よみびとしらず。

あいどんのう。

揺らめき

2019-10-19 11:44:44 | 散文
ぐあんぐあんと 大地は揺れる
丘酔い 船酔い すべては揺れて
子守唄ゆりかご忘れた頃に
忘れるなかれと大地は揺れる

ぐあんぐあんと 鐘の音ひびく
思い出したくない由(よし)無し事を
それでも無くしたくはない大切なことを
無くすべからずと鐘の音ひびく

ぐあんぐあんと 響いて揺れて
意識はおぼろげに成り果てたとて
生きていくしかないこの道のうえ
大地は揺れず 鐘の音もなし
共鳴した音叉はこの身体ひとつ
然(しか)れどもそこに重なる震音は
確かにありて美しく
ただまるで覚えてない昔の話

古老(ころう)は抱えた弦楽器
ぐあんぐあんと弦(つる)の音鳴らして
その口の奥は暗やみ
そこからお伽噺(とぎばなし)はつむがれた
空に雲かかりまた雨の降る
かつてみた空とどこか似ている
忘れたくない無くしたいつかの物語

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