「夢」
目覚ましが鳴り、ひろしは眠い目をこすりながら、学校へ行く支度をしている。
家を出て、幹線道路を渡り、公園内を通れば中学校である。
交通量の多い幹線道路を、5歳くらいの男の子が、走って渡ろうと飛び出すのであった。
とっさに、ひろしは「危ない!」っと叫び、子供を追いかけ抱きかかえるのであった。
しかし、運悪くそこへダンプが急ブレークを掛けながら二人を跳ね飛ばすのであった。
周りの人は、悲鳴をあげ、騒然となる・・・とその時、ひろしはベッドの上で目覚ましが鳴っているを止めている。
ひろしは、「はぁ、はぁ、ゆ、夢・・・よかったー、凄いリアルな夢!」っと胸をなでおろしながら、ベッドから降り、学校へ行く支度をするのであった。
この事を学校の友達にネタとして話そうとニヤニヤしながら、家を出て学校へ行くのであった。
幹線道路の横断歩道を見ながら、「ここだ」っと思っていると、夢に出て来た男の子が、道路へ飛び出して来た。
ひろしは、「嘘だろう」っと思い、「これって、正夢?・・・」っとちゅうちょしていると、ダンプが男の子に近づきとっさに、ひろしは男の子を助けに飛び出すのであった。
ダンプは、急ブレーキをかけ、二人の前でギリギリ停まるのであった。
ダンプの運転手が、大声で喚いている。
ひろしは、運転手にペコペコ謝りながら、公園に男の子を連れて行った。
「なんで、飛び出すんだよ、危ないじゃないか」「怪我ないか?」その男の子は、「一人じゃ寂しいから、お兄ちゃんといっしょに行こうと待っていたの」っと言う。
なんの事かわからないひろしは、「どこへ行こうと言うんだよ、それに、俺、君の事知らないよ」と言うと、「いいから、こっちへ来て」っと男の子は、公園の中を走り出した。
「こっち、こっち・・」っと男の子。
ひろしは、「いいよ、学校に遅れるから・・」
「もうー、ちょっとだけだよ」っと言って、男の子を追いかける。
そうすると、目の前の男の子が、光に包まれ、やがて男の子を追いかけるひろしにも光が襲い、ひろしは、「わぁー、まぶしい!・・・」と叫んだ。
とある病院の一室。
「ご愁傷様です、午後4時32分」っと言って、医者がひろしの脈から手を離すのであった。
ひろしは、ベッドに横たわっている。
ひろしの胸に顔を埋めて、母親が泣き叫んでいる。
母親の横に立っている父親は、「お前だけでも、助かると思ったのに、なんで急に・・・・」っと涙を浮かべて言っている。
そう、ダンプに跳ねられた二人は、男の子は即死、ひろしは、運良く公園の木々に落ちて、軽傷であった。
しかし、意識がなかったのであった。
病室の窓からまぶしいほどの夕陽が、差し込んでいる。
窓の外で、子供の声がしている。
「こっち、こっち・・・」