朝のない夜にこんにちは
声をかけた狐はコンと鳴く
ツキはもう来ないとおおいに泣いた
雲ひとつない空に光る月
水の入り江に近づいた
その素足が踏みしめた大地に薄雲
峰ある居場所もなくしてしまった
かえる場所のない空は水色
水の色たたえて夜は降りてくる
そのなかに淡色の月明かり灯り
あなたの微笑みは揺らぎながら浮かび涙の落ちた
ひとしずく
その水の音に月は呼ばれて
夜を飛び出した光なき夜に
ただ柔肌のぬくもりの気配だけが残された
いまいる場所を見失ったわたしの影は
穴の空いた夜に落ちていき
ツキの灯火(ともしび)は一輪ぐるりと夜に咲く
月のない夜に
月はひとり駆け出して暗闇を見つめた
そこにあるはずの水の流れに耳すまし
誰かの幽けき歌声は幻想
何処かで狐はコンと鳴く
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