さっき見た夢で私はお見合いの話を持ちかけられていた。33歳の銀行員でバツイチの子供なしで身長185センチ。ものすごく乗り気になって紹介おばさんの手を握っている私がいた。
なんだか安定気分で目覚め、さてあのおばさんはどこの誰だったかしらと考えると女優の木内みどりであることが判明。夢だったことに気づいた次第です。そして横には最近よく寝る8歳年下のバーテンが寝息をたてていた。ワインとレコードが好きで少し毛深いけど割ときれいな顔をしている男の子だ。
私は毎日5時半に起き、9時始業に合わせて8時半に会社に着く、そして一日中パソコン見て電卓叩いて粗利やら貸倒引当金やらと格闘している。夜は週に2回ぐらい飲んで映画を2週に1回ぐらい観て月に1回ぐらい美術館に行く。親は2人とも健在で年の離れた弟は大学4年で就職活動に難儀している。出戻りの私は再び始めた独身生活を楽しく暮らしている、はず。バラとワインの日々、のはず。
彼とは会社の後輩の結婚式で知り合ってその日のうちに2人で酔い潰れ、朝には舐めあいっこした仲だ。それから月に2度くらい会うようになり、少しずつ体に馴染んできているところ。私の毎日を訊ねないしやさしいから楽でやめられない。
私が水を飲みに台所へ立つとベッドから彼が俺にもちょうだい、と小さな声で言う。冷たい水を飲んで、また眠りに落ちていくようだ。薄い筋肉と脂肪のついていない腹。たるみのない肌。私より若いことを触れて確かめると、少しうれしくもあり哀しくもある。日曜の晴れた午後が過ぎていくけれど、彼は時折寝返りを打ちながら眠り続ける。私は日ごろの早起きのせいで彼の横にいても眠れず、かといってテレビを見る習慣もないのでぼんやり煙草を吸っている。この子は私が一人占めしたいと言ったら何と答えるだろうか、8年前の私はこんなによく眠っただろうか。
空腹でやっと目が覚めた彼と白ワインを開け、冷蔵庫にあった6Pチーズをかじりながらボサノバを聞いている。ワインで少しとろんとしてきた私と彼はまたベッドに戻って触ったり舐めたり声をあげたりする。後始末の照れ笑いもだんだん見慣れてきた気がする。
お見合いしたかもしれない銀行員はどんなセックスをするんだろう。彼みたいにやさしく触るだろうか。日曜の昼間に眠らないなら、そしてもう少し私を知ろうとしてくれたら、銀行員じゃなくったって私は乗り気になるんじゃないかしら。
夕焼けになる前に私は家に帰らなければならない。猫と家族が待っている。