◎東條英機らの服の背中にPWの文字
五月二四日に、映画『大東亜戦争と国際裁判』のラストシーンを紹介した。
その後、塩田道夫氏の『天皇と東条英機の苦悩』(三笠書房、一九八九)を再読したところ、そこに、東条英機らが七名のA級戦犯が処刑される場面があった。これを読んで、映画のラストシーンのみ、もう一度、観賞したところ、いくつか、見落としていたところ、見間違えていたところがあったことに気づいた。
五月二四日のコラムはそのままとし、以下に、その修正版を掲げる。
この映画のラストは、東條英機元首相が処刑される場面である。
処刑前、土肥原賢二(信夫英一)、松井石根(山口多賀志)、武藤章(中西博樹)、東條英機(嵐寛寿郎)の四人が、一室に集められている。この部屋には仏像が置かれていて、ゆらゆらと線香の煙が上がっている。
四人は、細長い机の前に座っている。いま、東條が色紙に署名をしようとするところである。すでに色紙には、右から、土肥原賢二、松井石根、武藤章の三人の署名があり、一番左に、東條が手錠のまま、毛筆を手にして署名を終える。
続いて四人は、教誨師の花山信勝(中村彰)から「酒」をすすめられる。各人の前には、紙コップがふたつずつ置かれている。テーブルの上には、黒いビンに入った洋酒と、ホーロー製の白い水差しが置かれている。ビンの形状から、洋酒と思われる。紙コップに注がれた酒を、東條が手錠をはめられた両手に持つ。身をかがめて、口を紙コップに近づけ、酒を飲む姿が哀れである。
このあと、松井石根の発声で、「天皇陛下万歳」、「大日本帝国万歳」を、それぞれ三唱。手錠は、腰に留められているらしく、両手は、みぞおちのあたりまでしか上がらない。
腕にMPという腕章を巻いた憲兵将校に促されて、四名は部屋を出る。この際、四名とも、この憲兵将校と握手。この憲兵将校二名、MPと書かれた白いヘルメットをかぶった憲兵一名、花山師、武藤、松井、土肥原、東條、ヘルメットの憲兵二名という順で列を作り、うす暗い渡り廊下をゆっくりと歩いてゆく。四名が着ているカーキ色の服の背中には、大きな黒い文字で、「PW」と書かれている。たぶん、「捕虜」(prisoner of war)の意味であろう。やがて、ある建物の前までやってくる。黒い鋼鉄の扉があって、白い文字で「13A」と書かれている。ここが、処刑場のようである。
花山師も、処刑場の中までは入れない。ここで、松井と東條が、それぞれ花山師に眼鏡を預ける。「13A」の扉の中にはいった四名は、そこで、頭から黒い袋をかぶせられる。最初に、死刑台に昇るのは、東條英機である。階段の前で、東條は、黒い袋を脱いで、上を見上げる。おもむろに階段を昇り始める東條。東條の足元だけが映る。やがて、何かが落ちるような音が……。【以下略】
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