路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

 路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

【政界地獄耳・08.26】:二階俊博いつもの「昭和手法」

2022-09-02 07:50:10 | 【社説・解説・論説・コラム・連載】

【政界地獄耳・08.26】:二階俊博いつもの「昭和手法」

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政界地獄耳・08.26】:二階俊博いつもの「昭和手法」 

 ★垂簾聴政(すいれんちょうせい)とは皇帝が幼い場合、皇后・皇太后のような女性が代わって摂政政治を行うこと。中国や李氏朝鮮時代には実際にあったようだが、女性ばかりではなく男性が心もとない権力者を操る時にも使われる。24日、自民党元幹事長・二階俊博が講演し、旧統一教会との関係について「我々政治家は選ばれる方だが、応援してくれる人をこっちが選択する権利はほとんどない。『応援してやろう』と言われたら『よろしくお願いします』というのは合言葉だ」とした。

 ★また「『よく吟味して対応すべきだ』と言われればそれまでだが、そんなことが瞬時に分かるわけがない。多くの人とお付き合いする中には、いろいろな人が交じっている。検査している暇はないので、(問題が)起きた時に直していく」。そして旧統一教会問題などでは「自民党びくともしない」と言い切った。元首相・安倍晋三の国葬問題についても「みんなでやろうということだから、これにケチがつくわけがない」「国葬文句をつける必要はない」として、「当たり前のことで、やらなければばかだ」とした。

 ★自民党ベテラン議員が言う。「いつもの二階節だ。こんな昭和の政治手法も今では誰もやらないから注目されるが、弱り目の首相・岸田文雄に助け舟を出して懐に入ろうという手だ。第2次安倍内閣で総裁選の時期でもないころから『安倍しかいない』と党内流れを作ったあれだよ」。二階は幹事長として党総裁3選の党則改正をまとめた後の19年9月に「いまの展望では安倍さんのあとは安倍さん」と発言している。また世論調査の多くで反対多数を占める国葬についても「反対する過半数国民を『ばか』とまで言っても安倍派保守派は喜ぶ。狙いはそこにあるはず」とベテラン議員は言う。すでに遅しで、世論は「ばかはどっちだ」と思うだろう。(K)※敬称略

 政界地獄耳

 政治の世界では日々どんなことが起きているのでしょう。表面だけではわからない政界の裏の裏まで情報を集めて、問題点に切り込む文字通り「地獄耳」のコラム。けして一般紙では読むことができません。きょうも話題騒然です。(文中は敬称略)

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【コラム・政界地獄耳】  2022年08月26日  07:12:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【日本外交と政治の正体・07.22】:安倍元首相の「国葬」は行うべきではない 国民の意志を軽視する岸田首相の選択

2022-09-02 06:29:10 | 【訃報・告別式・通夜・お別れの会・病死・事故死・災害死・被害による死他】

【日本外交と政治の正体・07.22】:安倍元首相の「国葬」は行うべきではない 国民の意志を軽視する岸田首相の選択

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【日本外交と政治の正体・07.22】:安倍元首相の「国葬」は行うべきではない 国民の意志を軽視する岸田首相の選択

 岸田首相が安倍元首相の葬儀について「本年秋国葬として行う」と述べた。松野官房長官は会見で、国葬とするにあたっての明確な基準を問われると、①安倍氏が憲政史上最長の首相であること②選挙遊説中に銃撃を受けて亡くなったこと③国内外から幅広い哀悼・追悼の意が寄せられたこと--などを指摘した。

<picture>安倍晋三元首相の通夜で献花する一般の弔問客(C)日刊ゲンダイ</picture>
 
安倍晋三元首相の通夜で献花する一般の弔問客(C)日刊ゲンダイ

 政府内では当初、「国葬」の形式にするのは難しいとの見方があったといわれている。

 戦前の国葬令は1947年に失効した。67年に吉田茂元首相の国葬を閣議決定で行ったが、80年に死去した大平正芳元首相以降は、政府と自民党が共催する「内閣・自民党合同葬」が主流となった。

 任務遂行中に亡くなったことから言えば、大平氏は現役の時の選挙期間中に容体を悪化して亡くなっている。重みは現職の死亡の方が重い。

 今回の安倍氏の銃撃事件で、殺人容疑で送検された山上容疑者の殺害理由は、「旧統一教会への恨み」であり、政治的動機ではないとされている。従って選挙中に殺害されたものの、政治目的のテロで殺害されたわけではない。安倍首相の民主主義や自由主義への姿勢が理由だったのではない。

 こうしてみてくると、「国葬」にしなければならない理由は、なかなか見つからない。

 読売新聞は「国葬、当初は“国民葬”軸に検討…首相が慎重論退ける」の見出しで報じたが、その中に、「国葬の決定には、自民の国会議員の約4分の1にあたる93人が所属する安倍派への配慮もある」との記述があった。時事通信も「異例の対応で、安倍氏を支えた保守層への配慮を示す狙いがある」と報じている。

 安倍氏が銃殺されて以降、大手メディアでは、コメントは①哀悼の意を表すること②称賛は惜しまないこと③批判はしないこと--を方針としてきた。従って、安倍氏への批判はほとんどなく、批判は違和感を持って迎えられる。

 しかし、少し前に時間をずらしてみよう。安倍氏が退陣表明直前の内閣支持率は、NHKの調査によると、「支持する」が34%で、「支持しない」が47%であった。つまり、仮に銃殺がなかったとすれば、国民は安倍氏を「評価する」より、「評価しない」が多かったのである。

 岸田首相が党内運営を最重視し、国民の意思を軽視する時、思わぬ批判増に直面する可能性がある。

孫崎享
著者のコラム一覧
 ■孫崎享 外交評論家

 1943年、旧満州生まれ。東大法学部在学中に外務公務員上級職甲種試験(外交官採用試験)に合格。66年外務省入省。英国や米国、ソ連、イラク勤務などを経て、国際情報局長、駐イラン大使、防衛大教授を歴任。93年、「日本外交 現場からの証言――握手と微笑とイエスでいいか」で山本七平賞を受賞。「日米同盟の正体」「戦後史の正体」「小説外務省―尖閣問題の正体」など著書多数。

 元稿:日刊ゲンダイ 主要ニュース 政治・社会 【政治ニュース・連載「日本外交と政治の正体」】  2022年07月22日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【岸田政権】:それでも強行するのか「国葬反対」全国規模で凄まじいうねり

2022-09-02 06:24:50 | 【訃報・告別式・通夜・お別れの会・病死・事故死・災害死・被害による死他】

【岸田政権】:それでも強行するのか「国葬反対」全国規模で凄まじいうねり

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【岸田政権】:それでも強行するのか「国葬反対」全国規模で凄まじいうねり 

 NHKの生中継を見ていた国民の多くは、一体何のための首相会見だったのか、さっぱり分からなかったのではないか。

 新型コロナウイルスの感染療養期間を終え、8月31日から対面での職務に復帰した岸田首相。午前11時から首相官邸で開いた会見で、岸田は「政治に対する国民の信頼が揺らいでいると深刻に受け止めている。私が先頭に立ち、政治への信頼回復に取り組まなくてはならない」などと強調。


 旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)と自民党議員の関係について、「自民党総裁として率直におわび申し上げる」として陳謝するとともに、すべての党所属国会議員と教団との関係について調査し、その結果を党として取りまとめ、公表するよう茂木幹事長に指示したことを明らかにした。

 さらに岸田は、9月27日に予定されている安倍元首相の国葬について言及。閣議決定で国葬を決めた理由について、安倍の首相在任期間が憲政史上最長の8年8カ月に及んだことや、東日本大震災からの復興──といった従前の説明をあらためて繰り返し、「国民に弔意を強制するものではないが、さまざまなご意見、説明が不十分とのご批判をいただいている」「国葬を判断した首相として、批判、意見を真摯に受け止め、正面からお答えする責任がある」とし、さらに「閉会中審査の場に私自身が出席し、テレビ(中継)入りで質疑にお答えする機会をいただきたい」「丁寧な説明に全力を尽くす」と訴えた。

 「俺が国会に出ていくから文句言うな」と言わんばかりのドヤ顔会見だったが、記者から「(国葬を)見直す考えは」「説明と(閣議決定の)順序が逆ではないか」などと質問されると、途端にしどろもどろになり、「説明が不十分とのご批判をいただいている」などと意味不明な答弁に終始し、てんで答えになっていなかった。

 ◆説明が「不十分」なのではなく「支離滅裂」

 大体、「批判、意見を真摯に受け止め丁寧に説明」というのであれば、まずは世論調査で国民の多くが反対している安倍の国葬そのものをいったん白紙に戻すべきだろう。

 そして閉会中審査ではなく、野党の求めに応じて一刻も早く臨時国会を開き、あらためて国葬自体について与野党間で協議を重ね、今後のことも考えて法的根拠をしっかり固めるのが筋だ。

 そうすれば国葬の費用についても、「できるだけ早く示すよう努力する」なんて曖昧な答弁にならないはず。

 とにかく、何が何でも国葬をやることだけ勝手に決めて、終わってみなければカネがいくらかかるか分からないという「どんぶり勘定」では財政民主主義もあったものではない。

 そもそも、岸田は何やら勘違いしているが、国葬に反対している国民は「説明が不十分」と考えているのではない。説明そのものが支離滅裂のために「納得していない」のだ。それなのに、岸田は「閉会中審査で説明すればOK」かのような安易な姿勢だからますます、許せない。

 明大教授の井田正道氏(計量政治学)がこう言う。

 「岸田首相は党内の保守派に配慮して国葬を即断し、世論も支持してくれると思っていたがそうならなかった。今さら引くに引けず、白紙に戻すことも難しい上、論理的に説明するのも難しいと言わざるを得ません」

 ◆政権維持と延命のために国葬を決めた岸田

 国会から逃げ回った挙げ句、コロナ罹患という今や国民も呆れ顔の首相が記者会見で国葬への理解を求めたところで邪な動機は見透かされている。

 旧統一教会と自民党国会議員のズブズブな関係が明らかになり、内閣改造でゴマカシを画策したものの、その後も次々と新たな接点が露呈。政権支持率はどんどん下落しているため、いよいよ、ここで「何かやっているふり」をしなければと思い立ったのだろう。

 そこで「国葬について閉会中審査で説明する」「旧統一教会との関係を断ちます」と訴えたのだろうが、しょせんは思い付きだからつじつまが合わないことばかり。会見でも質問が出ていたが、岸田が本気で自民党と旧統一教会の関係を見直すのであれば、国政選挙で教会票を差配していたとされる安倍の関わりを調査しなければ何も始まらないだろう。

 安倍はいつから、どのように教会との関係を深めてきたのか。選挙の際の教会窓口は誰で、どう動いていたのか。関係を断つのであれば知るべきことは山ほどある。それなのに岸田は、安倍と教会の関係について、「十分な把握は限界がある」と知らんぷりだ。

 首相として、自民党総裁として、会見で旧統一教会は関係を断つべき問題ある団体──と認めながら、その団体と最も近しい関係にあった安倍の国葬を強行するという矛盾。誰がどう考えてもワケが分からないだろう。

 ◆多額の税金をつぎ込む「なんちゃって国葬」

 現時点で約2.5億円もの巨費を投じて国葬することを決めながら、「国民に弔意を強制するものではない」という説明もむちゃくちゃだ。

 岸田政権はすでに各省庁に弔旗掲揚や黙祷を求める閣議了解を見送ったが、それならなぜ、多額の税金をつぎ込む必要があるのか。まるで「なんちゃって国葬」だ。ここまでデタラメだと「つじつま合わせ」どころの話ではない。全国各地で国葬に対して違憲訴訟や監査請求が相次いでいるのも当然ではないか。

 「安倍政治を美化するな」「反対世論の声を聞け」「国葬絶対反対」……。31日夕方、国会正門前で行われた市民団体主催の国葬反対デモ。身勝手な政治の私物化と民主主義の冒涜に対して参加者は怒りのシュプレヒコールを上げていたが、今やこうした国葬反対の集会やデモは全国規模で広がり、凄まじいうねりとなっている。

 マトモな感覚を持った政治家であれば、さすがに国葬の強行は思いとどまるに違いない。だが、そんな国民感情が少しも分からず、理解できない、しようとさえしないのが岸田なのだ。

 国葬の実施と予算支出の差し止めを求める訴訟を東京地裁に起こした市民団体「岸田政権による安倍元首相の国葬強行を許さない実行委員会」の藤田高景代表がこう言う。

 「岸田首相が独断専行で国葬を決めた目的は政権維持と延命のためであり、法的にも政治的にもまったく間違っています。憲法の精神を踏みにじり、何ら法的根拠もない。国民をあまりにもバカにしていますよ。私たちの活動に賛同する国民も増えていて、裁判の原告への参加を希望する手紙が北海道などから続々と届いています。1日にも第2次提訴に踏み切る予定です」

 岸田政権にとって、これからは「黄金の3年間」ではなく、「地獄の3年間」。ご臨終になる日も近い。

 元稿:日刊ゲンダイ DIGITAL 主要ニュース 政治・社会 【政治ニュース】  2022年09月01日  17:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【新型コロナ】:岸田首相は会見で一言も触れず 8月の「コロナ死」7000人超で過去最悪

2022-09-02 06:24:30 | 【感染症(1類~5類)・新型コロナ・エボラ・食中毒・鳥インフル・豚コレラ】

【新型コロナ】:岸田首相は会見で一言も触れず 8月の「コロナ死」7000人超で過去最悪

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【新型コロナ】:岸田首相は会見で一言も触れず 8月の「コロナ死」7000人超で過去最悪

 8月は“最悪の月”になってしまった──。31日の新型コロナウイルスによる死者は過去2番目に多い338人が確認された。8月の累計死者数は7328人となり、1カ月で7000人を超えた。

<picture>異例の事態にもかかわらず…(C)日刊ゲンダイ</picture>

  異例の事態にもかかわらず…(C)日刊ゲンダイ

 単月で7000人超の死者が出るのは異例の事態だ。過去の感染拡大期は、第3波(従来株)が2261人(2021年1月)、第4波(アルファ株)が2817人(同年5月)、第5波(デルタ株)が1584人(同年8月)、第6波(オミクロン株BA.1、2)が4855人(22年2月)だった。

 足元は、新規感染者数に減少傾向が見られつつあるが、死者数はすぐには減っていかない。これから3週間程度は死者数の高止まりが続く可能性がある。

 岸田首相は8月31日、記者会見を開いた。コロナについては、オミクロン株対応ワクチンの接種前倒しや水際対策の緩和などについて語ったが、過去最多のコロナ死については、一言も触れなかった。

 元稿:日刊ゲンダイ DIGITAL 主要ニュース ライフ 【暮らしニュース・話題・医療・新型コロナウイルスの感染状況】  2022年09月01日  14:05:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【経済】:記録的な「値上げの秋」食品は年間2万品突破、収束見えず

2022-09-02 06:24:20 | 【物価の高騰、原油など資源価格の高騰が幅広い品目の値上げ、消費者物価指数】

【経済】:記録的な「値上げの秋」食品は年間2万品突破、収束見えず

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【経済】:記録的な「値上げの秋」食品は年間2万品突破、収束見えず

 食品の値上げが年内の累計で2万品目を突破した。主要食品メーカーの値上げ動向をまとめた帝国データバンクの集計で判明。

 9~11月の3カ月間に予定されている値上げは計1万品目に迫る勢いで、記録的な「値上げの秋」になる見通しだ。

<picture>何もかもが値上げで家計はひっ迫…(C)共同通信社</picture>

  何もかもが値上げで家計はひっ迫…(C)共同通信社

 9月の値上げは2424品目。1日以降、雪印メグミルクの「ネオソフト」(300グラム)は約43円上がり389円程度になる。はごろもフーズの「シーチキンLフレーク」(70グラム)は11円アップの216円。

 菓子類の値上げも多い。カルビーの「ポテトチップス」は、うすしお味(60グラム)が約15円高い155円前後に、江崎グリコの「ポッキーチョコレート」は9円高い171円になる。

 原材料価格の高騰は収束しておらず、値上げは来年も続く可能性がある。

 元稿:日刊ゲンダイ DIGITAL 主要ニュース ライフ 【暮らしニュース・話題・食料品の記録的な値上げ】  2022年09月01日  13:40:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【新型コロナ】:ワクチン4回目接種キャンセル急増の背景…予約していた人々に生じた不安

2022-09-02 06:24:10 | 【感染症(1類~5類)・新型コロナ・エボラ・食中毒・鳥インフル・豚コレラ】

【新型コロナ】:ワクチン4回目接種キャンセル急増の背景…予約していた人々に生じた不安

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【新型コロナ】:ワクチン4回目接種キャンセル急増の背景…予約していた人々に生じた不安

 8月21日、岸田文雄首相がPCR検査の結果、新型コロナウイルスに感染していることが判明した。首相は8月12日に4回目のワクチン接種を受けており、そこから9日目のことだった。


4回目の接種を受けた岸田首相も感染(代表撮影)

 症状は軽症で、首相公邸で自宅療養しながらテレワークで職務を続ける傍ら「感染防止対策、3回、4回目のワクチン接種に取り組むよう」国民に呼びかけている。

 ■新ワクチン接種の条件が影響か

 しかし、いま現場のクリニックでは4回目接種の予約キャンセルが急増しているという。首相の感染が影響したわけではあるまいが(ネット上では首相の感染で一部ワクチン効果を疑問視する声もあるが)、接種予約キャンセルの理由を追った。

 千葉県君津市の君津寛衆堂医院の金光敏和院長が言う。

 「10日ほど前から(8月15日ごろ)1日5~6件のペースで4回目ワクチンの予約キャンセルが増えてきています。岸田首相が感染してワクチンの効果がないという理由ではなく、原因は10月半ばからオミクロン株対応の新しいワクチンの接種が始まることです。いま4回目を打てば、接種条件で10月に新ワクチンは打てませんからね」

 キャンセルの理由は、厚生労働省の専門部会が、オミクロン株(BA.1)に効果があるとされる新ワクチンの接種を10月から開始することで了承したことだ。対象は2回接種を終えた全住民を想定している。使用するワクチンはオミクロン株と従来型の成分を含む2価ワクチン。

 ここでネックになっているのが接種条件だ。4回目の接種条件は、3回目のワクチン接種から5カ月後が対象になっている。しかし、10月に接種が開始される新ワクチンの接種条件について政府はいまだに発表がない。

 つまり、いま4回目のワクチンを接種すれば、今後発表される接種条件により10月の新ワクチンを接種できなくなる不安があるということだ。

 ■専門家は「既存ワクチンを打つのが賢明」

 ワクチン接種のキャンセルが広がることについて、医療ガバナンス研究所の上昌広理事長がこう述べる。

 「キャンセルは合理的だと思います。ただ、夏のピークは終わっていますし、2価ワクチンは急には大量に生産できません。この秋から冬に国内に入るのはごくわずかになるはずです。しかし、厚労省は承認しながら『(新ワクチンが)足りない』とは言えない。そのため接種条件は前回から5カ月後といった厳しい縛りを付けるはずです」

 そしてこう付け加える。

 「確保できなかった場合を想定し、既存のワクチンでも接種した方がいいと、政府の専門家が言うべきです」

 新ワクチンはファイザー製とモデルナ製の2種類だが、2価ワクチンは従来のワクチンに比べウイルスの働きを抑える中和抗体の量は増える。浜松医療センター感染症管理特別顧問の矢野邦夫氏が指摘する。

 「モデルナ製でBA.1に対する中和抗体量は従来のワクチンに比べ1.75倍に増えています。しかし、臨床効果がそれだけ改善するかどうかはまだ十分わかっていない。重症化の予防のためには、新ワクチンを待つのではなく既存ワクチンを打つことが賢明でしょう」

 接種条件待ちのキャンセルから感染を広げてはなるまい。(ジャーナリスト・木野活明)

 元稿:日刊ゲンダイ DIGITAL 主要ニュース ライフ 【暮らしニュース・話題・医療・新型コロナウイルスの感染状況、ワクチン接種】  2022年09月01日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【検証 令和の新興宗教】:⑬SNSで人々をあおり全国で講演活動、信奉者を集める「陰謀論者」たち

2022-09-02 06:18:10 | 【新宗教=新興宗教と呼ばれる教団は多岐にわたり、時代的には19世紀に創始さ...

【検証 令和の新興宗教】:⑬SNSで人々をあおり全国で講演活動、信奉者を集める「陰謀論者」たち

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【検証 令和の新興宗教】:⑬SNSで人々をあおり全国で講演活動、信奉者を集める「陰謀論者」たち

 「宗教」にはさまざまな形がある。宗教法人もあれば任意団体もある。会社として占いやスピリチュアルビジネスを行うケースも増えてきた。特に近年ややこしいのがSNSなどで信奉者を集める陰謀論者たちだ。信奉者は陰謀論者の動画などを視聴し、ネットでセミナーに参加する。宗教団体のように組織の命令で活動するわけではない。

 筆者が注目しているのがスピリチュアルな著書のほか、翻訳本などが多数あるA氏だ。ブログに「死後の世界」「ヒーリング」「宇宙人」「UFO」などさまざまなテーマの記事を書き、全国で講演会やセミナーを開催して信奉者を集めている。スピリチュアルの分野では有名な人物だ。最近、銀座で開催された「お茶会」は2時間半で参加費1万2000円(定員12人)。テーマは「銀河連合 世界情勢」だった。

 ■「ウクライナは人身売買、麻薬の密輸をしてきた」

 A氏は政治や経済などが闇の勢力に支配されているという陰謀論をしばしば口にする。たとえばロシアによるウクライナ侵攻が開始された直後のブログはこんな内容だ。

<picture>「トランプ前米大統領の代わりにロシアのプーチン大統領がウクライナを攻撃している」と主張するが…(C)ロイター</picture>

 「トランプ前米大統領の代わりにロシアのプーチン大統領がウクライナを攻撃している」と主張するが…(C)ロイター

 〈ウクライナはdeepステートが自分たちのために作ったような国です。人身売買、武器、麻薬の密輸、資金洗浄など好き勝手をしてきました〉

 「ディープステート」(影の政府、DS)はトランプ前大統領を支持する陰謀論集団「Qアノン」が口にしてきた言葉として有名だ。彼らは「DSの一員であるアメリカの政治家やセレブは幼児性愛者であり、密かに幼児の人身売買をしている」とも主張している。

 A氏のブログの内容はこれと似ている。

 〈ウクライナDSはトランプ大統領が攻撃するわけにはいきませんでしたので、プーチンがその役を担っているのです。攻撃と言ってもDSの基地を爆破しているだけです。世界中にばら撒く予定だった生物兵器の研究所とかです。そして、プーチンはそこの人々を解放しているのです。すべて計画通り。ウクライナの下はすごいトンネルがあります。子供たちや人身売買の震源地です。最終戦争です〉

 A氏にとってプーチンはトランプと同様にDSと戦うヒーローなのだ。

 〈傍観するのではなく、全ての人が立ち上がるべきです。さあ、光の戦士の皆様よろしくお願いします〉

 陰謀論メッセージを発信するだけでなく、〈立ち上がるべき〉と行動を起こすようあおる点もQアノンと共通だ。実際、Qアノンは昨年1月に連邦議会襲撃事件を引き起こした。日本ではコロナワクチンをDSの陰謀ととらえる「神真都Q」が接種会場に押しかけて接種を妨害し、逮捕者を出した。

 A氏は今月半ばにFBIがトランプの私邸を捜索したことにも触れている。

 〈これはFBIという闇組織が誰にでも、気にいらなければ、自由に家宅捜査できることを示しています〉

 ■「ワクチンは毒物を撒き散らす」と主張

 岸田首相のコロナ感染についてはこうだ。

〈岸田首相が昨日ついにコロナ陽性になられましたね。(略)ワクチンは効果がないし、それを接種した人が具合悪くなっています。さらに、周りの人に色々な毒物(スパイクタンパクなど)を撒き散らすので、迷惑なので、ワクチンはすぐにやめてください!!!! 毒ワクチンを人々に勧めておいて、ご自身が感染するとはなんとも皮肉です〉

 陰謀論の歴史は長い。しかし近年は単に陰謀論を信じているだけではなくなってきている。陰謀に対抗して行動を起こすよう人々をあおるリーダーと、それに乗ってしまう信奉者が世界中に出現。世の中をゴチャゴチャにしている。(一部敬称略=つづく)

 ※この記事の関連【動画】もご覧いただけます。

藤倉善郎
著者のコラム一覧
 ■藤倉善郎 ジャーナリスト

 1974年、東京生まれ。ジャーナリストとして、カルト問題を20年以上にわたり取材。2009年にニュースサイト「やや日刊カルト新聞」を創刊し、統一教会問題を取材するジャーナリスト・鈴木エイト氏とともに活動中。著書に「『カルト宗教』取材したらこうだった」(宝島SUGOI文庫)、「徹底検証 日本の右傾化」(共著、筑摩選書、塚田穂高編著)など。

 元稿:日刊ゲンダイ DIGITA 主要ニュース ライフ 【暮らしニュース・話題・連載「検証 令和の新興宗教」】  2022年09月01日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【検証 令和の新興宗教】:⑫「最高ですか~!」の「法の華三法行」は今も活動中…逮捕の教祖は公の場から姿消す

2022-09-02 06:18:00 | 【新宗教=新興宗教と呼ばれる教団は多岐にわたり、時代的には19世紀に創始さ...

【検証 令和の新興宗教】:⑫「最高ですか~!」の「法の華三法行」は今も活動中…逮捕の教祖は公の場から姿消す

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【検証 令和の新興宗教】:⑫「最高ですか~!」の「法の華三法行」は今も活動中…逮捕の教祖は公の場から姿消す

 「最高ですか~!」

 「最高で~す!」

 長身で白髪の教祖と信者たちのこんなかけ合いがワイドショーで繰り返し報道された宗教団体を覚えているだろうか。2000年に教祖・福永法源が詐欺容疑で逮捕された「法の華三法行」だ。その後、福永は懲役12年の実刑が確定した。

<picture>2015年の復活祭での福永法源(撮影)藤倉善郎</picture>

  2015年の復活祭での福永法源(撮影)藤倉善郎

 法の華三法行は福永が「天の声(天声)が聞こえた」として設立した団体で、1987年に静岡県で宗教法人の認証を受けた。以後、信者の足の裏を見て病気などの悩みを言い当てる“足裏診断”を行い、福永自身は「天行力」という特別なエネルギーを他人に授けることができると称した。病気などをかかえる人にそのための研修(修行)や献金を勧め、1000万円もの献金をした信者もいるといわれる。

 96年、信者290人が法の華に対して12億8000万円の損害賠償を求めて静岡地裁に提訴。その後、全国で民事訴訟が起こされた。99年に警視庁と神奈川県警が教団施設を詐欺容疑で家宅捜索し、00年にかけて福永や幹部らが同容疑で逮捕された。

 当時の新聞報道によると、約3万人から1000億円近いカネを集めていたという。歴史に残る巨額詐欺事件だ。ただ、立件されたのは被害者31人、約1億5000万円分だった。

 宗教団体が詐欺罪に問われるケースはそれほど多くない。詐欺罪は相手をだまして金銭を取る犯罪だ。教祖や幹部が「だましていない。自分たちも信仰している」と言い張ってしまうと、詐欺を立証しにくい。

 ところが法の華の場合、民事訴訟の過程で、信者や相談者を脅してだますための教団内のマニュアルの存在が発覚した。

 〈足裏を見てまず第一声を吐いて相手をびっくりさせる。『あなたこのままだとガンに成るよ!』『汚い足裏ですね!』〉

 こんな調子で足裏診断の結果と関係なく、脅し方を指示する内容だ。ハナから相手をだます意図があったことは明らかだった。

 法の華は01年に破産宣告を受けて宗教法人を解散したが、福永の服役中も「よろこび家族の和」「天華の救済」の名称で別団体を継続。14年3月に刑期を終えて出所した福永は、翌15年に再び信者たちの前に立った。

 「復活祭」と銘打ったそのイベントに筆者は潜入取材した。数百人の信者たちと福永が「最高ですか~!」「最高で~す!」の掛け合いを繰り返した後、福永はこう言い放った。

「いまでも絶対に罪は認めません。天は『弾圧は絶対に許さない』と。どこまでも筋を通せば勝ちですよ! おどおどしていたら負けですよ!」

 全く反省していなかった。

 福永はこの復活祭を開催した15年に自身の半生を描いた映画「塀の中の神様」の制作を発表。そのPRでメディアの取材などを受ける場面もあったが、以降は公の場に姿を現していない。存命なら77歳だ。

 それでも団体は活動を続けている。現在の団体名は「第3救済 慈喜徳会」。公式サイトで福永の過去の法話音声などを配信し、昨年末には都内で「第3救済 天空超天行力天授大祭2021」という大仰なタイトルのイベントを開催している。 

(敬称略=つづく)

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藤倉善郎
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 ■藤倉善郎 ジャーナリスト

 1974年、東京生まれ。ジャーナリストとして、カルト問題を20年以上にわたり取材。2009年にニュースサイト「やや日刊カルト新聞」を創刊し、統一教会問題を取材するジャーナリスト・鈴木エイト氏とともに活動中。著書に「『カルト宗教』取材したらこうだった」(宝島SUGOI文庫)、「徹底検証 日本の右傾化」(共著、筑摩選書、塚田穂高編著)など。

 元稿:日刊ゲンダイ DIGITA 主要ニュース ライフ 【暮らしニュース・話題・連載「検証 令和の新興宗教」】  2022年08月31日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【検証 令和の新興宗教】:⑪世界救世教の分派「救世神教」はコロナ禍前から“ワクチンは劇薬”と主張していた

2022-09-02 06:17:50 | 【新宗教=新興宗教と呼ばれる教団は多岐にわたり、時代的には19世紀に創始さ...

【検証 令和の新興宗教】:⑪世界救世教の分派「救世神教」はコロナ禍前から“ワクチンは劇薬”と主張していた

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【検証 令和の新興宗教】:⑪世界救世教の分派「救世神教」はコロナ禍前から“ワクチンは劇薬”と主張していた

 2019年1月、三重県の「民間団体」で麻疹の集団感染が発生したとニュースになった。感染者は中高生を含む10~20代の男女27人。前年末に開催された研修会の参加者で、大半がワクチン未接種だった。以後、関西や東海地方で関係者以外にも麻疹感染が広がり、大騒ぎになった。

<picture>救世神教の本部(撮影)藤倉善郎</picture>
救世神教の本部(撮影)藤倉善郎

 当初は地元の行政が団体名を非公開にし、メディアも報じなかった。この団体が「救世神教」であることをつかみ、ニュースサイト「やや日刊カルト新聞」でスクープしたのが、現在旧統一教会問題で活躍中のジャーナリスト・鈴木エイト氏だ。

 救世神教は世界救世教の分派。世界救世教の教祖・岡田茂吉は、手かざし(浄霊)で病気を治せると主張、これこそが科学であるとして一般的な医療を否定した。岡田が生きた明治から昭和初期は医療も未発達だったが、世界救世教とその分派は現在でもこの教義を維持している。もちろん救世神教も例外ではない。

 救世神教はワクチン接種も否定している。19年当時、教団のウェブサイト「浄霊奇蹟の体験」には〈ワクチン接種を迫られた私の体に大異変! 浄霊と祈りではしか抗体の数値が10倍に〉とする信者の体験談が。教団の機関誌「神教」には〈三男は、妊娠中からご浄霊を頂く中で育ち、ワクチンや予防接種などは1本たりとも体に入れていない〉との体験談が掲載されていた。

  ところが前出の麻疹集団感染である。さすがの教団も同年1月、ウェブサイトに謝罪文を掲載し、「保健所の指導に従う」と表明した。

 ■麻疹を集団感染させて謝罪も…

 しかし3カ月後の4月、筆者が三重県の本部に行ってみると、いまだに売店で“反医療”の冊子が販売され、そこにはこう記されていた。

 〈麻疹や百日咳は、母胎中で栄養分と共に吸収した古血や汚物の浄化であり、大いに喜ぶべきことである〉(「いきいきライフ 信仰・食・運動が健康の基」から)

 〈インフルエンザワクチンは、ほとんど効かない〉(「いきいきライフ補足編2 大浄化に備えて-原発事故・新型インフルエンザ対策-」から)

 〈インフルエンザ・ワクチンは、毒薬に次ぐ強い毒性を持つ劇薬〉(同前)

  保健所の指導を受けながらも、教義は変更できないようだ。

  その一方で、鈴木エイト氏のこんな証言もある。

 「後に救世神教が信者にワクチン接種を奨励するようになったという話を聞きました。ただし、接種した上で、手かざしの浄霊によってワクチンの害毒を消しましょうというのです」

 通常の医療と独自の信仰を両立させることで人々を信じさせようという方針なのか。 =つづく

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 1974年、東京生まれ。ジャーナリストとして、カルト問題を20年以上にわたり取材。2009年にニュースサイト「やや日刊カルト新聞」を創刊し、統一教会問題を取材するジャーナリスト・鈴木エイト氏とともに活動中。著書に「『カルト宗教』取材したらこうだった」(宝島SUGOI文庫)、「徹底検証 日本の右傾化」(共著、筑摩選書、塚田穂高編著)など。

 元稿:日刊ゲンダイ DIGITA 主要ニュース ライフ 【暮らしニュース・話題・連載「検証 令和の新興宗教」】  2022年08月30日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【検証 令和の新興宗教】:⑩「顕正会」(後編)しつこい勧誘について行ったら…約4時間のビデオと講話で入信させられた

2022-09-02 06:17:40 | 【新宗教=新興宗教と呼ばれる教団は多岐にわたり、時代的には19世紀に創始さ...

【検証 令和の新興宗教】:⑩「顕正会」(後編)しつこい勧誘について行ったら…約4時間のビデオと講話で入信させられた

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【検証 令和の新興宗教】:⑩「顕正会」(後編)しつこい勧誘について行ったら…約4時間のビデオと講話で入信させられた

 前回紹介したように、顕正会の勧誘は時に逮捕者を出すほど暴力的な場合もあった。暴力を用いなくとも、とにかく勧誘がしつこいのが特徴だ。

 たとえば、古い友人から「久しぶりに遊ぼう」と呼び出されて出向くと、知らない人物がもう1人いる。すでに友人は信者になっており先輩信者と2人がかりで勧誘するのだ。喫茶店などで延々と引き留め入信届にサインするまで何時間も解放してくれない。

<picture>100人近い信者が集まった顕正会東京会館の広間(撮影)藤倉善郎</picture>

  100人近い信者が集まった顕正会東京会館の広間(撮影)藤倉善郎

 戸別訪問の勧誘もある。実は筆者も自宅で勧誘された。やってきたのは全く暴力性を感じさせない優しいオッサン信者。何度断っても「一度集会に出てみないか」としつこく訪ねてくる。取材も兼ねて、誘いに乗ってみることにした。連れて行かれたのは東京・板橋区にある「顕正会東京会館」。敵対する創価学会などが紛れ込むのを警戒しているのか、入り口で氏名と所属隊を書かないと入れてくれない。連れのオッサン信者に「○○隊と書いて」と言われる。まだ入信していないのに。

 畳敷きの広間に100人近い信者が集まっていた。中高年が多いが、若者もそこそこいる。浅井昭衛会長が熱弁を振るうビデオを大画面で見せられた。教義も用語もわからないから、ありがたみが感じられない。

 ■お金は取らないと言っていたのに

 しかし、その後の信者の体験発表ビデオは傑作だった。

 「熊本地震で家が傾いて、修繕が大変だと困っていた。そこへ今度は台風が直撃。台風の風によって家の傾きが直ったのです。日頃の勤行の功徳で、修繕しなくてすみました!」

 勤行とは南無妙法蓮華経と唱えたりお経をあげたりすること。勤行をしても地震や台風に直撃されたじゃないかと突っ込みを入れたくなる。たぶん修繕はした方がいいよとも。

 ビデオのあと、全員で勤行をして終了。と思いきや、住んでいる地域ごとに分かれてリーダーの講話を聞かされ、その次は隊ごとに隊長の講話。すでに4時間近く経過している。その上、オッサン信者からの猛プッシュが。

 「もうここまで来たんだから入信しちゃいましょうよ。うちは統一教会みたいに壺を売ってお金を取ったりしませんから」

 面倒くさくなり、入信届にサインをした。

 「じゃあ、いまから別室で入信勤行ですよ」

 まだやるのかよ……。

 その日入信させられたとおぼしき10人ほどと一緒に「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経」と唱える。南米系やインド系の外国人が何人もいる。みんな、ここがどんな宗教かわかっているのだろうか。

 その後、オッサンは以前より頻繁に家にやって来るようになった。「○○大会がありますよ」「財務(お布施)のご案内ですよ」「顕正新聞を購読しませんか」といった調子だ。お金は取らないと言っていたのに。

 実は筆者のアパートの隣の住人は創価学会信者だ。その住人が選挙の直前に、公明党候補に投票するよう頼みに来た。公選法で禁じられている“事前運動”だ。この学会信者に「僕のところに顕正会というのが来るのだけど、どういう団体か知ってますか?」と尋ねてみた。

 「すごく悪い人たちですよ。あまりしつこいようなら言ってください。うちの青年部の人たちが追っ払ってくれるから」

 生まれて初めて創価学会が頼もしく思えた。だけど公明党には投票しなかった。

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 1974年、東京生まれ。ジャーナリストとして、カルト問題を20年以上にわたり取材。2009年にニュースサイト「やや日刊カルト新聞」を創刊し、統一教会問題を取材するジャーナリスト・鈴木エイト氏とともに活動中。著書に「『カルト宗教』取材したらこうだった」(宝島SUGOI文庫)、「徹底検証 日本の右傾化」(共著、筑摩選書、塚田穂高編著)など。

 元稿:日刊ゲンダイ DIGITA 主要ニュース ライフ 【暮らしニュース・話題・連載「検証 令和の新興宗教」】  2022年08月27日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【検証 令和の新興宗教】:⑨顕正会(前編)強引な勧誘に全国の大学が警戒する日蓮正宗教団

2022-09-02 06:17:30 | 【新宗教=新興宗教と呼ばれる教団は多岐にわたり、時代的には19世紀に創始さ...

【検証 令和の新興宗教】:⑨顕正会(前編)強引な勧誘に全国の大学が警戒する日蓮正宗教団

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【検証 令和の新興宗教】:⑨顕正会(前編)強引な勧誘に全国の大学が警戒する日蓮正宗教団

 8月15日の終戦記念日。例年、東京メトロの九段下駅から靖国神社に向かう坂道では、さまざまな団体が中国共産党批判や憲法改正推進などの右翼的な主張を記したビラや冊子を配布している。今年、ひときわ目立ったのが宗教団体「顕正会」だ。

 数十人の信者が歩道に並び「顕正新聞」を配布。開いてみると日蓮信仰をアピールする紙面で、創価学会名誉会長の池田大作を「第六天の魔王」「大慢心の極み」とこき下ろす記事もあった。

<picture>今年2022年8月15日、靖国神社前で「顕正新聞」を配る信者たち(撮影)藤倉善郎</picture>

 今年2022年8月15日、靖国神社前で「顕正新聞」を配る信者たち(撮影)藤倉善郎

 顕正会は1957年に日蓮正宗の信徒組織「妙信講」としてスタートした。同宗の信徒組織だった創価学会と対立し、74年には東京・信濃町の創価学会本部を信者約70人で襲撃。街宣車で門に突っ込んだ上に大乱闘を演じ、顕正会信者12人が逮捕された。

 顕正会は日蓮信仰の国教化を意味する“国立戒壇建立”を目指す、いわば原理主義的な宗派。彼らにとって日蓮正宗や創価学会は国教化を放棄した裏切り者なのだ。

 ■自衛隊に組織が発生してクーデター騒動に発展

 顕正会の「日蓮を信仰しなければ日本は滅ぶ」という憂国的な思想に共鳴したのか、90年代には自衛隊内に多数の信者が生まれた。自衛隊内に信者による非公式組織「足軽の会」ができ、顕正会内には自衛隊員で構成される「男子部第2隊」が組織された。

 94年には、第1空挺団普通科群長の1等陸佐の顕正会信者が、富士演習場で民間人の顕正会信者に自動小銃の実弾射撃を行わせる事件も。さらに97年、顕正会がこの年の7月に“重大行動”を起こすとの情報が公安当局に入った。当時はオウム真理教・地下鉄サリン事件(95年)からわずか2年。公安や防衛庁(当時)の関係者たちは背筋が凍ったことだろう。

 クーデターを警戒した公安当局は教団施設を24時間体制で監視。自衛隊では信者の隊員が武器庫の鍵を持つ当直任務から外された。そして7月16日、その“重大行動”が開始された。

 この日、浅井昭衛会長の著書が発刊され、その広告が主要全国紙にデカデカと掲載された。信者たちは公務員などに書籍を送る活動を開始。何のことはない、クーデターではなく浅井会長の本の宣伝だったのである。公安当局と防衛庁は肩透かしを食らった。

 やがて自衛隊内での顕正会の活動は沈静化。99年には前出の顕正会内の男子部第2隊が解散した。

 「自衛隊の情報保全隊(旧調査隊)と公安当局の情報収集や圧力で収束したのではない。彼ら自身の早急かつ過激な折伏が原因で自滅したのだ」(防衛省関係者)

 信者の自衛官たちは上官や同僚だけでなく、自分たちの動向を調べるために近づいてくる調査隊員にまで顕正新聞を手渡してしつこく勧誘していたのだ。そのため隊内でトラブルが絶えず、信者たちは自然と左遷や退官に追い込まれていった。こうして活動が沈静化し、解散となったのである。

 しかし民間人には、現在も強引な勧誘を繰り返している。2000年代に入ってからも、多くは起訴猶予になっているが、逮捕者を出し続けてきた。勧誘相手を監禁したり、「逃げたら殺す」と脅したりといった具合だ。大学生を車で連れ回しながら勧誘し、誘拐容疑で逮捕された信者もいる。全国の大学では顕正会の学生勧誘が問題視され、信者になった高校生が高校内で勧誘活動をしてトラブルになった例もある。

 実は筆者は顕正会の勧誘を受けて、信者になったことがある。次回はその体験をリポートしたい。(一部敬称略)

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 1974年、東京生まれ。ジャーナリストとして、カルト問題を20年以上にわたり取材。2009年にニュースサイト「やや日刊カルト新聞」を創刊し、統一教会問題を取材するジャーナリスト・鈴木エイト氏とともに活動中。著書に「『カルト宗教』取材したらこうだった」(宝島SUGOI文庫)、「徹底検証 日本の右傾化」(共著、筑摩選書、塚田穂高編著)など。

 元稿:日刊ゲンダイ DIGITA 主要ニュース ライフ 【暮らしニュース・話題・連載「検証 令和の新興宗教」】  2022年08月26日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【検証 令和の新興宗教】:⑧成田でミイラ事件を起こした「ライフスペース」の今…「定説」の教祖は死去、元信者は別団体で活動中

2022-09-02 06:17:20 | 【新宗教=新興宗教と呼ばれる教団は多岐にわたり、時代的には19世紀に創始さ...

【検証 令和の新興宗教】:⑧成田でミイラ事件を起こした「ライフスペース」の今…「定説」の教祖は死去、元信者は別団体で活動中

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【検証 令和の新興宗教】:⑧成田でミイラ事件を起こした「ライフスペース」の今…「定説」の教祖は死去、元信者は別団体で活動中

 1999年11月に千葉県成田市のホテルで発生した“ミイラ事件”を覚えているだろうか。発生直後に「ライフスペース」(SPGF)という団体の創設者・高橋弘二が記者会見し、「定説」「サイババの勝手なんです」などの迷言を残したあの事件だ。

<picture>成田ミイラ事件で記者会見する「ライフペース」創設者の高橋弘二(1999年11月18日)/(C)共同通信社</picture>

  成田ミイラ事件で記者会見する「ライフペース」創設者の高橋弘二(1999年11月18日)/(C)共同通信社

 高橋はインドのサイババの弟子を勝手に名乗り、病人の頭を叩いてエネルギーを注入する“シャクティパット”で病気を治せると吹聴していた。

 病気で入院中だった男性を信者が連れ出して成田のホテルで“治療”したが死亡。それでも「生きている」と言い張って、ミイラ化するまでシャクティパットを続けたのだ。

 ライフスペースは宗教と関係ない団体で、もともとは参加費数十万円の自己啓発セミナーを開催していた。バブル崩壊後に経営が傾き、高橋が教祖化。病気直しや予言の能力を持つグル(宗教指導者)を自称し、セミナーで数百万円もの料金を取るようになった。95年には高温の風呂に入る修行で学生信者が死亡する事件も起きている。

 ミイラ事件では高橋を含め11人が逮捕。学校に通わせてもらえず共同生活をしていた児童9人を、児童相談所が保護した。後に高橋は殺人罪で懲役7年の実刑判決が確定し、信者1人が保護責任者遺棄致死罪で執行猶予付きの懲役判決を受けた(他は起訴猶予)。

 信者は「ミイラは生きており警察の司法解剖によって死亡した」として冤罪を主張。「再審支援の会」を名乗って活動を続けた。2009年に高橋が出所すると、ライフスペースを批判した弁護士に対して民事訴訟や懲戒請求を行った。

 出所時点で70歳だった高橋は公の場に姿を見せることはなく、その後の活動は妻の伸子や実質ナンバー2の釣部人裕が仕切っていたとみられている。伸子はミイラ事件で逮捕されている。

 15年12月に高橋が死去すると「再審支援の会」の活動は止まり、ライフスペースは実質的な休眠状態になった。伸子は17年に「一般社団法人NEOビジョンアカデミー」を設立。信者とともにヨガ教室や瞑想セミナーを開催するようになる。「ビジョン」はライフスペースで高橋が好んで使った用語だ。

 釣部は18年に「豊島区倫理法人会」の会長に就任。同会のウェブサイトには伸子ら複数のライフスペースの信者たちが会員として掲載され、伸子のヨガ教室も紹介された。釣部は会長の任期を終えたが、現在も同会に所属している。

 豊島区倫理法人会は全国の統括団体である一般社団法人「倫理研究所」に加盟。この研究所は戦前に弾圧された宗教団体を起源とする団体で、企業経営者らを集めて「モーニングセミナー」などを開催している。ここでもライフスペースの信者が活動しているようだ。 (敬称略)

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【検証 令和の新興宗教】:⑦TOSHIの次は石田純一? 芸能人を広告塔にする“カルト集団”の自己啓発セミナー

2022-09-02 06:17:10 | 【新宗教=新興宗教と呼ばれる教団は多岐にわたり、時代的には19世紀に創始さ...

【検証 令和の新興宗教】:⑦TOSHIの次は石田純一? 芸能人を広告塔にする“カルト集団”の自己啓発セミナー

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【検証 令和の新興宗教】:⑦TOSHIの次は石田純一? 芸能人を広告塔にする“カルト集団”の自己啓発セミナー

 1997年に解散した人気ロックバンド「X JAPAN」。解散のきっかけはボーカルを担当していたTOSHI(現在の表記はToshl)の脱退表明だった。翌98年、TOSHIが自己啓発セミナー団体「レムリアアイランド」に心酔していると報道され、マスコミを挙げての「洗脳騒動」に発展。その後、団体は「ホームオブハート」(HOH)と改称した。

<picture>(MARTHTVのユーチューブから)</picture>

   (MARTHTVのユーチューブから)

 自己啓発セミナーは数日間密室でさまざまなゲームやレクチャーを繰り返す「集団心理療法」の一種。瞑想により幼少期を振り返ったり参加者同士がののしり合ったりする。最後は互いを絶賛し合い号泣しながら抱き合ってカタルシスに浸る。これを「本当の自分を見つける」「人間関係を改善できる」心理学技術だと謳い何十万円も取る商売だ。

 集団心理療法は70年代にアメリカから上陸し、80年代にこれをパクった業者が大量発生した。オウム真理教や統一教会の関係者が、信者を洗脳するテクニックとして導入しようと学びにきていたともいわれる。バブル崩壊後に斜陽産業化したが、一部で指導者が教祖化してスピリチュアルなことを言い出し、カルト集団のようになっていった。

 ■「化け物アゴ男」と罵倒されたTOSHI

 HOHもそのひとつ。TOSHIが「化け物アゴ男」と罵倒されていたニュースに世間は騒然とした。HOHは東京・麻布で活動していたが、TOSHI加入後の2001年に栃木県那須町の別荘地に移転した。熱心なメンバーたちと教祖のMASAYAこと倉渕透が共同生活を始めた。施設内で子供が段ボールに入れられて放置されるなどの行為があったため、04年に児童相談所がHOHとTOSHIの個人事務所から計5人の子供を保護した。

 TOSHIは那須でセミナーを受けつつ、倉渕が作った曲を全国で歌う地方巡業のライブ活動を展開。個人財産もライブ収益もHOHに貢ぎ、総額は10億円を超えるとされている。当時、多額の金銭を奪われたとして、複数の被害者がHOHやその広告塔のTOSHIを相手に訴訟を起こした。中には被害額が1000万円を超える人もいた。

 裁判の途中だった10年、TOSHIはHOHを脱会して自己破産。記者会見を開いて被害者に謝罪した。これによってTOSHIとHOHを被告とする裁判は全て和解などで決着した。

 ところがHOHは「ヒーリング」「コンフォート」などと社名を変え、今も活動中だ。倉渕も芸名を「MARTH」に変えた。健康器具販売、倉渕作のヒーリング音楽販売、スピリチュアルアニメの制作など手広く展開している。しかも新たな芸能人が広告塔になっている。タレントの石田純一だ。

 石田はかつて「ヒーリング」が販売するバスタブ(180万円~)を購入。TOSHIが脱会する直前の10年初頭に同社ウェブサイトに、「設置例」として「石田純一様○○別荘」と写真つきで掲載された。当時、筆者の取材に石田事務所は「TOSHIと親交があったためバスタブを買った」と説明し、HOHとの関係を否定した。

 ところが今年2月。倉渕原作のアニメ「イザヤからの手紙」を宣伝するユーチューブ動画に、またも石田が登場。静止画と文章のみだが、倉渕を「友人のMARTH」と呼び、アニメを絶賛する応援メッセージを寄せている。TOSHIのようなことにならなければいいが。(敬称略)

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 元稿:日刊ゲンダイ DIGITA 主要ニュース ライフ 【暮らしニュース・話題・連載「検証 令和の新興宗教」】  2022年08月24日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【検証 令和の新興宗教】:⑥安倍昭恵氏や国会議員がこぞって肩入れ…「不二阿祖山太神宮」のトンデモ歴史観

2022-09-02 06:17:00 | 【新宗教=新興宗教と呼ばれる教団は多岐にわたり、時代的には19世紀に創始さ...

【検証 令和の新興宗教】:⑥安倍昭恵氏や国会議員がこぞって肩入れ…「不二阿祖山太神宮」のトンデモ歴史観

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【検証 令和の新興宗教】:⑥安倍昭恵氏や国会議員がこぞって肩入れ…「不二阿祖山太神宮」のトンデモ歴史観

 「イエス・キリストはここで修行をしてから国に帰ってキリスト教を広めたんですよ」

 信者がにこやかに語るのは、富士山麓の富士吉田市にある不二阿祖山太神宮。一見すると神社のような装いで、鳥居は珍しい3本足だ。

 「この鳥居の下に入ると、携帯電話などから出る電磁波の悪影響を弱めることができます」(信者)

<picture>2020年に社務所に張り出されていた安倍昭惠氏の写真。隣は渡邉政男教祖。この写真は2021年には撤去されていた(撮影)藤倉善郎</picture>

 2020年に社務所に張り出されていた安倍昭惠氏の写真。隣は渡邉政男教祖。この写真は2021年には撤去されていた(撮影)藤倉善郎

 境内には“ムー大陸の文字”なるものが記されたプレートが。2020年に筆者が取材に行くと、“平和を祈るホピ族の儀式”が行われていた。だが登場したのはホピ族とは別のネーティブ・アメリカンであるアパッチ族の羽飾りを頭につけた男性。終了後に聞くと、アパッチの祖母を持つクオーターでホピ族は関係ないという。随分テキトーだ。

 社務所には団体の機関誌と一緒にオカルト雑誌「ムー」が置かれ、ここを訪れた著名人の写真コーナーもあった。目を引いたのは、この神社の渡邉政男教祖と安倍晋三元首相の妻・昭恵氏が写ったカット(写真=撮影・藤倉善郎)だ。

 不二阿祖山太神宮は2009年に設立された新興宗教団体。200万~300万年前のこの地に天皇を頂点とする「富士王朝」(古代富士王朝)と天皇家ゆかりの「不二阿祖山太神宮」があったと主張する。

 ■国会議員71人を動員

 これらの王朝とも神社とも関係ない教祖が、猿人の一種であるアウストラロピテクスの時代に存在した神社を再興したというのだ。この独特の歴史観は、明治時代に発見されたとされる古文書「宮下文書」を根拠にしている。歴史家の間では“偽書”として否定されているものだ。

 不二阿祖山太神宮は14年から関連NPO法人の主催で「FUJISAN地球フェスタWA」なるイベントを年1回開催。富士王朝をテーマにしたシンポジウムなどを行い、「ムー」の編集長も登壇した。

 15年、当時首相夫人だった昭恵氏がイベントの名誉顧問に就任。同年、71人もの現役国会議員が顧問などとして関わり、9つの中央官庁、19の自治体、8つの教育委員会、計36もの行政機関が後援として名を連ねた。地元メディアと毎日新聞社のような全国メディアを含め計7社が後援。コロナ禍の21年でも58人の国会議員を動員した。

 17年にこの件を日刊ゲンダイがスクープ。すると昭恵氏の名が役員名簿から消え、現在、名誉顧問として最上位に掲載されているのは石破茂氏だ。

 不二阿祖山太神宮は、もともと「天住の会」と称する宗教法人で、山梨県都留市で設立された。「友人から宗教ではないと言われて勧誘された」と証言する人もいる。事実なら、統一教会のように宗教であることを隠した偽装勧誘だ。

 いずれにせよ、史実と異なるニセ歴史をアピールする関連イベントで、大量の国会議員が顧問を務め、教育委員会までが後援についた。いずれ問題になるのではないか。

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 ■藤倉善郎 ジャーナリスト

 1974年、東京生まれ。ジャーナリストとして、カルト問題を20年以上にわたり取材。2009年にニュースサイト「やや日刊カルト新聞」を創刊し、統一教会問題を取材するジャーナリスト・鈴木エイト氏とともに活動中。著書に「『カルト宗教』取材したらこうだった」(宝島SUGOI文庫)、「徹底検証 日本の右傾化」(共著、筑摩選書、塚田穂高編著)など。

 元稿:日刊ゲンダイ DIGITA 主要ニュース ライフ 【暮らしニュース・話題・連載「検証 令和の新興宗教」】  2022年08月23日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【検証 令和の新興宗教】:⑤Qアノン支部を自称する「神真都Q」 ワクチン会場“襲撃”で13人逮捕後、離脱者が続出

2022-09-02 06:16:50 | 【新宗教=新興宗教と呼ばれる教団は多岐にわたり、時代的には19世紀に創始さ...

【検証 令和の新興宗教】:⑤Qアノン支部を自称する「神真都Q」 ワクチン会場“襲撃”で13人逮捕後、離脱者が続出

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【検証 令和の新興宗教】:⑤Qアノン支部を自称する「神真都Q」 ワクチン会場“襲撃”で13人逮捕後、離脱者が続出

 新型コロナウイルスが世界に広まり、日本でもマスク着用やワクチン接種といったさまざまな対策が進んだ。そんな中、マスクやワクチンを有害だとして反対する“反ワクチン”の団体がいくつも登場。なかでも強烈なのが、今年1月から全国同時多発デモを繰り返している「神真都(やまと)Q」だ。

<picture>「神真都Q」の新宿デモ=2022年1月23日(撮影)藤倉善郎</picture>

 「神真都Q」の新宿デモ=2022年1月23日(撮影)藤倉善郎

 団体名に「Q」の文字を入れているのは、トランプ前米大統領を支持する陰謀論集団「Qアノン」の日本支部を自称しているからだ。実際には、QアノンはSNSなどを通じて結びつくさまざまな団体・個人の総称で、アメリカに「Qアノン」という特定の団体が公式に存在するわけではない。従って日本支部も存在しない。

 神真都Qは「世界の政治や金融はディープステート(影の政府=闇の勢力)に支配されている」といったQアノン陰謀論を信じる一方で、独自の宗教的世界観を持っている。「大和民族は善い宇宙人と竜神の遺伝子を受け継いだ民族」としており、闇の勢力に支配された世界の人々を覚醒させる使命を負っているのだという。

 その手段として神真都Qは、今年1月から反ワクチンデモを全国で開始。「新型コロナウイルスは存在しない」「コロナワクチンは有害であり、人口を削減させる闇の勢力の陰謀」という彼らにとっての「真実」で日本人を「覚醒」させようとした。

 全都道府県にデモ隊を置き、それぞれがLINEのオープンチャットというサービスを使って連絡を取り合っていた。オープンチャットに参加した人数は3月ごろが最盛期で1万人を超えた。1回のデモ参加者数は都内だけで最大1000人以上だった。

 ■「エデン計画」も進めていた

 3月15日、神真都Qはデモ活動とは別に、ワクチン接種会場となった東京ドームを“襲撃”。「殺人行為だ」などと騒ぎ立て、接種者たちの入場を妨害した。さらに今度は新宿区の接種会場にも押しかけた。4月に渋谷区のクリニックに押しかけた際は、警視庁公安部が建造物侵入容疑で4人を現行犯逮捕。後日、リーダー格で陰謀論ユーチューバーの「イチベイ」こと倉岡宏行も同容疑で逮捕された。

 5月以降、3件の“襲撃”事件でメンバーらの逮捕や再逮捕が繰り返され、逮捕者は計13人にのぼった。不起訴や略式起訴で釈放された者もいるが、倉岡被告は起訴され、今も勾留中だ。

 この事件を受け神真都Qでは、デモ隊リーダーも含め離脱者が続出。全国で隊の解散が相次いでいる。残党が毎月デモを続けている地域もあるが、現在、都内ですらデモ参加者は数十人程度になっている。

 神真都Qは、地方に土地や建物を購入し、複数の共同生活のコミューンをつくる「エデン計画」も進めていた。そこにトランプ前大統領の銅像を建てるプランもあった。

 しかし組織は崩壊状態。日本の田舎にトランプの銅像が乱立する光景は見られそうにない。見たくはないが。

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 ■藤倉善郎 ジャーナリスト

 1974年、東京生まれ。ジャーナリストとして、カルト問題を20年以上にわたり取材。2009年にニュースサイト「やや日刊カルト新聞」を創刊し、統一教会問題を取材するジャーナリスト・鈴木エイト氏とともに活動中。著書に「『カルト宗教』取材したらこうだった」(宝島SUGOI文庫)、「徹底検証 日本の右傾化」(共著、筑摩選書、塚田穂高編著)など。

 元稿:日刊ゲンダイ DIGITA 主要ニュース ライフ 【暮らしニュース・話題・連載「検証 令和の新興宗教」】  2022年08月20日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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