◎ビルマの青年は武器なくして戦ひました(ウー・バー・モウ)
情報局編『アジアは一つなり』の、「二、各国代表の演説」の部から、「ビルマ国代表 内閣総理大臣ウー・バー・モウ閣下演説(訳)」の章を紹介している。本日は、その五回目(最後)。
アジアの血こそアジアを我々に
私がビルマの戦況に付き多くを語り過ぎたとせば、各位の御寛恕を乞ふ次第でありまするが、私が自国の領域内に於て現実に総力戦に従事して居る国民の代表として出て来たものであることを御諒解願ひたいのであります。ビルマ国民が現に第一線的状態の下に生活し居り、其の家庭も、生命も、財産も、其の他人生に価値ありと考へられる総てのものが、日々敵の攻撃に曝され〈サラサレ〉て居ることも御諒解願へることゝ存じます。是即ち私が、忌憚なく申せば胸中に弾丸飛び交ふ火線の心情を抱いて此処に参つた所以であります。ビルマ国民が常に一大闘士であつたことは史上に明かなる所でありまして、現在のビルマ国民も其の祖先の名を辱めぬものなることは私の確言し得る所であります。今より二年前、我がビルマの青年は武器なくして戦ひました。武器を獲る為には先づ敵を斃さねばならなかつたのでありますが、彼等は敢然として之を遣り遂げたのであります。今日ビルマ国に於ける士気は頗る旺盛でありまして、何物と雖も之を破ることは不可能であります。何故ならば総てのビルマ人は己の貴し〈タットシ〉とする総てのものの為に戦ひつゝあることを知悉〈チシツ〉して居るからであります。
私は東亜の一体たるべきこと、此の戦争を東亜人として俱に〈トモニ〉戦ひ、東亜人として俱に世界を建設すべきことに付いては既に充分に述べ尽しました。我々は此の事業の正しき端緒を本会議に於て開いたのであります。併しながら、我々は単に此の事業を続けて行くのみならず、本日成功裡に開始せられたる此の事業を、大東亜戦争の全作戦地域に及ぼし且将来の平和の為に展開して行かねばならないのであります。換言すれば、東亜共同の運命を綜合計画化して導いて行くべき、恒久的なる東亜中央組織体の存在を必要とするのでありまして、之に依り、始めて我々の結集は現実化し、効果的となり、平時にも戦時にも有力な武器と成るのであります。右組織体が自由にして平等なる大東亜各国を代表するものであることは言を俟たざる所であります。故に途は自ら〈オノズカラ〉明かであり、我々は今其の緒を摑んだ許りでありますが、是から目的に向つて我々の前進が開始される次第であります。一度アジア民族が結集し、統一と指導とを得るときは、常に如何なる世界の涯〈ハテ〉迄も前進し得るものであることは歴史の示す所であります。
過去に於て、東洋は一再ならず其の敵に対し進軍し、之を滅したのでありますが、唯、アジア人がアジアを忘却したときに限り敵に敗れたのであります。併しながら、今や偉大なる大日本帝国のお蔭に依り、我々は再びアジア人たるの自覚を取戻し、アジアの血を再発見したのでありまして、此のアジアの血こそはアジアを我々の手に恢復せしむるものであります。今こそ我々は示されたる途の最後迄進撃を続けようではありませんか。十億の東亜民族として、新しい世界、我々東亜民族が始めて永遠の自由と繁栄とを獲得し、永往の地を見出すことが出来る新しい世界に向つて進軍しようではありませんか。
情報局編『アジアは一つなり』の紹介は、とりあえず、ここまでとし、明日は話題を変える。
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