【長野県】:スキーバス事故から5年…息子のスマホは今も受信
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【長野県】:スキーバス事故から5年…息子のスマホは今も受信
息子は未来を奪われ、自分の時間も止まったままのようだ。
2016年1月に長野県軽井沢町で起きたスキーバス事故で犠牲になった西堀響さん(当時=19、東京外語大1年)の父(61)。あれから5年がたち、悲しみが薄れることは決してないが、今も次男のスマートフォンで受信する友人からのメッセージに励まされながら、再発防止の活動を続けてきた。
スキーバス転落事故の慰霊碑に黙とうする軽井沢高校の生徒(共同)
響さんは語学を生かした仕事を目指し、スペイン語を専攻。外交官になるのが夢だった。大学から始めたアメリカンフットボールに打ち込み、チームメートと汗を流した。「4年間部活を頑張り、1年間留学して、1年で残りの単位を取って。今年3月に卒業予定だったのかな」と想像する。
16年1月15日の朝、単身赴任先の大阪で目を覚ました頃、事故を知らせるニュースが流れた。旅行会社に連絡すると、響さんがバスに乗っていたことが分かり、東京から妻と軽井沢に向かった。
体育館でひつぎに眠る息子と対面。目立ったけがもない顔を妻とさすった。「現実という気がしなかった」。その日から、時間が止まったような感覚を覚えるようになった。「響もわれわれも将来がなくなった。響にあった未来を私も妻も感じることができない」
ただある日、遺品の白のスマートフォンにメッセージが届いていることに気付く。それからも、中高や大学の同級生、アメフト部の仲間からの言葉が送られてくる。通信の契約を続け、就寝前、何か届いていないかと確認するようになった。
「響、誕生日おめでとう」「就職決まったよ」。昨年8月の誕生日にも部活の同期が送ってくれた。「皆でお祝いしたかったけど、会えなくて寂しい」とコロナ禍の現状を知らせるかのようなメッセージも。ロックを解除していないため、全文を読むことはできないが、画面に表示された数行だけでも「響のことを思い出してもらえることはありがたい」
再発防止に向けて、他の遺族と共に国土交通省や警察庁との意見交換会にも何度も足を運んだ。「悲しい気持ちを他のところに持って行かないと、自分が持たないところがあった」と振り返る。
業務上過失致死傷容疑で書類送検されたバス運行会社社長らの捜査も続く。多くの仲間に慕われた息子。将来はなぜ絶たれたのか。刑事裁判を通して、事故の徹底究明がされることが再発防止につながるはずだ。そう、強く願い続けている。(共同)
元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【事故・災害・2016年1月に長野県軽井沢町で起きたスキーバス事故】 2021年01月15日 20:49:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。