−−−亡き人の「きいさいきいさい」という声のする
亡き人は「生きいさい生きいさい」言うなれども
残された人に生(い)の音は届かず
「きいさいきいさい」と耳に聞く−−−
すると人の耳に届かぬいの音は怒りに怒り
いがぐりとなって残された人の頭に落ちてきた
「いたいいたい」と声をあげると
落ちたいがぐりは鯛になった
驚いた人は鯛を手にとり、煮付けて美味しく平らげた
またも無視されたいの音は泣きに泣き
亡き人の遺影をいたちのしょんべんでずぶ濡れにした
怒った人はその場でいたちを切り殺し、干物にして美味しくいただいた
それをみていた亡き人は
自分は何も言わずとも
残された人はたくましく生きていくなと納得し
そのまま静かに成仏した
「きいさいきいさい」の声もなくなり、遺影にしょんべんをかけられた残された人は
「あんまりだあんまりだ」と泣き暮らしている
さんざん無視されたいの音はそれをみて
助けるべきか否か、いやたとえ助けたところでまた食べられるだけではないかと
あれやこれやと迷いつつ
彼女のそばに、ずっといる
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