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私の平均余命83.846歳(厚生労働省H28年度データ)を24時として、私の生きて来た人生は上の通りです。後残り時間は?

「思いつき、Myショートショート」 #002

2012年07月31日 00時00分02秒 | 「思いつき、Myショートショート」


     「進化?」


地元に久々に帰ってきた俺は、高校の同級生だった一郎と6年ぶりに居酒屋で呑む事になった。


「やぁー、待たしたね」っと、一郎が入って来た。
「いやー、年末は忙しくって、猫の手も借りたいくらいだよ」っと一郎。


そう、一郎は、高校を卒業後、父親の跡を継いで八百屋をやっているのであった。
しばらく、呑んで食べながら高校時代の話に花を咲かしているのだった。


「そう言えば、佳代ちゃん、末期だった乳がんが治ったんだって?」っと俺。
「むー、奇跡に近いと医者が言ってたんだって」っと一郎。


一郎のコップにビールをつぎながら「最近、癌にかかる人も多くなったけど、結構、治る人も多くなったね」っと俺。


ぐいっとコップの中のビール全部呑みながら「医学の進歩かな」っと一郎。
そして、じっと俺の顔を見つめて、「実は、お前にも言ってなかったんだけど、半年前、俺も肝臓癌で末期だと言われたんだよね。」


「えー、・・・・知らなかった・・・でも、大丈夫?・・」
「あー、それが、先月、原因不明の熱で一晩うなされて、翌日、目が覚めると、あれほど痛かった肝臓がなんともなくなっていたんだよね」


「その日に医者で診てもらったら、癌が消えているって言うじゃない」
肝臓癌の割には、よく呑むやっちゃと内心俺は思った。


「俺も驚いたけど、医者も驚いて、何回か検査をしても、完全になくなっているんだって」
「俺は、逆にこの医者が誤診だと思ったんだけど、やっぱり癌が治ってたみたいなんだよね」と手酌でビールをコップにそそぐ一郎。


そんな一郎の話を半信半疑に聞きながら、「むー、いや、癌って、正常細胞の氾濫でなると言われ、遺伝子が傷ついて癌化するとか言うじゃない。」


「ある説によると、癌って、生物が進化する時の新細胞に移行する最中の過程だと言うんだけど・・・・つまり、生物って、古代、魚が陸に上がり、エラ呼吸から肺呼吸に成る時、何回か失敗して死んだんだと思うのよね。


細胞がえらから肺に変わるんだからね、一回では無理でしょう。そう、何十何百年かかったんでしょうね。」

「だから、人も、ひょっとしてその進化の過程に入っているんじゃないかっ?・・・と言われているんだよね」っと俺。


「え、・・じゃー人間は何に進化すると言うんだよ」
「願いが強いと身体が変化する?・・・・・かな?」っといい加減事を言っている俺。


「佳代ちゃん、そう言えば、予知能力が芽生えたとか、おかしな事を言ってたな・・」っと一郎。


「佳代ちゃんって、高校時代、教室で、確か占い好きの少女で、みんなの運勢を占っていたよね・・・たしか・・」っと俺。


「思いが叶ったのか?・・・・」
「じ、じゃー、俺は、どうなんだよ・・・全然変化がないんだけど、相変わらず、忙しいだけで、なんか、損をした気分・・・」っと一郎。


「まぁー、噂みたいなもんだからね、でも、いつかは、お前にも・・・・」
っと、一郎を見ると、一郎の背中から細い、毛むくじゃらの棒のような物がいくつも出ている。


「お、お前、背中、背中・・・」
「背中がどうしたんだよ・・・」っと一郎は、目の前のガラス窓に映る自分の姿を見ると、凄い数の腕が背中から出ているのが見えている。


「ひやー、!」っと一郎。
「お前、忙しいから猫の手も借りたいと言ってたよね」


一郎は、うなずき「俺は、猫の千手観音か・・・」っとポツリと一言



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