Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

海うそ

2018-06-19 09:29:29 | 読書
梨木香歩,岩波現代文庫 (2018/4).単行本は 2014/4.カバーイラスト (高山裕子) が好み.

Amazon の内容紹介*****
昭和の初め、人文地理学の研究者、秋野は南九州の遅島へ赴く。かつて修験道の霊山があったその島は、豊かで変化に富んだ自然の中に、無残にかき消された人びとの祈りの跡を抱いて、秋野の心を捉えて離さない。そして、地図に残された「海うそ」ということば……。50 年後、不思議な縁に導かれ、秋野は再び島を訪れる。*****

この著者の小説は若い女性向きと思っていたが,認識不足だった.
巻頭に遅島の地図があり,実在の島かと錯覚しそうになった.しかし解説 (山内志朗) によれば,そんな島はない.でも島の記述はすごくリアル.こういう小説には目がないのだ.
月夜にたらい舟で湖対岸の温泉に往復する老夫婦,ジャングルに忽然と現れる西洋館.そこでコーヒーをご馳走になっていると海うそが現れる...とロマン満載.ちなみに「海うそ」は蜃気楼.クイナ・ヤギ・伊勢海老・トビウオの干物なども美味しそう.
主人公・秋野は許嫁に自殺されたという設定が,説明不足だが,これでいいのかもしれない.

50 年後にはこの島に本土から橋がかかっている.島の遺跡はすでに明治維新の廃仏毀釈で破壊されていたが,観光事業は島の地形さえ変えてしまう.秋野の次男はその開発会社の次男である.
50 年遡った記述では,橋がかかるほどの距離という感じはしなかったので,ちょっと違和感.

50 年前は自分もワンダーフォーゲルと称して日本各地をふらふらしていた.しかしこの小説の秋野のように,特定の地に思い入れがあるというわけではないのが,いいような悪いような.

☆☆☆☆
コメント
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