O's Note

いつまで続くか、この駄文

ジャンジャン

2008-06-19 22:30:00 | 感激観劇
 今から25年ほど前になるでしょうか、演劇を見に行くことが多かった時期がありました。
 その相棒が、当時、あるレストランの駆け出しコックをしていたS君でした(今は立派なオーナーシェフ)。ちなみに小生は当時、そのレストランでアルバイトしていたビンボー学生。
 演劇を見終えてアパートのある町まで戻り、いつも立ち寄ったのがお好み焼き屋たちばな。「たちばなっちゃうか」が合い言葉で、お好み焼きをビールで流し込みながら、その日の演劇について、遅くまで素人劇評会に興じていました。
 S君と見に行った演劇は、いわば商業演劇とは違って小劇場演劇で(ま、チケット代が安かったということもあったのですが)、テレビに出始めたばかりの東京乾電池のハチャメチャ演劇は、2~3度、見に行った記憶があります。劇場は、下北沢にあった本多劇場、そして渋谷ジャンジャンが多かったように思います。
 その渋谷ジャンジャンで見た演劇の一つがイヨネスコ原作の『授業』でした。登場人物は3名で、教授役は中村伸郎。しぶーい、それでいてすこぶるうまい老練の役者さんでした。中村伸郎氏は、10年間ほど、毎週金曜日の夜に、ジャンジャンで『授業』を演じ続けた方で、我々が見に行くきっかけは、「もうすぐ授業のロングラン公演を終えるかもしれない」という情報を得たからだったと思います(蛇足ながら、中村伸郎の後を次いでジャンジャンで『授業』を演じたのは仲谷昇)。
 意味もわからず不条理劇という言葉の響きに釣られて見に行った『授業』。
 そのラストシーンで、脳天をかち割られたような強い刺激を受けた演目でした。
 当然、その日のたちばなでは、二人とも、口角泡を飛ばしながら興奮気味に劇評をしました。というのはウソで、何をしゃべったのかは覚えていませんが、たちばなっちゃったことは事実です。(笑)

 さて、昨夜は、サンピアザ劇場でした。
 演目はイヨネスコ『授業』。出演は東京乾電池の役者さんたちで、教授役は柄本明氏。
 25年前に刺激を受けた演劇で、しかも同じ時代に見ていた東京乾電池、そして主役が鬼才柄本明氏ということになれば、当然、期待が大きく膨らみます。
 がしかし、期待感が大きすぎたからでしょうか、あるいは、中村伸郎氏のイメージが強すぎたからでしょうか、それとも、衝撃のラストを知っていたからだからでしょうか、「うーん、違うなあ」というのが見終えた最初の感想でした。
 もちろん、一緒に見たS先生もいっていましたが柄本氏の間の取り方はすこぶる付きで素晴らしかったですし、本当に語りかけるように長セリフをこなすさまは、柄本氏の独壇場といっても過言ではないでしょう。
 ただ、何かが違っていました。
 2年前、NHK教育で東京乾電池の『長屋紳士録』の舞台中継がありました(昨年はサンピアザ劇場で同じお芝居を観ています)。その放送の後で、柄本明氏が東京乾電池のこれまでの演劇、これからの演劇について語るインタビューがありましたが、その中で、自分のやりたいものを自分のやりたいようにやりたい、というようなことを語っていたように思います。その考え方からすれば、まさに『授業』を、中村伸郎風ではなく、柄本明風に解釈してお芝居を展開していても、不思議はありません。
 
 観劇後、小生自身の中で、何かモヤモヤ感があったので、一緒に観た諸先生の率直な感想をお聞きしませんでしたが(Lupin The 3rdのせいで忘れたか・・・)、始めて観た方は、どんな感想を持ったでしょうか。
 そしてS君が観たのなら、どんな感想を述べたでしょうか。
 上演時間1時間15分。