[↑ ※大川原化工機冤罪事件 国賠訴訟『警察・検察捜査再び「違法」/東京高裁 国・都に賠償命令/輸出規制の解釈「不相当」』『違法捜査「謝罪、検証を」/原告「再発防止策 急いで」/捜査は事実に従うのが絶対/長年の体質 自浄作用望めず』/『公安独自解釈で始まった不正輸出事件―――捜査員「捏造だ」/聴取291回 作った「国家的事件」の図/保釈認めず病で死去 裁判所の責任は/[視点] 警察・検察 原因検証し公表と対策を』(朝日新聞、2025年5月29日[木])] (2025年06月12日[木])
国と東京都は上告を断念。当然だろう。東京高裁でも、警視庁公安部と東京地検は完敗したのだから。早い段階で、「大川原化工機」への捜査関係者と思われる匿名の方からの善意の通報が無ければ、もっと泥沼になっていた、綱渡りだった。それがあったから黙秘を貫けた (升味佐江子さん。後述のデモクラシータイムス、1:34:19辺り)。
なにもかも噴飯やるかたない、(保釈を認めなかった)裁判所にも大きな責任。(東京新聞社説)《捜査当局が無辜(むこ)の市民を犯罪者に仕立てようとした》…完全なるでっち上げ事件、大川原化工機冤罪事件。人質司法による無辜の市民の死、最早、取り返しがつかない。死者は蘇らない。いくら賠償額が高くなっても、取り返しがつかないし、会社の被った損害は計り知れない。噴霧乾燥機で世界的シェアを持ち、高い技術力のある企業を、あり得ない〝妄想〟で潰そうとした。あり得ない〝妄想〟で、事件を、また、在りもしない犯罪を、でっち上げた。そして、「推定無罪」原則なんて、どこに消え去ってしまったのか?
『●《捜査当局が無辜の市民を犯罪者に仕立てようとした》完全なるでっち上げ、
大川原化工機冤罪事件…「人質司法」による無辜の市民の死、消えた「推定無罪」』
『●木納敏和裁判長は《計13兆円超の支払いを命じた一審東京地裁判決を取り
消し》…《「大川原化工機」…相嶋静夫さん…死亡》でも遺族側の控訴を棄却』
[↑ ※大川原化工機冤罪事件 国賠訴訟『警察・検察捜査再び「違法」/東京高裁 国・都に賠償命令/輸出規制の解釈「不相当」』『違法捜査「謝罪、検証を」/原告「再発防止策 急いで」/捜査は事実に従うのが絶対/長年の体質 自浄作用望めず』/『公安独自解釈で始まった不正輸出事件―――捜査員「捏造だ」/聴取291回 作った「国家的事件」の図/保釈認めず病で死去 裁判所の責任は/[視点] 警察・検察 原因検証し公表と対策を』(朝日新聞、2025年5月29日[木])]
[↑ ※大川原化工機冤罪事件 国賠訴訟 上告断念 『大川原化工機訴訟 都・国、上告断念/「違法捜査」判決確定へ/警察・検察 謝罪、検証へ』『冤罪「やっと謝罪」でも/消えない怒り「時間戻してほしい」/公安「捜査指揮に問題あった」/検証こそ最大の償い ジャーナリスト江川紹子さん/外部も交えて「暴走」解明を』(朝日新聞、2025年6月12日[木])]
東京新聞の記事【冤罪事件の訴訟、上告断念で調整 「大川原化工機」巡り、都と国】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/410191)によると、《機械製造会社「大川原化工機」(横浜市)の社長らが外為法違反罪で逮捕・起訴された冤罪事件を巡る訴訟で、警視庁と東京地検による一連の捜査を「違法」と認め、東京都と国に計約1億6600万円の賠償を命じた東京高裁判決に対し、都と国が上告しない方向で調整していることが7日、関係者への取材で分かった。上告に必要な憲法違反などの理由を見いだすのが難しいと判断しているとみられる。期限は11日。会社側代理人の高田剛弁護士は「断念するのは当然と考える。国や都にとって、最高裁で争うのは得策でないのは明らかだ」とコメント。9日には上告断念を求め、オンラインで集めた署名を警視庁などに提出するという。警視庁公安部と東京地検は、同社が生物化学兵器に転用可能な「噴霧乾燥装置」を不正に輸出したと判断し立件。だが、地検は初公判直前になり、罪に当たるかどうか疑義が生じたとして起訴を取り消した。5月28日の高裁判決は、一審東京地裁判決に続き、公安部と地検が装置の検証を怠ったとして逮捕・起訴の違法性を認定した》。
完全なるでっち上げ事件、大川原化工機冤罪事件…国と東京都の上告断念により《逮捕・起訴の違法性》が確定。警視庁公安部と東京地検による検証? 大丈夫?? 折角の「未来志向型の検証」アンケートへの《回答を廃棄》した〝前科〟ありなのですが…。《中島寛公安部長は19日にあった会見でアンケートの存在や破棄された事実を認めた上で、アンケート結果については「課の組織運営や業務管理に活用した」と述べた。アンケートについては、9月の東京都議会でも取り上げられていた。五十嵐えり都議(当時、現・衆院議員)が実施の有無などについて質問し、緒方禎己警視総監が「訴訟が係属中なので、お答えは差し控える」と答弁していた》(アサヒコム、2024年12月25日)。
第三者による検証が必要なのでは。関係者への謝罪は当然として、裁判で証言したが故に虐げられたのではないかと思われる捜査関係者* の名誉の回復も必要。でも、憤死させられた相嶋静夫さんの命は戻ってこない。(*: デモクラシータイムス[https://www.youtube.com/watch?v=cCfvOopL284、1:29:40辺り]、A〜Cの3人の警部補。A警部補「まあ、捏造ですね 捜査員の個人的な欲でそうなった (一審証言)」、B警部補「捜査幹部がマイナス証言を全て取り上げない姿勢があった (一審証言)」、C警部補「(立件しなければならない理由は) 日本の安全を考える上でもなかった (二審判決)」。)
NHKの記事【大川原化工機 えん罪事件 都と国上告せず 謝罪 検証へ】(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250611/k10014831791000.html)によると、《横浜市の「大川原化工機」をめぐるえん罪事件で、警視庁公安部と検察の捜査の違法性を認め、賠償を命じた東京高等裁判所の判決について、都と国は11日、上告しないことを明らかにし、当事者などに謝罪するコメントを出しました。それぞれ当時の捜査について検証することにしていて今後、適切な捜査の徹底につなげられるかが焦点となります》。
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【https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250611/k10014831791000.html】
大川原化工機 えん罪事件 都と国上告せず 謝罪 検証へ
2025年6月11日 17時25分
横浜市の「大川原化工機」をめぐるえん罪事件で、警視庁公安部と検察の捜査の違法性を認め、賠償を命じた東京高等裁判所の判決について、都と国は11日、上告しないことを明らかにし、当事者などに謝罪するコメントを出しました。
それぞれ当時の捜査について検証することにしていて今後、適切な捜査の徹底につなげられるかが焦点となります。
目次
・捜査の何が違法とされたのか
・警視庁公安部の歴史と組織
軍事転用が可能な機械を不正に輸出した疑いで逮捕、起訴され、後に無実が判明した横浜市の化学機械メーカー「大川原化工機」の社長などが都と国を訴えた裁判で、2審の東京高等裁判所は5月、1審に続いて警視庁公安部と東京地検の捜査の違法性を認めるとともに「輸出規制の要件についての警視庁公安部の解釈は国際的な合意と異なり、合理性を欠いていた」などと指摘し、都と国にあわせて1億6600万円あまりの賠償を命じました。
判決について、都側の警視庁と国側の東京地検は内容を精査した結果、11日、それぞれ最高裁判所に上告しないことを明らかにし、会社や関係者に謝罪するコメントを発表しました。
このなかで、警視庁は「捜査によって原告をはじめとする当事者に多大なご心労、ご負担をおかけしたことについて、深くおわびを申し上げたい」としたうえで、一連の捜査の問題点を洗い出し、再発防止策をとりまとめるため、副総監をトップとする「検証チーム」を立ち上げたことを明らかにしました。
捜査上の問題点や再発防止策を検証した上で、できるだけ早い時期に結果を公表する方針を示しました。
関係者の処分については検証の結果を踏まえて判断するとしています。
また、東京地検は「大川原化工機およびその関係者の皆様に多大なご負担をおかけしたことについて、おわび申し上げたい」としたうえで、今後、最高検察庁による検証が行われることを明らかにしました。
警視庁と東京地検は当事者への直接の謝罪についても速やかに行いたいとしています。
これで、捜査の違法性を認定した判決が確定することになり、今後の検証で当時の捜査の問題点を明らかにし、再発防止や適切な捜査の徹底につなげられるかが焦点となります。
大川原化工機の社長など会見「怒りは消えない」
判決が確定することを受けて大川原化工機の社長などは11日、都内で会見を開きました。
逮捕され勾留中にがんが見つかり、起訴が取り消される前に72歳で亡くなった相嶋静夫さんの長男は「本来、4年前に起訴が取り消されたときに捜査機関が謝るべきで、被害者側がここまで頑張らなければ検証できないことにむなしい気持ちがある。父は社会から犯罪者として扱われ、過失があったかもしれないと思いながら人生を終えた。時間がかかっても怒りは消えないし、できることなら時計を戻してもらいたい」と、涙ぐみながら話していました。
そして「やっとマイナスからゼロになり、スタートラインに立った」と話し、捜査機関の検証を求めました。
元取締役の島田順司さんは「上告断念の話を聞いて、心の中の雲がやっと晴れた。法廷で『間違いがあったとは思わない。謝罪もしない』と話していた検察官は、何らかの謝罪をしていただきたい」と話していました。
大川原正明社長は「やっと一段落ついたという思いがある。捜査機関は自分や社員、その家族に謝罪してほしい。人質司法の問題について改革を訴えていきたい」と話していました。
高田剛弁護士は警察や検察に求めることとして誠意ある謝罪と第三者主導の検証委員会による原因究明などを挙げるとともに、経済産業省に対して輸出規制に関する省令の改正、裁判所と検察に対して「人質司法」といわれる保釈の実務の見直しを要望しました。
警視庁公安部長「捜査指揮や適正捜査が不徹底」
警視庁では11日午後3時から警務部や公安部の幹部が出席し、上告しないことに関する説明を行いました。
当事者への直接の謝罪については中島寛 公安部長が「先方の希望、ご都合があるので、丁寧に確認しながら進めていきたい」と述べた上で検証結果を待たず、できるだけ早い時期に実施したいとする考えを示しました。
警視庁は副総監をトップに検証チームを立ち上げて捜査上の問題点を検証し、再発防止策をとりまとめた上で、できるだけ早い時期に結果を公表する方針も明らかにしました。
検証には監察部門も参加し、公安委員会の助言を受けることで公平性を担保するとしました。
中島公安部長は「現段階での反省点」について記者から問われると、「少なくとも捜査指揮や緻密かつ適正な捜査が不徹底だったことは間違いない」と述べて、今後の検証の過程で課題を洗い出していく考えを示しました。
小池知事「事件の検証と関係者への謝罪を」
東京都の小池知事は、「警視庁において今回の事件を検証して再発防止を図るとともに、関係者への謝罪をしっかり行ってほしい」と述べました。
東京地検「速やかに謝罪したい」
東京地検の新河隆志 次席検事は11日午後4時半から取材に応じ、上告しなかった理由を説明するとともに、当事者に直接謝罪したい考えを示しました。
まず、上告しなかった理由については「控訴審でも勾留請求と起訴が違法と判断されたことについて真摯(しんし)に受け止めなければならないと考えている。協議した結果、判決内容を覆すことは困難と判断した」などと説明しました。
その上で、「会社側に上告しないことを伝えた際、直接、謝罪したいという意向を伝えている。可能な限り速やかにしかるべき立場の者が謝罪をさせていただきたい」と述べ、今後、対面で謝罪する意向を明らかにしました。
また、勾留中にがんが見つかり、亡くなった元顧問の相嶋静夫さんについては「心よりお悔やみ申し上げます」と述べたうえで、「訴訟のなかで、ご心痛、ご苦労をお掛けしたことについて被告になられた方のみならず、従業員含め、その親族の方にも謝罪したい」と話しました。
最高検が行う検証については「問題点、反省点について分析が行われ、それを踏まえて再発防止策が検討されるものと承知しており、検証対象の地検として協力したい。公表時期については未定だが、すみやかに行われるものと考えている」と述べました。
起訴した検察官の判断が合理的な根拠を欠いていたと判決で指摘されたことについては「違法と認定されたことは真摯に受け止めなければならないがその過程は今後検証されるものであり、合理性があったかどうかについては現時点では差し控えたい」と述べました。
最高検「検証行い結果を公表予定」
最高検察庁は「最高検としても、大川原化工機とその関係者の皆様に多大なご負担をおかけしたことについて、おわび申し上げたい。今後、最高検において検証を行い、その結果を公表する予定だ」などとするコメントを発表しました。
最高検 次長検事を責任者とする態勢で検証
最高検察庁は東京地検の当時の捜査について最高検ナンバー2の次長検事を責任者とする態勢で検証し、結果を公表する方針を明らかにしました。
最高検の山元裕史次長検事は、11日午後6時半から取材に応じ、東京地検の捜査の違法性を認めた判決が確定することについて、「判決で勾留請求と起訴が違法と判断されたことを検察全体として真摯に受け止めている」と述べました。
また、次長検事を責任者とし、最高検公安部の検事などからなる態勢を11日から立ち上げて検証を進めることを明らかにし、今後、関係者から話を聴くなどして捜査の経過や検察官の判断などについて調べるということです。
検証結果はまとまり次第、公表するとしています。
警察庁 全国の警察に通達「緻密かつ適正に捜査を」
警察庁は今回の判決を重く受け止める必要があるとしたうえで、全国の警察に対し、「公安部門においても、法令と証拠に基づいて緻密かつ適正に捜査が行われなければならない」とする通達を出し、▼職員に改めて適切な捜査活動の必要性を認識させるとともに、▼幹部が十分な捜査指揮を行うよう指示しました。
林官房長官「検証結果踏まえて必要な対応を」
林官房長官は午後の記者会見で「関係当局において対応を検討した結果、上訴しないこととし、原告をはじめとする当事者に対するおわびを表明するとともに、問題点の検証を行う旨のコメントを発表した。まずは関係当局において所要の検証が行われるものと承知しており、その結果を踏まえて必要な対応が行われることが重要だ」と述べました。
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専門家「勇気を持って引き返すことを評価する仕組みを」
警視庁と東京地方検察庁が上告せず、捜査を検証する姿勢を示したことについて、元刑事裁判官で法政大学法科大学院の水野智幸教授は、「どこで間違い、どこで引き返すことができたのか、早期に明らかにすべきだ」と指摘しました。
水野教授は警視庁公安部の捜査について「そもそも事件がなかったということが大きい。輸出規制に関するルールがはっきりしていなかったところ、立件する側に都合のいいように解釈したところがある。機械の温度が上がりにくい場所があったという指摘を聞き入れずに突き進んだことも、非常に疑問だ」と指摘しました。
検察についても、「警察が行きすぎたときにチェックして止めることも、検察の大事な仕事だ。警察から相談を受けた段階で、自分たちで調べていれば早期に無理だと判断できた」として、反省すべき点があるとしました。また検証のあり方については、「プライバシーの問題などが関わらない部分で、外部の第三者も入った上で検証することが大事だ」と述べました。
そして捜査機関のあり方について「有罪方向に動くことが仕事で、それが評価される組織だが、今回、途中でおかしいと気付いた人もいたと思う。今回の事件を教訓に、勇気を持って引き返すことを評価する仕組みをつくってほしい」と話していました。
また、逮捕した3人の長期間の勾留を裁判所が認め、そのうちの1人ががんで亡くなったことを挙げ、「裁判所もこうした事件の身柄拘束のあり方について、拘束しない方向で刑事裁判を進めるやり方ができないのか、真剣に考えなくてはいけない」と話していました。
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捜査の何が違法とされたのか
東京高等裁判所の判決では、警察と検察のどのような捜査を違法と判断したのでしょうか。
警視庁公安部の逮捕「根拠欠けていた」
高裁は、警視庁公安部が大川原化工機の機械を輸出規制の対象と判断して社長など3人を逮捕したことについて、「通常要求される追加の捜査を行わず逮捕した判断は、合理的な根拠が欠けていた。犯罪の疑いがあるかどうかの判断に基本的な問題があった」と厳しく指摘し、違法な捜査だと認定しました。
そもそも、機械が輸出規制に当たるかどうかの要件について高裁は、「警視庁公安部の解釈は国際的な合意と異なり、合理性を欠いていた。経済産業省の担当部署から問題点を指摘されたのに再考することなく、逮捕に踏み切った」としました。
また、メーカー側が、「機械に温度が上がらない場所がある」として規制対象にならないと主張していたのに、その主張を確かめる実験をしなかったことを、違法とした理由にしました。
警察の取り調べ「欺くような方法で調書に署名させた」
逮捕された3人のうちの1人、元取締役の島田順司さんに対する警視庁公安部の取り調べについても、違法な捜査と認定しました。
逮捕前の取り調べでは公安部の警察官が輸出規制の要件の解釈について、島田さんに誤解させたまま取り調べを続けたと指摘しました。
その上で「重要な弁解を封じて調書に記載せず、犯罪事実を認めるかのような供述に誘導した」と違法性を認定しました。
また、逮捕後の取り調べでも公安部の警察官が島田さんの指摘に沿って調書を修正したよう装いながら、実際には別の調書を見せて署名させたと認定しました。
これについて、「欺くような方法で捜査機関の見立てに沿った調書に署名させたもので、島田さんの自由な意思決定を阻害した」と厳しく指摘しました。
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検察の起訴追加捜査の不備を指摘
東京地方検察庁が社長ら3人を起訴したことについても違法だと判断しました。
大川原化工機の幹部などが、「機械に温度が上がりにくい部分があり、規制の対象ではない」と説明していることについて、検察も報告を受けていたとし、メーカー側の主張について実験などで確認すべきだったと指摘しました。
そのうえで、「通常要求される捜査をしていれば、規制対象に当たらないことの証拠を得ることができた。検察の判断は合理的な根拠を欠いていた」としました。
また、輸出規制の要件についても、「警視庁公安部の解釈を維持することには疑念が残る状況だった。起訴するかどうか、慎重に判断するのが適切だった」と指摘しました。
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警視庁内部の受け止めは
起訴取り消し後の民事裁判で、国や都は「違法な捜査はなかった」という主張を続けてきました。
しかしその一方で、警視庁の内部では当初から公安部が進めた情報や証拠収集のあり方について批判的な見方が存在し、公安部の中からも筋書きと異なる方向性の証拠に対する評価が不十分で捜査の軌道修正ができなかったことなどを落ち度ととらえ、教訓にしなければならないという意見が聞かれました。
5月28日の東京高裁の判決について警察幹部の受け止めを取材すると「端的に断罪され、非常に厳しい内容だ」という声があった一方、「判決を受け入れ検証を進めるべきだ」という意見が多くを占めていました。
こうした中、警視庁は提出した証拠に対する裁判所の評価や、今後の捜査への影響などを慎重に検討し、上告するだけの理由は見当たらないとして検察側とも意見をすりあわせた上、上告しないことを決めたとみられます。
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警視庁公安部の歴史と組織
警視庁公安部は全国で唯一、都道府県の警察本部に独立の部署として設置された国内最大の公安警察の組織です。
1957年、前身の「警備2部」から『公安部』に改称されました。
昭和の時代には過激派の学生ら数千人が暴動を起こして21歳の警察官が殺害された1971年の「渋谷暴動事件」や武装した過激派のメンバーが長野県の山荘に人質をとって立てこもり警察と10日間にわたる銃撃戦となって多数の死傷者を出した1972年の「あさま山荘事件」、平成以降では、オウム真理教による「地下鉄サリン事件」や1995年、当時の警察庁の國松孝次長官が銃撃され重傷を負った「長官狙撃事件」などの捜査にもあたりました。
警視庁公安部には、中核派や革マル派などの過激派や右翼、特定の組織に属さず過激化したいわゆる「ローン・オフェンダー」の情報収集や捜査などを受け持つ『国内公安』と国際テロ組織、機密情報先端技術を狙った他国によるスパイ活動、北朝鮮による拉致事件の捜査などを行う『外事』の2つの柱があります。
大川原化工機の捜査を行ったのは、外事1課のうち不正輸出の事件を扱う「5係」でしたが、経済安全保障の対策を進める観点から今年度、体制が強化されています。
警視庁公安部の捜査員の数は公表されていませんが、重要インフラを狙ったサイバー攻撃などに対処する人員も含め1000人を超えるとされています。
独自の捜査手法 組織の壁も
刑事部などの捜査が犯罪をした人の検挙や組織の摘発を目指すものであるのに対し、公安部の捜査は組織の動向を把握することによる事件やテロの未然防止、国益の確保などに主眼が置かれているといいます。
活動のほとんどが水面下で行われ、捜査対象の組織や関係先に「エス」などと呼ばれる協力者を獲得して動向を把握するなど公安捜査員には情報収集のエキスパートとしての力量が求められる一方、刑事部などと比べて事件捜査を通じて経験を積める機会が少ないとも言われます。
他セクションとの人事的な交わりも少なく、過去には同じ事件の捜査にあたる刑事部との壁や確執が指摘されたこともありました。
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警視庁 反省踏まえた取り組みも
えん罪事件で浮き彫りになった課題を踏まえ、警視庁には捜査の適正化に向けた取り組みが求められています。
今回の事件では捜査対象となった製品が「輸出規制の対象にならないのではないか」という意見が、複数の捜査員から上がっていたにもかかわらず、軌道修正が行われないまま捜査が継続されました。
警視庁の幹部の1人は捜査指揮や、上司と部下の信頼関係、コミュニケーションに大きな問題があったとし、「紙での報告のやりとりだけでなく上司が現場から直接きたんのない意見を集め、部下は率直に意見を述べられる組織へとこの事件を機に変わっていくことが重要だ」と話しています。
また、公安部では逮捕や起訴に至る事件の数が限られているため捜査経験を積みにくいことも課題となっています。
今回の事件をきっかけに公安部の情報や証拠収集のあり方が問われる中で、警視庁は今年度から公安部の捜査員を刑事部など他セクションの業務に従事させ、捜査の経験を積ませる新たな取り組みを始めています。
他セクションで「場数」を踏ませることで捜査力向上につなげる狙いで、今年度は警部補と巡査部長の6人が刑事部の捜査1課や生活安全部の生活経済課などに派遣されています。
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