紅茶の一期一会

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感想:ヘッドホン『MDR-V6』(Sony)の音質

2011-01-16 12:21:35 | ヘッドホン(ER-4S,STAXのSRS-3030など)
先日の購入から約一ヶ月、ようやくの『MDR-V6』のレポートである。

あくまで感想記事なので、参考の一つに留めて頂ければと思う。
やはり、ヘッドホンを購入する際には、自分で試聴しに行くのが一番良い。
(ただ、これができないのが『MDR-V6』の難しいところなのだが…。)


さて、実は、まともな再生機器がないということに気づき、どうしたものかと思っていた。
そこで、急遽弟に協力を要請。ポータブルCDプレーヤーを借りた。

ポータブルCDプレーヤーだからといって、甘く見てはいけない。

まず、これは「乾電池10本」で駆動しなければならないという、非常に電力を食うプレーヤーである。
(ACアダプターも特殊な形状。4端子で正負電源を供給するという、今ではないような仕様。)
筐体は金属製で、ずっしりとしている。

(つまり、全然「ポータブル」じゃない…。)

しかし、上記仕様のせいか、微小音・低域の表現が素晴らしい。
また、音もクリアで、力感も十分である。

ということで、このポータブルCDプレーヤーを、
ACアダプター駆動(ノイズカットトランス経由)で、送り出しに使うことにする。


さらに今回は、イヤホン『ER-4S』との比較をしてみる。


赤ラインの入ったヘッドホンが『MDR-V6』。
ぶら下がっている赤、青のイヤホンが『ER-4S』。
「形状」がまったく違うのがお分かりいただけると思う。

また「価格」も『MDR-V6』は7980円、『ER-4S』は18800円と大きく違う。
(2011年1月15日現在の「サウンドハウス」さんの価格。)

このように、形状・価格帯が随分違うので、参考になるのかという問題はある。
しかし、比較対象があった方が音の特徴をつかみやすいので、あえて比較させて頂くこととした。
比較対象は、STAX『SRS-3030』だとヘッドホンアンプ付きでないと差が開きすぎるので、『ER-4S』とした。

このため、少しMDR-V6に厳しめのレポートになっている…。


以下、
<男性ボーカル>
<女性ボーカル>
<シンセサイザー>
<ピアノ協奏曲>
<交響曲>

という区分で感想を書いていく。

その後で、音質傾向の<まとめ>をしてみたいと思う。


<男性ボーカル>
尾崎豊『OH MY LITTLE GIRL』(CD:『十七歳の地図』 Sony)

『MDR-V6』
ピアノは少し響きが多めに聞こえるが、これはこれでありか。

ボーカルと、ベースのパーカッションが目立って、ボーカルが少しかすむ。
ボーカルの音は、若干シャリついて、乾き気味だが、適度な響きが乗っていて悪くない。
ベースパーカッションは、少し柔らかめで、若干締まりに欠ける。

『ER-4S』
ピアノが端正ながら、それらしく聴こえてくる。

ボーカルにしっかりスポットが当たっており、主役として聴かせる。
ボーカルの音自身も、滑らかで、暖かみを感じる。響きは少なめだが、生っぽい。
ベースパーカッションの音の締りがよく、動きがよく分かるため、リズムが明瞭に感じられる。


<女性ボーカル>
中島みゆき『悪女』(CD:『SingleS』 YAMAHA)

『MDR-V6』
ギターの音は、金属音が若干強めであるが、シャキッとした印象。

ボーカルの音は乾き気味で、所々で若干シャリつく。
しかし、ボーカル自体の音は明瞭なので、前に出てきて、印象がよい。
パーカッションがよく聞こえるが、若干金属音が耳につく。


『ER-4S』
ギターの音は、金属音が押さえられ、優しい感じで聞きよい。
ボーカルの音は、響きが薄く乗り、滑らかな印象。
間奏以降のピアノは、繊細な感じだが芯がある。

各音の見通しがよいのに、バラけていない。
ただ、やはり少し音が細く、寂しめに感じる。


<シンセサイザー>
佐野広明『レイジングハート・セットアップ!』(CD:『魔法少女リリカルなのは オリジナルサウンドトラック』)

『MDR-V6』
ホーンセクションの音が、太めかつ柔らかく聞こえる。
しかし、それがためトランペットのシャリつきが少し目立つ。

高い方のストリングスの音は、今ひとつ伸びきらない感じで、時にヒリヒリする感じがする。
低い方のストリングスは、柔らかでノリが良くいい感じ。


『ER-4S』
ホーンセクションの音は、目立つべきところではしっかり目立つが、後ろにいるべきところでは裏方に回っている感じ。適材適所。
トランペットのシャリつきは押さえられており、目立たず聞きよい。

高い方のストリングスは、明瞭で張りがあり、フレーズの切れ目がよく分かる。
低い方のストリングスも、張りがある感じで、やはりノリが良い。
楽器の分離が良く、楽器間のフレーズ受け渡しの様子が、手に取るように分かる。



<ピアノ協奏曲>
モーツァルト『ピアノ協奏曲第23番第1楽章』(CD:アシュケナージ・フィルハーモニア管 LONDON)

『MDR-V6』
ヴァイオリンの高い音が、若干金属的で張りが強く、ヒステリックかつ乾いた感じ。
このせいで、これまでの曲と違い、低域より高い方が目立つ。あまり心地よくはない。
低い方は柔らかめの音だが、ほどほどに出ている。

フルートの音は、柔らかさがあるが、実在感が薄いような感じがする。
しかし、独特の浮遊感があり、これはこれでなかなか良い気がする。
その他の管楽器は、柔らかすぎて、曖昧な感じか。

ピアノの音は丸めかつ、柔らかな感じ。
ただ、弱音部では、ぼやけて、粒立ちが良くない感じもする。
高い方の音や強音部は比較的明瞭。
しかし、響きの消え方が不自然な感じもする。


『ER-4S』
ヴァイオリンの音は比較的落ち着いており、低弦との音のバランスも良い。
第一ヴァイオリンと、第二ヴァイオリンがしっかりと分離する。
低弦も明瞭で、音階までしっかり分かる。

フルート・クラリネットの音も、実在感がしっかりと感じられる。
それでいて柔らかで、モーツァルトの管の使い方の素晴らしさがはっきり分かる。
ピアノの音は、全音域で明瞭。一音一音の表情や、右手と左手の分離がよく分かる。

他の楽器でも、各声部の役割分担が明瞭である。
それにもかかわらず、音楽がバラけていない。このさじ加減は流石。
響きの消えていく様子が、非常に自然で、この点でも良い。


<交響曲(金管楽器を中心に記述。)>
ドヴォルザーク『交響曲第9番第1楽章』(CD:フリッチャイ・ベルリンフィル Deutsche Grammophon グラモフォン)

『MDR-V6』
ブラスは、柔らかい感じの音だが、少し実在感が薄い感じがする。

低い方のブラスは柔らかで聞きやすい。
高い方は、若干刺激的だが、やはり柔らかく、かなり健闘していると思う。
ブラスの聞きやすさはこちらの方が上か。

ただ、この聞きやすさは「人工的」な感じがするもの。
心地いいかどうかは好みによるだろう。

響きの表現はやはり今ひとつ。
何となく聞かせている感じ。


『ER-4S』
ブラスは、実在感のある、張りのある音。
生っぽい音が出ており、加工臭が少ないような感じ。

強奏部では荒々しくも、聞き辛い音は出さない。
(ただ、若干『フィルム』的な音が乗る。これはER-4Sの特徴ではないかとも思う。)
高い方はある程度伸びるし、低い方では滑らかに聞かせる。

また、各声部のニュアンス表現は、こちらの方が良く出してきていると思う。
響きが有から無になる様子も、丁寧に描写できている。



<MDR-V6の感想のまとめ>
○全体的な音質としては、ニュートラルな感じ。

 元気が良く太めの音が出る。
 中域から低域にかけては、量が必要十分に出ており、厚みを感じる。
 高域は特定のところがシャリつくが、細い感じもする。

 中低域は若干柔らかめの音。
 「人工的」な音に感じるのは、この部分に原因の一端があるかもしれない。

 また、中高域から上の音は若干硬めでシャリつく感じがする。
 音源によって、金属音が目立つことがあり、この点はあまり心地よくない。
 特に、クラシックのヴァイオリンなどにはかなり厳しいときがある。

 ただ、「若干」という位で、それほど酷いというわけではない。
 「華やか」と捉えられなくもないので、このおかげで楽しめる音楽もある。(ポップスなど)
  

○音がダイレクトに届く感じがするが、どことなく人工的で、加工臭がある。
 若干音が乾いているような感じとも言えるか。

 また、この性質がボーカルなどで独特の生っぽさを感じさせる時もあり、一概に悪いとは言えない。
 ボーカルもの主体に聴くのであれば、音源の違った良さを見つけられる可能性は大いにあると思う。


細かい声部を良く立たせているような感じの音。
 もっとも、ER-4Sのように、ひとつの声部のなかでの細部の音を分解できるほどの解像力はないと思う。
 ただ、全ての音楽鑑賞においてそこまで必要なのかというのは、議論が分かれるところであろう。
(また、「価格差」もかなりあるので、同等を期待するのも無理であろうと思う。)

 それよりも、この声部の「立たせ方」が作曲者・編曲者の意図したものなのか。
 これについて、疑問を感じるところが多々ある。(当然、至極個人的な意見。)

 ER-4Sの方は、各声部を「適材適所」的に割り振っている感じがする。
 目立たせるべき主役の声部を前面に出し、そうでない脇役の声部は裏方に回らせるという、
 そういった役割分担が、しっかりできているように思う。

 しかし、MDR-V6は、この各声部の割り振りが若干不自然に思える時がある。
 とにかく全声部を出しておけばいいのだ、というような感じなのである。

 こうした点が、リスニング用・モニター用という、ヘッドホンの区分の違いではないかとも思えてくる。
 「モニター用ヘッドホンは、とにかく音を拾って、聞かせることができれば足りる。」と考えれば、
 割り振り方までは、特に気を遣わなくとも良いとも思えるからである。(本当にそういう設計思想なのかは定かでない。)

 ただ、不自然というのは、「自分から見て」ということなので、
 当人の音楽解釈に大きく左右される点だと思う。
 「音の洪水」という感覚が好みの方は、なかなかハマるヘッドホンかもしれない。


<適する用途の推測>
 一音一音まで味わい尽くそうという向きには厳しいと思う。

 自分は、ある程度の音で聴ければ良いという用途(パソコン用)に購入したので、この点では満足である。
 (前のHP-X122よりは、解像度、音の締まりなどが明らかに改善している。むしろパソコン用には勿体ない位。)

 また、ER-4SやSTAXではあまり楽しめない曲が、MDR-V6では楽しめたりするということが往々にあることは事実。
 ポップスなど、ベースでリズム隊が鳴っていたり、エレキギターが活躍するような曲は、旨みが聞き取りやすい。


<費用対効果>
 この点は、同価格帯のヘッドホンを持っていないのでよく分からない。
 個人的には、8000円であればそれなりにいい買い物であったと思う。
 ※なお『MDR-V6』については、「偽物」がよく出回っているらしいので、その点には十分な注意が必要である。

 使っていくうちに、また音がこなれてくるかもしれない。
 そうなったら、そのときに追記しようと思う。



<参考記事>
○MDR-CD900STなどとの音質比較記事として…
『SONY Headphone』
『知る人ぞ知るモデル「MDR-V6」・・・』(coneco.net)

○様々なヘッドホンの評価をする中で『MDR-V6』を取り上げた記事として…
『9,000円台シリーズ~その1』
などが、参考になると思われる。


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