【社説①・02.07】:米の「ガザ所有」 国際法に反する暴論だ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・02.07】:米の「ガザ所有」 国際法に反する暴論だ
また突拍子もない脅し文句だと聞き捨てにできない。不見識で危うい暴論である。
トランプ米大統領は、パレスチナ自治区ガザを米国が長期的に「所有する」と主張し、住民をガザ域外に恒久的に移住させるべきと提案した。再建に米国が取り組むとし、米軍派遣も否定しなかった。
いかなる権限でどう進めるか具体策は語らず、どこまで本気か、実現性も疑わざるを得ない。
国連加盟国の多数が国家として承認するパレスチナの土地を一方的に切り離し、住民を追うことは明らかに国際法に反する。
ガザのイスラム組織ハマスは「パレスチナ人の権利否定だ」と反発。エジプトやサウジアラビアはじめ中東、欧州など各国が批判の声を上げたのは当然だろう。
こぎつけたガザ停戦を恒久化する交渉を阻害し、混乱に陥れる妄言だ。断じて認められない。
唐突な提案は、イスラエルのネタニヤフ首相との会談後の記者会見で表明された。トランプ氏は、15カ月以上の攻撃で破壊されつくしたガザを米国が引き継ぎ、倒壊した建物や不発弾を撤去、経済開発や雇用創出を進めるとした。
歴代政権以上のイスラエルへの後押しで自らの保守支持層に応えつつ、「不動産王」の発想で事態を動かす思惑も透ける。
だが、トランプ氏のいう「ガザは地獄」は、過剰に自衛権を振りかざした無差別攻撃で死者4万7千人超、避難者の人道危機を深めるイスラエルと、軍事支援する米国が引き起こした惨状である。
1948年のイスラエル建国で土地を追われたパレスチナ人の苦難の歴史的経緯も顧みないのか。またも200万人超のガザ住民を強制移住させることは、自決権を踏みにじる国際人道法違反である。国連のグテレス事務局長は「民族浄化だ」と指弾する。
ドイツやフランス、英国の首脳らも提案を「容認できない」とし、国際合意であるイスラエルとパレスチナの「2国家共存」を改めて支持した。
法の支配や基本的人権に基づく国際秩序をないがしろにするトランプ流は、ロシア、中国の覇権主義や排外・極右勢力の台頭に口実を与え、世界的な信頼低下を招くばかりである。
戦後、中東に軍事関与をせず、独自の交流も重ねた日本の役割は重要だ。週末、トランプ氏と初の首脳会談に臨む石破茂首相は、自決権と2国家共存論を擁護し、事態を憂慮する国々とも連携していさめねばならない。
元稿:京都新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年02月07日 16:05:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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