新型コロナウイルス禍で、鉄道の終夜運転やカウントダウンイベントが取りやめとなり、首都・東京は異例ずくめの「厳戒態勢」の年越しとなった。31日に報告された都内の新規感染者数は初めて1000人を超えたが、街には多くの人が繰り出し、対策の難しさも浮き彫りになった。

 午前11時の銀座。人がまばらな中、各地方のアンテナショップには次々と客が訪れた。沖縄県浦添市への帰省をあきらめた足立区の山里昌美さん(50)は地元で年越しの定番というソーキソバを購入。「最後に帰ったのは2019年のお盆。法事に行けなかったのがつらかった」と話した。

 午後1時、上野のアメ横商店街。買い物客が肩が触れるほどの距離で行き交う。「マグロも数の子も1000円!」。威勢のいい声もざわめきにかき消される。ただ海鮮物商店で長年働く男性が「お客は例年の半分」と嘆く。

 午後2時前、渋谷区の明治神宮。大みそかから元旦の終夜開門をやめ、分散参拝を呼び掛けたためか、例年より人出が少ない。JR原宿駅前の大鳥居から参道に入ると「3密回避」を求める看板が並び、砂利には1メートル間隔の目印もみられた。

 午後3時ごろ、都内の感染者数が報じられ、参拝に訪れた埼玉県川口市の会社員清水厚子さん(46)は「とうとう超えたか」と驚きを隠せない。「明るい年にしてほしい」

 午後3時半、豊島区東池袋の公園。貧困問題に取り組む団体が仕事や住まいの相談会を開き、数十人に食べ物を配布した。10月以降仕事がない派遣社員の男性(47)は「ホームレスには感染したら逃げる所がない」。

 午後7時半、渋谷区のNHKホール。恒例の紅白歌合戦は無観客開催となった。近くで知人と待ち合わせをしていた新潟県田上町のアルバイト川口明美さん(45)は「やっぱり客がいた方が盛り上がる」とこぼした。

 午後11時、JR渋谷駅前のスクランブル交差点では大型ビジョンが消灯した。だが、若者や外国人が徐々に集まり、身動きできないほどに。東京都台東区の会社員岸本英人さん(38)は「終夜運転がないので、カウントダウンが終わったらすぐに電車に乗らないと」と気にしていた。

 午前0時を迎えると大きな歓声が上がった。一時は車道に人があふれ出し、警察車両に上った「DJポリス」が歩道に上がるよう促していた。(共同)