ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

戦争を止める人

2022-08-14 09:04:18 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「神はいない」8月7日
 読者投稿欄に、茨城県M氏の『祖父の戦争知った帰郷』というタイトルの投書が掲載されていました。夏になると、各メディアで特集される「戦争物」企画の一つでした。M氏はその最後に、『戦争は起こしてはならない。祈りの夏が、またやってきた』と書かれています。
 投書の内容は、戦争に悲惨さをよく伝えているものでしたが、この最後の一文に複雑な気持ちになりました。M氏は、私が20代の頃に担任した子供たちと同じ世代、学校における平和教育の不十分さを再確認させられたきがしたからです。
 「戦争は起こしてはならない」と「祈りの夏」の間の乖離にこそ、我が国の平和教育の問題点が集約されています。いくら祈ったって戦争はなくならない、ということです。現に、ロシアのウクライナ侵攻を目にして、ほとんどすべての日本人が、「この戦争が早く終わりますように」と願ったはずです。でも、1億人の祈りは、この戦争の帰趨に何の影響も与えてはいないのです。
 もし、私たちに戦争終結に向けて影響力を行使することができるとすれば、生活を見直してエネルギー消費を抑え、そのことで石油や天然ガスの需要を減らし、その結果ロシアの国家収入を減らし、戦費調達を困難にして、停戦への動機を強めるということぐらいしかできないのです。正に微々たる影響力ですが、ただ単に祈っているだけよりは効果があるはずです。
 戦争は3つのMで決まる、と言われます。マネー(資金)、マシン(武器)、マン(兵士)の3つです。私が上記で述べたこともこの理論に従って、Mの一つを枯渇させるという考え方に基づいています。大変稚拙な素人考えですが、それでも祈りよりはましです。
 我が国の平和教育では、この3つのMでさえ、教えないのです。戦争はどのようにして起きるのか、どのようにして続くのか、どうなったときに終わるのか、そうしたことを過去の戦争の歴史に学び、戦争への道へ一歩踏み出しそうな兆候を敏感に察し、そこで具体的な抵抗行動を取る、そのノウハウを身に付けさせることこそ、真の平和教育、戦争阻止教育なのです。
 戦争はとてつもない悪人、ヒトラーやプーチンが起こし、善良な国民が被害者になるという単純なものではありません。我々一人一人の国民が、「私たち」ではなく、「我々と奴ら」という世界観を支持し、奴らは人間と呼ぶに値しない化け物だと見なし、奴らを滅ぼすことこそ正義だと盲信して、正義の戦いを叫ぶ者をリーダーに選び、その言動に喝さいを送り、喜んでそのリーダーに従おうとして、反対する人たちを非国民と攻撃する、そんなところで戦争が起きるのです。
 戦争のメカニズムを知り、その知識に基づいて戦争の芽を摘んでいく、そういう人々を育てていくのが平和教育なのです。祈っても戦争を止めてくれる神は存在しないのです。

 

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