礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

映画『ゾラの生涯』(1937)を観る

2015-12-19 05:07:53 | コラムと名言

◎映画『ゾラの生涯』(1937)を観る

 今月一六日、DVDで、アメリカ映画『ゾラの生涯』(ワーナーブラザーズ、一九三七)を観た。この映画は、文字通り、フランスの文豪エミール・ゾラ(一八四〇~一九〇二)の生涯を描いたものだが、上映時間一一六分のうち、最初の約三〇分を除けば、ほとんど、「ドレフュス事件」についての映画だといってもよい。
 軍機を漏洩したと見なされたドレフュス大尉の「位階剥奪式」の場面も、詳細に再現されている。驚いたのは、これを担当した軍人が、ドレフュスの剣をへし折る場面である。なんと、彼は、素手で刃身を握って、へし折っていた。手が傷つかないのかと、心配になった。その後、ドレフュスは、兵学校の校庭を一周しながら、見物の群衆に向かって「私は無実だ!」と叫ぶ。しかし、群集はそれに耳を貸すことなく、逆に彼をヤジリたおす。
 映画では、その群衆の中に、作家のアナトール・フランスがいたことになっている。ドレフュスの真剣な訴えを聞いた彼は、ドレフュスは無実だと信ずるのである(あとになってアナトール・フランスは、ゾラにそれを伝える)。
 ガイアナのディアブル島(悪魔の島)で、ドレフュスが服役生活を送る場面も、なかなかリアルに描かれていた。就寝に際しては、ドレフュスの両足は、足枷で寝台に固定されていた。一六日朝に書いたブログで、chained to his bedを、「鎖で寝台につながれた」と訳した。「鎖」には、カギという意味もあるようなので、映画を観たあと、「足かせで寝台につながれた」と訂正した。
 獄中のドレフュスが、妻からの手紙を読む場面もある。映画では、手紙は、検閲の結果、あちこちが黒く塗りつぶされていたが、妻の手紙そのものであった。史実としては、「書き直された」手紙だったと思う(秘密通信対策として)。
 ドレフュスの冤罪を確信するにいたったゾラが、「私は弾劾する」("J'accuse")で始まる大統領あての公開状を書き、それを新聞社オーロールに持ち込む場面は、個人的には、この映画で最も印象に残る場面であった。新聞社までやってきて、いきなり公開状を読みあげるゾラ。次第にそれは、熱気あふれる演説と化してゆく。それに耳を傾ける編集長や記者、あるいは印刷工たち。それにしても、ゾラ役のポール・ムニの演技は大したものである。

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