなくうなずいてしまう。
しかも岡田、安住両氏、新選対委員長の大串博志氏には、党の調査で旧統一教会と過去に接点があったことが分かっている。それでも、泉代表は起用に踏み切らざるを得なかったことになる。
人事をやっても旧統一教会と議員の関係発覚に終わりが見えない自民党と、禁断の「先祖返り」に手を出した立憲民主党。どっちにしても、締まらないのは同じだ。【中山知子】
◆中山知子(なかやま・ともこ) 日本新党が結成され、自民党政権→非自民の細川連立政権へ最初の政権交代が起きたころから、永田町を中心に取材を始める。1人で各党や政治家を回り「ひとり政治部」とも。現在、日刊スポーツNEWSデジタル編集部デスク。福岡県出身。青学大卒。
元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・コラム・「中山知子の取材備忘録」】 2022年08月28日 11:05:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。