◎国家社会主義と国民社会主義は違う
最近、木下半治の論文「世界政治の潮流」(現代日本政治講座第一巻『現代政治の展開過程』昭和書房、一九四一、所収)や、同じく木下半治の『日本ファシズム』などを読んだので、いくらか、ファシズムについての理解が進んだ気がする。
この間、ひとつ認識を改めたことがある。それは、国家社会主義(Staatsozialismus)と国民社会主義(Nationalsozialismus)とは違うということ、また、ナチスのイデオロギーは、国民社会主義であって、ナチスの正式名 ‘Nationalsozialische Deutche Arbeiterpartei’ は、「国民社会主義ドイツ労働者党」と訳すべきであること、などである。
本日は、木下半治の『新体制辞典』(朝日新聞社、一九四一)から、「国家社会主義」および「国民社会主義」の項を紹介してみたい。
国家社会主義(独 Staatsozialismus)
日本において通俗には国民社会主義、もしくは国粋社会主義(Nationalsozialismus)と同一視されるが、厳密にいへば異なる。即ち国家社会主義とは、近代ドイツにおいてラッサール、ロドベルトスなどが唱道したそれを指し、労働者に対する富の正しき分配と、労働条件の改善とのために国家の干渉を要望するものである。必ずしも資本主義制度の根本的変革を要求せず、銀行、住宅、保険、鉄道、瓦斯、電灯などの重要公共事業を国営に移し、立法的には社会政策をもつて労使関係の円滑化を計る。故にビスマルクの国家主義もまた一個の国家社会主義といひ得るのである。
国民社会主義(独 Nationalsozialismus)
国家社会主義、または民族社会主義とも称す。国民主義と社会主義とを結合したもので、狭義にはドイツのヒットラー主義をいふ。わが国で通俗には国家社会主義と称せられるが、区別は厳密にすべきである(「国家社会主義」の項参照)。国民社会主義は、国民主義の名においてマルクス主義の国際主義に対抗し、社会主義の名において資本主義に対抗して、自由主義、民主主義を撃破せんとする新世界観である。全体主義、ファシズムと同義と解すべきであり、現代ドイツの隆隆たる復興の精神的基礎たるものである。(「ファシズム」の項及び「国民社会主義ドイツ労働者党」、「ヒットラー」などの諸項参照)。
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