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●『教育と愛国』《教科書は誰のものか》…「そんなふうに、教科書検定だけではなく学校の現場に、有形無形の圧力が押し寄せている」

2022年07月06日 00時00分49秒 | Weblog

[↑ 誰がメディアを殺すのか 毎日放送ディレクター・斉加尚代さん (朝日新聞、2022年5月19日)]


(20220605[])
マガジン9のインタビュー記事【この人に聞きたい 斉加尚代さんに聞いた:強まる教育への政治介入。この国で今、何が起きているのか〜映画『教育と愛国』】(https://maga9.jp/220525-1/)。

 《この5月に公開された映画『教育と愛国』が話題です。道徳の教科化、教科書検定における圧力、日本学術会議の委員任命拒否問題、「慰安婦」問題を教える中学校教員や研究する大学教授への激しいバッシング……スクリーンに描き出される、教育と教科書をめぐるこの国の現状には、ぞっとするような怖ささえ覚えます。初監督映画となるこの作品を「切羽詰まる思いで作った」と語る毎日放送(MBS)ディレクターの斉加尚代さんにお話をうかがいました》。

 《ゆがむ教育現場のリアルを伝え「教科書は誰のものか」を問う》。「教育は普遍的価値で独立を担保すべき」。
 沖縄タイムスのコラム【[大弦小弦]教育とメディアと愛国】(https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/966696)によると、《日の丸の小旗を手に万歳する子どもたち。米国が戦中に作った映画は、日本の教育を「政府が選んだ事実や認められた思想のみが教えられる」「同じように考える子どもの大量生産」と解説した▼公開中の映画「教育と愛国」は冒頭、このモノクロ映像を紹介する。徐々に現代の教室と二重写しになる》。

   『●斉加尚代監督『教育と愛国』:《教育への政治支配が続けば、日本の
     学校は…政府プロパガンダを信じ込ませる場に堕す》(前川喜平さん)
   『●『教育と愛国』《危うさに気づいた…。監督で毎日放送の斉加尚代さんは、
         ゆがむ教育現場のリアルを伝え「教科書は誰のものか」を問う》
   『●《地元テレビはヒレ伏しヨイショの連続》…一方、ある記者は
     《「こんな状態でも、ひるんじゃダメよ」――。橋下市長より大人だ》った

 斉加尚代監督『教育と愛国』――― 前川喜平さん《『教育と愛国』(斉加尚代監督)の試写を見た。従軍慰安婦、集団自決、強制連行を巡る教科書検定などへの政治的圧力、教育右傾化をえぐり出したドキュメンタリー》《教育への政治支配が進めば、日本の学校はロシアや中国のように政府プロパガンダを信じ込ませる場に堕すだろう》。また、《「主戦場」を見た人には「教育と愛国」を見ることもおすすめします》とも。

   『●映画『主戦場』で、〝否定派〟の論客の皆さん《杉田水脈衆院議員や
     ケント・ギルバート氏…藤岡信勝氏、テキサス親父…櫻井よしこ氏》は…

 お維・橋下徹初代大阪「ト」知事と戦った記者…【橋下氏、女性記者を“罵倒”つるし上げ!君が代条例の波紋】。斉加尚代MBS記者と、《地元テレビはヒレ伏しヨイショの連続》《ハシズム》で当時絶好調の橋本徹元大阪「ト」知事・当時大阪市長とのやり取りが秀逸。

   『●対橋下元〝ト〟知事、どうすべきか?

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https://maga9.jp/220525-1/

この人に聞きたい
斉加尚代さんに聞いた:強まる教育への政治介入。この国で今、何が起きているのか〜映画『教育と愛国』
By マガジン9編集部 2022年5月25日

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この5月に公開された映画『教育と愛国』が話題です。道徳の教科化、教科書検定における圧力、日本学術会議の委員任命拒否問題、「慰安婦」問題を教える中学校教員や研究する大学教授への激しいバッシング……スクリーンに描き出される、教育と教科書をめぐるこの国の現状には、ぞっとするような怖ささえ覚えます。初監督映画となるこの作品を「切羽詰まる思いで作った」と語る毎日放送(MBS)ディレクターの斉加尚代さんにお話をうかがいました。
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教科書をめぐる「圧力」が強まっている

──公開中の映画『教育と愛国』は、MBSのドキュメンタリーシリーズの1作として2017年に放映されたテレビ番組がもとになっています。最初にこのテーマで番組を作ろうと思われたのはどうしてだったのでしょうか。

斉加 直接のきっかけになったのは17年3月、小学校の道徳教科書検定の結果が発表され、そこに付けられた検定意見が話題になっていたことでした。
 代表的だったのが、小学校1年生の教科書に収録されていた「にちようびのさんぽみち」という作品。子どもが自分の住む地域を散歩して「パン屋」で友だちに出会うという話なのですが、学習指導要領にある「国や郷土を愛する態度」に照らして扱いが不適切である、という検定意見が付いたのです。
 これを受けて、教科書会社は「パン屋」を「和菓子屋」に変更。「パン屋には愛国心が足りないというのか」「あんパンはどうなんだ」などと、インターネット上で論争が巻き起こっていました。

     (『教育と愛国』より。
      (c)2022映画「教育と愛国」製作委員会)


検定意見……学校で使用される教科書は、民間の教科書会社が編集・制作し、文部科学省による「検定」によって教科書として認定される。検定においては、文科省による「検定意見」が付けられ、それを受けて各教科書会社が修正を行った上で合否が判定されることになる。


──戦後ずっと「特別の教科」という位置付けだった道徳は、小学校で18年度、中学校で19年度から、教科書を使って教えられる正式な「教科」という扱いになりました。それに向けた最初の道徳教科書だったこともあって、大きな注目を集めましたね。

斉加 ただ、「教科書の問題をやらなきゃ」と強く思ったのはそれだけが理由ではありません。その10年以上前の06年に、高校日本史の教科書検定において、沖縄戦での「集団自決」についての記述に検定意見が付き、日本軍による命令や誘導があったと取れる記述が削除されるという出来事がありました。それを知っていたので、戦争の記述と「パン屋」、まったく違う話のように見えるけれど、根っこのところではつながっているのではないかと感じたのです。
 戦前・戦中の日本では、道徳は「修身」と呼ばれ、子どもたちに「忠君愛国」という一つの価値観を押しつけるような、今の言葉でいえば「日本ファースト」の教育が行われていました。戦後、道徳が正式の教科になってこなかったのも、そのことに対する反省があったからです。
 その道徳が73年ぶりに正式教科として復活する。もちろん、「修身を復活させるんだ」なんて言っている人はいなくて、学校でいじめが相次いでいるなどの問題に対応するためというのが表向きの理由でした。でも実際には、教科書検定において、「愛国心」について述べた条項に照らして不適切だ、という意見が付くということが起こっている。事態は思った以上に深刻なのかもしれないと考えて、番組の企画書を書いたのです。

──教科書については検定の問題の他、「学び舎」という教科書会社の中学歴史教科書を採用している学校に、大量の抗議はがきが送りつけられていたという話も出てきました。

斉加 学び舎の歴史教科書は、現場の教師たちがそれまで授業で重ねてきた実践を持ち寄り、独自に作ったもので、16年に初めて検定に合格しました。歴史的事実を単に暗記するのではなく、子どもたちにどのように歴史が作られてきたのかを考えさせ、問いかける内容になっています。それを「反日極左の教科書」などと決めつけ、採用に抗議するはがきが学校に届いているという話を番組の下調べ段階で耳にし、取材することにしました。
 当初は、実際に学び舎の教科書を使って行われている授業の様子を撮影取材したいと思い、いくつもの学校に申し入れたのですが、すべて断られました。誰からかは分からないけれど、ある意味で狙われ、脅されている状況にあるわけで、そんな中で取材は受けられない、と。結局、複数の学校から抗議はがきの現物だけは借りることができたので、それをカメラマンに撮影してもらいましたが、その学校からも「校名は伏せて欲しい」と強く言われました。
 そんなふうに、教科書検定だけではなく学校の現場に、有形無形の圧力が押し寄せている。これは絶対に取材しなくては、と思いました。

     (斉加尚代さん。インタビューはオンラインで行った)


教育をめぐる状況は、明らかに悪い方向へ進んでいる

──そうして制作されたテレビ版「教育と愛国」は、17年度のギャラクシー賞テレビ部門大賞を受賞するなど高い評価を受けました。それを今回、改めて映画化しようと考えられたのはどうしてでしょうか。

斉加 ギャラクシー賞受賞の当時から、「映画にしたらどうか」という声はいくつかいただいていました。でも、私自身はテレビの番組づくりで手一杯で、そんなのはとても無理だと思っていたんです。
 ところが、20年になって新型コロナの感染拡大が始まった後、過去の取材でお世話になった先生たちをはじめ、教員も子どもたちも、学校現場が疲弊しているのがわかりました。その背景にあったのが、20年2月末に安倍首相(当時)が、まだ全然感染者のいない地域もあったにもかかわらず突然の全国一斉休校要請を表明したこと。何も聞かされていなかった現場はもちろん大混乱、卒業式ができなくなって涙した子どもたちも多かったと聞きます。
 そもそも、首相が文科省の頭越しに「休校要請」をするなんて、教育の独立性を重視する戦後の教育基本法の考え方からすればまずあり得ません。ところがその後も、大阪では松井大阪市長が教育委員会に相談すらせず「オンライン授業を一斉に行う」と発言、またしても学校現場が翻弄されるという事態になった教育の独立性が危機にさらされている、このままでは学校現場で子どもたちに向き合う先生たちは、疲弊する一方だと感じました。
 加えて、ちょうどそのころ、テレビ版「教育と愛国」をある映画祭で上映していただく機会に恵まれたんです。大きなスクリーンで見てもらうと、またテレビとは反応が違うと感じて、「表現の場を変えて、映画という形で見てもらうのもいいのかもしれない」と少しずつ考え始めました。
 それでもまだ「難しいだろうな」という迷いがあったのですが、最終的に自分の中で「やろう」とギアが入ったのは、日本学術会議の会員任命拒否問題が起きたときです。


日本学術会議の会員任命拒否問題…日本学術会議は、政府への政策提言などを役割とする内閣府の特別機関。会員には理学・工学、人文・社会など幅広い分野の科学者が揃う。これまで、その会員は会議が推薦した候補者がそのまま任命されてきたが、2020年9月、菅首相(当時)は、会議が推薦した新会員候補105名のうち6人の任命を拒否。拒否を判断した具体的な理由も示されなかった。


──同じ20年の10月ですね。1年半以上が過ぎた今も、その「拒否」の理由について、納得のいく説明はなされていないままです。

斉加 それまでも、政府によって教育の自由が脅かされていると感じてきたけれど、そこにさらに特定の学者が官邸の意向によって排除されるという事態が起こった。教育の自由に加えて学問の自由にも政府が介入してきたわけで、一線を越える時代が到来してしまったんじゃないかと、強い衝撃を受けたんです。
 ここまで来てしまったのは、教育の自由や学問の自由の重要性に気づいていない人が多いからじゃないか。その責任の一端は、報じてこなかったメディア、そしてその一員である私自身にもある。だったら、これからでもより広く事態を伝えていくために、これまでの自分の仕事から垣根を越えて、表現の場を広げていかなきゃいけないんじゃないか──。そう感じて、「映画にしよう」とスイッチが入りました。

──映画化にあたって、たくさん追加取材をされたと思うのですが、もっとも力を入れたのはどのあたりでしょうか。

斉加 当初は、教科書検定制度をもっと詳しく描きたいと考えていました。でも、次々に取材拒否に遭ってしまって、関係者のインタビューがまったく取れなかったんです。

──関係者というと……。

斉加 教科書編集者や文科省の教科書調査官はもちろん、教科書を印刷している会社からも取材は断られました。「発行元の了解が得られない」とか「コロナ禍なので取材は受けられない」とか。
 特に、検定意見を付ける側の調査官には、どういう気持ちで意見を付けているのかをぜひ聞いてみたいと思っていました。教科書執筆者や編集者の側からすれば、調査官は「権力者」に見える。でも実際には、調査官は調査官でびくびくしながら意見を書いているという話も聞くんです。過去には、検定意見の内容について調査官個人を攻撃するような雑誌記事が出たこともあるので、自分が攻撃対象になったり、「この検定意見はおかしい」と裁判になったりするようなことがないようにと、相当迷いながら仕事をされているようなんですね。

──それは聞いてみたいですね。

斉加 そうでしょう。でも、結局は調査官に対する取材は一切できませんでした。インタビューなしで、調査官の姿を遠くから撮るだけでもダメ。調査官が教科書編集者とのやりとりをする部屋や、その看板の撮影も拒否されました。先ほどお話しした06年の沖縄戦の問題のときは撮影できており、局にも映像が残っているのですが……。
 文科省は、表向きは「教科書は民間出版社の創意工夫でつくられる」と言っていますが、それができるような空気ではないと感じます。制作に関わる人みんなが、文科省の顔色をうかがい、さらにはその向こうにいる政治家の顔色をうかがっているそんな教科書が、子どもたちのほうを向いてつくられているといえるのかという疑問がわきました
 そんなわけで、教科書検定の問題を深掘りしたいという構想は、方向を変えるしかありませんでした。それでも、日本学術会議の問題をはじめ、改めて50分番組を1本作れるくらいの追加取材はしましたね。


     (『教育と愛国』より。学び舎の教科書を採用した学校に
      寄せられた抗議はがき
      (c)2022映画「教育と愛国」製作委員会)


大阪は政治主導の教育改革の「実験台」だった

──最初のテレビ版の取材からは5年が経っているわけですが、取材の中で状況の変化は感じられましたか。

斉加 教育をめぐる状況は、明らかに悪い方向に進んでいると実感しました。コロナ禍も影響しているのでしょうが、それだけではないと思っています。

──映画の中に出てきた、大阪府市で次々に教育に関する条例が可決され、政治的介入が強められていく様子が非常に怖くて印象的だったのですが、その大阪でも教員不足などの問題が顕在化してきていますね。

斉加 橋下徹さんが大阪府知事に就任した08年以降、大阪では維新府政・市政の下で政治主導の教育改革が押し進められてきました首長や議会の権限を強め、市場原理を導入して学校間の競争を促し、教育委員会制度を変えて教育現場の管理を強化し……。府知事に就任して間もないころの橋下さんに「知事のやろうとしていることは教育ではなくて政治ですよ」とおっしゃった教育委員の方がいたのですが、その後起こってきたのはまさに「教育が政治の道具にされる」ということだったと思います。
 ただ、教育現場の変化というのは、法律が変わったからといってすぐに表れるものではありません。現場の先生たちはやっぱり子どもたちのほうを見ていますし、悪い方向に行かないように、なんとか踏ん張ろうとする。それでも踏ん張りきれなくなったころに、じわじわと変化が現れてくるものなんです。
 教育改革が始まった当時も、府市の教育委員を務める先生方が口々に、「維新がやろうとしている『改革』の結果は、5年後10年後に現れてくる」とおっしゃっていましたが、本当にそのとおりになった。この10年で、大阪の教育現場は激変したし疲弊してきたと感じています。

──それは、大阪だけの問題ではないように思います。同じようなことが、少し遅れて全国で起こりつつあるのではないでしょうか。

斉加 そうだと思います。教育委員会制度を見直し、首長の権限を強化する地方教育行政法の改正案が国会で14年に可決されたとき、橋下さんは「国が大阪に追いついた」と賞賛しました。そのように、政治主導の教育改革の先兵、実験台の役割を、大阪が果たしてきたということなんだと私は見ています。

──そうした流れの根っこにあるのは、やはり映画の中でも触れられていた教育基本法の改正でしょうか。改正されたのは今から15年以上前、06年のことですが……。

斉加 もちろんです。教育目標に「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する」という「愛国心条項」が加えられ、教育は「不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接的に責任を負って行われるべき」という、子どもの学習権をしっかりと保障していた条文が、「不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべき」と、法律に従ってさえいればそれでいいとも取れる条文に書き換えられてしまった。その影響は大きいと思います。
 ただ、ここでも現場はすぐには変わりません。第一次安倍政権のときに改定されて、そこから5年以上経った第二次安倍政権以降に、いよいよ改正の思惑が強く表れてきているということだと思います。


政治の教育への介入の先には「9条改正」がある

──「思惑」とは、政治の教育への介入を強めていくということだと思いますが、その最終的な目的はどこにあると思われますか。

斉加 私が検定合格した道徳の教科書を最初に読んだときの印象は、学習指導要領にある「道徳教育の内容」の中でも、「集団や社会とのかかわりに関すること」という徳目が非常に重視されているということでした。具体的には、規律やルールを守る、協調性を持ってみんなと仲良くする……つまりは、既存の秩序を守りましょう、ということです。
 ここが強調されるということは、既存の社会秩序をそのまま維持していくという、権力者にとって都合のいい方向に子どもたちを誘導しかねない。そのために道徳教育が使われようとしているんじゃないか、と思いました。
 たとえば、何社もの道徳教科書に出てくる話で「かぼちゃのつる」ってご存じですか。

──はい。畑で育っているかぼちゃがどんどんつるを伸ばして、やがて畑の外にまで伸びていこうとする。周りのミツバチやチョウも「だめだよ」と止めるけれど、かぼちゃは耳を貸そうとしない。結局、道路にはみ出たつるが車にひかれてしまい、かぼちゃは「痛い、痛い」と泣く……というお話ですよね。

斉加 あり得ないと思いました。ルールを破って道路にはみ出したから、車にひかれて罰を受けても当然ということですよね。とんでもない、つるを伸ばすのが得意なんだったら、どんどん伸ばしてみんなを喜ばせてあげてね、というのが本来の教育なんじゃないかと私は思うんですけど。

──政府の意向に逆らわない、政府の思うとおりに動かしやすい国民をつくるための教育をしようとしているように思えます。

斉加 そのための仕組みづくりがされていると感じますね。日本学術会議の問題だってそうでしょう。学術会議は戦後2度、科学者は国家のしもべにならない、戦争につながるような研究はしないと表明してきている機関ですから、今の与党政治が目指す方向とは異なる意見の人たちを排斥、排除しようとしているということだと思います。
 また、14年には教科書検定基準の変更が行われ、近現代史について政府見解に沿った記述が求められるようになりました。学問というものは、研究が積み上げられ、検証に検証を重ねてでき上がっていくものです。その学問の書であるはずの教科書に、時の政府の見解に沿った内容を書き込めというのは、教科書を教科書でなくせと言っているようなものです。

     (『教育と愛国』より。(c)2022映画「教育と愛国」製作委員会)

──結果として、一部の教科書では「従軍慰安婦」「強制連行」といった用語の書き換えも行われました


用語の書き換え……14年の教科書検定基準の変更を根拠に、菅内閣は21年4月、「『従軍慰安婦』または『いわゆる従軍慰安婦』ではなく、単に『慰安婦』という用語を用いることが適切」「(朝鮮半島から日本に連れてこられた人々について)『強制連行された』もしくは『強制的に連行された』または『連行された』と一括りに表現することは、適切ではない」などとする答弁書を閣議決定した。これを受け、この年の教科書検定では、一部の教科書会社が高校の地理歴史・公民などの教科書の記述を「従軍慰安婦」を「慰安婦」、「強制連行」を「徴用」などと修正した。


斉加 一つの国の歴史をさかのぼれば、そこには必ず加害と被害の両面があります。その加害の面から目を背けようとする流れが強まったとき、行き着く先は「加害を反省しない」ということ。それは周辺諸国との対立を呼び込み、戦争へと向かってしまう恐れすらあると思います。
 自分の生まれ育った地域や国が好きだという気持ちは、自然に生まれてくる分にはいいけれど、国家権力が主導して「愛国」と叫びだしたとたん、他の国、他の民族を否定して排斥することにつながり、戦争の芽を育てる土壌になっていきます。だから、差別的な言説は決して放置してはいけないし、差別や偏見を解消するためにも歴史を多角的に理解することが必要なはずです。それなのに、「ニッポンは素晴らしい」というような単純な歴史観に染まった人たちの声が大きくなっている現状はとても危うい。歴史を政治の道具にする「歴史戦」という言葉が、公共放送の電波にそのまま乗るという事態も、「ここまで来たのか」と思いました。
 そう考えていくと、こうした教育への政治の介入の先には、やはり憲法、それも9条を変えたいという狙いがあるのではないかと感じます。そもそも、01年に産経新聞に掲載された記事によれば、教育基本法改正は憲法改正と不可分だと、中曽根元首相が明言しているんです。「教育基本法はその(改憲の)根を作る意味で、憲法に先駆けて改正しなくてはならない」とはっきり言っている。その意向を受けた安倍さんが、そこから5年後に教育基本法改正を実行することになるわけです。
 そして、その安倍さんが支援していた「育鵬社」の歴史教科書では、不自然なほど天皇の存在が強調されていたり、平和主義を解説すると同時に自衛隊の役割が賞賛されていたりする。断言はできませんが、教科書に圧力をかけてきた人たちの中には、やはり憲法を、9条を変えたいという思惑があるのではないでしょうか。


歴史戦……「中国・韓国などが、慰安婦問題をはじめとする嘘の歴史認識を世界に広め、日本を不当に攻撃している」という前提のもと、「それを黙って受け入れるのでなく、戦って歴史認識を正していくべきだ」という考え方を意味する言葉。これまでにも一部メディアやインターネット上で用いられてきたが、22年1月にNHKが佐渡金山世界文化遺産登録問題について報じるニュース番組の中で「歴史戦」に言及。官邸が政権の歴史認識に基づき歴史的事実を集めて検証を進める「歴史戦チーム」を作って活動している、などと述べた。


報道ではなく「ビジネスの論理」で動いているメディア

──さて、斉加さんは4月に『何が記者を殺すのか 大阪発ドキュメンタリーの現場から』(集英社新書)という著書も出版されました。在阪のメディア、特にテレビについては、吉村大阪府知事はじめ「維新の会」の政治家が連日のように出演していることが指摘されるなど、その公平性、公共性に疑問を呈する声も強まっています。その中で仕事をしていてどう感じておられますか。

斉加 かつての戦争のとき、国営の放送局は当局発表を一切検証することなく、そのまま垂れ流し続けました。いわゆる大本営発表ですね。実際には戦局が不利になっているのに、日本は勝っているんだと報じ、戦争を煽り続けた。民間放送は、そのことへの反省から生まれたのだから、きっちりと権力を監視し、戦争につながる芽を摘んでいかなくてはならない。そうして平和な社会を築いていくためにこそ、私たちの存在があるんだ──。私はずっと、局の大先輩たちからそう聞かされてきました。
 だから、政治家の人気が高まり、支持率が上がれば上がるほどきっちりと監視をしていかなければならない、その政治家の政策が本当に府民や市民、国民のためになっているかをチェックしていかなくてはならないと考えてきました。その仕事のやり方は、入社してから30年あまり、ずっと変わっていないつもりです。
 ただ、周りのほうが変わったと感じることがあります。

──それは、どのようなことでしょう?

斉加 かつては、報道番組は視聴率の話なんてするな、数字は二の次で、今伝えるべきニュースは何かをまず考えろと言われました。現場を見て感じて、今の社会に必要なニュースを探してくるのが報道記者やディレクターの役割なんだと。私も、番組の企画を立てるときに視聴率を優先するようなことは一度もしてきませんでした
 それがいつからか、これなら視聴率を取れるとか、ネットに記事を出したときにページビューを稼げるとか、そういう言い方がされるようになってきた。「人気がある政治家がいるのなら、どんどんテレビに出てもらえばギャラなしで情報番組の枠が埋まって視聴率も取れる」と考える、そういうビジネスの論理が幅を利かせるようになったと感じています。

──メディアが、報道ではなくてビジネスの論理で動いている……。

斉加 そうした、視聴率を取れるのがいい番組だという価値観に現場が染まってしまったら、言論空間はどんどん歪んでいってしまう。お金のある人、力のある人が言論空間を掌握する世界になっていってしまうのではないでしょうか。それはとどのつまり、穏やかに暮らす普通の人々を苦しめることになっていくと思います。

──そうした空気の中で「視聴率のためではない」お仕事をしようとすることには、難しさもあると思います。斉加さんご自身、取材する中で政治家から罵倒されたり、インターネット上のバッシングにさらされたりといった経験をされていますが、怖いと感じることはありませんか。

斉加 相手が何者なのか「分からない」ことのほうが怖いですね。インターネット上でヘイトスピーチを繰り返している人たちの取材をしたときも、実際に会うまでは「どんな人たちなんだろう」と少し怖さもあったのですが、相手の姿がはっきりと見えることで怖さが薄まると感じました。自分自身にも、取材に行くのが怖いと感じるときは「取材すれば怖くなくなる」と言い聞かせています。
 それに、差別やヘイトをばらまく人や政治家もちろん怖いけれど、もっと怖いのはそれを支持する人たちです。みんなが無視していれば、その人は差別をばらまくこともできなくなるはずだし、政治家なら選挙で落ちて消えていくはずなのに、そうはなっていませんよね。そこがとても怖いと思っています。

──政治家が非常に差別的な発言をしても、なんとなくうやむやになって終わってしまう、という現状があります。

斉加 心の中で「何かおかしい」と思っている人たちも、それをなかなか口には出さないし、出せない。それが今の社会を覆っている閉塞感の一番の原因ではないでしょうか。だから今回の映画も、見て「何か変だな」「引っかかるな」と思う場面があれば、それについて周りの人と語り合ってほしい、ほんの少しでも社会に対してもの申してほしいと考えています。今こそいろんな人たちが「それおかしいよね」と言わなければ、社会全体がもっと悪い方向へ行きかねないと思うんです。
 もう私たちは、その悪い方向への「曲がり角」を曲がってしまったのではないかと迷いながら、それでもまだ間に合うかもしれない、という思いもあってこの映画を作りました。現場の教員のみなさん、教員を目指す若い人たち、子育て世代……幅広い層のいろんな方たちに見て、考えてほしいと思っています。

(取材・構成/仲藤里美)



映画『教育と愛国』
東京、大阪など全国順次公開中
公式サイト https://www.mbs.jp/kyoiku-aikoku/



斉加尚代(さいか・ひさよ) 1987年に毎日放送入社後、報道記者を経て2015年からドキュメンタリー担当ディレクター。担当番組に『なぜペンをとるのか──沖縄の新聞記者たち』『沖縄 さまよう木霊──基地反対運動の素顔』『バッシング──その発信源の背後に何が』など。著書に『教育と愛国──誰が教室を窒息させるのか』(岩波書店)『何が記者を殺すのか 大阪発ドキュメンタリーの現場から』(集英社新書)がある。
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●核発電「麻薬」中毒患者・経産省の教育介入と大きな勘違い…《学校の授業とは国策をPRする場ではない》

2018年04月27日 00時00分07秒 | Weblog


東京新聞の記事【講演の原発説明 変更要求 北海道経産局、ニセコ高で】(http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201804/CK2018040602000140.html)と、
社説【エネルギー教育 原子力への不信は募る】(http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018041702000157.html)。

 《経済産業省北海道経産局が講師の大学助教に原子力発電に関する説明を変更するよう事前に求めていたことが分かった。一部住民は「教育への介入だ」と問題視。経産局は「中立公平な内容とするため助言した。不当行為ではない」としている…経産局の職員が山形助教の研究室を訪れ、講演資料にあった原発の発電コストに関する記述や東京電力福島第一原発事故の写真について、「特定の見方に偏っている」「印象操作なので使わないでほしい変更を求めた…山形助教は…「要求の対象が原発に集中し、違和感があった。教育への介入という観点からも容認し難い」》

 《「介入」とされても仕方あるまい。高校の公開授業。原発の危険性などを指摘する内容を、経済産業省の出先機関が「偏向」と決め付けた教育に対する姿勢に偏りがあるのはどちらの方なのか。経産省というか、霞が関も永田町も、何か大きな勘違いをしていないか。学校の授業とは国策をPRする場ではない


 核発電「麻薬」中毒患者までもが、教育に介入。

   『●「こりゃ違憲!」『週刊金曜日』
      (2012年11月23日、921号)についてのつぶやき
    「平井康嗣編集長後記「…思想教育に介入する。…強力な発信者の
     猜疑心…今、日本には猜疑心が蔓延…。橋下市長は「バカ」(発言の
     多い)石原前都知事を「強いリーダー」と評したが、
     「バカ前知事には何の業績があるのか。…」」

   『●「安倍首相と戦争」 『週刊金曜日』
       (2014年11月7日、1015号)についてのつぶやき
    「俵義文さん【徹底追及「慰安婦」問題の本質 自民党による
     教育への介入で何が起きたか こうして「慰安婦」記述は教科書から
     消された】、「自民党政府は「河野談話」を継承すると言いながら、
     そこで約束された「慰安婦」問題の教育を妨害してきた」」

   『●「10・23通達」と教育破壊:
      「石原都政では、教育行政も歪められた。…愛国心教育を強制」
    《ところが、当の慎太郎は「文學界」(14年3月号)のインタビューで
     「僕、国歌歌わないもん。国歌を歌うときはね、僕は自分の文句で
     歌うんです。『わがひのもとは』って歌うの」と話していた。他人には
     強制しておきながら、こんなフザけた男が教育に介入する資格が
     あるのかどうか》

   『●「EMを超能力だと教える向山のやり方の本質を表現するのに
                 多くの言葉はいらない…愚民教育」と一刀両断
    《「家庭教育支援法案」は、〈保護者が子に社会との関わりを自覚させ、
     人格形成の基礎を培い、国家と社会の形成者として必要な資質を
     備えさせる環境を整備する〉〈保護者が子育ての意義を理解し、
     喜びを実感できるようにする〉…などと規定し、それに沿った基本方針を
     国や自治体が協力する、という内容。公権力が家庭内の教育に介入する
     ことを定める法案なのだ。しかも、この法案は、安倍首相が会長となり
     2012年4月に発足させた「親学推進議員連盟」が立法化を宿願としてきたもの》

   『●保育所・幼稚園の幼児「教育」の破壊: 
      ハタやウタで「将来の国民としての情操や意識の芽生えを培う」?
   『●大見得・啖呵「議員辞職」を有言実行しない
      《病的な嘘つき》アベ様…全てのアベ様の「政」のデタラメさ

 《原発の発電コストに関する記述》の何が御不満? 

   『●「原発安価神話」崩壊
    「記事によると「原発の発電コストは1キロワット時当たり最大17・4円と、
     民主党政権時代に行われた政府の試算値の約2倍になるとの試算」
     だそうですが、それでも甘目か? 原発が「経済的メリット失った」のは
     前から自明でしょうに。「原発安価神話」は既に崩壊。」

   『●関西電力の「原発再稼働」への言い訳にさせてはいけない
    「原発の稼働が発電コストの低減になるという関電側の主張も退ける
     極めて多数の人々の生存そのものにかかわる権利と、電気代が
     高い低いの問題とを並べて論じること自体、許されない
と、怒りさえ
     にじませているようだ。経済神話の否定である」
    「大飯再稼働、差し止め命じる 生存と電気代、同列許さず
    「また、生存権と電気代のコストを並べて論じること自体が法的には
     許されない
ことで、原発事故で豊かな国土と国民生活が取り戻せなく
     なることが「国富の喪失」だと指摘。福島事故は「わが国が始まって
     以来、最大の環境汚染」であり、環境問題を原発推進の根拠とする
     主張を「甚だしい筋違い」と断じた」
    「「極めて多数の人の生存そのものに関わる権利と電気代の高い低いの
     問題とを並べた議論の当否を判断すること自体、法的には許されない

     として、経済活動よりも生存に関わる人格権を優先した」

   『●「日本は直ちに原発ゼロでやっていける」: 
      小泉氏は自公議員一人一人を訪ねて行って、説得してはどうか?
    《再稼働は間違っている。全国で1基も稼働しない『原発ゼロ』の状態は
     2年近く続いていたが、寒い冬も暑い夏も停電したことはなかった。
     日本は直ちに原発ゼロでやっていけることを証明」、「政府や電力会社が
     説明する原発の安全性や発電コストの安さに関して「全部うそ
     福島の状況を見ても明らか
。原発は環境汚染産業だ」と痛烈に批判》

   『●再稼働ありきの「世界最高水準の規制基準」という
                         「世界一の無責任」さ

 発電コストについて、大島堅一さんと話してみてはどうか?

   『●東京電力、8割弱の株主の目は節穴か?
   『●電気料金値上げ論: 「1倍か、2倍か」じゃなく、「2倍以上か、1倍以下か」
   『●核燃サイクル: 核燃料再生率に根拠無し、15%どころか1%?
    《◆裏切られた思い コスト等検証委の大島堅一立命館大教授
     (経済学)の話 原子力の専門家には敬意を払って会議に参加しており、
     科学的な数値は信用していた。根拠がなかったとは驚くし、
     裏切られた思い。数値を守ろうとした揚げ句、訳が分からなくなった
     のではないか。コスト等検証委は「聖域なき検証」をうたっていたが、
     費用計算全体が疑わしくなった。再計算が必要だろう》

   『●湯水のごとくカネ浪費:核燃料サイクルに十二兆円を
       ドブガネし、今後も毎年千六百億円ずつ増えていく悪夢
    《<大島堅一・立命館大教授(環境経済学)の話> 実現の見通しが
     立たない核燃料サイクルに、十二兆円以上が費やされてきた事実は
     深刻に受け止める必要がある。何も生み出さない事業に、今後も
     毎年千六百億円ずつ消えていくのは、民間企業ではあり得ず、
     異常な事態といえる。(もんじゅ問題は)核燃サイクルに見切りを
     つける大きな好機ではないか。国民も、自分のお金が税金や
     電気料金の一部として、見込みのない事業に使われている現実を
     よく考える必要がある》

   『●「(悪)夢の高速増殖炉」もんじゅの延命に向かって着々と…
                     ドブガネという巨額の「エサ代」は続く
    「《経営に原子力以外の分野の有識者を加える》ということなので、
     大島堅一さんや金子勝さんを加えては如何ですか? それに、
     そんな硬いことを言わずに小出裕章さんや後藤政志さんを入れて
     下さいナ。
       ついでなんで、「反核燃料サイクル派」(転向、寝返り、
     取り込まれ済み)河野太郎行革担当大臣も入れては?」

   『●「核発電は安い」と言っておきながら、
      「原発の電力を使っていない消費者にまで負担を強いる方針」
    《電力問題に詳しい立命館大の大島堅一教授は「矛盾は明らかで、
     福島第一原発のように最終的にいくらになるのか分からない費用が
     あったり、超長期にわたって費用を積み立てなければならない
     不安定な電源を『安い』とは言えない」と話す》

 核発電「麻薬」中毒患者は勘違いしているようだ。《教育に対する姿勢に偏りがあるのはどちらの方なのか。経産省というか、霞が関も永田町も、何か大きな勘違いをしていないか。学校の授業とは国策をPRする場ではない》。

   『●前川喜平さん授業…検閲と恫喝、《意に沿わない人物は潰す――。
                       …安倍政権のやり口は、まさに恐怖政治》
    《文科省が市教育委員会を通じ、授業内容の確認や録音データの提出を
     求めていた…前川氏は面識のあった校長から、総合学習の時間の講師に
     招かれ、不登校や夜間中学校、学び直しなどについて語った

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http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201804/CK2018040602000140.html

講演の原発説明 変更要求 北海道経産局、ニセコ高で
2018年4月6日 朝刊

 北海道ニセコ町の町立ニセコ高で昨年十月、国の委託事業の一環として開かれたエネルギー問題の外部講演を巡り、経済産業省北海道経産局が講師の大学助教に原子力発電に関する説明を変更するよう事前に求めていたことが分かった。一部住民は「教育への介入だ」と問題視。経産局は「中立公平な内容とするため助言した。不当行為ではない」としている。 

 ニセコ高は二〇一七年度、経産省資源エネルギー庁の委託で日本科学技術振興財団が実施するエネルギー教育モデル校事業の対象に選ばれた。昨年十月十六日、北海道大大学院の山形定(さだむ)助教が原子力や火力、太陽光などエネルギーの特徴をテーマに講演した。

 町教育委員会などによると、町から山形助教を紹介された高校が、講演の計画書を財団に提出した。その後、経産局の職員が山形助教の研究室を訪れ、講演資料にあった原発の発電コストに関する記述や東京電力福島第一原発事故の写真について、「特定の見方に偏っている」「印象操作なので使わないでほしいと変更を求めた。

 山形助教は、自然エネルギーの事故リスクに関する内容を追加したが、変更には応じなかった。取材に対し、「要求の対象が原発に集中し、違和感があった。教育への介入という観点からも容認し難い」と話した。

 ニセコ町は、北海道電力泊原発(泊村)の三十キロ圏内にある。町によると、経緯を知った住民の一部が問題視し、昨年十二月~今年三月に住民説明会を三回開いて片山健也町長らが対応した。

 町教委の菊地博教育長は取材に対し、「高校に直接要求したわけではないので、教育への介入に当たるかどうか判断は難しい」と語った。


◆「教育内容への不当介入」

<姉崎洋一・北海道大名誉教授(教育法学)の話> 現在の原子力行政の推進を前提にした、教育内容への不当な介入に当たるとみられる。大学の研究者には学問の自由があり、科学的な判断に基づいて講演内容を構成する。主催者とはいえ、事前に研究者の部屋を訪ねてまで講演内容の修正を迫ることは問題だ

<泊原発> 北海道泊村にある北海道電力の加圧水型軽水炉。営業運転開始は1号機が1989年6月、2号機が91年4月、3号機が2009年12月で、出力は計207万キロワット。3基とも停止中。
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http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018041702000157.html

【社説】
エネルギー教育 原子力への不信は募る
2018年4月17日

 「介入」とされても仕方あるまい。高校の公開授業。原発の危険性などを指摘する内容を、経済産業省の出先機関が偏向と決め付けた教育に対する姿勢に偏りがあるのはどちらの方なのか

 経産省というか、霞が関も永田町も、何か大きな勘違いをしていないか学校の授業とは国策をPRする場ではない

 昨年十月のことである。北海道ニセコ町の町立ニセコ高校で「ニセコでエネルギーと環境を考える」と題する公開授業が開かれた。

 ニセコ高校は、経産省資源エネルギー庁の委託によるエネルギー教育モデル校になっており、公開授業はその一環として開催された。講師は北海道大の助教。専攻は環境管理工学という。

 講師から学校側へ事前に送られた講演資料に、経産省の出先である北海道経産局の幹部がクレームをつけた。

 資料には、水素爆発を起こした福島第一原発の写真とともに、原発のリスクやコストの高さが示されていた。そこを取り上げ、「特定の見方に偏っている」として、「(原発は危険との)印象操作なので使わないでほしい」と要請したというのである。

 助教は、「どのエネルギーにも危険はある」との指摘をいれて資料写真の追加はしたが、講演内容の変更には応じていない。

 ニセコ町は3・11後に停止中の北海道電力泊原発三十キロ圏の緊急防護措置区域(UPZ)にあり、避難計画の策定を国に義務付けられている。今現に、原発事故の恐れがあるということだ。

 万一の事故から身を守るため、スムーズに避難するため、原発のリスクについては、どれだけ学んでも学び過ぎるということはないはずだ。その上でエネルギーのあり方、使い方について、それぞれに考えてもらうのが、授業の狙いではなかったか。にもかかわらず、原発の安全性に疑問を呈する専門家の考えを、経産局は「偏っている」と決め付けた。

 原子力規制委員会の審査で北海道電は、泊原発1、2号機の直下に断層があることを明らかにした。再稼働へのハードルは高い。「再稼働に偏っているとの印象を与えそうなのは果たしてどちらの方だろう

 経産局の一存か、今はやりの忖度(そんたく)が働いたのかは定かでないが、このような“教育”をしていては、原発や原子力行政に対する不信が、なおさら募るだけである
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●「安倍首相と戦争」 『週刊金曜日』(2014年11月7日、1015号)についてのつぶやき

2014年11月10日 00時00分01秒 | Weblog


週刊金曜日』(2014年11月7日、1015号)について、最近のつぶやきから、AS@ActSludge。

 今週のブログ主のお薦めは、横田一さん【今月の百田尚樹NHK経営委員/国会議員を中傷し「国会に呼べ」 『正論』講演会でも暴言を連発】と【佐々木実の経済私考/知識人とは何か 宇沢弘文の「自己を見返す力」】。

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■①『週刊金曜日』(2014年11月7日、1015号) / 創刊21周年記念号『葬られる戦後平和主義 安倍首相と戦争』。まさのあつこ氏【安倍首相が国際法曹協会で「法の支配」スピーチ 参加弁護士からは批判の声】。アベ様の「闇社会」「暴力団人脈」問題なんて観点からも冗談としか思えない(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/beae9170eb3ab970e4aa27aaf77124cc

■②『週刊金曜日』(2014年11月7日、1015号) / 松岡瑛理・兼子草平氏【東京大行進の裏で在特会は〝ひっそり〟デモ 差別のない社会を呼びかけ】、「差別のない世界を、子どもたちへ」。自民党には「在特会のシンパ」まで居る始末ですョ(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/62a82250c5ba66a70f10829a76237225

■③『週刊金曜日』(2014年11月7日、1015号) / 永田浩三氏【籾井会長に元職員ら1700人 「辞任」か「罷免を」】、「まだまだ増える勢いで、理事や局長クラスの経験者を含め、元職員の10人にひとりが署名」。 百田尚樹氏、長谷川三千子氏ら経営委員問題からして酷い(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/58e212b5dfd5f86bcc2fa64d5d490603

■④『週刊金曜日』(2014年11月7日、1015号) / 北村肇さん【風速計/「道徳」教科化を笑う】、「・・・・・・一方で笑いをかみ殺す自分がいる。単にばかばかしいだけではない・・・・・・自らの首を絞める愚策に気づかない愚かさを笑うのだ・・・・・・原発やヘイト・スピーチについてはどうやってテーマから外すのか」

■⑤『週刊金曜日』(2014年11月7日、1015号) / 北村肇さん【風速計/「道徳」教科化を笑う】、「「積極的平和主義」・・・・・・「愛国主義」との整合性をどう図るのかという難問が生じる・・・・・・安倍的「道徳」は迷走するしかない」。「●石坂啓さん「道徳心とか愛国心とかがコドモたちにとって安全かどうか、なぜ疑ってかからない」」(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/dc4c24b29918e25ab0b0fc84e0bc0a3b

■⑥『週刊金曜日』(2014年11月7日、1015号) / 【大村アスカの政治時評/女性の看板、通用せず 自民とカネの病巣深く】、「姫と普通の人と。どちらもがはまってしまうところに、政治とカネの問題の根深さがある」。アベ様はカネに意地汚いだけでなく「闇社会」「暴力団人脈」・・・(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/beae9170eb3ab970e4aa27aaf77124cc

■⑦『週刊金曜日』(2014年11月7日、1015号) / 【佐々木実の経済私考/知識人とは何か 宇沢弘文の「自己を見返す力」】、「宇沢は、ミルトン・フリードマンを頭目とするシカゴ学派を指弾」。「●「大切なものは決してお金に換えてはいけない」: 「宇沢弘文氏が蛇蝎の如く嫌った新自由主義」」(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/6bee2c20c8956375296f62c17808d11b

■⑧『週刊金曜日』(2014年11月7日、1015号) / 横田一さん【今月の百田尚樹NHK経営委員/国会議員を中傷し「国会に呼べ」 『正論』講演会でも暴言を連発】、「土井たか子氏への「売国奴」発言と報道・・・・・・公平中立が求められるNHKに、こんな経営委員が居座っていいのか

■⑨『週刊金曜日』(2014年11月7日、1015号) / 俵義文さん【徹底追及「慰安婦」問題の本質 自民党による教育への介入で何が起きたか こうして「慰安婦」記述は教科書から消された】、「自民党政府は「河野談話」を継承すると言いながら、そこで約束された「慰安婦」問題の教育を妨害してきた」

■⑩『週刊金曜日』(2014年11月7日、1015号) / 【公開誌上討論1/本多勝一氏×藤岡信勝氏】、「(藤岡氏 南京戦はあったが)南京事件はなかった 「被害者」はゼロ」「(本多氏)「現場」は生存者の記憶にある」。【・・・・・・「公開質問」】(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/00779ae3f3a025e746bcaa10e8e90cc9

■⑪『週刊金曜日』(2014年11月7日、1015号) / 【対談 軍拡のドミノ倒しが始まる 半田滋×山口二郎】、「理屈付ければ何でもOK・・・・・・後方支援だって戦争・・・・・・9条が自衛隊を守った」。「自衛隊の活動している所は非戦闘地域」内外では一体何が起きていたのか?(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/b7bf174830af46389179f7c8999df6c9

■⑫『週刊金曜日』(2014年11月7日、1015号) / 鎌倉孝夫氏【やはりおかしい新自由主義政策 アベノミクスで進む窮乏化と戦争の危機】、「1 ばれる安倍首相の虚言・・2 搾取・収奪で窮乏化が進展・・3 帝国主義的戦争の危機」。ドアホノミクス(© 浜矩子さん)推進中(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/eed491456e904b2a247a479b9638cc50
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●「韓と恨」と日本人/『週刊金曜日』(2013年1月25日、928号)、927号についてのつぶやき

2013年01月27日 09時26分29秒 | Weblog


『週刊金曜日』(2013年1月25日、928号)についてのつぶやき。

 酷い2週間・・・。ようやく一息。ついでに、先週の分はブログ上に。

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週刊金曜日』(2013年1月25日、928号) / 到着。「「韓と恨」と日本人」、「東北大学前総長の研究費不正問題が泥沼か」、「外務省が年末に公表したイラク戦争検証結果のひどい中身」。片岡伸行氏「規制委検討チーム、電力会社などから4500万円受け取る 4人のメンバー解任を要請」

『週刊金曜日』(2013年1月25日、928号) / 真野きみえ氏「大阪市民ががれき処理で監査請求 公権力行使に頼る橋下市政」。宇都宮健児さん「風速計 都知事選を闘って」。「谷村智康の経済私考 震災対策で、教訓が活かされているか 「鎮魂」報道の前に、現実を踏まえた報道を」

『週刊金曜日』(2013年1月25日、928号) / 平井康嗣氏選「本箱」の一つ、『僕たちの時代』青木理久田将義=著、毎日新聞社。中嶋啓明さん「長官銃撃国賠判決 司法制度の根幹ゆるがす低劣なメディア」。投書のいくつかは、亡くなったベアテ・シロタ・ゴードンさんについてなど
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つぶやけなかった先週号。

 『週刊金曜日』(2013年1月18日、927号) / 「本物のニセモノがやってきた 猪瀬直樹都知事に次ぐ」。佐高信さん緊急対談「尖閣を弄ぶな」。
 編集部「安倍政権の民意無視の姿勢に危機感 「原発ゼロ見直しは許されない」。粟野仁雄さん「大阪市体罰自殺事件で学校を擁護する保護者も 橋下氏、教育への介入強化か」。本多勝一さん「風速計 「尖閣」以上に「千島」こそ」。
 半田滋氏「繰り返される安倍首相の「ごまかし」 集団的自衛権行使を突破、憲法はなし崩し、失われる自民党の矜持」。
 「青島顕の政治時評 戦争体験者が少なくなった今 「戦争否定の切々たる志」をどう引き継ぐかが問われる」。
 横田一さんによるインタビュー。桜井よし子氏「凄まじい卑劣さを監視する必要がある」・・・驚き(笑)の猪瀬氏批判! さらに、横田一さん「官僚や道路族議員に擦り寄った「偽りの民営化」 笹子トンネル事件を招き高速整備認めた〝改革派〟」。野中大樹氏「石原前都知事を継承しているようでしていない〝実務家〟 都知事の周辺に漂うこれだけの不協和音」。
 「竹信三恵子の経済私考 アベノミクスは高度成長期の張りぼて 一皮むけば「お友達」への大盤振る舞い」。
 きんようぶんか「本」、鈴木耕氏書評「未曽有の「うねり」 内部から率直に語る」、『金曜官邸前抗議 デモの声が政治を変える』、野間易通=著、河出書房新社。
 企画・構成 矢崎泰久さん『話の特集』。小室等さんの「なまくらのれん/佐高節と小出節」、「福島原発事故の下、現在日本は非常時なのに、その認識が希薄な折も折、小出裕章佐高信の対談本『原発と日本人』(角川oneテーマ21)がいい・・・」。同書のことは田中正造に絡めて、「金曜日から」で神原由美氏が。
 青木理さん「司法を正す 第1回 三井住友銀行の元支店幹部を訴えている林秀子さん 「土地売買の21億円が知らぬ間に消えた」」。
 山口正紀さん「大手新聞元旦社説 危険な〈安倍壊憲〉を無視」。高嶋伸欣さん「米国と同じ価値観? 安倍政権の暴走を指摘できない報道界」。
 石坂啓さん「初めて老いった!? 第31回/ブラックジャックは年をとらない」。
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