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●「何が起きたのか、可能な限り説明することが私の責任」…その責任を果たしつつある安田純平さん

2019年08月16日 00時00分23秒 | Weblog


本年2月の日刊ゲンダイのインタビュー記事【注目の人 直撃インタビュー/安田純平氏が独白「“無謀”に突っ込む人間が社会には必要」】(https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/247106)。

 《日本での会見では「自業自得」とも語り、またぞろ「自己責任論」バッシングも生じたものの、ほどなく鎮火。その後は雑誌で手記を発表し、今年1月にはメールマガジンを始めて希少な経験を語るなどジャーナリストとして事実を伝える活動をずぶとく続けている。帰国後の日本を見て、いま何を感じ、何をやろうとしているのか》。

   『●『ルポ戦場出稼ぎ労働者』読了
    「帯より、「世界中から集められる、貧しい派遣労働者たち! 
     自ら出稼ぎ労働者となり、単独潜入取材した記録!
     民営化の果て、その現場とは?」
       ファルージャ 日本人人質拘束事件

   『●「自己責任などと声高に言わずに出掛けていくのは、
        使命感からだ。…安田純平の解放を心から喜びたい」
   『●《「ひどい環境から解放されて良かったね」とねぎらわれ》ても、
                      帰国しても《ひどい環境》が待っている
   『●無事帰国した安田純平さんに、是非、現地の様子や
        拉致事件の全貌、生還できた教訓等々を聞いてみたい
   『●「紛争地での取材やメディア、ジャーナリズムの原則論」…
               「政府高官が建前でも原則論を口にできぬ国」
    「『久田将義責任編集TABLO』…の青木理さんの記事
     【安田純平さん帰国について想うこと 「アメリカ政府がジャーナリズム
     原則論をコメントした意義」|青木理】…《安田純平さんが解放され、
     無事帰国した。なによりもそれを喜びたい。一部ではいまだに
     「自己責任論」などを振りかざし、安田さんに罵声を浴びせる連中も
     いるらしいが、世界でも珍しいほど馬鹿げた議論
     これ以上、私はつきあいたくもない》」

   『●自己責任論な人々…斎藤貴男さん「いざ自分の命が絶たれる時に、
                        己がどういう人間だったかを理解できる」
    《▼内戦下のシリアで武装勢力に3年4カ月も拘束され、生還した
     ジャーナリストの安田純平さん(44)が2日に開いた記者会見…
     ▼会見は「何が起きたのか、可能な限り説明することが私の責任」と
     2時間近く。…世界の実情を私たちに伝えようとして40カ月も
     虐げられた人を、さらに痛めつける社会は異常だ》。
    《堂々たる心情を聞いてなお小ざかしい自己責任論を振りかざし
     誹謗中傷を浴びせ続けている人々に言おう。いいかげんにしろ
     少しは恥というものを知れ

 「何が起きたのか、可能な限り説明することが私の責任」と語っていた安田純平さん。その責任を果たしつつあり、何が起こったのか、その貴重な体験や反省点が明らかになりつつある。
 《一般論ですが、“無謀”に突っ込んでいく人間がいるから波紋が生まれ、何かが浮かび上がってきます。…日本も“無謀”に突っ込んでいく人の存在を保障できる社会にならないと。もっと紛争地を取材するべきです。それが社会をより強くするのですから》。

 長倉洋海さんは《現場で経験し、たくさんの出会いがあって、「伝える人」として鍛え上げられていく現場でこそ、ジャーナリストは磨かれ、育っていくはずだ》と言います。さらに、《世界は広く、深く、驚きに満ちている。自分の狭い先入観や思い込みではなく、驚きや偏見を打ち破るものを見つけ伝えてほしい。そんな写真や文章はさまざまな形で発表することができる。…私はペンとカメラさえあれば、人の心を打つことはできると信じている》。
 パスポートが発給されないというイジメが続いている模様。

   『●長倉洋海さん《フォトジャーナリズムの世界に不信感……
              道を閉ざしてしまうことのないように念じている》

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https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/247106

注目の人 直撃インタビュー
安田純平氏が独白「“無謀”に突っ込む人間が社会には必要」
2019/02/12 06:00

     (ジャーナリストの安田純平平氏(C)日刊ゲンダイ)

 2015年6月にシリアで武装組織に拘束され、昨年10月23日、3年4カ月ぶりに解放された。日本での会見では「自業自得」とも語り、またぞろ「自己責任論」バッシングも生じたものの、ほどなく鎮火。その後は雑誌で手記を発表し、今年1月にはメールマガジンを始めて希少な経験を語るなどジャーナリストとして事実を伝える活動をずぶとく続けている。帰国後の日本を見て、いま何を感じ、何をやろうとしているのか。

 ――3年ぶりの日本で、帰国後どのように過ごされましたか。

 年末は妻の実家がある鹿児島に墓参りをして、正月は私の実家のある埼玉に行っていました。お世話になった方が何人か亡くなられていました。もっと早く帰れればと悔いています。早く帰れる可能性はなくはなかったので私のミスです。


 ――機内で取材を受ける様子がまず日本では報じられましたが、解放直後とは思えないくらい落ち着いていました。

 機内では入れ代わり立ち代わりでさまざまな人に取材されました。トルコで解放後、最初にお酒を飲んだのはその機内なんです。ワインのミニボトル1本とビール1缶だけだったのですが、おそろしく酔っぱらって。そのせいで冗舌だったのかもしれません(笑い)。


 ――「安田純平の死んでも書きたい話」という有料メルマガを1月から「まぐまぐ!」で配信されています。配信直後は購読増加ランキングで1位でした。

 まずは自分にできる仕事として、幽閉されているときにつけていた日記や時事的な話題などを書いていこうと思っています。


 ――カメラや取材ノートは武装勢力に没収されたそうですが、日記は大丈夫だったのですか。

 私を解放するということは拘束時の様子が話されることを意味しますから日記は大丈夫でした。彼らも見られて困るものは私に見せませんから。もちろん当時の日記はそのままではとても読める文章にはなっていないし、人前に出せない類いのメモもありますから、手を入れてメルマガに少しずつ出していきます。日記は書籍化する予定です。


 ――3年前と日本が変わったと思うことは。安倍政権が今も続いていると思いましたか。

 
「モリカケ」問題は帰国後に知りましたが、あれだけのことが明らかになっているのに首相が辞任に至らないのは驚きです。メディアは首相の地元もあまり取材してないようで不思議です。あとはテレビ番組がずいぶん変化した印象です。今回、私はワイドショー系にはほとんど出ていなくて、ニュース番組か報道番組の取材しか受けていないんです。以前もありましたけど、タレントのみなさんがニュースや時事モノについてもかなり自由に意見を言う番組が増えています。話はプロですから上手ですけど、事実関係を説明するべきものも省いてあちらのペースで進めてしまうから、今は出演しないほうがいいと周りから言われました。


 ――情報発信のハードルは下がっていますからね。

 ツイッターでは私がパスポートを偽造してシリアに入国したと本気で書いている人がいました。その人たちは愛国者のつもりで書いているのかもしれませんが、それでは日本政府や入国管理局を無能だと言っていることになるのに。ツールに罪があるわけではないので、こちらの発信をよくよく考えてうまく使っていかないといけないなと思いました。これは2015年とは全然違います。


フェイクニュースによって日本人が狙われる

 ――トランプ大統領が言い出した「フェイクニュース」という言葉も日常的に使われるようになりました。

 私がイスラム国から解放されたという間違ったフェイクニュースもクルド系メディアが流して、今も掲載されています。2004年にイラクでスパイ容疑で拘束された時も、当初は「人質」と報道され、その後は「拘束」とメディアが修正していったのですが、インターネット上では当時のフェイクニュースがそのまま残っています。私が人質にされたのは今回が初めてです。フェイクしか見ない人もいますし、フェイクに反論するだけでは対処しきれない。私が人質だったというフェイクニュースが残り続けることには問題があります。今回、私の解放に際して身代金が支払われたという真偽不明の情報が報じられましたが、身代金が支払われて日本人の人質が解放されたという情報が世界中に出回ると、日本人を誘拐すれば金になると思われてしまいます。


 ――紛争地に行くジャーナリストが狙われやすくなってしまう。

 ジャーナリストだけではありません。すべての日本人がターゲットになってしまいます。実際にシリアの武装勢力も日本のメディアをインターネットでチェックしていました。


■自己責任論者の思い込み

 ――今回も自己責任論が議論されましたが、以前と違って「危険な取材をするジャーナリストを批判するのはおかしい」と多くのジャーナリストやメディアが擁護に回った印象です。

 政府が自己責任論を言いませんでしたから。イラク人質事件のときは自衛隊のイラク撤退が人質解放の条件であり、政治問題でした。政府に助けてもらうのかと、自己責任論を掲げて批判してくる人は日本政府がなんでもできると思い込んでいるのでしょう。しかし、日本政府に本当に救出ができたのか。交渉はしていたのか。身代金を払うためには人質が生きていることを確認する生存証明を取る必要がありますが、拘束中、日本政府は一度も取っていません。紛争地に行く自由は、死んでしまうことも含めた自由です。政府がほとんど何もできない場所ですから、自分の身で責任を取るしかない究極の自由とも言えます


■もっと紛争地を取材するべきです

 ――お連れ合いに「いざという場合には一切放っておけ」と伝えていたとか。

 日本政府にしろ、トルコまで行ってくれたフリージャーナリストにしろ、いろいろな方が動いてくれましたが、こちらからは何もしないようにと以前から妻には言っていました。妻が記者会見を開けば、何を言っても言葉尻をとらえられてしまうでしょう。後藤健二さん(シリアで拘束されて殺害されたジャーナリスト)のときも、メディアは後藤さんの家族のマンションを連日取り囲んだ。捕まっている主体は本人なのに、それが広がってしまうんです。でも妻は本当によくがんばってくれました。次に海外に行くなら南の島にしてくれと言われていますが。


 ――3年4カ月の間、ほぼ独居で拘束されていたのに、よく拘禁症になりませんでしたね。

 何度も正気を失いそうになって壁を蹴りつけたり暴れたりもしました。ただ、中国から来ていたウイグル人の施設では私に気を使ってか、部屋の窓から見えるように馬とかアヒルとかを移動動物園のように広場に連れてきたりしていました。


 ――安田さんにとって、日本人が海外を直接取材をする意味は。

 一般論ですが、“無謀”に突っ込んでいく人間がいるから波紋が生まれ、何かが浮かび上がってきます。これは紛争地に限らない話だし、ジャーナリストに限る話でもありません。たとえば、かつてアフガニスタンを取材したとき、たまたまカブールの日本大使館の職員と話をしました。彼らからはアフガニスタンの道路について聞かれました。日本のODAで道路建設が必要かどうかを判断する情報が欲しいのですが、彼らは現場には行けないからです。日本が独自の道を進むには独自の情報は有益です。それを国が規制して、他国が集めた情報に頼っていればいいのでしょうか。


 ――今後の予定は。

 また紛争地に行きます、とは今は言えませんね(笑い)。ただ、スペインではシリアで解放されたジャーナリストが再びシリアやイラクに取材に行っています。フリーランスはどうしても大手メディアが入ることができない場所やテーマを取材するようになります。日本も“無謀”に突っ込んでいく人の存在を保障できる社会にならないと。もっと紛争地を取材するべきです。それが社会をより強くするのですから。

 (聞き手=平井康嗣/日刊ゲンダイ)


▽やすだ・じゅんぺい 1974年、埼玉県出身。地方紙を経てフリー。イラクやアフガニスタン、シリアを取材。イラクで料理人として働き、民間人が戦争を支える実態を「ルポ 戦場出稼ぎ労働者」(集英社新書)で執筆。 
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●自己責任論な人々…斎藤貴男さん「いざ自分の命が絶たれる時に、己がどういう人間だったかを理解できる」

2018年11月14日 00時00分47秒 | Weblog


沖縄タイムスの磯野直記者によるコラム【[大弦小弦]長さ1.5メートル、幅1メートルの独房に押し込められ…】(https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/340576)。
日刊ゲンダイの斎藤貴男さんによるコラム【二極化・格差社会の真相/安田さん解放 人命の為に使う税金ほど有意義なものはない】(https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/241088)。

 《▼内戦下のシリアで武装勢力に3年4カ月も拘束され、生還したジャーナリストの安田純平さん(44)が2日に開いた記者会見…▼会見は「何が起きたのか、可能な限り説明することが私の責任」と2時間近く。体験を詳細に語ることで、シリアの惨状に少しでも関心を寄せてほしいとの思いは痛いほど伝わった…世界の実情を私たちに伝えようとして40カ月も虐げられた人を、さらに痛めつける社会は異常だ》。
 《堂々たる心情を聞いてなお小ざかしい自己責任論を振りかざし、誹謗中傷を浴びせ続けている人々に言おう。いいかげんにしろ少しは恥というものを知れ》。

   『●『ルポ戦場出稼ぎ労働者』読了
    「帯より、「世界中から集められる、貧しい派遣労働者たち! 
     自ら出稼ぎ労働者となり、単独潜入取材した記録!
     民営化の果て、その現場とは?」
       ファルージャ 日本人人質拘束事件

   『●「18歳選挙権」にさえ無関心?: 
       血税と赤紙と、そして、(経済的)徴兵制への第一歩か?
   『●安田純平さんの安否が大変に心配: 
     官邸は一体何をしているのか? 後藤健二さんの対応と同じ過ち・・・
   『●[声明が撤回されました]「国境なき記者団」が
       安田純平さんについての記事・声明を公開……
   『●安田純平さんの無事な解放を祈る… 
     「ではなぜ読者や視聴者はシリアが危険だと知っているのか」?
   『●自己責任であり、「公共の迷惑」なのか?: 
      青木理さん「「知る権利」を保障し、「公共の利益」である」
   『●異常過ぎる非情な自己責任論者達… 
      安田純平さんの「罪は、人々が『お上』と呼ぶ政府に反抗したこと」?
   『●「自己責任などと声高に言わずに出掛けていくのは、
        使命感からだ。…安田純平の解放を心から喜びたい」
   『●《「ひどい環境から解放されて良かったね」とねぎらわれ》ても、
                      帰国しても《ひどい環境》が待っている
   『●無事帰国した安田純平さんに、是非、現地の様子や
        拉致事件の全貌、生還できた教訓等々を聞いてみたい
   『●「紛争地での取材やメディア、ジャーナリズムの原則論」…
               「政府高官が建前でも原則論を口にできぬ国」
    「『久田将義責任編集TABLO』…の青木理さんの記事
     【安田純平さん帰国について想うこと 「アメリカ政府がジャーナリズム
     原則論をコメントした意義」|青木理】…《安田純平さんが解放され、
     無事帰国した。なによりもそれを喜びたい。一部ではいまだに
     「自己責任論」などを振りかざし、安田さんに罵声を浴びせる連中も
     いるらしいが、世界でも珍しいほど馬鹿げた議論
     これ以上、私はつきあいたくもない》」

 週刊朝日の記事【シリア人質、安田純平氏が語った紛争地取材と「自己責任」】(https://dot.asahi.com/wa/2018110600023.html)によると、《だが、世間が期待したのは、「自己責任論への総括」であり、「謝罪であったのは明らかだった。2004年、安田さんがイラクで人質になると、政治家や世間は「自己責任論」をぶちまけ、その後も批判が収まることはなかった》。
 マガジン9の【雨宮処凛がゆく! 第465回:貧すれば、ゼロトレランス〜14年前の「自己責任」論から振り返る〜の巻】(https://maga9.jp/181107/)によると、《この会見を受けても様々な意見があるが、拘束中のことを知れば知るほど「よく耐えられたものだ」という気持ちが湧いてくるのは私だけではないはずだ。しかし、安田さんがシリアへ足を踏み入れたことへのバッシングは一部でいまだ続いているようだ。そんなものを見ていて思い出したのは、2004年、イラクで高遠菜穂子さんら3人が人質になった際に起きた恐ろしいほどの「自己責任」バッシングだ。イラクにボランティアなどとして入った3人がとらわれ、武装勢力が日本政府に自衛隊撤退を要求したという事件である。安田さんも同時期、1度目の拘束をされており激しいバッシングに晒された。私はあの瞬間が、この国の大きな分岐点ではないかと思っている。ちなみにあの時のバッシングは、私にとってはまったく他人事ではなかった。なぜなら、私もその前年、イラク戦争が始まる1ヶ月前にイラクに行っていたからである。…誰だって、間違える時はある。そして誰だって、予期せぬトラブルに巻き込まれることがある。その時に「自分を責めないで」と優しく手が差し伸べられる社会と、「自己責任だ」と、再起不能なまでに叩きのめされる社会。一体、日本とタイで、何をどうしてどうやったらここまでの差がついてしまったのか。なぜ、タイの人は冷たく「自己責任」と突き放したりせずにいられるのか…最後に。安田さんの「自己責任」を問う報道は多くするのに、「世界で最悪の人道的危機」にあるシリアの状況についてまったく報じないメディアって一体なんなんだろう、という疑問を本気で考え始めると、これはこれで本当に怖くなってくる》。

 斎藤貴男さん《いいかげんにしろ。少しは恥というものを知れ》! 全く同感。
 磯野直記者《世界の実情を私たちに伝えようとして40カ月も虐げられた人を、さらに痛めつける社会は異常だ》、雨宮処凛さん《「自己責任だ」と、再起不能なまでに叩きのめされる社会》…ニッポン、一体どんな社会なのか…?
 斎藤貴男さん《ここまで書いてもわかってもらえない人は仕方がない。一生、必死に生きる他人をあざ笑い続けていくがいい。いざ自分の命が絶たれる時に、己がどういう人間だったかを理解できるだろう》。
 《人でなし》なアベ様らによって、社会的には《いざ自分の命が絶たれる時》が迫っているのに、この国の1/4の自公お維キト支持者の皆さんや2/4の選挙に行きもしない眠り猫な皆さんの呑気ブリときたら。

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https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/340576

[大弦小弦]長さ1.5メートル、幅1メートルの独房に押し込められ
2018年11月6日 07:19

 長さ1・5メートル、幅1メートルの独房に押し込められ、立つことも体を伸ばすこともできない。鼻息の音でも拷問され、いつ処刑されるか分からない恐怖が続く。自分だったら耐えられるだろうか

▼内戦下のシリアで武装勢力に3年4カ月も拘束され、生還したジャーナリストの安田純平さん(44)が2日に開いた記者会見。拘禁生活の具体的な説明に、自分に身を置き換えて想像すると身震いした

▼会見は「何が起きたのか、可能な限り説明することが私の責任」と2時間近く。体験を詳細に語ることで、シリアの惨状に少しでも関心を寄せてほしいとの思いは痛いほど伝わった

▼それでも「自己責任」を振りかざすバッシングはやまない。冒頭で政府に謝罪したが、「反省が足りない」などと言う

▼思えば2004年、イラクで3邦人が人質なった際、自己責任論の口火を切ったのは小泉純一郎首相や閣僚だった。自衛隊を派遣した政府への批判をかわすためとの見方が強いが、人々の心のパンドラの箱を開けた。言ってもいいんだと

▼それから14年。今のところ、安倍政権の誰も自己責任を問うていない。なのに声高に叫ぶ者が後を絶たないのは、この言葉が社会に根付いてしまった証しか世界の実情を私たちに伝えようとして40カ月も虐げられた人を、さらに痛めつける社会は異常だ。(磯野直
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https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/241088

斎藤貴男 ジャーナリスト
1958年生まれ。早大卒。イギリス・バーミンガム大学で修士号(国際学MA)取得。日本工業新聞、プレジデント、週刊文春の記者などを経てフリーに。「戦争経済大国」(河出書房新社)、「日本が壊れていく」(ちくま新書)、「『明治礼賛』の正体」(岩波ブックレット)など著書多数。


二極化・格差社会の真相
安田さん解放 人命の為に使う税金ほど有意義なものはない
2018/11/07 06:00

     (自国民の救出に全力を尽くすのが政府の仕事
      (会見する安田純平氏)/(C)日刊ゲンダイ)

 「解放に向けて尽力していただいた方々に、おわび申し上げますとともに、深く感謝申し上げます」

 ジャーナリストの安田純平さん(44)が2日、記者会見した。堂々たる心情を聞いてなお小ざかしい自己責任論を振りかざし、誹謗中傷を浴びせ続けている人々に言おう。

 いいかげんにしろ少しは恥というものを知れ

 私は安田さんと格別に親しい仲でもない。10年も前に何かの集まりで同席し、多少の会話を交わしたことがあるだけだ。

 とはいえ彼がシリアで拘束された時には当然、複雑な思いが錯綜した。本人も会見で「自業自得」だったと述べていたが、ああなる危険も覚悟の上で、彼は戦場に足を踏み入れたのである。

 だが“自己責任”の報いは、3年4カ月にも及んだ地獄の日々で、すでに十分すぎるほど受けているそれでも許されないと叫ぶ者は、「殺されればよかったのにと残念がっているのと同じだ

 こんなものは、もちろん右だの左だのの問題とは本質的に異なる。単なる人でなしの所業である。

 ジャーナリストは戦場に出かければよいというものではない。イラク戦争に特派されて米軍に取り込まれ、民家まで砲撃した連中を「私たちの部隊」と称えてみせるに至った大手紙やテレビの記者も珍しくなかった。

 安田さんは、そうなる可能性を排除した方法で、戦場に渡った。成果も必ず公にされよう。

 つまり本物だ。だから、たとえば4日付の毎日新聞に、英紙「タイムズ」や仏紙「ルモンド」、韓国紙「朝鮮日報」の東京支局長らが、彼に惜しみない敬意を払いつつ、「報道の使命、理解してと訴える談話を寄せてくれているのだ。

 私はジャーナリストを特別扱いしろと言いたいのではない。拘束された人間が誰であろうと、自国民の救出に全力を尽くすのが政府の仕事だ。税金? 日本政府が今回果たした役割はまだ不明だが、人命のため一定の金額を負担したとすれば、これほど有意義な税金の使い道がまたとあろうか

 安田叩きをもくろんだらしい「週刊文春」と「週刊新潮」(11月8日号)が、タイトルとは裏腹の温かい記事を載せていた。当たり前だ。取材して、にもかかわらず“自己責任”をわめき立てていられる記者や編集者なら、もはや人間失格である。

 ここまで書いてもわかってもらえない人は仕方がない。一生、必死に生きる他人をあざ笑い続けていくがいい。いざ自分の命が絶たれる時に、己がどういう人間だったかを理解できるだろう
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●「紛争地での取材やメディア、ジャーナリズムの原則論」…「政府高官が建前でも原則論を口にできぬ国」

2018年11月07日 00時00分27秒 | Weblog

[※ 青木理さん(『サンデーモーニング2018年10月28日)↑]



久田将義責任編集TABLO』(http://tablo.jp/)の青木理さんの記事【安田純平さん帰国について想うこと 「アメリカ政府がジャーナリズム原則論をコメントした意義」|青木理】(http://tablo.jp/serialization/aoki/news004062.html)。

 《安田純平さんが解放され、無事帰国した。なによりもそれを喜びたい。一部ではいまだに「自己責任論」などを振りかざし、安田さんに罵声を浴びせる連中もいるらしいが、世界でも珍しいほど馬鹿げた議論これ以上、私はつきあいたくもない》。

 まず、『BLOGOS』(https://blogos.com/)の4つの記事へのリンクを以下に:

   【【会見全文・前編】「あきらめたら試合終了」
         安田純平さんが明かす40ヶ月のシリア拘束
    (https://blogos.com/article/336156/

   【【会見全文・後編】「あきらめたら試合終了」
         安田純平さんが明かす40ヶ月のシリア拘束
    (https://blogos.com/article/336157/

   【安田純平さんが帰国後初会見
         「何が起こったのか可能な限り説明することが私の責任」
    (https://blogos.com/article/335972/

   【安田純平さん「自己責任といった批判があるのは当然のこと」
    (https://blogos.com/article/336046/


 《紛争地での取材やメディア、ジャーナリズムの原則論》、それを《政府高官が建前でも原則論を口にできぬ国》ニッポン。〝御上〟に逆らった者には、《「自己責任論」などを振りかざし…罵声を浴びせる連中…世界でも珍しいほど馬鹿げた議論》が沸き起こる国ニッポン。

   『●綿井健陽さんと鎌田慧さん
    「鎌田さんは……「もしも原発で事故が発生したときどうなるか
     と突然のように思いたった。いったん立ち入り禁止区域に
     指定されたなら、なかの様子はもう報道できなくなる
     それが『禁止区域』にはいろうと思った動機のひとつである。
     報道規制そのまま従っていてはなにも明らかにならない
     という想いがあった」……章の題は「大本営発表、バンザーイ」だ。
     「挙げ句の果てにわたしは、立ち入り禁止区域の『無許可報道
     とのことで、長崎県警から書類送検されるトバッチリを受けた。
     いまや勝手に取材するとお縄を頂戴する時代である(後略)」
     ……「様々なメディアが多種多様な報道を自由にできること
     は社会の根幹

   『●綿井健陽さん「「様々なメディアが
         多種多様な報道を自由にできること」は社会の根幹」
    「東京新聞の社説【旅券返納 渡航の自由どう考える】…。」
    「今回のパスポート没収問題について、最初に思ったのは
     「元朝日新聞記者の本多勝一さんのルポ『戦場の村
     (朝日文庫)」のこと。で、次に思い出したのは鎌田慧さんの
     雲仙普賢岳噴火の際の取材のこと。政府が規制すればそれで
     御仕舞い?、で良い訳は無く、
     「アベ様のNHK」的に「政府が白というものを黒とは言えない」で良い?
     とは思えません。「いまや勝手に取材するとお縄を頂戴する時代」。
     綿井健陽さん「「様々なメディアが多種多様な報道を自由にできること
     は社会の根幹」」

 メディアやジャーナリストは「沈黙」「目と耳をふさぐ」でいいのでしょうか? 市民は知らなくていいのでしょうか? 〝御上〟の言うとおりにしていれば大丈夫なの?




   『●『ルポ戦場出稼ぎ労働者』読了
    「帯より、「世界中から集められる、貧しい派遣労働者たち! 
     自ら出稼ぎ労働者となり、単独潜入取材した記録!
     民営化の果て、その現場とは?」
       ファルージャ 日本人人質拘束事件

   『●「18歳選挙権」にさえ無関心?: 
       血税と赤紙と、そして、(経済的)徴兵制への第一歩か?
   『●安田純平さんの安否が大変に心配: 
     官邸は一体何をしているのか? 後藤健二さんの対応と同じ過ち・・・
   『●[声明が撤回されました]「国境なき記者団」が
       安田純平さんについての記事・声明を公開……
   『●安田純平さんの無事な解放を祈る… 
     「ではなぜ読者や視聴者はシリアが危険だと知っているのか」?
   『●自己責任であり、「公共の迷惑」なのか?: 
      青木理さん「「知る権利」を保障し、「公共の利益」である」
   『●異常過ぎる非情な自己責任論者達… 
      安田純平さんの「罪は、人々が『お上』と呼ぶ政府に反抗したこと」?
   『●「自己責任などと声高に言わずに出掛けていくのは、
        使命感からだ。…安田純平の解放を心から喜びたい」
   『●《「ひどい環境から解放されて良かったね」とねぎらわれ》ても、
                      帰国しても《ひどい環境》が待っている
   『●無事帰国した安田純平さんに、是非、現地の様子や
        拉致事件の全貌、生還できた教訓等々を聞いてみたい
    「『サンデーモーニング(2018年10月28日)』での青木理さんの御話。
     政府側の言い分(ケリー国務長官)ではあるが「メディアや
     ジャーナリストの危険性をゼロにすることは無理」であるが、一つ方法が
     あって、それは「沈黙」「目と耳をふさぐ」こと…でも、
     それは「降伏・放棄」である。
       「降伏・放棄」は、圧政者を利し、圧政や戦禍に苦しむ市民を
     見放すことになる。」

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http://tablo.jp/serialization/aoki/news004062.html

青木理逆張りの思想
安田純平さん帰国について想うこと 「アメリカ政府がジャーナリズム原則論をコメントした意義」|青木理
2018年11月05日 アメリカ政府 コメント ジャーナリズム原則論 安田純平 帰国 青木理

      (日本政府は身代金を払っていないという)

 安田純平さんが解放され、無事帰国した。なによりもそれを喜びたい。

 一部ではいまだに「自己責任論」などを振りかざし、安田さんに罵声を浴びせる連中もいるらしいが、世界でも珍しいほど馬鹿げた議論これ以上、私はつきあいたくもない

 ただ、紛争地での取材やメディア、ジャーナリズムの原則論については、一般の理解があまりに不十分だと思われるので、私がすでに各所で紹介した話ではあるが、本サイト編集長の久田君の許可を得て、ここでも再掲しておきたい(なお、この話は紛争地に限らず、事件・事故や被災地での取材にも同じことがいえる)。

 さて、あらためて記すまでもないことだが、紛争地でジャーナリストやメディア関係者が殺害されたり、人質になったりする事件は日本以外にも各国で起きている。米国務省によれば、たとえば米国では2014年、実に60人ものジャーナリストやメディア関係者が紛争地で死亡したという。

 そこで翌年の2015年1月20日、米国務省はメディア関係者と会合を開いた。テーマは、紛争地取材におけるジャーナリストの安全について。その会合であいさつに立った当時のケリー国務長官は次のように述べている。

   「紛争地におけるジャーナリストの危険性を完全に取り除くことはできない。
    唯一の方法は沈黙することだが、それは降伏と呼ぶべきだ。
    世界は何が起こっているかを知る必要がある
    沈黙は圧政者や暴君に力を与える。専制政治を栄させてしまう」

 その上でこうも語っている。

   「ジャーナリストは可能な限り公的機関から独立していなければいけない。
    しかし政府にもできることがある、我々はそう信じている」
    (米国務省HPより訳出)

 なんでもかんでも米国がいい、などというつもりはない。米国こそが世界最大の"紛争生産国"ではないか、という皮肉を投げかけることだってできる。

 だが、この発言は、メディアやジャーナリズムの教科書があれば、その1ページ目に記してもおかしくないほどの原則論である。たとえ建前にせよ、政府高官がこうした原則論をきちんと口にできる国と、そうでない国との違いはあまりに大きい。政府高官が建前でも原則論を口にできぬ国がどこか、これもあらためて指摘するまでもないだろう。(文◎青木理 連載『逆張りの思想』)
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●無事帰国した安田純平さんに、是非、現地の様子や拉致事件の全貌、生還できた教訓等々を聞いてみたい

2018年10月30日 00時00分05秒 | Weblog

[※ 青木理さん(『サンデーモーニング』 2018年10月28日)↑]



久田将義責任編集TABLO』(http://tablo.jp/)の二つの記事。
畠山理仁さんの記事【ジャーナリスト・安田純平さん帰国で炎上する『自己責任論』について私はこう考える|畠山理仁】(http://tablo.jp/case/international/news004023.html)。
久田将義責任編集の記事【戦場ジャーナリストには意義がある 安田純平さん帰国で『自己責任論』を拡散する人達へ|久田将義】(http://tablo.jp/case/international/news004025.html)。

 《だが、安田さんはあなたではない。「私だったら行かない」でいいだろう。「私だったら謝る」でいいだろう。「帰ってこなくていい」という冷たい言葉を放った人は、その先に何を見ていたのか。…安田さんは生きて帰ってきた。だから私は少し待ちたい。安田さんのジャーナリスト生命をここで終わらせてしまうことのほうが、社会にとって大きな損失ではないだろうか》。
 《今回の「事件」について、安田さんは記事か本か映像で発表するでしょう。それは僕らが分からなかった中東情勢を知らせてくれるでしょう。また過去の安田さんがシリアに行って撮影した映像も、彼が現地入りしたからこそ初めてわかるものでした》。

   『●『戦争と平和 ~それでもイラク人を嫌いになれない~』読了(1/2)
   『●『戦争と平和 ~それでもイラク人を嫌いになれない~』読了(2/2)
   『●「自己責任」を叫ばれた人の立場
   『●「自己責任」バッシングと
     映画『ファルージャ イラク戦争日本人人質事件・・・そして』
   『●「ではなぜ読者や視聴者はシリアが危険だと知っているのか。
                     伝えようとした人が現場にいたからです」


 安田純平さんに自己責任論を投げつけ、「沈黙」させれば気が済むのですか? 
 『サンデーモーニング(2018年10月28日)』での青木理さんの御話。政府側の言い分(ケリー国務長官)ではあるが「メディアやジャーナリストの危険性をゼロにすることは無理」であるが、一つ方法があって、それは「沈黙」「目と耳をふさぐ」こと…でも、それは「降伏・放棄」である。
 「降伏・放棄」は、圧政者を利し、圧政や戦禍に苦しむ市民を見放すことになる。



 かつて同番組で、青木理さんは以下の様にも述べておられました。

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■(サンデーモーニング、2016年3月20日)青木理さん: 「自己責任や、「公共の迷惑」か? 安田さんのような活動が無いと、戦場で何が起きているのか知りようがない。紛争は究極の人権侵害が起こる場所。そこで何が起きているのか、女性や子供といった弱者がどうなっているのか、我々は何も知り得なくなる。こういうジャーナリストの活動が知る権利、「公共の利益」を代表している」
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 無事帰国した安田純平さんに、是非、現地の様子や拉致事件の全貌、生還できた教訓等々を聞いてみたい。《戦場で何が起きているのか…そこで何が起きているのか、女性や子供といった弱者がどうなっているのか》、安田純平さんから聞いてみたい。
 ジャーナリストである《安田さんが背負っている責任》は、畠山理仁さんが言うように、《この40か月の体験を、いずれ社会に還元してくれるだろう。それに対する評価を受けること》。

   『●『ルポ戦場出稼ぎ労働者』読了
    「帯より、「世界中から集められる、貧しい派遣労働者たち! 
     自ら出稼ぎ労働者となり、単独潜入取材した記録!
     民営化の果て、その現場とは?」
       ファルージャ 日本人人質拘束事件

   『●「18歳選挙権」にさえ無関心?: 
       血税と赤紙と、そして、(経済的)徴兵制への第一歩か?
   『●安田純平さんの安否が大変に心配: 
     官邸は一体何をしているのか? 後藤健二さんの対応と同じ過ち・・・
   『●[声明が撤回されました]「国境なき記者団」が
       安田純平さんについての記事・声明を公開……
   『●安田純平さんの無事な解放を祈る… 
     「ではなぜ読者や視聴者はシリアが危険だと知っているのか」?
   『●自己責任であり、「公共の迷惑」なのか?: 
      青木理さん「「知る権利」を保障し、「公共の利益」である」
   『●異常過ぎる非情な自己責任論者達… 
      安田純平さんの「罪は、人々が『お上』と呼ぶ政府に反抗したこと」?
   『●「自己責任などと声高に言わずに出掛けていくのは、
        使命感からだ。…安田純平の解放を心から喜びたい」
   『●《「ひどい環境から解放されて良かったね」とねぎらわれ》ても、
                      帰国しても《ひどい環境》が待っている

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http://tablo.jp/case/international/news004023.html

ジャーナリスト・安田純平さん帰国で炎上する『自己責任論』について私はこう考える
畠山理仁
2018年10月27日 ジャーナリスト 安田純平 帰国 炎上 畠山理仁 自己責任論

 

 シリアで拘束されていた安田純平さんが解放され、約40カ月ぶりに帰国した。筆者は安田さんと面識はあるが、友人関係ではない。しかし、共通の知人である記者仲間が安田さんの解放を願って動いたり、あえて動かなかったりしたことを知っている。

 記者たちは安田さんのための行動を自己責任でやってきた。そんな人たちの心労が減ったことは喜ばしい。また、私自身も安田さんの帰国を喜んでいる失われてもいい命などこの世には一つもない。それは皆さんの命もまったく同じことである。

 しかし、安田さん帰国の第一報が流れると、日本では『自己責任論』を盾にしたバッシングが始まった。私にはバッシングする人たちが何を求めているのかがわからなかった。

   「危険地帯に勝手に行って捕まった」

 そう憤る人もいた。しかし、そこが危険地帯であるとどうやって知りえたのだろうか。誰かが「現地で何が起きているか」を取材し、伝えているからではないか。

   「行くべきではなかった」「謝るべき」

 そんな意見も目にした。だが、安田さんはあなたではない。「私だったら行かない」でいいだろう。「私だったら謝る」でいいだろう。「帰ってこなくていい」という冷たい言葉を放った人は、その先に何を見ていたのか

 安田さんは目的を持ち、自らリスクを負ってシリアに行った。それ以上でもそれ以下でもない。私たちの「目」や「耳」の役割を果たすであろうジャーナリスト、「現地に行くなと言う理由がわからない。多様な情報があるからこそ、机上の「論」も成り立つ。わざわざ情報を遮断して世界を歩こうとするのは、とても危険なことではないだろうか。

 事実として、安田さんは日本の外務省が退避勧告を出しているシリアに入った。しかし、そのことをもって、日本国が「国としての責任」を免れるわけではない。

 普段から政治家は「国民の生命と財産を守るのが仕事だ」と胸を張る。政治家は特別職の公務員であり「全体の奉仕者」だ。国民を選別していいはずがない。もちろん、あなた自身も守られるべき存在である。

 たしかに安田さんは、政府にとって厄介な事案を引き起こしたかもしれない。しかし、多様な人たちの集合体が国である。多様性を認められない国は、民主国家とは呼ばれない

 紛争地を取材するジャーナリストは、リスクを負った結果、不幸にして命を落としてしまうこともある。「死」は大変に重い情報だ。しかし、生きて帰れば、より多くの情報を社会に伝えられる。当然ながら、本人にとっても社会にとっても「生還が最善だ

 だから私には、生還を喜ばない人たちが何に重きを置いているのかがわからない。もし、他人にを要求するような社会であるならば今の日本はとても病んでいると思う。

 安田さんはジャーナリストだ。この40か月の体験を、いずれ社会に還元してくれるだろうそれに対する評価を受けることが安田さんが背負っている責任だと私は思う。

 安田さんは生きて帰ってきた。だから私は少し待ちたい。安田さんのジャーナリスト生命をここで終わらせてしまうことのほうが社会にとって大きな損失ではないだろうか。(文◎畠山理仁 [第十五回開高健賞受賞作家])
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http://tablo.jp/case/international/news004025.html

戦場ジャーナリストには意義がある 安田純平さん帰国で『自己責任論』を拡散する人達へ久田将義  
2018年10月28日 久田将義 安田純平 帰国 戦場ジャーナリスト 拡散する人達 自己責任論

 ジャーナリスト安田純平さん帰国の報に対して、ネットを中心に余りにも勘違いしている人がいます。「自己責任だからしょうがない」論。そこから「自己責任だから死んでも仕方ないまで発展する人もいます。大丈夫ですか? 何かがおかしい、とご自分では省みないのですか?

 まず、同じ日本人として、日本人が無事に帰ってきたことに「お疲れ様」と言うのがです。というより、日本人でなくても人が生死の境目から帰還したら同じような気持ちを抱くのが真っ当な心根ではないでしょうか。

 安田純平さんは戦場ジャーナリストです。つまり、一般の人が行けない戦地に行って現場をリポートするのが目的であり「職業」です。

 この仕事の日本における泰斗として明治時代、西南戦争に従軍したジャーナリスト福地桜痴(源一郎)がいます。文字通り、戦場ジャーナリストの先駆けです。彼の記事のおかげで現在も西南戦争のリアルが伝わってきます。「翔ぶが如く」(司馬遼太郎著)などの作品も彼の取材がなければ成立しなかったかも知れません。彼も一歩間違えれば「戦死」の可能性がありました。また、日露戦争に従軍して「乃木大将と日本人」をアメリカ人記者スタンレー・ウォッシュバーンが著しました。

 福地から始まった(とされる)日本での戦場ジャーナリズム。戦場に赴き、最小限の安全を確保しつつ、現場戦地をリポートする事は、意義があるのです。危険地帯を危険と報道すれば政府は国民に対してその国へ渡航する事に注意を則します。つまり、公益性がある仕事なのです。

 戦場カメラマン沢田教一さんはピューリッツア賞を取りましたが、現地で亡くなりました。安田純平さんは亡くなれば偉かったのでしょうか。日本人が、いや、人が亡くなってよくやったねとほめる事人間のあるべき姿として、生き方として間違っています

 安田さんに対する批判で、少し理解できるのが「安田さん英雄論批判」です。これは安田さんのせいではありません。僕も、「誰が安田さんを英雄とか言っているのか」と驚きましたが恐らく、テレビ朝日の玉川徹さんの言葉が拡散されているかと思われます。これには玉川さんに苦言を呈しておきたいです。英雄は言い過ぎだろう、と。こういった風潮に対して、過剰に反応するムキがあるのかと思います。

 が、それが「自己責任論」へと結びつくのは余りにも愚かです。

 安田さんのツイートも見ました。現政府に対して、反旗を翻す内容でした。その文章表現は僕は、品がないものもあったと思いましたしたが、僕も品のないツイートをしています。

 しかし、この国では言論の自由、表現の自由が認められています。基本、何を言っても良いのです(これについては何度も言ったり書いたりしています)。けれども、「政府に助けてもらうのはおかしい」という論こそ、全くおかしいものです。憲法に基づき、政府は政府の役割を果たすのみです。すなわち日本国民の安全を保障する、です。

 今回の「事件」について、安田さんは記事か本か映像で発表するでしょう。それは僕らが分からなかった中東情勢を知らせてくれるでしょう。また過去の安田さんがシリアに行って撮影した映像も彼が現地入りしたからこそ初めてわかるものでした。

 少女が銃声に耳をふさぐ様子。幼き子供が亡くなってしまった事。こんな悲劇が世界で起きている事を安田さんは伝えてくれました。これは日本人にとって非常に貴重な情報です。

 安田氏の帰国に関して、ずっと言われているのが自己責任論です。すなわち、自分の事は自分で責任を取ると言う事ですが、一見、勇ましく聞こえます。勇ましい事を言う人ほど、僕は疑心を持ちます。例えば本当の愛国者は愛国とかわざわざ口に出して言わないものです

 主にネトウヨと言われる人たちが批判していると思われますが、ネトウヨと保守は違います。ネトウヨと右翼民族派は違います。同じと言ったら右翼は怒るでしょう。これも記事に書いています。


   【新大久保】「もう商売にならない...」民族派や任侠団体が
   嫌韓デモに悩まされる地元住民の駆け込み寺に?


 ネトウヨも左翼も同じ日本人ではないですか。日本を良くしよう、子供たちが笑顔で育って欲しい、貧しい人たちが一人でもいなくなって欲しい、自殺者が一人でも減って欲しい、弱者の立ち場にたった政治を行って欲しい立場は違えど、そう考えていると僕は信じたいものです。

     (2011年夏頃の小高地区(筆者撮影))

 現場に行くという意味では、福島第一原発事故取材だって、同様です。僕はまだ大熊町や小高が放射線量が高く、立ち入り禁止になっている時期に地元の人間と入りましたが、これも自己責任です、当然。そんな事は分かっているのです。安田さんも当然理解しています。「で? それからどういう議論が生まれるの?」という事です。

 戦場ジャーナリズムは戦争が起きているかぎり、必要なのです。行きたくない、けれど行かなくてはならない。そういう思いで取材に出かけています。そして、思想がどうであれ、人柄がどうであれ彼らの仕事には意義がある事なのです。歴史に残る事なのです。

 福地桜痴のした仕事のように。

 自己責任論でそういったジャーナリズム活動を委縮されるのは先進国として世界の尊敬を集めている国がするべき態度ではありません。「さすが日本だ」。そういう評価を得るべく恥ずかしくない言動を取りたいものです。(文◎久田将義
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●《「ひどい環境から解放されて良かったね」とねぎらわれ》ても、帰国しても《ひどい環境》が待っている

2018年10月27日 00時00分10秒 | Weblog


リテラの記事【安田純平さんに高須克弥らネトウヨたちがまた自己責任論バッシング! 人質バッシングのルーツは安倍首相】(https://lite-ra.com/2018/10/post-4334.html)。

 《今回の解放・帰国の知らせは喜ばしい限りだ。だが、その一方で、懸念されていたことが現実化してしまった。またも「自己責任論」がここぞとばかりに吹き出しているからだ》。

   『●『戦争と平和 ~それでもイラク人を嫌いになれない~』読了(1/2)
   『●『戦争と平和 ~それでもイラク人を嫌いになれない~』読了(2/2)
   『●「自己責任」を叫ばれた人の立場

   『●「自己責任」バッシングと
     映画『ファルージャ イラク戦争日本人人質事件・・・そして』
   『●「ではなぜ読者や視聴者はシリアが危険だと知っているのか。
                     伝えようとした人が現場にいたからです」

     《イラクでは2004年4月にボランティア活動家の高遠菜穂子さんら
      3人と、取材中だったフリージャーナリストの安田純平さんら2人が
      相次いで誘拐された事件が起きている。高遠さんらを誘拐した
      犯人グループは自衛隊のイラクからの撤退を要求した。政府は
      応じなかったが、5人とも4月中に解放された》
     《2012年、シリアで内戦を取材中に銃撃戦に巻き込まれて
      亡くなったジャーナリストの山本美香さん(当時45)のパートナー。
      後藤さんと面識はないが、撮影した映像を見たことがある。
      紛争の最前線から一歩引いたところで、市民、特に子どもたちが
      置かれた状況を淡々と取材する姿勢が伝わってきた。
      「強い意志を持って、何かを伝えようという気概に敬服する」》
     《独立系通信社ジャパンプレスの代表を務め、山本さんを失った後も
      アフガニスタンなどの取材を続けている。「なんであんな危険な場所に
      行くのか」と問われる。今回の事件でもインターネット上などでは
      自己責任論が飛び交う。「ではなぜ読者や視聴者はシリアが
      危険だと知っているのか。伝えようとした人が現場にいたからです」》
     《危険な思いをしても戦地に行くのはなぜか。原点はアフガニスタンでの
      体験だという。「血も涙もない集団」と報じられていた反政府勢力
      タリバーンだったが、支配下の街は平穏だった。「イスラム国」でも、
      宗教指導者は温厚な人柄で「空腹ではないか」などと気遣ってくれた。
      「ネットで得た情報ではなく、
      自分で話をして、身を置かないとわからない」という》

 前回に引き続き、『綿井健陽逆視逆考PRESS』(https://watai.blog.so-net.ne.jp/)より二つのつぶやき:

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 
https://watai.blog.so-net.ne.jp/2018-10-26
https://twitter.com/wataitakeharu/status/1055320910519918592

WATAI Takeharu 綿井健陽
@wataitakeharu

安田純平さんの拘束当時の映像が初めて出たのが2016年3月でした。当時これからどうなるだろうか、解放されるために何をすべきだろうか、そして解放された時のことを思って書いた原稿です(写真参照/2016年3月・共同通信から全国の加盟紙に配信)。しばし休んで、また取材現場に戻ってきてほしい。
13:51 - 2018年10月25日
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 
https://watai.blog.so-net.ne.jp/2018-10-26
https://twitter.com/wataitakeharu/status/1055329109444718593

WATAI Takeharu 綿井健陽
@wataitakeharu

安田純平さんの解放直後の言葉で印象的なのは、シリアでの拘束期間を「3年半」ではなく、「40カ月」と表現したこと。気の遠くなるような日々を、一日一日、一カ月一カ月、解放される日を待ち望みながら過ごして数えた「40カ月」ではなかったか…。いつか直接聞いてみたい
14:24 - 2018年10月25日
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 


 日刊スポーツの記事【ダルビッシュ「旅行じゃない」自己責任論に反論】(https://www.nikkansports.com/baseball/mlb/news/201810260000264.html)によると、《カブスのダルビッシュ有投手(32)が、シリアの過激派組織による拘束から解放されたジャーナリスト安田純平さんに対する「自己責任論」に反論した…「人間が助かったわけでそれに安堵するのって変でしょうか? 後悔とか反省って自分でするもので、他人が強要するものではないと思うんですよね」と反論…「…でも行くってことは誰かがいかないと歴史は繰り返されると理解しているからではないでしょうか?」と私見を述べた》。

 日刊ゲンダイの記事【安田純平さん解放 安倍政権は手柄どころか寝耳に水だった】(https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/240368)によると、《安倍首相は「世界各国の指導者、友人たち、協力いただいたすべての関係者に、日本国民を代表して感謝申し上げたい」と官邸主導をアピール。菅官房長官も「官邸を司令塔とする『国際テロ情報収集ユニット』を中心にトルコやカタールなど関係国に働きかけた結果だ」と自画自賛したが、どうもマユツバなのだ。現代イスラム研究センター理事長の宮田律氏はこう言う。「2015年1月にシリアでIS(イスラム国)に殺害されたジャーナリストの後藤健二さんのケースでは、安倍政権はよりによってISと敵対するヨルダン政府に交渉を託した。それが事態をこじれさせた印象はぬぐえません。今回は安田さんを拘束したとみられる旧ヌスラ戦線を支援するカタールとトルコに仲介役を託したのが奏功したと言われていますが、これまでの経緯や現地情勢を考えれば当然の判断です」》…《安田氏と交流のあるジャーナリストの志葉玲氏も言う。「安田さんの消息は15年6月に途絶えましたが、最初の動画が公開された16年3月までに解放された可能性があった。安田さんの安否を案じた民間の支援者がトルコ入りし、過激派組織に近いトルコやシリアの関係者の協力を得ながら情報をかき集め、外務省にたびたび報告していたのです。その過程でトルコのエルドアン大統領に近い組織が安田さんを拘束した組織に影響力を持つことが分かり、外務省にトルコ系組織を通じた解放交渉を提案したのですが、働きかけた形跡はない。外務省が全く動かなかったとは思いませんが、支援者の情報を吸い上げるばかりで、安倍政権の本気度は正直言って疑わしいものでした」》。

 前日ブログ同様、まずは、(政界地獄耳)《自己責任などと声高に言わずに出掛けていくのは、使命感からだ。…安田純平の解放を心から喜びたい》に全く同感。

 そして改めて、またしても今回…「自己責任論」。安田純平さんは、折角、「地獄」のような「40カ月」から解放されて、無事帰国しても、つぎは、言葉の「暴力」「嫌がらせ」が待っているニッポン。一体どんな国なのだろうか。《ひどい環境から解放されて良かったねとねぎらわれ》ても、国内での《ひどい環境》が待っている。
 《フリーのジャーナリストは命を懸けてやっている》…《国内の大手メディアが報じない戦場やテロリスト組織の実態をあきらかにするために、つまり国民の知る権利を守るために身体を張ってシリアへ渡った》というのに、褒められ、称賛されこそすれ、悪罵を投げつけられる理由がどこに在るのか。

 【ジャーナリスト安田純平さん帰国 「虐待状況だった」】(http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018102501001371.html)によると、《「拘束後は虐待としか言いようがない状況だった。暴力を受けた」「可能な限り何があったか説明したい」と話した。安田さんは「武装勢力の機嫌が悪いと、缶詰を出しても缶切りは渡されなかった」とも述べた》。
 また、同紙の記事【安田さん帰国 衣食住、自由なく】(http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201810/CK2018102602000128.html)によると、《「暴力や嫌がらせを受け、拘束中は虐待としか言いようがない状況だった」。…「生活を取り巻く全ての環境が、拘束した彼ら次第でひどくなった」と安田さん。「機嫌が良いとチキンのグリルやラムのサンドイッチを渡されたが、半年以上も水浴びをさせてもらえなかったり、缶詰をもらっても缶切りをもらえなかったりした」と打ち明けた。同乗した外国人の男性から、日本語でひどい環境から解放されて良かったねとねぎらわれると、笑顔で「サンキュー」と答えていた。…「殺されるかもしれない」と感じた「独房」の日々を振り返った。「地獄だった」「今日も帰されないと考えるだけで日々、だんだんと自分をコントロールできなくなってくる」。前かがみの姿勢で、「監禁されている独房の中にいるという状況が当たり前の生活のように感じ始め、非常につらかった」と言葉を選びながら語った。拘束中は「足を伸ばして寝てはいけない。範囲が一・五メートルだけ。それが二十四時間」という状態が八カ月ほど続いたこともあったという》。

   『●『ルポ戦場出稼ぎ労働者』読了
    「帯より、「世界中から集められる、貧しい派遣労働者たち! 
     自ら出稼ぎ労働者となり、単独潜入取材した記録!
     民営化の果て、その現場とは?」
       ファルージャ 日本人人質拘束事件

   『●「18歳選挙権」にさえ無関心?: 
       血税と赤紙と、そして、(経済的)徴兵制への第一歩か?
   『●安田純平さんの安否が大変に心配: 
     官邸は一体何をしているのか? 後藤健二さんの対応と同じ過ち・・・
   『●[声明が撤回されました]「国境なき記者団」が
       安田純平さんについての記事・声明を公開……
   『●安田純平さんの無事な解放を祈る… 
     「ではなぜ読者や視聴者はシリアが危険だと知っているのか」?
    「過去に「拘束」された経験があるから何だというのでしょうか? 
     優れたジャーナリストが細心の注意を払っても、拉致される現地の
     酷い状況、その証左だ。松沢呉一さんに言わせれば、「こういう人たちに
     「自業自得」なんて言葉を投げつけるのなら、命がけでビデオを回し、
     写真を撮り、記事を書いている人たちに失礼だから、二度とニュースや
     雑誌を見なさんな」だ」

   『●自己責任であり、「公共の迷惑」なのか?: 
      青木理さん「「知る権利」を保障し、「公共の利益」である」
   『●異常過ぎる非情な自己責任論者達… 
      安田純平さんの「罪は、人々が『お上』と呼ぶ政府に反抗したこと」?
    《だが、日本はどうだろう。既報の通り、04年の人質事件で自己責任論
     ふりかざした急先鋒は当時の自民党幹事長、安倍晋三氏である》
    「非情な「自己責任」論者アベ様、そしてその取り巻き達、支持者達
     《自分もまた人質の見殺しに加担していること》に気付けない、
     あまりの非情さ。《冷酷な社会》《残酷な国》。本当に自己責任であり、
     「公共の迷惑」なのか? 青木理さんは「「知る権利」を保障し、
     「公共の利益」である」と仰っている。どちらが常識なの? 
     「日本の“お上”意識」はマトモなの?」

   『●「自己責任などと声高に言わずに出掛けていくのは、
        使命感からだ。…安田純平の解放を心から喜びたい」

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https://lite-ra.com/2018/10/post-4334.html

安田純平さんに高須克弥らネトウヨたちがまた自己責任論バッシング! 人質バッシングのルーツは安倍首相
2018.10.25

     (安田氏の著書『囚われのイラク』)

 2015年6月にシリアで行方不明となり、イスラム過激派組織「シャーム解放委員会」(旧ヌスラ戦線)に拘束されていたとみられるジャーナリストの安田純平氏が解放され、本日、成田空港に到着した。

 今年7月には、黒づくめの人物から銃を突きつけられた状態で「いますぐ助けてください」と安田氏がオレンジ色の囚人服姿で訴える動画が公開されるなど一刻も早い救出が待たれていたが、今回の解放・帰国の知らせは喜ばしい限りだ。

 だが、その一方で、懸念されていたことが現実化してしまった。またも「自己責任論」がここぞとばかりに吹き出しているからだ。

 たとえば、高須クリニックの高須克弥院長は、24日にこう投稿した。

   〈この人には敬意ははらえません。兵士ではない。
    兵士ならば敵に媚びる捕虜だ。
    出でくるときは定番の作法を守ってほしい。
    まず『恥ずかしながら・・・』と謝りなさい〉(原文ママ)

 さらに、ネット上では、安田氏の解放に安堵したり祝福するのではなく、安田氏に怒りを露わにしたり、糾弾するようなコメントが殺到。

   〈ムカムカする。実に腹立たしい。この三年半、掛かった費用を公開してほしい〉
   〈あなたを助けるためにかかった諸々の費用はすべて負担してくださいね〉
   〈無精ヒゲ剃らずに捕虜生活大変でしたアピールか? 帰国しなくて結構ですけど?〉
   〈行くなと言われている場所に自己責任で行った結果でしょ?〉
   〈次に誘拐されに行くのは何カ月後ですか?〉

 Twitterやまとめサイトのコメント欄などに溢れる〈どの面下げて帰ってくるつもりか〉〈国に迷惑をかけるな〉という非難の声……。なかでも、Yahoo!ニュースのコメント欄はほとんどが自己責任論で埋まるという異常な事態となっている。

 しかも、今年7月に公開された動画のなかで、黒ずくめの人物に銃を突きつけられた安田氏が「私はウマルです。韓国人です」と語っていたことから、〈韓国籍のウマルだっけか? やっぱチョンだから助けたってわけ?〉〈日本に帰ってくるなよ、韓国に行くか自害しろやwww〉などという卑劣なコメントも数多く投稿されている。帰国の途についた安田氏がメディアの取材に対して語ったことによると、犯行グループから「自分の本名や日本人であることは言うな」「韓国人だと言え」と要求されていたためだったというが、ネット上では安田氏解放のニュースに託けたヘイトコメントが垂れ流されている状態だ。

 そもそも、安田氏が拘束されている最中から、ネット上では安田氏の自己責任だとがなり立てる声が多く寄せられていた。とくに、安田氏が拘束前の2015年4月にツイートした〈戦場に勝手に行ったのだから自己責任、と言うからにはパスポート没収とか家族や職場に嫌がらせしたりとかで行かせないようにする日本政府を「自己責任なのだから口や手を出すな」と徹底批判しないといかん〉という投稿をあげ、「本人が口も手も出すなって言ってたんだから自己責任でしょ」とあげつらう者が続出しているのだ。

 一体、どこをどう読んだら、そんな話になるのか。この安田氏の投稿は、“ジャーナリストに自己責任を押し付ける政府にはジャーナリストに足枷をはめる権利はない政府による報道規制を非難しているのであって、政府が安田氏を助けなくていい理由になどまったくならない。しかしこの国では、あたかも「国の命令に逆らう者を救出する必要などないと考える人が恐ろしく多いのである。

 当たり前すぎる話だが、自国民の生命保護は、ほかでもない国家の責務だ。それがたとえ犯罪者であったとしても、政府は法の範囲内において人命を救うために最大限の努力をする義務があり、国民はそれを国家に要求する権利がある。むしろ、「危険地帯に勝手に行ったのだから自分の責任で何とかしろなどという大合唱が起こる先進国などどこにもない


■海外メディアは、日本の人質“自己責任”バッシングを「異常」と批判

 実際、人質事件が起こると日本に沸き返る「自己責任論」を、海外のメディアは日本の異常な状況”だと見ている。

 たとえば、2004年に発生したイラクでの邦人3名の人質事件の際、日本では自己責任論が噴出。とくに現地でボランティア活動を行っていた高遠菜穂子さんが解放後、「今後も活動を続けたい」と語ったことに対し、当時の小泉純一郎首相は寝食忘れて救出に尽くしたのに、よくもそんなことが言えるなと激昂した

 しかし、海外の反応はこれとまったく違った。アメリカのパウエル国務長官が「イラクの人々のために、危険を冒して現地入りをする市民がいることを、日本は誇りに思うべきだ」と発言したことは有名だが、フランスの高級紙ル・モンドも、〈外国まで人助けに行こうとする世代が日本に育っていることを示した〉と高遠さんらの活動を評価。逆に、日本に広がっていた人質への自己責任論については、〈人道的価値観に駆り立てられた若者たちが、死刑制度や厳しい難民認定など(国際社会で)決して良くない日本のイメージを高めたことを誇るべきなのに、政治家や保守系メディアは逆にこきおろしている〉と強く批判している。さらに、〈社会秩序を乱した者は後悔の念を示さなければならないのが日本の習慣〉と、その特異性をも伝えていた。

 アメリカのニューヨーク・タイムズも同様だ。〈イラクで人質になった日本の若い民間人は、黄色いリボンではなく非難に満ちた、国をあげての冷たい視線のもと、今週、故国に戻った〉と日本国内の異常さを表現し、帰国後も自己責任だと人質を追い詰める日本政府の態度を凶暴な反応を示した〉と非難。〈(人質である)彼らの罪は、人々が『お上』と呼ぶ政府に反抗したことだと皮肉を込めて論及している。

 また、イスラム国(IS)に後藤健二さんと湯川遥菜さんが拘束されたときも、イギリスのロイターは〈日本では、イスラム国人質事件の被害者を攻撃する者がいる〉という見出しの記事を掲載。〈日本政府の対応と同胞である日本市民たちの態度は、西欧諸国のスタンダードな対応とはまったくちがうものだった〉と日本における人質への冷酷な受け止め方を紹介。アメリカのワシントン・ポストも、2004年の邦人人質事件で起こった自己責任論に再び言及している。

 もちろん、海外でも、保守系政治家が自国の人質に対して自己責任をぶつことがないわけではない。たとえばフランスでは2009年にジャーナリスト2名がテロ組織に拘束され、当時のサルコジ大統領は2人のことを「無謀」と非難。しかし、市民はこうした政府の姿勢に反発し、2人の救出を求める署名活動やコンサートが企画されるなど、国に対して積極的な対応を求めた。こうした世論がフランス政府を後押しし、結果、2名のジャーナリストは無事、解放されるにいたったのだ。


■自己責任バッシングのルーツは安倍首相だった!

 だが、日本はどうだろう。2004年の人質事件で自己責任論をふりかざした急先鋒は当時の自民党幹事長、安倍晋三氏である。とくに、人質が解放された翌日の会見では、「山の遭難では救出費用を遭難者に請求することもある」と発言、政府に救出費用の請求を検討させる姿勢さえ見せたほどだった。この安倍氏をはじめとする政治家たちの新自由主義的な自己責任の大合唱が国民に浸透し、いまではすっかり根付いてしまったのである。

 しかし、過去何度も繰り返されてきたこうした自己責任論に対し、今回は早くからそれを牽制する意見も出ていた。たとえば、24日放送の『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)では、玉川徹氏が「自己責任論というのは、僕は否定しておきたいたいな、釘を刺しておきたいなと、ほんとうに今回、とくに思います」と述べ、こうつづけた。

   「そもそも論から言うと、ジャーナリストは何のためにいるんだ。
    それは民主主義を守るためにいるんですよ
   「民主主義を守ってるってどういうことかっていうとね、民主主義だ
    といっても国なり企業なりで権力をもっている人たちは、自分たちの
    都合のいいようにやって隠したいんですよ。でも、隠されているものを
    暴かない限り、私たちは正確なジャッジができないんです、国民は。
    正確なジャッジをするためには情報がいるんですよ。その情報を
    とってくる人たちが絶対に必要なんですね。それをやっているんです、
    ジャーナリストっていう人たちは。僕なんかはできていないです、
    そういう意味では。フリーのジャーナリストは命を懸けてやっているんですね
    いちばん危ないところにこうやって行かれているんですよ、安田さんは。
    そういう人を守らないでどうするんだと

 安田氏はイラク軍基地訓練施設に労働者として潜入して戦争ビジネスの実態をレポートした『ルポ 戦場出稼ぎ労働者』(集英社新書)を発表したり、シリア内戦の緊迫した凄まじい日常に肉薄する現地取材を伝えてきた、貴重なジャーナリストだ。しかも、安田氏は自分勝手でもわがままを通した人でもまったくない。国内の大手メディアが報じない戦場やテロリスト組織の実態をあきらかにするために、つまり国民の知る権利を守るために身体を張ってシリアへ渡ったのだ

 こうした民主主義を支える仕事ぶりに敬意を払うどころか、みんなで同調して石を投げつけるなんと冷酷な国だろうかと溜息が出るが、これは遠い国で拘束された人だけの問題などではない。「国が助ける必要はないなどという意見が、さも当然のようにまかり通る国になった結果、いまや保育園に入れないと現状の不備を訴えただけでも「子どもをつくった人の自己責任」と跳ね返す者が現れるような、冷淡な社会になってしまっているということを、よく考えるべきだろう。

(編集部)
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●「自己責任などと声高に言わずに出掛けていくのは、使命感からだ。…安田純平の解放を心から喜びたい」

2018年10月26日 00時00分26秒 | Weblog


沖縄タイムスの田嶋正雄さんのコラム【[大弦小弦]「自己責任」という言葉をよく耳にするようになった…】(https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/334982)。
日刊スポーツのコラム【政界地獄耳/フリー記者と企業ジャーナリスト】(https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201810250000216.html)。
東洋新聞のコラム【筆洗】(http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2018102502000151.html)。

 《考え方の違いで人命を選別する風潮の強まりに疑問を感じる…ジャーナリストとして今回の貴重な体験を伝えてほしい。(田嶋正雄)》。
 《自己責任などと声高に言わずに出掛けていくのは使命感からだ。…安田純平解放を心から喜びたい》。
 《井伏鱒二の『山椒魚(さんしょううお)』…▼事件に関してジャーナリストとはいえ、行くなと言われた危険な地域へ赴き、悪者に拘束されたのは自分の責任だろうという意見があることは承知している▼理解できぬわけではない。が、その声はやはり、あの山椒魚に「あきらめなさい」とただ背を向けるに等しかろう》。

 『綿井健陽逆視逆考PRESS』(https://watai.blog.so-net.ne.jp/)より二つのつぶやき:

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 
https://watai.blog.so-net.ne.jp/2018-10-24
https://twitter.com/wataitakeharu/status/1054747564770177024

WATAI Takeharu 綿井健陽
@wataitakeharu

喜ぶ準備をしつつ、確実な吉報を待つ。拘束されている人たちは他にもいるでしょうから、早く解放されますように。
23:53 - 2018年10月23日
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 
https://watai.blog.so-net.ne.jp/2018-10-25
https://twitter.com/wataitakeharu/status/1055163691438563328

WATAI Takeharu 綿井健陽
@wataitakeharu

この声を聞いて、喜ぶ準備から一転した。≪安田さん 「地獄だった」拘束された3年余り | NHKニュース≫   https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181025/k10011684721000.html
3:26 - 2018年10月25日

   安田さん 「地獄だった」拘束された3年余り | NHKニュース
   シリアの武装組織による拘束から解放されたフリージャーナリストの
   安田純平さんはトルコ南部の入管施設を出てイスタンブールに向…
   nhk.or.jp
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 

 綿井健陽さんの仰る通りだけれど…、まずは、安田純平さんが無事に解放されて本当に良かった。《救おうと取り組んだ人がいる》…ニッポン政府も含まれるものと良心的に解釈していますが、様々な国々の方が取り組んで下さったようだ。長期の《地獄》の拘束でしたが、《救おうと取り組んだ人》達のおかげだと思います。
 拉致からの開放に対して、自己責任論と忖度が幅を利かせる》ニッポン。すでに、SNS上で酷い言葉が投げつけられているけれども、世界でもまれではないでしょうか。《成熟した市民社会》からは程遠い哀しきニッポン。
 田嶋正雄さんの仰るように、ブログ主も、《ジャーナリストとして今回の貴重な体験を伝えてほしい》と思います。現地で何が起きているのか、起きていたのか、是非、聞いてみたい。

   『●『ルポ戦場出稼ぎ労働者』読了
    「帯より、「世界中から集められる、貧しい派遣労働者たち! 
     自ら出稼ぎ労働者となり、単独潜入取材した記録!
     民営化の果て、その現場とは?」
       ファルージャ 日本本人人質拘束事件

   『●「18歳選挙権」にさえ無関心?: 
       血税と赤紙と、そして、(経済的)徴兵制への第一歩か?
   『●安田純平さんの安否が大変に心配: 
     官邸は一体何をしているのか? 後藤健二さんの対応と同じ過ち・・・
   『●[声明が撤回されました]「国境なき記者団」が
       安田純平さんについての記事・声明を公開……
   『●安田純平さんの無事な解放を祈る… 
     「ではなぜ読者や視聴者はシリアが危険だと知っているのか」?
   『●自己責任であり、「公共の迷惑」なのか?: 
      青木理さん「「知る権利」を保障し、「公共の利益」である」
   『●異常過ぎる非情な自己責任論者達… 
      安田純平さんの「罪は、人々が『お上』と呼ぶ政府に反抗したこと」?
    《だが、日本はどうだろう。既報の通り、04年の人質事件で自己責任論
     ふりかざした急先鋒は当時の自民党幹事長、安倍晋三氏である》
    「非情な「自己責任」論者アベ様、そしてその取り巻き達、支持者達
     《自分もまた人質の見殺しに加担していること》に気付けない、
     あまりの非情さ。《冷酷な社会》《残酷な国》。本当に自己責任であり、
     「公共の迷惑」なのか? 青木理さんは「「知る権利」を保障し、
     「公共の利益」である」と仰っている。どちらが常識なの? 
     「日本の“お上”意識」はマトモなの?」

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https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/334982

[大弦小弦]「自己責任」という言葉をよく耳にするようになった…
2018年10月25日 07:40

 「自己責任」という言葉をよく耳にするようになった。今では社会的弱者のバッシングにも使われる

▼きっかけは2004年、イラクで日本人が武装組織の人質にされた事件だと記憶している。「自業自得」と非難された人質の一人がジャーナリストの安田純平さんだった

▼3年前、内戦のシリアで消息不明になっていたが、武装勢力の拘束から解放された。戦闘地域で長期間の拘禁、処刑の恐怖にさらされた心理状態は想像もつかないが、まずは無事を喜びたい

▼本人は「自己責任で行く」と現地入りした。取材のための渡航を妨げようとする日本政府に批判的だった。それらを理由にSNSでは「助ける必要なかった」との意見も飛び交う。考え方の違いで人命を選別する風潮の強まりに疑問を感じる

▼内戦の様子がほとんど知られていなかった12年、TBS「報道特集」で放送された安田さんのリポートは政府軍が市民に発砲する実態を市民側から伝えた。誰かが伝えなければ、世界各地の戦争・紛争の実相を知ることはできない。それを支えるのが成熟した市民社会ではないだろうか

▼シリア内戦の死者は50万人を超え、国民の半数が住む家を失い、1200万人が難民か国内避難民になったといわれる。報道はまだ十分ではない。ジャーナリストとして今回の貴重な体験を伝えてほしい。(田嶋正雄
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https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201810250000216.html

コラム
政界地獄耳
2018年10月25日9時52分
フリー記者と企業ジャーナリスト

★シリアで戦場取材を続けていた時に拘束されたフリージャーナリスト・安田純平が、約3年ぶりに解放された。この間、一部の日本人は政府の誘導もあって、彼の安否を気遣うどころか、政府が危険だから行くなという場所にわざわざ行くのだから自己責任だと批判した。いまさらフリーの記者の覚悟を書くつもりもないが、フリー記者は取材対象に対して、常に自己責任が伴うと考えて行動する。なぜならば、企業メディアと違い、誰も守ってくれないからだ。その覚悟、自己責任で行動することを前提にしなければ、フリー記者は成り立たない。

★「終身雇用という形態で、企業の中で地位が上がっていく企業ジャーナリストは、その分バランス感覚にたけてくる。一方、フリーは会社の縛りや制約がない分、踏み込んだ取材ができる日本のジャーナリズムは、その両方がかみ合うことで力を発揮する」。2008年に亡くなったジャーナリスト・筑紫哲也の言葉だ。ところがいつの間にか、戦場取材は、組合が危険手当を要求。労務担当はリスクが大きいとして、フリーにその役割を委託したが、明確な契約は避けたがる傾向にあった。それでも現場があれば出掛けていくフリー記者たちに、いくばくかの取材費が出たとしても、安全のよろいにもならない。それでも行く自己責任などと声高に言わずに出掛けていくのは、使命感からだ

★そして、今では戦場なんかに出かけていくやつは変わり者とばかり、自己責任論と忖度(そんたく)が幅を利かせる。政府は往々に事実を隠したがる批判する者を封じ込めたいと考える。サウジアラビアの著名ジャーナリスト、ジャマル・カショギがトルコ・イスタンブールのサウジ総領事館内で殺害されたことで、世界的ニュースになっている。ジャーナリストを国家が殺害するというところまで、国家は追い詰められているのか。安田純平の解放を心から喜びたい。(K)※敬称略
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http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2018102502000151.html

【コラム】
筆洗
2018年10月25日

 井伏鱒二の『山椒魚(さんしょううお)』はうかつにも川底の岩屋に閉じ込められてしまった山椒魚が主人公である。岩屋から出られなくなったのは自分の判断ミスのせいである▼二年間、岩屋の中で過ごしている間、自分の体の成長に気付かず、頭が出口につっかえて外に出られなくなった。「ああ神様!たった二年間ほど私がうっかりしていたのに、その罰として、この窖(あなぐら)に私を閉じ込めてしまうとは横暴であります」▼あの山椒魚には幸福な結末を予感しなかったが、三年間、テロリストによって、とらわれの身となっていた人の朗報である。フリージャーナリストの安田純平さん。解放されたとの情報が政府によって発表された。本人はもちろん、家族の喜びはいかばかりか。心配で眠れぬ夜が続いていたはずである。良かった▼事件に関してジャーナリストとはいえ、行くなと言われた危険な地域へ赴き、悪者に拘束されたのは自分の責任だろうという意見があることは承知している▼理解できぬわけではない。が、その声はやはり、あの山椒魚に「あきらめなさい」とただ背を向けるに等しかろう。言葉を借りれば命の重さに見合わぬ「横暴」の部類である。自分や家族が岩屋の山椒魚になった時、同じことが言える自信は誰にもなかろう助けを求めていた人の命が救われた救おうと取り組んだ人がいる。その事実を今はかみしめたい。
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●安田純平さんの安否が大変に心配: 官邸は一体何をしているのか? 後藤健二さんの対応と同じ過ち・・・

2015年08月10日 00時00分50秒 | Weblog


夕刊アメーバニュースの数週間前の記事【シリアで拘束疑いの安田純平氏 帰国便に姿現さず】(http://yukan-news.ameba.jp/20150716-34/)。

 安田純平さんがシリアで拘束されているようだ。安否が大変に心配。アベ様らは一カ月以上前からその情報をつかんでおきながら、放置しているのではないか? 戦争法案・壊憲法案との関係でそうしているのであれば、あまりに不誠実である。与党議員も何とか手を打ってくれないだろうか。後藤健二さんの対応と同じ過ちを繰り返そうとしていないか? 無事を、とにかく、祈っている。

   『●『ルポ戦場出稼ぎ労働者』読了
     「安田純平著。集英社新書、2010年3月第1刷発行」
     「ファルージャ 日本本人人質拘束事件
       非情な日本政府の対応。「・・・「テロリスト」という言葉を
      使うということは、無条件に殺されてしかるべきだ、
      と判定を下すに等しい。人として、報道に携わる者として、
      私は「テロ」「テロリスト」という言葉は使うべきではないと
      拘束経験を通して改めて確認した。/・・・。/ちなみに、
      私が日本政府に救出されたということはまずないと考えて
      良いと思う」
       犬になれというのか? 「・・・批判してくるだけなので正体は
      分からないが、要するに、「政府の活動の邪魔にならないよう、
      現場取材などせず、おとなしく政策に賛同していろ」ということだ。
      /・・・。/・・・政府の決定にただ従うだけの「(いぬ)」に
      なりはて、・・・」
     「戦争という金儲け」
     「間接的参戦。「・・・自らの払ってきた税金は既に戦争のために
      費やされているのだから、日本国民は既に十分に参戦している」」

   『●「主権在民 創刊1000号」 『週刊金曜日』
      (2014年7月18日、1000号)についてのつぶやき

     「安田純平さん【現地ルポ 「イスラム国」が支配地域を拡大 
      制圧されたファルージャをゆく】、「イラクは国家分裂の危機にある
      ・・イラク市民の間の亀裂は危険な水準にまで来ているようだ」。
      『ルポ戦場出稼ぎ労働者』
      (http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/25aeb85839f7e9274655adf7a976c909)」

   『●「自己責任」バッシングと
       映画『ファルージャ イラク戦争日本人人質事件・・・そして』

   『●「ではなぜ読者や視聴者はシリアが危険だと知っているのか。
                     伝えようとした人が現場にいたからです」

     「イラクでは2004年4月にボランティア活動家の高遠菜穂子さんら
      3人と、取材中だったフリージャーナリストの安田純平さんら2人が
      相次いで誘拐された事件が起きている。高遠さんらを誘拐した
      犯人グループは自衛隊のイラクからの撤退を要求した。政府は
      応じなかったが、5人とも4月中に解放された。」

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http://yukan-news.ameba.jp/20150716-34/

シリアで拘束疑いの安田純平氏 帰国便に姿現さず
2015年07月16日 09時25分

 シリアで消息不明となり、イスラム過激派組織「ヌスラ戦線」に拘束されたことが疑われているジャーナリストの安田純平氏。同氏が、搭乗を予定していた飛行機に姿を現さなかったことをジャーナリストの田中稔氏がツイッターで伝えている。

 安田氏は6月20日以来、ツイッターの更新が途絶えている状態で、連絡が取れなくなっていることから安否が心配されていた。菅義偉官房長官は7月9日の記者会見で、「邦人ジャーナリストが拘束されている情報には接していない」と述べているが、民主党の有田芳生参議院議員は「官邸は先週水曜日に週刊誌から問い合わせがあり、安田純平さんがヌスラ戦線に拘束された可能性があることを認識しています」とツイッターで明かしていた。

 田中氏は以前から安田氏と連絡が取れなくなっていることについて懸念を抱いており、7月14日にはツイッターで「安田純平氏が帰国のために予約したイスタンブール発成田行きの飛行機に安田氏の姿がないようだ」と報告している。
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●『ルポ戦場出稼ぎ労働者』読了

2011年04月02日 03時12分44秒 | Weblog


『ルポ戦場出稼ぎ労働者』、2月に読了。安田純平著。集英社新書、2010年3月第1刷発行。

 帯より、「世界中から集められる、貧しい派遣労働者たち! 自ら出稼ぎ労働者となり、単独潜入取材した記録! 民営化の果て、その現場とは?」

 ファルージャ 日本本人人質拘束事件(p.39、68)。
 非情な日本政府の対応。「・・・「テロリスト」という言葉を使うということは、無条件に殺されてしかるべきだ、と判定を下すに等しい。人として、報道に携わる者として、私は「テロ」「テロリスト」という言葉は使うべきではないと拘束経験を通して改めて確認した。/・・・。/ちなみに、私が日本政府に救出されたということはまずないと考えて良いと思う」(p.70)。
 
犬になれというのか? 「・・・批判してくるだけなので正体は分からないが、要するに、「政府の活動の邪魔にならないよう、現場取材などせず、おとなしく政策に賛同していろ」ということだ。/・・・。/・・・政府の決定にただ従うだけの「(いぬ)」になりはて、・・・」(p.71)。

 いい加減で、ふざけた答弁に終始した小泉純一郎元首相。「・・・日本の航空自衛隊はこの空港へ米兵などを輸送していたが、地上戦は起きていないにしても追撃砲などによる攻撃はされている。これが日本政府の言う「非戦闘地域」だ」(p.77)。

 9・11事件と何の関連もなく、その後、イラクへの空疎な侵略戦争へ(p.114)。

 戦争という金儲け。「利益のために、新鮮さを犠牲にしてでも何千kmも離れた場所から安い食材をかき集める。それを扱うのも同様に集められた安い労働力だ。グローバル化の象徴といえる経済活動だが、それが人間のためになっているのかどうか。イラク戦争を動かしているのは、人間性よりも収益性を求めるこうしたシステムと欲望である」(p.142)。
 イスラム的地産地消社会の破壊(p.143、145)。FECの重要性。「・・・互いに顔を突き合わせられる範囲である、という考え方は、グローバル化に対抗する地域社会の一つのあり方として面白いと思う」(p.145)。

 悪魔の仕打ち。それでも貧しい派遣労働者は戦場に出稼ぎせざるを得ない。「・・・しかし、そうして命の危険と引き替えに金で誘っておきながら、その金すら払わないというのは〝悪魔の所行〟ではないか。命をかけて戦場に来た人々が、自分が奴隷になったのだと知ったときの衝撃はいかほどだろうか」(p.160)。
 「・・・米軍基地ででも働くしかない。米軍を支持しているわけではなくても、彼らを業務で支え、依存しなければ生活が成り立たない。これを占領状態というのだろう。・・・「米国の協力者」として民兵に襲われる事件が絶えず・・・」(p.176)。

 かつての日本との良好な関係(p.211)がいまや。

 チェイニーらのキッタナイ行い(p.227)。戦争の民間委託・民営化(p.230、)。
 「特に戦後復興においては、人道的な側面と人心掌握のためにも、民間企業であっても社会的責任の面を重視した公的な貢献が必要なはずだった。営利のみを追求する企業に任せきりにした占領体制のあり方、ひいては公共性よりも効率性を重視する「民営化」によって成立したイラク戦争そのものに構造的な欠陥があった」(pp.233-234)。

 「自己責任」だから戦場へ、という超「自己責任国家」ネパール(p.235)。「・・・そうした「自己責任社会」においては、戦場に出向いてでも稼ぎたい、という人が出てくるものだ。/日本も「自己責任社会」を目指すならば、こうした側面も受け入れざるを得ないことになるだろう。「戦場に行くなら自己責任」ではなく、「自己責任だから戦場に行く」んである」(p.237)。

 間接的参戦。「・・・自らの払ってきた税金は既に戦争のために費やされているのだから、日本国民は既に十分に参戦している」(p.245)。

 迷惑論という矛盾。「イラク戦争を動かすための基本的な部分を民間人に担わせているのだから、イラク労働はいわばイラク戦争の公式プログラムである。そのプログラムに参加することを「迷惑」と考えているならば、イラク戦争そのものを否定していることになってしまうが、日本政府はそうした様子は一貫して見せていない。この「迷惑論」は、論理性も具体性もないが、何となく他人を叩く、日本独特の「空気」というものだ」(p.245)。
 戦争できる国へと変貌。「日本で格差が広がって・・・。終身雇用や年功序列などの雇用形態を解体して成果主義を持ち込み、規制緩和によって市場原理主義を徹底させ、相互扶助機能のあった日本型共同体構造を米国型「自己責任」社会へと変えてきた結果である。・・・かつては経済と民政に投じてきた予算を軍事に振り向けるようになってきた」(p.246)。上記の「「迷惑論」はあくまで過渡的なものであって、この流れが加速し、定着すれば、「愛国心」と「空気」は戦場へ「行くな」から「行け」へと変わっていくだろう。そのときのために用意されてきたのが格差である。仕事がないなら戦場へ行け、ということだ」(p.246)。

 日本人が戦場に出稼ぎに行く時代(p.242)。「・・・低賃金・無収入層が増えていることは間違いないだろう。年間の自殺者は〇九年までに十二年連続で三万人を超えた」。

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