脳卒中、心筋梗塞と並ぶ「三大疾病」の一つである、ガン。あちこちに転移することもあり、非常に怖い病気ですが、実は「心臓にガンはできない」ということをご存じでしたか? 今回は、その理由について、分かりやすくご説明します。
■ガン細胞は、40度の高温では死滅してしまう
頭のてっぺんから足の先まで、どこにでも発生する可能性がある、ガン。しかし、心臓にはガンができません。一体なぜでしょうか? その秘密は、心臓の「温度」にありました。心臓は、私たちの体の中でもっとも体温が高いところであり、心臓が生み出す熱の量は、体全体の約11%にもなると言われています。
ガン細胞は35度の環境でもっとも繁殖しやすいと言われますが、高熱には弱い性質を持っており、温度が40度以上ある心臓の熱には勝てず、死滅してしまうそうです。
■心臓の細胞は、細胞分裂を起こさない
心臓は横紋筋という筋肉で成り立っていますが、実はこの横紋筋には細胞分裂がほとんど起こりません。したがって、細胞が極めて増殖しにくい環境にある心臓は、細胞の異常増殖の病気であるガンが発生しないと言われています。
私たちの体の細胞はどんどん分裂して増殖を繰り返すので、ガン細胞も広がったり転移をしたりするのですが、細胞が分裂しなければ、遺伝子の異常が起こってもそれ以上増えようがないというわけです。
■「心臓ガン」は存在しない
他の臓器とは大きく異なる性質を持つ、心臓。そこに腫瘍が見つかる確率はわずか0.1%しかなく、しかもほとんどが良性なのだそうです。ごくまれに悪性腫瘍ができることもありますが、それでも「心臓ガン」とは呼ばれません。
というのも、悪性腫瘍は、上皮細胞にできたものをガン、それ以外を肉腫と言います。心臓の主な構成要素は間葉系細胞で、上皮細胞が存在しないため、たとえ限りなく低い確率で肉腫ができることはあっても、「心臓ガン」という名称にはならないのです。
心臓にガンができない理由は、他にも「血液の流れが速すぎて、ガン細胞が定着しないから」とか、「活性酸素の傷害に対して抵抗力を持っているから」など、さまざまな説があります。また、心臓から分泌されるホルモンを投与すると、ガンの再発が少ないということも分かってきているそうです。
今後さらに心臓の研究が進めば、もしかすると、画期的なガンの治療法が見つかるかもしれませんね!