【社説①・04.03】:ミャンマー地震/国際社会は支援に総力を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・04.03】:ミャンマー地震/国際社会は支援に総力を
軍事政権下のミャンマー中部で先週、マグニチュード(M)7・7の大地震が発生した。これまでに3千人近い死者が確認され、負傷者も多数出ている。被害の全容はつかめておらず、犠牲者はさらに増え続ける恐れがある。一人でも多くの人が救助されるよう、国際社会は支援に総力を挙げねばならない。
地震は日本時間の3月28日午後3時20分ごろに起き、行方不明者の生存率が著しく下がるとされる「発生後72時間」は過ぎた。激しい揺れに見舞われた首都ネピドーや震源に近い同国第2の都市マンダレー周辺で特に大きな被害が出ている。
被災は広範囲に及び、ビルや住宅、仏教寺院などが倒壊した。がれきの下には今なお多くの人々が取り残されているとみられる。日本人も負傷し、マンダレーでは1人と連絡が取れなくなった。電気や通信の環境が劣悪で、重機などの機材が不足し救助活動は難航している。
今回の地震は、ミャンマーの国土を縦断する約1千キロの「ザガイン断層」のうち400キロ以上が水平方向にずれて起きた。同断層は過去にもM6~7級の地震を繰り返してきた。今後も大地震が起こる恐れがあり、警戒を強める必要がある。
ミャンマーでは2021年に国軍がクーデターで権力を握って以降、民主派組織や少数民族武装勢力との内戦による混乱が続いている。国連によると、約350万人が避難生活を強いられ、人道支援が必要な人が約2千万人いるとされる。今回の地震で、人道状況の悪化は必至だ。
軍政は閉鎖的で、23年にサイクロンによる被害が出た際にも援助を拒んだ。だが今回、国軍のミンアウンフライン最高司令官は外国からの支援を受け入れる意向を示した。
友好関係にある中国やロシアに加え、隣国のインドやタイが救助隊を派遣した。軍政に制裁を科す米国も支援を表明した。国際協力機構(JICA)や医療関係者らで構成する日本政府の援助隊も現地に入った。
支援活動が安全に実施されるには内戦の停止が不可欠だ。民主派組織や少数民族武装勢力は被災者の救助を優先し、一定期間の停戦を発表した。一方、国軍は地震後も少数民族の支配地域などへの空爆を続けているとの報道もある。全ての被災者に確実に援助が行き渡るように、国軍も直ちに戦闘を止めるべきだ。
今回の地震では震源から約1千キロ離れたタイの首都バンコクで建設中の高層ビルが倒壊し、多数の死傷者が出た。長周期の地震波が軟弱な地盤で増幅した影響とみられる。日本でも南海トラフ地震などで長周期地震動による被害が懸念されており、教訓を対策に生かしたい。
元稿:神戸新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年04月03日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。