月が地上を散歩していると、にわかに雨が降りだした。
「ほう、これが雨というものか」
月は空を見上げ、関心してつぶやいた。いつもいる所からだと雨はただの黒い雲でしかなかったが、地上からみるとなるほど雨とはかようなものなのか。実にたえまないものなのだなと、地上からみる初めての雨にいたく満足していた月だったが、雨に濡れた月はしだいにどんどんふくらんで、風船のようにぷかぷか空へとからだがうきだした。月はそのまま雨降る雲をつきぬけて、結局はいつもの場所におさまった。
月はひどく憤りを感じつつも、このつぎ地上へ散歩にいく時は、長靴と傘とレインコートをしっかり用意しなくては、と心に決めた。
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