紅茶の一期一会

紅茶歴(だけは)10年以上の管理人が、
主に、購入した紅茶の感想を書いています。

音楽感想:魔法少女まどかマギカ オリジナルサウンドトラックⅠ・Ⅱ・Ⅲ(MUSIC COLLECTION)

2013-11-03 20:30:59 | 音楽系
ついに、あの「魔法少女まどか☆マギカ」のサウンドトラックCDが12月25日に発売される。
その名も「魔法少女まどか☆マギカ MUSIC COLLECTION」である。

これを待ち望んでいた方が、かなりいらっしゃるのではないかと思う。
かつての自分もその一人であった。
しかし、結局待ちきれず、サウンドトラックの付属している本編DVD・Blu-rayを購入してしまった。

よって、今回のMUSIC COLLECTIONの発売に関しては、少し複雑な気持ちである。

しかし、こうして多くの方に聴いていただける形になった。
それは、本作の音楽好きである自分にとっても、嬉しいことである。

それを記念して(?)、DVD・Blu-rayに付いてきたサウンドトラックのレポートを書くこととする。

以下、<1.総論><2.各曲紹介><3.まとめ>という3部構成で書いていこうと思う。


<1.総論>
サウンドトラックは、本編DVD・Blu-rayの初回限定版2巻・4巻・6巻に分かれて付属している。
それぞれ、2巻にSoundtrackⅠ、4巻にSoundtrackⅡ、6巻にSoundtrackⅢが付属する。
この3枚のCDは、他の梶浦作品とは一線を画した雰囲気と存在感を持っている。

まさに「梶浦音楽の集大成」といっても過言ではない楽曲集である。

まず、一曲一曲の密度が濃い。

曲の中のメロディーパターンが多いわけではない。
しかし、変奏・アレンジの勘が冴え渡っており、キレがある。
結果として、聴き飽きない曲が多いのである。

次に、非常に楽曲のバラエティーに富んでいる。

今回の梶浦さんは、これまでの作曲経験を縦横無尽に活用し、
比較的「脚本家」に近い立ち位置で、音楽が隙なく最適化されているように思う。

また、オペラ的な劇性を持った、悲劇的な雰囲気が漂う楽曲が多い。

作品本編がミュージカルを意識した作りになっているからだろうか。
通しで聴くと満腹になってしまいそうな重量級の楽曲がそろっている。

しかし、それはいわば「美麗な暗さ」であり、これが病み付きになってしまうのである。

早速、強く印象に残った曲をSoundtrackⅠから順に紹介していこうと思う。
下記の他にも好みの曲はあるが、全て書いていると長くなるので、かなり割愛している。


<2.各曲紹介>
(1)SoundtrackⅠ
・Track1「Sis puella magica!」
美しい透明感が印象的な楽曲。

民俗調で神妙な雰囲気のメロディーを、ギターとコーラスが演奏する。
そこに悲劇を暗示するようなチェロが入り、柔らかなフルートと共に変化を与えている。
アレンジに起承転結がある感じで、完成度が高い曲だと思う。

・Track4「Credens justitiam」。
爽やかな風のようなスピード感と明るさを持ったコーラスとストリングス。
梶浦音楽を聴いている方であれば、確実に彼女の曲だとわかるのではないだろうか。

曲が短めなので少し食い足りない気もするが、
このサウンドトラックでこういう曲調は結構珍しく、聴く頻度の多い曲ではある。

・Track5「Clementia」
SoundtrackⅠで最も好みの曲である。

包み込むような慈しみが感じられるオーボエの音色。
そこに繊細なハープが夢幻的な雰囲気を作り出す。

柔らかい光のなか、草原に咲くタンポポが、優しい風に揺れている。

そうした、穏やかで暖かな風景が浮かんでくる。
シンプルで短い曲ではあるが、幸福感の漂う素晴らしい楽曲である。

似たような曲調では、同じDisc1のTrack12「Scaena felix」もなかなか好み。

・Track11「Terror adhaerens」
今回のサウンドトラックでは、低弦楽器が活躍し、黒光りするような渋みを持った曲が多い。
本曲も、そうした雰囲気を持った悲劇調の楽曲である。
人を飲み込まんとする夜影を暗示するような低弦のうねりが印象的。

(2)SoundtrackⅡ
・Track1「Decretum」
これは素晴らしい曲である。
民俗調の雰囲気に、濃厚な哀切感が漂う楽曲。

スムーズなギターのアルペジオに、
スピード感のある2本の弦楽器が滑らかなメロディーラインを演奏する。

流されるように運命に飲まれてしまった悲劇。

それを、切実かつ感情的に歌い上げているような感じ。
ここまで感情を前面に出した梶浦さんの音楽は、かなり珍しいのではないかと思う。

・Track3「Venari strigas」
スピード感のあるゴシック調の曲。
デーモニッシュな弦楽器の音色が独特の雰囲気を醸し出し、
疾走するエレキギターが花(?)を添える。

・Track5「Amicae carae meae」
ピアノとヴァイオリンで、静かに悲しみを奏ずるような楽曲。
情緒的でありながらも、劇性を抑えることで、美しさを引き立てている。
こういう曲調もこのサウンドトラックでは意外に少ないため、貴重である。

(3)SoundtrackⅢ
・Track11「Symposium magarum」
分厚い荘厳な音の響きに圧倒されるような曲。
途中のヴァイオリンソロの部分は、洋城の石造りの広間を想起させる、重厚で凜とした雰囲気を持つ。
この部分では、独特の浮遊感を感じる事も出来、その点でも美味である。

・Track4「Surgam identidem」
前半と後半で曲調が大きく異なる。
前半は、スピード感と重厚さを兼ね備え、弱さに支えられたような力強さも感じる楽曲。
後半は、悲壮的なニュアンスが極めて強く、劇的な曲調である。

・Track7「Nux Walpurgis」
曲調は「Surgam identidem」とよく似ている。
中盤の呻き声のような弦の低音からして悲劇的。
しかし、その後の管弦楽器と聖歌隊が織りなすドラマティックな悲壮感が、たまらなく美しく胸に来る。

不幸の中にある、更なる絶望を認識させられるような、只事ではない雰囲気を持つ楽曲である。

・Track6「Sagitta luminis」
これは、3枚のCDの中で、最も素晴らしいと思う曲である。

頼りない最初の小さな一歩が、次第に壮大な広がりを持っていく様。
悲壮な論理から、何の言葉もいらない、優しい許しへ。
全ての罪を浄化し、暖かく抱きしめるような清らかな音色である。

美しいだけではない、この柔らかな神々しさ。

これはまさに、無垢なる「母性」の権化ではないか。

このような楽曲はそうそうあるものではない。

私はこの曲がTV版本編で流れたとき、梶浦音楽がさらに一段上の境地に入ったのを感じた。
ただただ、聴き入るしかないという曲である。

・Track12「Pergo pugnare」
落ち着きの中に、過去を振り返るような切なさの入った楽曲である。
弦楽器が奏でる連綿とした情緒が素晴らしい。

「最後はほんの少しだけ前向きに。」

そんな曲調で締め括る。


<3.まとめ>
以上、作品世界を忠実に描写したサウンドトラックであった。

作品を見ていない方にもお勧めできるかどうかは、自分にはわからない。
できれば、作品を見てから聴いていただきたい気持ちもないではない。

しかし、神妙な楽曲、疾走感のある暴力的とも思える楽曲あり。
悲劇的かつ情緒的な楽曲、母性的な清浄さのある楽曲あり。

聴く者を飽きさせない楽曲が揃ったCDだと思うことは事実である。

作品を見てからでも、そうでなくとも、
是非聴いてみていただければ幸いである。

P.S
MUSIC COLLECTIONの紹介文にある、
「梶浦由記による新規書き下ろし楽曲」が気になるのは、自分だけだろうか…。


○参考リンク
・Amazon「魔法少女まどか☆マギカ 2 【完全生産限定版】 [Blu-ray] 」
・Amazon「魔法少女まどか☆マギカ 4 【完全生産限定版】 [DVD] 」
・Amazon「魔法少女まどか☆マギカ 6 【完全生産限定版】 [Blu-ray] 」

 →自分が持っているものは、このようにBlu-rayとDVDが混ざっている。

・Amazon「魔法少女まどか☆マギカ MUSIC COLLECTION」
 →これから音楽を聴かれる方はこちらのサウンドトラックへ。

音楽感想:『Melodies Of Life featured in FINAL FANTASY IX』

2012-03-20 17:36:32 | 音楽系
当Blogからリンクしていた『茶イイナ』がなくなっていたことに、
Ananda cafe氏の指摘を受けて初めて気がつく。(指摘に感謝。)
ということでリンクから外しておいた。

『茶イイナ』のキームンが飲めなくなってしまったのは非常に残念である。

しかし、最近別の方のコメントにて高山茶というものを薦めていただいたので、
ちょっと別の世界にも手を出してみようかと思案中の今日この頃である。


さて、今日はゲームの楽曲『Melodies Of Life』という曲の紹介。

この曲はファイナルファンタジーⅨというゲームの主題歌である。
当方、ゲームの方はプレイしていないのだが、
友人に聞かせてもらった結果、感銘を受けて購入したという経緯のある曲。

作曲はファイナルファンタジーではおなじみの植松伸夫さん。
編曲は劇伴業界ではよく名の知られた浜口史郎さんという方。
ボーカルは白鳥英美子さんという方。

当方、ボーカル曲はあまり取らないのだが、この曲は素晴らしい。

繊細でゆったりとしたメロディ。
楽器構成は、ピアノ・クラリネット・弦楽器(3種)とギター、パーカッション、トランペット。
中心となっているのは、弦楽器が織りなす、明るく美しい音色。

楽曲全体にふわりとした包容力、優しさや暖かみがあり、自分のツボである。

こういう曲にありがちなのは、
進行が淡々としすぎてしまい、退屈になってしまうことである。

しかし、この曲はそうなっていない。
これは、ピアノとエレキギターの使い方によるものであろうと思われる。

まず、ピアノの動きにメリハリがある。
2番開始直後などは、分散和音的に奏でられ駆け上がるピアノが、
弦楽器を迎えに行くような流麗な展開で、実に素晴らしい。

さらに、少し鋭さのあるエレキギターの音が随所に顔を出し、曲を引き締めている。
エレキギターをこういう柔らかな曲に採用するのも珍しいが、
これが実に良いアクセントになっている。

弦の動きも、手を変え品を変えうまく絡ませてある。

ボーカルは、流れるような優しい歌い方で、楽曲に良く合っている。
日本語歌詞、英語歌詞の両方が収録されている。
私は、どちらかというと、流麗さが際立つ英語の歌詞の方が好みである。


久しぶりに感想記事を書くと、
上手く感想が出てこなくなっていることに気付かされる。

やはり、こういう頭も定期的に使わないとダメなのだろうな・・・。


○参考リンク
Amazon:『Melodies Of Life featured in FINAL FANTASY IX』

音楽感想:『異国迷路のクロワーゼ』OP・EDテーマ 世界は踊るよ、君と。/ここからはじまる物語

2011-08-14 12:05:35 | 音楽系
久しぶりのCD感想記事。

今回のお題は、古いCDの感想を主に書いている当Blogとしては珍しい、
現在進行系で放送しているアニメの主題歌シングルCDである。

『異国迷路のクロワーゼ The Animation』というアニメの主題歌、
『世界は踊るよ、君と。/ここからはじまる物語』という曲。

アニメの方もなかなか好みに合う感じだった。

忙しくドタバタせず、日々を淡々と過ごしていく。
その中で、様々なことを思い、考えていくという落ち着いた作風だ。
この作風が、19世紀のパリという舞台で展開されるのである。

この世界観の雰囲気が、画だけでなく、楽曲でも表現されている。
BGMも含め、この楽曲の雰囲気が実に良く、かなりツボにはまった。
サウンドトラックが出たら、おそらく買ってしまうのだろうと思う。

さて、ここで、サントラを買う予定があるのに、
なぜわざわざ主題歌のシングルCDを買うのかという疑問が出る。
サントラには、主題歌の「TVサイズ」が収録されるらしいのに、である。

あのエンディングテーマにやられた。

というのが率直な理由である。
早速、以下主題歌2曲の感想を述べてみようと思う。


オープニングテーマ『世界は回るよ、君と。』
作曲:千葉はな 編曲:市川和則 Vocal:羊毛とおはな

異国情緒な雰囲気が漂う楽曲。

流れるようなギターの音色がなかなか心地良い。
軽妙なフットワークがあり、アニメアニメした感じがなく、割と個性的ではないか。
嫌みのない楽曲に仕上がっているのではではないかと思う。


エンディングテーマ『ここからはじまる物語』
作曲:松浦みつを 編曲:保刈久明 Vocal:湯音(東山奈央)

このシングルのイチ押しはこの曲。

どちらかというと和風で童謡的なテイストをもった曲。

作曲もさることながら、保刈久明氏の編曲(アレンジ)が絶品。

メロディーの方は結構淡々としているように思うが、
アレンジが積極的に前に出て、かなり聴かせる。
この構造が、押しつけがましくない情感の表出に寄与しているように思う。

生き生きとして融通無碍。
それでいて無秩序にならず、品のある優しさ、しなやかさがあるのだな。

また、変化のあるアレンジのおかげで、曲の2番以降の存在意義が増している。
このため、1番2番は当然同じメロディーが流れるのだが、飽きがこない。
サントラのTVサイズではなく、このシングルのフルサイズを買わざるを得なくなったほどである。

2本のヴァイオリンが、1番ではたどたどしく、2番では伸びやかに歌う。
この2本の音のハーモニーが、また色気があって美しいのだな。
彩度を押さえたパステル調の音色も魅力的である。

テンポの変化も、自由闊達かつ嫌みがなく、素晴らしいと思う。
流れるようなピアノ伴奏が、耳に心地よい。

歌い手の方については多くは触れない。
ただ、3回目のサビ部分「始めよう ここから」を重ねてくるところは、なぜか胸に来る。


聴いた後に、優しいものがほのかに残る。そんな楽曲であった。


○参考リンク
Amazon『世界は踊るよ、君と。/ここからはじまる物語』
→今回感想を書いた楽曲の試聴が出来る。

Amazon『TVアニメーション「異国迷路のクロワーゼ The Animation」オリジナルサウンドトラック 』
→8月24日発売だそうだ。

拙著記事『音楽感想『NOIR(ノワール) オリジナルサウンドトラックⅠ』
→この記事で紹介している『きれいな感情』という曲の編曲が、保刈久明さんである。
 こちらの曲も方向性は違うが、良いと思う。

公式ページ『異国迷路のクロワーゼ Thi Animation』

音楽感想:Selfconsciousness-岩崎琢 劇伴音楽集-

2011-05-30 09:23:01 | 音楽系
気付けば2ヶ月間放置とは・・・。
どうも趣味のことを書くような気分ではなかったというのが正直なところ。

この2ヶ月間でやっていたことと言えば、音楽を聴くことくらいであった。
それなりに新しいCDもいくつか買ってみたのだが、中でも強い衝撃を受けたのがこのCD。


『Selfconsciousness-岩崎琢 劇伴音楽集-』


作曲は『岩崎琢』氏。


いや、このCDは本当に凄かった


1日で1枚聴くのがやっとというくらい、どの曲も密度が濃い。

それに加え、さらに恐ろしいことがある。

だいたいどのような作曲家であっても、いくつかの作品のCDを聴けば、
その作曲家の作風というものが何となく感じられるのが通常である。

しかし、この劇伴音楽集はどうであろうか。
少なくともこのCDを聴く限り、私にはこの作曲家の底が見えない
(穏やかな曲などでわずかに感じられる程度。)

いつまで、この底が見えない状況が続いていくのか分からないが、
今後もこの人に注目していきたいと思わせるそんなCDであった。


正直、曲を選択するのも憚られるくらい、どれも完成度が高いと思う。
どの曲を取っても、響きが豊かで厚く、聴き応えがある。
内声部も充実し、よく動いている感じ。
それでいて、何とも言えず繊細なのがたまらない。

しかし、全曲について感想を書いていたら、記事の完成日が永遠に来ない気がするので、
Disc「2」で自分が良く聴くものを挙げてみることにする。
(Disc1の「R.O.Dのテーマ」なども良いのだが。)


『13.お前のXXX(トリプルエックス)で天を衝け!!/Another mix』なんかは、
いかにもそれらしい力強さを持った曲。
ゆっくりとしたメロディーの移り変わりと、それを支える弦の厚みが、凜とした意志の強さを感じさせる。

もう少しメロディーの変化があればなお良かったと思う。
また、失礼ながら、このトランペットにはちょっと笑ってしまった。


『14.“Libera me” from hell』はかなり好みの曲。
変化が多彩で、聴いていて非常に面白い。
ある旋律の繰り返しの背後で、他の旋律が留まることなく変化していく様が何とも好み。

それに加えて、強い進行感があり、この盛り上がりも魅力の一つである。
表面上の熱さでなく、周りの熱源が大きくなってくるような熱さを持つ音楽。
なんというか、地表を掘り下げながら、地下の熱源にどんどん近づいていくような感じ。


『16.「萌え」っていったい何ですか?』もイチオシの曲。
どこか繊細でありながら、濃厚なものを内包した感じ。
それでいて、マーラーの交響曲の緩除楽章のような、気味が悪いくらいの美しさを持っている。
美しくも切ない「別れの微笑み」という印象。


また『02.菩提樹』は、清浄感に溢れていながら、濃厚かつ豊かな色彩が感じられる楽曲。
厚みのある弦楽器群が織りなす、瑞々しく清らかなメロディーが心地よい。


『01.Nostalgia』も、特徴的な音楽である。
幻想的といったら俗になってしまうが、霧がかった山を彷彿とさせるような霊感を感じる。
この柔らかでふわりとした質感は筆舌に尽くしがたい。
実に素晴らしい音楽である。(こればかり)


他にも『10.Take over disteny』は、推進力がありながら、節制のきいた感じで好みだし、
『11.Magic mushroom』も、危険な響き(?)が感じられ、面白い楽曲であると思う。


全体的に、ありがちな方向へ行っていないところが好み。
「この」CDを手元に置いておく価値を十分すぎるほど見いだせる。
(各アニメのサントラを全て持っている人はともかく。)

ただ、人を選ぶのだろうとは思う。

人を選ばない音楽などあるのかと言われればそれまでだが、何となく。

なにはともあれ、自分のような雑食的な人間にはたまらない逸品であった。


参考リンク
Amazon『Selfconsciousness-岩崎琢 劇伴音楽集-』

音楽感想『NOIR(ノワール) オリジナルサウンドトラックⅠ』

2011-03-11 10:08:49 | 音楽系
本当は別のサントラのことについて書く予定だった。
「With Ribbon」という美少女ゲームのサントラである。

「安瀬聖(ANJE HIJIRI)」さん目当てで購入したものだ。
しかし、どうも印象が薄めで、書く意欲が起きなかった。

そんな調子で、CDの整理ついでに古いCDをいくつか聴いていたら、
今日のお題のサウンドトラックに行き着いた。

まあ、「掘り出し物」というやつである。(自分のCDなのに。)


この「NOIR」(ノワール)というアニメのサウンドトラック。
(2枚あるうちの、1枚目のサントラ。)
作曲は「梶浦由記」さんである。

当方、この梶浦さんの音楽は、割と好みなのである。
きっかけは『ゼノサーガⅡ』かなにかだったかと思う。

以前、当Blogでも、アニメ『ツバサ・クロニクル』のサントラを取り上げた事がある。(拙著記事はこちら。)

現在進行形のアニメで行くと、
今をときめく(?)『魔法少女まどか☆マギカ』の作曲を手がけている方である。


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ちなみに当方、梶浦さん目当てで『魔法少女まどか☆マギカ』を見始めた。
その結果、アニメの「内容」の方にどハマりしてしまっている。

これは本当に『凄い』アニメだと思う。
あるものの言葉を借りれば「『凄い』という表現は控えめすぎる。」
まさに「外見にだまされてはダメ」なアニメ。

そして、お勧めはしない。
見ればその意味が分かるのではないかと思う。
しかし、積極的にはお勧めできない。

見て文句を言ってきても私は知らない。

だが、このアニメが放映されている時代に生きていることを
心から感謝する者が、僅かではあるが、存在すると思う。

あなたはどちらだろうか。

私は間違いなく後者である。

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話が逸れた。梶浦さんの紹介に戻る。

梶浦由記さんの音楽についての印象は、
民族的な雰囲気を持つメロディ、サウンドを持つが、
何とも素朴な味わいのある楽曲
を作られる方という印象である。

しかしながら、この「NOIR」というサウンドトラックは、
そういった印象の枠を超えた、「多彩」な楽曲群に仕上がっていると思う。

巷では、
『この「NOIR」のサウンドトラックこそが、梶浦さんのCDの最高傑作である。』
という呼び声もあるようだ。

これは、この楽曲の多彩さに由来するところもあるのではないか。

確かに、梶浦さんらしいといわれそうな、
民族的楽曲に疾走感を持たせたような音楽もある。

しかし、他にもメキシカン的な雰囲気あり、イタリア的な雰囲気あり。
かと思えば、教会音楽のようにゴシック的な音調のもの、童謡のように素朴な美しいメロディーの音楽などもある。
また、そういった言葉ではくくりきれないような複雑な楽曲もある。

それでいて、耳馴染みがいい音楽に留まろうとせず、
音楽を前面に出そうとするような尖った部分もある。

実におもしろいサウンドトラックである。


6.はシンプルでありながら、淡々と孤独を歌い上げるような感じがなかなか好みだし、
8.はスペイン舞踊のような軽やかさに寂しさが含まれているようで、これまた好きである。

9.は素朴で哀しい感じのメロディー。
それでいて、上品さ、粗暴さが内包されているような複雑な楽曲。

17.は、梶浦さん好きにはたまらないといった感じの楽曲ではないか。
民族的なサウンドと疾走感、途中転調がかなり美味。
しかし、最後があまり綺麗でない。この最後がなければイチオシなのだが・・・。
演出上のものだと思うのだが、楽曲的には残念なところ。


こういった多彩な楽曲の中でも、自分イチオシの曲は、
『4. canta per me』『7. solitude by the window』『14. zero hour』『18. きれいな感情』である

4.などは、こう来るとわかっていてもやはり好みである。
モノトーン調で哀愁があって、心地よい楽曲なのだが、
どこかに連れて行かれそうな感じの微妙な不安定感との調和が美味。

7.14.は、童謡的で素朴な美しいメロディーの曲。
素朴な中に悲しみが入っているような感じの曲が、何とも琴線に触れる。

そして、最後に収録されている『18.きれいな感情』
これが、非常に素晴らしい楽曲なのである。

作曲は『新居昭乃』さんという方。
この人の曲は初めて聴いたのだが、この曲はかなり好みである。

素朴なのだが、何かにじみ出るような味わい深さを感じる。

一聴すると、暖かで落ち着いた感じ。
サビの入りなども滑らかで、過度に強調する感じもない。
それでいて、何ともアンニュイな味わい深さがあるのである。

多彩な楽曲群を収録したこのサウンドトラックの締めにピッタリの曲だと思う。


多彩な味わいがあり、それでいてなぜか統一感のある楽曲群。
非常におもしろいサントラであった。

なぜ買ってすぐ気付かない。(For自分)

しかし、こういうことは良くある。
音楽の感想は、その日の気分によって随分と変わるからだ。
なので、私はCDを買って「すぐに」感想を書くということは避けている。

だから、自分の感想記事は、音楽シーンの流れについて行くことが出来ない。
まあ、そんな流れなどどうでもいい。

このサウンドトラックも、そういう流れとは無縁のCDだと思う。
しかし、異彩を放つ存在感がある、そんなCDであった。


○参考リンク
・Amazon「ノワール ― オリジナル・サウンドトラック」
→試聴が出来るようなので、良ければ聴いてみて頂きたい。

・拙著記事『感想「ツバサ・クロニクル」 オリジナル・サウンドトラック Future Soundscape II』
→『ツバサ』のほうが、良くも悪くも「無難」な仕上がりになっているという感じがする。

・TVアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』公式ページ

音楽感想:『Asterisk』 -“eden*”サウンドトラック

2011-02-28 10:01:51 | 音楽系
なんと、2011年3月31日をもって『gooあしあと』のサービスが終了するらしい。
Gooブログで使えた、唯一のアクセス解析サービス(検索キーワード解析を含む)がなくなるというのは非常に痛い。
(他にGooブログで使える解析ツールを調べたのだが、かなり難しいようだ。)

そういうわけで、サービスが終わる日をもって当Blogを終了・・・というのは自分が嫌なので、
新たなアクセス解析ツールを探した。何とか継続できそうである。(移転はしないこととした。)


さて、本題に入ろうと思う。

今回は、『eden*』というゲーム(minori)のサウンドトラック『Asterisk』の感想記事である。

このサントラは、「久しぶりに」現実にゲームをプレイした後に購入したものである。
(「久しぶりに」というのもどうかと思う。)
だから、音楽それ自体のみを見て感想を述べたものとは言えない点、先に申し述べておく。


この『eden*』というゲーム、「シナリオ」は賛否両論あろうかと思う。
すなわち、批判しようと思えば容易に批判しうるものであると言える。
評価の分岐点は「表に出ない面を、どれほど「善解」して楽しめるか。」という点にあるような気がする。

しかし、そうであったとしても、「演出」面においては、音楽と情景のすり合わせが非常に丹念になされ、
それが功を奏していたという点には、ほとんど異論は出ないのではないかと思う。


この音楽を手がけているのは『天門』さん『柳英一郎』さんという面々である。
(どの曲をどちらが作っているかという具体的な記載はない。)

柳さんは、このサントラで初めて聞く方である。
しかし、『天門』さんの名前を聞いたのは初めてではない。

私が『天門』さんを知ったのは『新海誠』というアニメーターの映画、
『雲の向こう、約束の場所』という作品のデモムービー(120秒編)がきっかけである。

そこで聴いた音楽は、
ラップ越しに見た風景のように微妙に濡れた感じの鮮やかな色合いと、
柔らかな光のまばゆさが同居したようなサウンド。
それに加え、ドラマティックかつノスタルジックなメロディーの美しさ。


『天門』という名前を、刷り込まれた最初の印象はそれである。


この『eden*』のサウンドトラックにおいても、そういった感じを抱かせる音楽がある。
Disk-Aの『13.Geniality』『14.Yearning to the sky』などは、そのような曲であり、楽曲としても好みである。
『16.Separation』『17.To the new world』も曲想としてはそっちの感じなのだが、
少し演出に寄りすぎたような感じで、途中の展開が若干唐突かなとも思う。

また上記の雰囲気からは離れるが、
『02.Solitude』は、抑制された中に悲しみがあるような感じで、これまた別の意味で気に入っている曲である。
『06.Android』という曲も、悲しみに儚さと憂愁なニュアンスが含まれたような雰囲気が好み。
『15.Lavinia』は曲の盛り上がりが非常にいい感じ。途中に少し音の厚みが抜けるようなところがあるのが若干残念である。

Disk-Bでは『08 Other side of sadness』『09 Sleeping Beauty』『12 Can't leave you alone』等もなかなか好みである。

しかし、個人的には『01. Liberating』『07.Sion』『13.Time left』が一押し(?)。
どれも牧歌的な雰囲気があって、ゲーム中の美しい風景を思い出させる楽曲たちである。

特に『13.Time left』が最高に素晴らしい。
優しく牧歌的でありながら、哀しく、儚く、美しく、そしてなにより暖かみのある曲である。
これを聴いていると、シオンの声が聞こえてくるような気がする。
彼女との優しい記憶を思い返し、胸に溢れてくる暖かで懐かしい気持ちを押さえきれない。
そういった主人公の思いまで伝わってくるようである。


さて、このCD、ゲームをプレイしていない方に対してもお勧めできなくはないが、
ここまで褒められるのは、やはり自分がゲームをプレイしたからであろう。
「自分としては好みのCDであった。」とだけ言えば足りるのかも知れない。

また、CD全体を見ても、楽曲自体の完成度がずば抜けて高いという感じのCDではないと思う。
なんとなく曲進行などに(演出に合わせた結果だと思うが)不自然さを感じ、聴かない曲もそれなりにあったりする。

しかし、それでも前述の美しい風景の演出に供された、透明で瑞々しい楽曲群の心地よさが深く印象に残る。
ゲームの記憶と共に、このCDも長きにわたって聴き続けるのだろうなと思う。
そんなCDであった。

音楽感想:『そよ風の中で』(『小鳥の羽飾り』付属CD)

2011-02-21 09:24:50 | 音楽系
一ヶ月以上放置していたとはどういう了見か。(For自分)

感想を書きたいCDなどは山とある。
それにもかかわらず、音楽について書くことを躊躇させるものがあった。

以下数行、CDの感想の前に、読者の方にはまったく意味不明であろう、この躊躇のことを書こうと思う。


この躊躇というのは、
『具体的な言葉』で音楽を説明することに対する「抵抗感」というか「喪失感」である。

換言すると、言葉を駆使すればするほど、言葉ですくい取れなかった部分が自分の中からこぼれ落ちていく感じ。
また、自分の言葉によって、自分の感じたものが曲げられていくようないやな感覚。

音楽は、本来言葉では表現できないことを表現するものであり、そこに言葉ですくい取れない部分があることは承知の上で感想を書いていた。
感想として、嘘を書いたことは一度もないが、「何かが違う」という感覚が日増しに強くなってきた。
あいまいな、もやっとした感覚を、無理に言葉に整理してしまうことが恐ろしくなってきたのである。

あいまいな部分、言葉で整理できなかった部分にこそ、音楽の重要な部分があったのではないか。
せっかく音楽から受け取った重要な部分を、あっさり言葉でふるい落としていないだろうか。
このような、音楽から得たものを自分で無にしているのではないかという恐ろしさである。

ということで、今後は無理にあいまいな感覚を言葉に置き換えるのではなく、あいまいなところはあいまいなまま受容しつつ、感想を書こうと思う。
この結果、感想が以前より抽象的になるが、この点ご了承いただきたい。

意味不明かつ神経質な駄文失礼。
以下はいつも通りの音楽感想である。



久しぶりの佐野広明氏の音楽CD『そよ風の中で』の感想である。

といっても、これまた古いCDの発掘(?)で、データベースを参照すると、発売日は「1997年」となっている。
『殻の中の小鳥』というゲームのファンディスク、『小鳥の羽飾り』に付属しているCDである。

以前から所有していて、過去の記事にも名前を出したことがある。

『殻の中の小鳥』の音楽のアレンジ6曲と、オリジナル曲2曲の計8曲が入っている。


やはり佐野広明氏の音楽は、自分にとって、他の作曲家では代替できない唯一無二のものである。

曲の雰囲気は種々あるが、一通り聴いて感じるのは、繊細な作りだなという印象。
儚げでありながら、しっとりとした楽曲群は、非常に好みである。

6トラック目の『追想』などは、
しっとりとした雰囲気の中に感傷的なニュアンスがあって、実に自分好み。
加古隆氏の『風のワルツ』のような楽曲が好みの方は、ツボに入るのではないか。

そして特に素晴らしいのが、このCDのタイトルを冠された『そよ風の中で』という曲。

曲調自体は、壮大でありながら、爽やかさ・涼やかさを持ち合わせた感じのもの。
『そよ風の中で』というタイトル通りの雰囲気を持った楽曲。
感情をむやみに煽り立てることのない、ヒーリングミュージック等の作りに近い音楽である。

にもかかわらず、この音楽は、なぜこれほどまでに儚く哀しく、そして美しいのだろうか。

これはもう、まさに他の作曲家では代替困難な作りの曲である。


BGMというと、ともすれば感情をあおり立てるような、あるいは、感動させんという意識が露骨に表れた曲が散見される。
これが悪いとは言わないし、自分自身そういう曲で好きなものも数多くある。
しかし、そのような曲を繰り返し聴いていると、軽く食傷気味に思うことも事実である。

これに対し、この『そよ風の中で』という曲は、こうした楽曲とは対照的な音楽をやっている。

「叙事的」「間接的」というのだろうか。

たとえば、木々は季節によって色を変えるが、それは我々の心を動かすためのものではない。
しかし、そのような新緑や紅葉を見て、美しいと思う自分がいる。

『そよ風の中で』という曲を聴いていると、それと似たような感覚を受けるのである。

感情を煽られなくても美しいと感じる、一種「間接的」な部分の大きい音楽。
佐野氏の曲の中でも、その部分がかなり前面に出た楽曲に感じる。
(本CDが普通のサウンドトラックではなく、自由度の高い「イメージアルバム」的に構成されていることも影響しているのだろう。)

しかし、これが他では得難い魅力であり、非常に美味なのである。

悲しい曲は数あれど、これほどに第三者的なニュアンスを持ちながら、
心に訴える音楽を作る作曲家は、自分の知る限り(少なくともゲーム業界では)佐野広明氏だけである。


彼を「『なのは』の音楽の人」という認知だけで終わらせるのは、あまりに勿体ないと思う。そんなCD。

今日はモーツァルトの命日。交響曲40番名演奏の紹介。

2010-12-05 21:54:44 | 音楽系
今日はモーツァルトの命日だそう。
と同時に、当Blogでモーツァルトを一度も取り上げたことがないことに気づく。
当方の自己紹介のページで少し取り上げた程度か。

ということで(?)、彼の交響曲の中でも割と有名な方の部類であろう40番の紹介をしてみる。

この交響曲第40番は、自分がモーツァルトに開眼したきっかけとなった曲でもある。
慄然としていながらも、時折見せる内に秘める繊細な感情の吐露が非常に美味。

なんだろう、「人間は誰しも孤独を抱えていて、それは決して満たされることはない。」
という一種の諦観というか、それについての本質的な哀しみというか、そういったものを感じるような気がする。


そういった感想はさておき、
交響曲40番は、直近の39番、41番交響曲と比べても、とりわけ柔らかい響きをもっていると思う。

金管楽器をほとんど使わず、木管楽器主体の構成が効いているのだろう。
さらに金管についても、比較的柔らかめの音色が美しいホルンのみを採用している。
(これは時代背景的な事情もあるかもしれない。)

この響きを聴いているだけでも精神が満たされてくるような心持ちがする。

これは、自分にとってはクラシック系の音楽を聴いているとき特有の心情である。
自分の聴く音楽の大半がクラシックというのも、
根本的にはこの精神的な充足感の大きさという点が、一つの大きな理由になっている。

念のため言っておくが、決して他ジャンルの曲がダメと言っているのではない。
その点は、当方がアニメ・ゲームのサウンドトラックに対して、
好意的な感想を書いている
という所などからも、お分かりいただけるのではないかと思う。


さて、この交響曲40番は様々な指揮者・演奏者が録音していて、CDも星の数ほどあると思われる。
いくつか自分のもっているCDの中から、好みの演奏をピックアップしてみる。


○「指揮:カール・ベーム 演奏:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団」(DG)

リンク先はAmazon。40番も含めたモーツァルトの後期交響曲6曲全てが入ったCD。

自分が最も聴く頻度の高い演奏であり、モーツァルトに開眼するきっかけともなったもの。

手に入れて、初めて聴いたときはピンとこなかった。
しかし、幾年か経ってオーディオシステムを入れ替えた時に聴いてみたところ、
非常に感激したという経緯のある演奏。

音から、哀しみとか悦びだとかが滲み出てくるといった表現がぴったりの演奏。

何か特別なことをするでもない。
甘さを濃厚に前面に出した演奏というわけでもない。
むしろ、非常にきっちりとした、足取り確かな演奏のように思える。

にもかかわらず、この柔らかさ、甘美さのさり気ない表出はどうだろうか。

いろいろな指揮者の演奏するCDを買っても、結局この盤に戻ってくる。

ベーム先生の演奏は、同じグラモフォンから出ている「ウィーン・フィル」との演奏もある。
そちらも素晴らしいが、自分はどちらかと言えばこのベルリン・フィル盤の方が好み。


○「指揮:オットー・クレンペラー 演奏:フィルハーモニア管弦楽団」(EMI)

リンク先はAmazon。交響曲35番・41番とセットになったCD。

この演奏も割と聴いている方だと思う。

ゆっくりとした足取りだが、非常にスケールの大きな演奏。
ベーム先生の演奏が『協奏曲』的だとすると、クレンペラー先生の演奏はまさに『交響曲』的といった感じ。

音は透明で澄んでいるが、ほのかに残る春霞のような『もや』が、何とも言えず柔らかな味わい。
味も淡泊すぎず、濃厚すぎずと実に絶妙なバランスを保っている。

また、この演奏の特徴としては、木管楽器が強調されている点が挙げられると思う。
この演奏を聴くと、この曲においていかに『木管』がよく動いているか、
また、曲の進行・味わいに重要な役割を果たしているか、素人ながら感じられるような気がする。


○「指揮:ブルーノ・ワルター 演奏:ニューヨーク・フィルハーモニック」(SONY)

リンク先はAmazon。交響曲39番・41番とカップリングされたCD。
これも両方、非常に素晴らしい演奏であると思う。

この演奏もかなりよく聴く演奏である。

ベーム先生のモーツァルト演奏の師匠とも言われるワルター先生の演奏。

ワルター先生の演奏というと、一般的なイメージとして、
優しくしなやかな演奏をするというものがあるように思える。
この演奏でもこういう面があることは間違いないと思う。

しかし、それ一本槍というわけではない。

むしろ、かなり骨格がしっかりした演奏という印象を受ける。
高い方の弦楽器はかなり滑らかな音に思えるのだが、何とも不思議である。
バスが強調されている点が、そのような印象を与えるのだろうか。

レガート・テンポルバートなども、上記2つの演奏に比べるとよく使われている。
これが、疾走感と、繊細かつ柔らかな感情表現を両立させているような感じで、大きな効果を上げているように思う。
「疾走する悲しみ」とは、まさにこのような演奏のことを指す言葉ではなかろうか。

ちなみにこのCDはモノラル録音である。
しかし、そんなことは演奏の内容とは関係ない。
かなりオススメの演奏である。


という訳で以上、毛色の違う(と思う)3つの演奏を挙げてみた。
リンク先には試聴があったりもするので、よかったらお聴きいただければと思う。

他にも「スウィトナー指揮・シュターツカペレドレスデン」の演奏など、名盤には事欠かない交響曲40番。
これからもいろいろな演奏に巡り会っていきたいと思う次第である。

音楽感想:『この青空に約束を-』 オリジナルサウンドトラック

2010-11-20 19:47:10 | 音楽系
最近、サントラを買う機会が多い。
前から目をつけていたものがたまたま安く出ていたせいである。

私は、音楽CDを買うときは、非常に吟味をするタイプである。
何度も繰り返し聴いて、それでも飽きないようなら購入するという方法を採っている。
なぜなら、見境なく買っていると、CDの山が出来てしまう恐れがあるからである。(経験済。というか今の状況。)

上記のように慎重な買い方が出来るようになった理由には、動画サイトの存在が大きい。
ニコニコ動画や、Youtubeなど、自分の好みに引っかかる曲はたいていその辺りで聴くことが出来る。
CD化されていない音源や、絶版のCDまで聴けることがあるので、非常にありがたい存在である。

無料動画サイトは、CDの売り上げ減少の原因として、批判の矢面にさらされることもある。

しかし、ある意味、今までの売り方の方が奇妙だったのではないかとも思う。
すなわち、CDの全曲を聴かせることなく、いわば『ジャケ買い』をさせる手法である。
音楽のほんの一部をテレビなり、ラジオなりで聴かせて、その少しの手がかりで購入させる。

こうした情報の偏在があるのでは、消費者側は、音楽を隅から隅まで吟味することは出来ない。
そうなると、販売側は、質に見合わないものを売ることがたやすくなる。

だが、動画サイトの出現によって、音楽の吟味が可能になった。
これは、商品を吟味して購入するという、きわめて当然の行動が可能になっただけとも言えるのである。

もちろん、著作権は保護されるべきであることは言うまでもない。
それを侵害する者には、それ相応の措置が執られてしかるべきである。

しかし、法的な観点とは別次元の問題として、売り手側は今までの売り方を反省する事も必要であると思う。
イメージ戦略などで購入させるのではなく、
試聴を長く実施するとか、音楽それ自体の魅力を伝え、吟味させるような努力をすべきであると私は思う。

一時で数が出ればいいというやり方では、息の長い商売は出来ないのではないだろうか。


ということで、前置きが長くなったが、今日の記事も私が吟味して購入に至ったサウンドトラックの紹介である。


<総論的な感想>
○CDの概要
『この青空に約束を-』という美少女ゲームのサウンドトラック。
どうもPCゲームの初回限定版に、特典として付いてくるものらしい。

なぜこのCDを購入したかというと、『風のアルペジオ』という曲を手元に置いておきたいと思ったから。

『風のアルペジオ』を知ったきっかけは『ぴこのスコア』という楽譜サイトである。
そこに『風のアルペジオ』の楽譜ページに、楽譜と共にその演奏MP3も同じページに公開されていた。
それがなかなかどうして自分好みであった。
(『ぴこのスコア』さんには、他にもいろいろな曲を教えていただいた。密かに感謝をしている次第。)

それ以来、細々とサントラCDを探していたのだが、ゲームの付属としてしか流通していないことが判明。
さらに、このゲームの人気自体が高いらしく、中古市場でもあまりゲームの価格が下がっていなかったため、手が出なかった。
しかし先日、なぜか某中古ショップでCDのみを単売していたので、願ったりかなったりの思いで購入。


○CDの外観
CDのレーベルが、素朴な風景画になっていてなかなか好印象。
Disc1が田舎の学校の絵、Disc2が森の絵になっている。

2枚組・全39曲と、かなりボリュームがある。


○本CDの音楽全体の雰囲気
一般的な『夏の甘酸っぱい青春学生生活』というような記号を、忠実に表現した感じのもの。

理想の『青春』を音化したであろうこのCDは、かなり心地よいものに仕上がっている。
豊かな自然を感じさせる、素朴で等身大な雰囲気もこれに寄与していると思う。
サントラを聴いてゲームをやってみたいという気持ちにさせられたくらい、心地よい雰囲気をもった楽曲群である。

このサントラに関しては、ゲームをやる前に聴くのはまずいようにも思う。
少しでも『この青空に約束を』というゲームをプレイする可能性がある方は、聴かない方がよいかもしれない。
(ちなみに管理人はいつものごとく未プレイ。)


○作曲家など
作曲家は、主題歌がI’veの『CG-mix』さん。
挿入歌に『Hidemi Nemoto』さん。
エンディングテーマにave;newの『a.k.adRESS』さん。

そしてBGMの方の作曲家は、『なるちょ』さん、『R.H』さん、『桜乃明日華』さんの3方。

しかし、以下の各曲感想で触れるBGMは、ほとんどが『なるちょ』さんの曲である。
なぜか私の好みが彼の曲に集中しているらしい。
よって、下記で特に作曲家の指定がなければ、『なるちょ』さんの曲を指すということにする。


<各曲の感想>(太字は特に気に入っている曲。)
○Disc1 - 青空 -
01.allegretto ~そらときみ~ (Vocal.KOTOKO)
主題歌。上記で触れたとおり、作曲は『CG-mix』さん。
歌い手は可もなく不可もなくというか、それっぽい感じの声。

ボーカル曲をあまり入れない管理人だが、これはなかなか…。
なんだかんだ言っても、このCDの顔という位置づけの曲だろう。

一般的な「夏!甘酸っぱい青春!」という記号をストレートに表現したような曲。
パーカッション、エレキギターとシンセサイザーというシンプルな構成。
構成はシンプルだが、『♪allegretto~』の部分のリバーブがほどよいアクセントになっている。

音使いはポップかつ瑞々しい感じで、切なくも躍動感のある若々しい印象を抱かせる。
また、エレキギターの効果的な使用により、夏らしさがよくでていると思う。

エレキギターの間奏部分の後に、Bメロとサビを転調したメロが出てくるのだが、これの効果がまた絶妙。
このサビの最高音で盛り上がる部分が、『♪allegretto~』のリバーブと共に、爽やかな切なさの高まりを遺憾なく表現している。

最初は少し食い足りないと思ったが、意外と耳に残り、飽きにくそうな曲。


15.春を待つ少女のように
ピアノとギターという瑞々しさの中に素朴な印象を抱かせる構成となっている。
穏やかさと切なさを兼ね備えたような雰囲気を持つ曲。
素朴さの中に感じられる暖かみが、なかなかに好み。


17.ゆうなぎ
シンセサイザーとギターで構成された曲。
シンセサイザーによって、素朴さに音の広がりを付加しており、回想的な雰囲気を感じさせる。
何でもない日常が終わっていくのを惜しむような感じの曲。


18.もうひとつの青空
ピアノを主体とした旋律が、儚さと切なさを感じさせる。
素朴な恋い焦がれというか、そんな感じの曲か。


19.はぐれ雲のブルース
作曲家は『桜乃明日華』さん。
ギターを基調としたメロディ。
時間がゆっくり流れる、海の近い田舎らしさを感じる曲。


○Disc 2 - 約束 -
01.allegretto ~そらときみ~ Piano Ver.
作曲『CG-mix』さん、編曲『なるちょ』さんという布陣。
上記で取り上げた主題歌のピアノアレンジ。

切なさと過去回想的なニュアンスが強調された感じ。
主題歌サビ部分のメロ直後のピアノ旋律の上下が、過去の風景を走馬燈のように映し出し、
終盤の音の駆け上がりは、過ぎゆく日々を惜しむ高鳴る心情を表現しているようで美味。


10.Calling You
ピアノとシンセサイザー基調の少し和風な感じの出た曲。
散りゆく花のような切なさ、儚さ。

曲展開がかなり好み。

最初のうちは同じような旋律の繰り返し。
しかし、その旋律が、ある時から次々と移り変わっていく。
この曲展開が、いつの間にか擦れ違ってしまった現状に思いを馳せるようなニュアンスを感じさせる。

曲の進行も、音程が上下しつつも滑らかで、この点でもかなり美味。


13.約束のブーケ
ピアノ+シンセストリングスというありがちな構成だが、これは素晴らしい曲だと思う。

悩みの中から、躊躇しながらも前向きに変わっていく様を、ドラマティックに表現したような曲。

切なくも瑞々しいピアノの旋律に、シンセストリングスが少しずつ壮大さを付加していくような感じ。
この盛り上がり方も、もどかしさを感じさせながら、滑らかに進行していく。
これが、上記躊躇さの表現に貢献し、非常に上手くいっている。

そしてサビ部分、予定調和的にここぞとばかりに鳴り響くストリングスが何とも心地よい。
最後に素朴なところへ戻っていく感じも好み。


14.TWO OF US, SEVEN OF US
これもまた、迷いを払拭した感じの前向きな曲。
壮大さやドラマティックな雰囲気はないが、こちらの方が学生の身の丈に合っているような感じがする。


15.Pieces (Vocal.大咲美和)
挿入歌。作曲は上記『Hidemi Nemoto』さん。
これは、ゲームをやる前に聴かない方がいいような気がする曲。
ということで、感想を書くことも控えることにする。


16.風のアルペジオ Piano Ver.
これは総論のところで述べたとおり、このゲームの音楽を知るきっかけになった曲。
ピアノとシンセストリングスを基調としている。

旋律の流れがよく、穏やかでありながら、若々しさも兼ね備えた表現。
また、青空のような広がりが感じられる、開放的な雰囲気を持っている。
何かが始まりそうな期待に満ちたニュアンス。


<まとめ>
夏とか、切なさとかそういうワードがツボな人にはお勧め。
ただ、PCゲームの特典なので、手に入りにくいのが難点か。

音楽感想:『渡り鳥に宿り木を イメージアルバム』

2010-09-20 18:23:43 | 音楽系
はい、佐野広明(HuMI)氏の音楽の時間ですよ。
反響が少ないとわかっていながら、ついつい書いてしまう。
だって本当に美味なんですもの。


<総論的な感想>
今回紹介するのは、ゲーム『渡り鳥に宿り木を』のイメージアルバム。
『to traveler have a good sleep./ image album』とも言うらしい。

ゲームが出る前にイベント(コミックマーケット)限定で発売されたCDで、ずっと探していた。
ある日、いつも通り検索エンジンで探索していたら、なんと偶然、某中古ショップに在庫を発見。
速攻でポチりましたよ。

はてさて、内容はと言いますと、やっぱり佐野広明さんだなという感じ。
『殻の中の小鳥』『雛鳥の囀』の音楽盤と同じように、クラシックかつゴシック調の音楽がそろっている。
ただ、暗いところが少なく、前向きな感じの曲が多めになっている。

個人的には8.『跳ねる水は冷たく木漏れ日は暖かく(forest)』という曲が最も好み。
しかし、全体的に見ても、丁寧に作られた楽曲群と言えるのではないかと思う。

全9曲の構成。

佐野さんのコメントがついたライナーノーツがないのは少し残念。
『雛鳥の囀』の音楽盤や『そよ風の中で』のCDにはついていたのだが…。


<各曲の感想>(太字は好みの曲。)
1.『己の言葉で語ればこそ(one word message)』
 毎回佐野さんの曲はタイトルが凄い。
 (もっとも、タイトルは大方脚本さんにつけてもらっているらしいが。)

 この曲は、このCDを買うきっかけとなったもの。

 まず、始まりを告げるピアノが健気に鳴り始める。
 その後ストリングスで運命の急展開を表現するような部分が非常に美味。
 運命に翻弄される健気な少女というか、そんな感じの曲。

 この空虚な儚さと美しさは特筆もの。

2.『静かにそして静かに(opening)』
 1.に雰囲気が似ている。少々大げさな感じもする。

3.『陽の光は等しく届く(morning)』
 牧歌的なところのある美しい曲。
 どうしてこの人のピアノはここまで美しいのかね。
 しかし、中間部の鐘とおぼしき音が、鉄パイプの音に聞こえてしまうのが残念。

4.『生まれた大地が決める約束(colita)』
 東洋的でエキゾティックな雰囲気のある曲。
 コーラスと民族楽器の音色が、そこにある淡々とした運命の悲哀を感じさせる。
 結構好みの曲。

5.『少し足りない だから十分(three maids)』
 タイトルの意味深さが何とも。そうなのかもしれないと思わせるものがある。

 穏やかで平和な感じの曲。

 序盤のスタッカートのような部分は、可愛らしく可憐な感じ。
 中間部は、緩急はあれどもゆったりと流れる時間を表すように伸びやかで美しいストリングス。
 ピアノのオブリガードも非常にうまくいっていると思う。

 所々暗い部分があるのは、平和の裏にある「陰」の部分の示唆のようにも思える。

6.『日は沈めど何も変わらず(house)』
 淡々とした悲しさが美しいピアノで奏される。
 上述の「陰」の部分の前兆というような感じ。
 途中の不協和音的な部分はちょっと意味深。

7.『引かれた弓(pressure)』
 ついに上述の「陰」の部分が出てきたといったような曲。
 パーカッションとピアノ、ストリングスが空恐ろしい感じを表現している。
 あまり好みの曲ではない。

8.『跳ねる水は冷たく木漏れ日は暖かく(forest)』
 本CDイチオシの曲。

 RPGの、青空がちらちらと見えるような「森」のダンジョンに使われていそうな感じの曲。
 しかし、ありがちな「癒し」とか、そういったパターンに行くのでもない。

 森の壮大さ、静美さが表現されているような感じ。
 人の手が入らず、忘れ去られてしまっているが、悲しい歴史も見てきた、太古の昔から静かにそこにある森。
 自然の厳しさ、包容力などが、渾然一体となった生命力を感じさせる、力強い楽曲となっている。
 それでいて、何とも鮮やかな色彩感を持っている。

 ギターの弦をはじくような音が神秘的でしっとりとした感じを、フルートの音色は清浄で寂しげな印象を抱かせる。
 中盤でストリングスが壮大さを付加する部分や、フルートとピアノの旋律が前に出て寂寥感を感じさせる部分も好みである。

 しみじみと良さがにじみ出てくる、素晴らしい曲。

9.『その風を受けて高く飛べ(the air)』
 最初は寂しく儚げ。
 しかし、力強いピアノから曲が急展開して、悲しげな疾走感が出るところは佐野さんですな。非常に美味。

 後ろ髪を引かれる、しかし、一所にはいられない、旅立たなければならないといったような悲しさ。
 そこから自然に前向きな表現になっていく様には、何ともいえない充足感がある。
 フルートが吹く風を、管楽器とストリングスがその風に乗る鳥の旅立ちを表現しているような感じ。

 まさにタイトル通り。イメージアルバムの締めにふさわしい曲。


<まとめ>
佐野さんに関しては信者なので、客観的な評価は全く期待できない。
しかし、タイトルと相まって想像を喚起する力を持っている音楽たち。

『イメージアルバム』という看板に偽りなし。

やはり素晴らしいCDだったと言いたいですね。
一般流通がないのが非常に惜しまれる。

感想:『ヘブンストラーダ オリジナルサウンドトラック』

2010-08-29 11:17:15 | 音楽系
佐野広明さんのサントラ感想。

今回のお題は、『ヘブンストラーダ』という美少女ゲームのサウンドトラック。
CDの盤面には『Heaven Strada -Original Sound Track-』と印刷されている。
今回もサントラのためだけにゲームを購入した。(当然未プレイ。)

<総論的な感想>
このサントラCDはゲームの付属品である。(単売はされていない。)
したがって、このサントラはゲームを買わなければ手に入らない。
毎度の事ながらこれは残念。

本CDの楽曲は全21曲で構成されている。
ボーカル曲として『2.風の行方』『13.遠き故郷へ』『20.空色の絵の具』という3曲が入っている。
ボーカルは霜月はるかさん。作曲も、2.と20.は同じく霜月はるかさんだが、13.は佐野広明さん。

CDの全体的な出来はまずまずと言ったところ。

しかし、時々ピンポイントで「これは」という曲があるという印象。
特に『17.アティルト-流出界-』は非常に素晴らしい曲だ。
劇伴という立ち位置にとどまらず、楽曲それ自体が、独立して強い訴求力を持っている。

こういうところも、佐野氏の音楽の魅力だろう。


<各曲の感想>
さて、今回も、気に入った曲をいくつか挙げてみる。


『6.カヴァンナ -精神の集中-』
 序奏がティアナのテーマっぽい感じ(爆)。全体的に『なのは』的なテイストがある。

 戦闘曲のような勇ましい曲調。
 主題を次々に変奏させていくという展開の仕方をする。オブリガートも細かく変化させていて芸が細かい。
 中間の大きな転調で、一転荘重な感じの曲調にする部分などは、まさに佐野広明さんのやり方という感じで美味。


『11.ブリアー -創造界-』
 結晶界を彷彿とさせるような、艶やかで瑞々しい曲。

 ミステリアスな主題を変奏させるような展開。
 主題に少しずつ旋律を付加していく感じ。
 
 付加されたシンセサイザーの女声らしき旋律の掛け合いが美しい。
 ピアノのアルペジオから、シンプルな旋律のみにする部分の切ない表情付けも好み。


『13.遠き故郷へ』
 ボーカル曲。
 楽曲の進行は単純である。
 しかし、各旋律が演出する、自然の輪廻に還っていくときの安らぎというか、甘美さが絶品。


『16.ケシェク -熱戦-』
 おそらく戦闘曲であろうと思わせる推進力のある曲。拍子が変則的なのが特徴的。

 序盤は民族的でトリッキーな感じのメロディー。
 その後少し展開して、広がりのある曲想を奏で、もう一度変奏した後拍子を変える。
 
 スーファミ世代の『FF』のような雰囲気とも言えるかもしれない。


『17.アティルト -流出界-』
 本CDで最も感銘を受けた曲。

 個人的には、佐野広明さんの曲の中でもかなり上位に食い込む。
 この曲だけ随分様相が違う。『なのは』的な所もない。

 照りつける太陽、沈み込む流砂など、不毛で壮大な砂漠のような情景を想起させる力が強く、民族的な雰囲気も持ち合わせている。
 「砂漠を旅し、倒れていく者がいる。しかし、彼らの苦しみや悲劇も、全て大自然の法則の中に組み込まれたものであり、儚く時が流れていくだけなのだ。」
 といった、諸行無常の精神のようなものを感じさせる。

 運命の中で翻弄される人間の悲劇性の表現は、佐野広明さんの他の音楽の中にも散見される。
 しかし、運命としてこれほど厳しい大自然が表現されたような曲は初めてだ。
 中間部の大きな曲調変化が儚い悲劇感を表し、その後に悲しく響く民族楽器のような音は、人生の夕暮れを表しているような感じ。

 しかし、冒頭からは同じ主題の変奏が一貫して続いており、
 個々人の人生とは関係なく、変わらず通低して流れる法則を表現しているようで非常に美味。

 これ一曲でこのCDの存在意義はあると思えるほど好みの曲。


『18.ヘカロト -天上の宮殿-』
 RPGのラスボスとの戦闘曲のような壮大な曲。

 始めのストリングスから、すでに荘厳かつ威厳を感じさせる雰囲気が漂っている。
 ストリングスが厚みのある音の響きを作り上げており、曲に力強さと安定感がある。
 そこにピアノやハープ、鐘などが煌びやかさを足しており、厚みの中に軽やかさも感じられる表現。

 展開は澱みなく流れるが、多彩な変化を見せて退屈させない。
 コーラスを足して神聖さを出したり、ブラスを足して響きにさらなる厚みを与えたりと非常に美味。
 音の透明感も申し分ない。全体的に瑞々しくありながらも、力強く美しい曲に仕上がっている。

 上記『17.アティルト -流出界-』ほどではないが、やはり素晴らしい曲。


<まとめ>
 RPGゲーム曲らしい勇壮な戦闘曲から、切ない曲、明るい曲などが揃ったCD。
 しかし、個人的には『17.アティルト -流出界-』『18.ヘカロト -天上の宮殿-』に尽きると思う。
 これほどの曲が2つも入っているとは、ずいぶん贅沢なCDである。

 佐野広明さんのCDは、稀にこういう「爆弾」があるからつい収集してしまう。

感想:『桜待坂Stories Vol.1 Sound Stage Zero』

2010-08-25 20:42:02 | 音楽系
おそらく殆どの人が喜ばないであろう『佐野広明』氏のサントラ感想。
久しぶりに彼のCDを手に入れたので、検索で飛んでくるかもしれない奇特な人(?)向けの記事です。


『桜待坂Stories Volume.1 Sound Stage Zero』


<総論的な感想>

桜待坂Stories Vol.1という美少女ゲームの初回限定版に付属していたCDです。
このサントラのためだけにゲームを買ったため、不要なゲームの方はいずこかへ旅立ちました。

佐野広明さんのBGMを収録したCDは、単体で流通に乗ることがほとんどないので、
ファンとしてはゲームを買ってCDを手に入れるしかないのです。

ただ、ゲーム自体の中古価格はそれほどたいしたことがないので、ある意味手に入れやすい。
ちなみに今回買ったCDが付いていたゲームは200円でした。(爆)
あとは、その手のゲームを購入する時の敷居の高さだけですかね。

さて、このサウンドトラックCDの出来は、まずまずと言ったところでしょうか。

どちらかというと爽やかで切ない雰囲気が前面に出た感じ。
ゲームの内容が普通の学園モノっぽいからかもしれません。(詳しくは知らないが。)
リリカルなのはや雛鳥の囀のサントラにあったような、退廃的な空気がほとんど感じられません。

ピアノ曲が主体で、オーケストラ風の曲が少ないのが残念なところですね。
あと、1曲1曲が1ループしかせず、曲自体も短いので、
終わり方があっけなく、展開が不十分な感じもします。


<各論的な感想>

2. 花蝶楓月(Vocal:SATOMI)
 珍しくボーカル曲を取り上げてみる。
 私は、基本的に佐野広明氏のボーカル曲があまり好みではない。
 なんというか、彼の音楽自体がボーカルと歌詞を拒んでいるような感じがするのである。

 それでもあえて今回のボーカル曲を挙げたのは、このCDの曲中で、自分が彼の曲に期待していた部分が最も強く出た曲だと思ったから。
 曲の随所に見られる低いストリングスの大胆な音程の動かし方や、間奏部にふと見せるバロック的な空虚感が好み。
 歌い手も妙なアニメ声ではないため、曲の雰囲気を壊すような感じがなく、好感が持てる。


16.夕日の街並み
 これはタイトルどおりの曲ですね。
 最初の始まり方はパッヘルベルのカノンとジークの有名な旋律を髣髴とさせる。

 そして、ふわりと響いてくるやわらかいサイレンのような音が一気にノスタルジックな雰囲気に引き込む。
 この音の効果は不思議。
 あとは切なげな分かりやすい旋律が儚さを表していくような感じ。


18.答えのない問い
 分かり合えない悲しみをうたうようなピアノ曲。
 よくあるムード音楽みたいな感じ。


22.清雅なる日々
 儚げな和風テイストのピアノ曲。
 おぼろげで透明な美しさが印象的な曲だと思います。
 その美しさの中の静謐な悲しみ。


23.月光夜想
 満月を見つめながら思いを馳せるような感じの和風な曲。
 もう一回壮大な感じに展開すれば非常に好みの味になるのですが…。
 Keyの『AIR』と言うゲームの『縁』『月童』という曲に雰囲気がよく似ている。


30.誘い
 『疾走する悲しみ』と言う程のものではないけれど、
 ピアノの流れが良く、美しい曲だと思う。


31.うつろいゆくもの
 タイトル通り、悲しげな感じのピアノ曲。


<まとめ>
サントラのレポートをしていると、37曲も入っているのに紹介が7曲などというのはどうなのかと思うことが度々ある。
(サントラの性質上よくあることで、ある意味仕方のないことなのだが…。)
12.13.20.29.なども悪くない曲だと思うのですが、似たり寄ったりに感じてしまうのですね。

しかし、個人的には『200円』の価値はあったので満足です。
ただ、人にお勧めは出来ないかな…。

感想:「『クドわふたー』 オリジナル・サウンドトラック」

2010-06-27 14:12:04 | 音楽系
『クドわふたー』というのは、所謂18禁ゲームの名前です。
keyというメーカーが手がけたゲームですが、そこで使われる音楽はその業界では高く評価されているようです。

とかく美少女ゲームというのは偏見を受けたりするわけですけれども、音楽の美しさとは関係ないですね。
綺麗であればそれでいいというのが私のスタンスであります。

ちなみに私、この『クドわふたー』というゲームはプレイしておりません。
本当は、ゲームをやってから聴くのが筋なのでしょう。
(特にkeyのゲームはその要請が強いと思われる。)

しかし、私がこのゲームをプレイすることはないと思ったので、単体で聴いてしまいました。

<総論的な感想>

当サウンドトラックはゲームの特典なのですが、友人が貸してくれました。
曲はなかなか良い出来だと思います。

ジャケットも夕焼けの写真になっていて、キャラクター臭は皆無です。
なんというか、「ヒーリングミュージック」CDのような装いになっています。
ライナーノーツやCDのレーベルもそんな感じです。


・作曲家
 このサントラのメイン作曲者は「清水準一」さん。
 keyの作曲と言えば、「麻枝准」さんと「折戸伸治」さん・「戸越まごめ」さんですが、清水さんは新人のようです。

 本CDを聴く限り、かなり味の濃い音楽をしているように感じました。
 味の濃さだけで見ると麻枝さんを凌いでいると思います。
 「濃さ」という観点だけですと、自分の認知としては佐野広明さんに近いかもしれません。

 佐野さんはその濃さを悲劇的な方向にもって行きますが、
 清水さんはもう少し親しみやすい郷愁的な方向に行く感じ。

 また、音楽としては、よく響く音を多用して、
 良い意味でベタな曲を上品なヴェールで包んで見せるような印象がありますね。
 天門さんの曲のテイストを甘め方向に振った感じと言ったらいいでしょうか。

 どちらにしろ、麻枝さんとはまた違った作風をお持ちの方と感じました。


・全体的な曲調など
 ノスタルジックな感じの和風テイストの曲が散見される。
 これはゲームの雰囲気との関係かもしれません。

 ゲームの内容としては、小さい女の子と一夏を過ごすというような感じらしいです。
 確かに、小さな子とのそういう感情って、
 どこかノスタルジックなニュアンスがあるのではないかと思うので、納得と言えば納得(?)です。

 どの曲も荒削りではあるものの力が入った作品になっていると思うのですが、
 ゲームでこれらを流され続けると少し疲れてしまうかもしれないですね。

 こういう曲は、サントラ単体で聴くと映えるので、
 サントラしか聴かない自分のような人間にはいいのです。

 しかし、ゲーム音楽としては、もう少し遊び心というか、抜いた部分があっても良かったのではないかと感じるところもありますね。
 初めてのメイン作曲でプレッシャーがあったのだと推測します。
 ただ、こういう作風を続けてほしいという気持ちもあるので、なかなか複雑です。

 後は、パートを混ぜて聴いた時のぎこちなさがもう少し取れれば、なお良いような気がします。


<各論的な感想>
 
02.At The Mountain Behind
 和風テイストのある曲。音の広がりもなかなかのもの。
 爽やかさに、夏の少しけだるい雰囲気を足したような感じの曲。
 曲の雰囲気が、智代アフターの「old summer days」やAIRの「夏影」に若干似ているような気がします。


04.Path of Sunset
 こんな時がいつまでも続いたらいいのにと思いつつも、
 結局過ぎていく日々を少しセンチに意識するような、そんな感じの曲でしょうか。

 少し音の下がり方に不自然な部分があるような気がしますが、雰囲気はなかなかです。
 展開部のノスタルジーの発散が凄い。


06.Color blossom
 個人的にかなり好みの曲。曲全体として出来がいいと思う。

 ピアノ曲で儚い感じなのですが、琴のような音の重ね方が少し独特。
 かなり主旋律に近い部分の和音を使っている部分が所々にあって、
 くっついたり離れたりといったような微妙な距離感を表現しているよう。

 ライナーノーツによると、その手のシーンで使われているらしい。
 こんな儚い曲を流されたらその気が萎えそうな気がするのですが、大丈夫なのでしょうか(爆)。


07.Where I Belong
 「リトルバスターズ」のクドのテーマ『えきぞちっく・といぼっくす』のピアノアレンジバージョン。
 普通に綺麗な曲だと思うのですが、少し単調な感じはします。


08.When We Wish a Upon a Star
 主題歌のオルゴール、器楽アレンジバージョン。
 主題歌では、明るめに作ってあったために目立ちにくかった「健気」な部分が強調されていて、なかなかいいですね。

 ちなみに、歌付きの原曲は24.に収録されていて、シンフォニックな部分もあるなかなかの曲だと思います。
 しかし、歌の方がどうにも…。
 歌い手に罪はないのですが、客観的には清水さんが「被害」にあったとしか言いようのない事態になっています(爆)。


09.Cape of Futuer
 ベタなのだろうけど、こういう曲は好みですね。

 悲しみの中で、一生懸命前向きに歩もうとしているような感じ。
 前を向くことを決めた中間の展開部、やはり音が良く響きますね。
 最後ピアノだけになる部分は、響きを無理に止めてしまう感じで、少し唐突に思う。


10.Adagio for Summer Wind
 デモムービーで一部分が流れていた曲。過去記事に書いたとおり、この曲は素晴らしいと思います。
 爽やかで、新緑のように瑞々しい、透明感ある音色。過去を振り返っているような切なさが僅かに感じられます。

 しかし、中間部は今ひとつ単調で、音的にも曲全体の統一感を崩すような感じがします。
 個人的には、ムービー用にカットされたものの方が好みです。

 そして、やはり「old summer days」を思い浮かべてしまう。


12.August Green
 自転車に乗って草原を駆け抜ける時のような、爽やかで疾走感のある曲。
 そして、中間部に僅かな切なさ成分をはさんでくる。
 本CDではこういう甘さを控えた曲は貴重というか、聴くとなんとなくホッとします。


13.Moontan
 出だしがKanon「pure snow」のアレンジバージョンのような荘重な感じ。
 運命の分かれ道というか決意を迫られるというような、そんな場面で使われていそうな曲。

 中間部以降の弦が、燃え上がるノスタルジック全開というような感じで、煌々と輝く満月を感じさせる。
 終わりのピアノも美しいです。


15.Bloom of Youth
 これは素晴らしいですね。
 10.が原曲のアレンジですが、これくらいシンプルにしてしまった方がノスタルジックな主旋律が生きてくるように思います。

 楽器を少しずつ足していく王道の展開で、中間部以降は低い方の支えもあり、音のバランスもなかなか良いと思う。
 なんか序盤のピアノ部分は過去回想的なシーンで使われていそう。


17.grief
 ベタと言えばベタなんでしょうけど、かなり好きですね。この儚さと悲しみの表現が美味。

 何気ない日常に彩られた幸せな過去と、それが失われてしまった現在との対比。
 keyの御家芸を表したような曲ですね。

 展開部のピアノの霰と、荘重な対位弦がたまらなく胸に来る。
 その前の部分に詰め切れていない所が見られるものの、やはり好みですね。


19.Reminiscence
 出だしは荘重な感じ。シンフォニックな響きがいいですね。
 なんとなく梶浦さんの曲のような作り方のように思えますが、
 彼女は、ここまで郷愁を前面に押し出す曲は作らないでしょう。

感想「ツバサ・クロニクル」 オリジナル・サウンドトラック Future Soundscape II

2010-06-19 19:10:20 | 音楽系
久しぶりの更新になってしまいました。

今回は、サウンドトラックの記事を書かせていただきます。
少し前のサントラではありますが、当Blogのスタンスは「埋もれているものを掘り起こす」というものですので、少し前の作品もしっかり取り上げていきます。

今回取り上げるサントラは「ツバサ・クロニクル」 オリジナル・サウンドトラック Future Soundscape IIです。


<総論的な感想>
なぜか「Ⅰ」ではなく「Ⅱ」です。
「ツバサ・クロニクル」というのはNHKで放送されていたアニメ「らしい」です。
「らしい」というのは、毎回恒例の通り自分は見ていないということであります。人気があるアニメなのかも良く知りません。

作曲者は『梶浦由記』さん。アニメサントラファン(?)で名前を知らない人はほとんどいないと思われる方です。

特徴的なのは、何語かわからない歌声を多用した楽曲。
しかし、私は声ものよりも、ピアノ曲、管弦楽器のみの曲の方が好みのものが多いですね。
それに、民族的な世界観が付与されると完全に自分好みの曲です。

あと、梶浦さんの曲は、童謡の旋律のようなやさしい雰囲気を持っていることが多く、不思議な魅力があるように思います。

ちなみに、ライナーノーツに「FictionJunction」という名詞が出てきます。
これはなんだろうと思って調べてみたところ、所謂梶浦さんの「一人バンド」のようなものらしいです。
そこに、ボーカリストとして様々な人を起用しているという形のようです。


<各曲の感想>
さて、早速自分が気に入っている曲を挙げていきます。
ちなみに曲名を太字にしているものは特に素晴らしいと思うものです。
(もちろん、挙げていない曲が良くないという趣旨ではありません。)
 

3. storm and fire
壮大な存在を前にして人は何が出来るのか。
それに立ち向かうようなスピード感と民族的な雰囲気漂う曲。
最初の2本の弦の対位が推進力を、中盤の笛の音色が民族的なニュアンスを良く出していると思います。


4. lost wings
梶浦さんのピアノ曲は本当に美しいと思うのですが、当CD1曲目のピアノ曲。
悲しみの中でも、どこか慈しみと前向きさを感じさせるような表現だと思うのですが、いいですね。
『時をかける少女』の挿入歌『変わらないもの』が好きな方などは、結構受け入れやすいのではないでしょうか。


6. the dreamers
これまた民俗音楽のような趣のある曲。

明るい舞踊曲のような雰囲気から、なぜか切ない弦楽器の旋律が入ってきて、
疾走感がありながらも、悲しみを感じさせるような曲になっていると思います。

夢と現実の狭間というやつでしょうか。


9. 風の街へ(Vocal:FictionJunction KEIKO)
私、ボーカル曲は滅多に取らないのですが、この曲は最初のピアノから素晴らしかったので挙げてみました。

「コッコッ」と入るパーカッションは好き嫌いが分かれそうな気もしますが、全体の切なくて健気な雰囲気は非常に好きです。

最初、小さくて暖かな世界にいたのが、中盤以降の世界が広がるような前向きな表現との対比。
これが目覚めみたいなものを感じさせるように思う。
最後、最初の世界へ静かに帰っていく感じなども好みです。


10. wayside
「寄り道」みたいな感じの意味なのかな。
なんというか、旅先の町でのショッピング風景というかそういう異世界の日常的な雰囲気。
淡々としているように見えて、伸びやかな美しさもあっていいですね。

『魔法遣いに大切なこと』の音楽のような、ほのぼのとした癒し系の曲でしょうか。


11. if you are my love
これは、このCDの中で非常に気に入っている曲。

最初健気に振舞っているような感じ。
そこから一転、涙が零れ落ちるような悲しげな転調がなんともはや…。
青空の遠くを仰ぎ見て、そこへ行きたいと願うような、でもそれは叶わないことなのだというようなそんな感じ。

中盤の管楽器の出るタイミングと音の伸び、本当にわかってるよなぁ…という感じ。
その後の弦とピアノの使い方も完全に自分好み。非常に素晴らしいです。

やはり、梶浦さんの曲はこういうロマンティックなものがいいなと思ってしまう。


14. fatigue
一人で静かに物思いするような情景を、淡々とピアノと弦で奏するような感じでしょうか。
地味に見えるけれど、やはりいいですね。

個人的に、サントラにはこういう曲が1曲は入ってないと、CD全体のバランスが取れないような気がしています。


16. when two powers collide
最初の急襲表現の音は嫌な感じなのですが、一転してカッコよく推進力のあるフレーズが流れる所からがいいですね。
若干悲劇性を纏ったような曲調。

どことなく往年の民族的RPGサウンドを髣髴とさせるような感じかな。
ベースラインと後ろで鳴っているピコピコした音が、そういう雰囲気を感じさせるのではないかと思います。


17. blue clouds
これは非常に好みの曲ですね。
もう最初のピアノのアルペジオから素晴らしいです。

こういう澄み渡った青空、草原などを連想させる、暖かい牧歌的な雰囲気のある曲は非常に好みです。

もう戻らない楽しかった子供時代を思い出す時のような、僅かに寂しさが入り混じった感じもいいですね。
楽器の使い方も良くまとまっていて綺麗だと思います。


<まとめ>
流石に梶浦さんだけあって、いいCDに仕上がっていると思います。
少し年月のたった中古CDは、内容に比して安く買えるのがいいところなのですが、製作者側としては複雑な気持ちだろうと思いますね…。


リンク→「ツバサ・クロニクル」 オリジナル・サウンドトラック Future Soundscape II(Amazon)

感想:Angel Beats主題歌「My Soul, Your Beats/Brave Song 」

2010-06-01 19:09:47 | 音楽系
TVアニメ「Angel Beats!」主題歌「My Soul, Your Beats!(OP)」「Brave Song(ED)」の感想記事です。

先日記事で書いた、けいおん!の主題歌みたいな批判的感想を期待してくださっている方には申し訳ない(?)。
今回は普通の感想記事です。

基本的に自分は批判が好きではないので、ああいうことは滅多にないです。
なぜなら、批判というのは、自分の無知をさらけ出すかもしれないという危険と隣り合わせにあると思うので、それが恐ろしいからです。
しかも、自分のそこまで好きでないものについて書くのもあまり楽しくないですしね。

さて、本CDの曲を、先日Music Stationという番組で見かけて驚いたという話は前に書きましたね。
Yahooニュースでも取り上げられていたりします。(→http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100601-00000013-mantan-ent

で、ちょっと詳しい感想を書いていこうと思います。

作曲は知ってる人は知っている「麻枝 准」さん。

この人の作る曲は、割と耳に残りやすい旋律が多いような気がします。

ストリングスやピアノ主体の曲では、音の配置こそシンプルですが、
それら一つ一つの綺麗な旋律をうまく絡めて、しっとりと透明感のある、和風な質感を出してくる作曲家という印象を持っています。
(若干、久石譲さんの曲のような雰囲気を感じなくもない。)

あと、テクノやロック系の楽器を混ぜて、疾走感のある曲も作られたりしますね。
これは、割と変わった風味があって、病み付きになる人もいると思います。

自分は、前者のような曲の方が好みですね。

ちなみに、本CDの曲の「歌詞」も麻枝さんです。
しかし、この人のリリックはちょっと凄いというか、独善的な部分がかなりあるように思います。

受け入れられる人と受け入れられない人が二分されるところがありますね。
いや、受け入れられる人の方が少ないと思います。

自分は「Last Reglet」「鳥の詩」辺りの歌詞までは、まだ辛うじて受け入れられるのですが、それ以降は…ですね。
本曲でも、その感想は変わりません。むしろ、ますます「進行」しているという印象を受けました。

麻枝さんは、シナリオライターもやっている方なので、シナリオと歌詞を連動させたいという気持ちはわからなくもないのです。
しかし、ここまで来ると、あまりに愚直すぎる気がします。
完全に朗読劇みたいになってしまっているような感じなのですね。

もう少し抽象化して、想像の余地と色彩感を残してくれてもよさそうなものですが…。

さて、曲の方の感想に行きます。


「My Soul, Your Beats!」(Vocal:Liaさん)
これはちょっと冒険してきたなという感じがします。
この人が、こういう悲壮感を出してくるのは珍しいような気がします。
この雰囲気は結構好みです。出だしの重厚感もなかなかいいですね。

しかし、そこから歌に入る部分が若干唐突な感じがします。

また、ボーカル部分に入ってすぐのピアノ、ストリングスの絡め方があまり綺麗でない。麻枝さんらしくないですね。
ピアノやストリングスを使ってある曲の場合、その旋律を単体で取り出して美しくないと、どうも気になるのです。

さらに、サビに入る部分の転調の仕方にも不完全燃焼感があるような気がいたします。
ここでもう少し決意感というか、悲壮感みたいなものを付加して欲しい所なのですが、その辺が若干物足りないように感じます。
最初から一貫して悲壮的な雰囲気なので、落差があまり感じられないだけかもしれません。

なんだかんだ酷いことを言ってしまった…。ただ、サビ部分の音はよくまとまっていると思います。(お世辞ではなく。)


「Brave Song」(Vocal:多田葵さん)
うって変わって、典型的な麻枝サウンドという感じですね。
自分はこちらの方が断然好みです。

儚く寂しげで、少し爽やかな感じの曲。

後ろのピアノの旋律がまた美しい。
こういう風にボーカルに美しく絡めてくれると、曲の様式美が良く出てくるように思います。
少しづつ楽器を足していって壮大にしていく手法も王道ですね。

転調もうまくいっていると思います。「こ~ど~くさ~え~」あたり、堪らないですね。
この程よい崩し方が麻枝さんという感じがします。「風はやがて凪いでた」の所もまた然りです。
わかっていてもやられてしまう。

曲として少し無難すぎるという向きはあるかもしれません。
しかし、変にひねってしまうよりは断然いいと思います。

ちなみに歌い手さんは始めて聞く名前ですが、麻枝さんの曲にこういう声質の人はあっていると思います。
声のたどたどしさが曲にとけ込む感じで、なかなか良いのではないでしょうか。


さて、いろいろ書いてみましたが、全体的に悪い曲と言うわけではないと思います。
ただ個人的に、これらの曲について病みつきになるという感じにはなぜかならないのですね。
これが不思議な所なのですが、先日「感想を書くほど引っかからない」と書いたのはそういうことです。

ということで感想のまとめとしては「根っからの」麻枝ファン・歌詞に耐えられる人なら買ってもいいかもしれないCDという感じでしょうか。


一応リンクを貼っておきます→「My Soul,Your Beats!/Brave Song」(Amazon)