ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

恥か、誇りか

2022-08-11 08:48:58 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「出発点が違う」8月5日
 『元気なシニア 指導者に』という見出しの記事が掲載されました。部活の在り方について、日本スポーツ協会専務理事森岡裕策氏にインタビューした記事です。森岡氏は、地域移行後の部活指導者に『定年退職した教員の活用が重要』との考えを示していらっしゃいます。その考えについて、私は反対ですが、取り上げたいのはそこではありません。
 インタビューの冒頭で森岡氏が語っていらっしゃった次の言葉についてです。『部活は日本が誇る世界に冠たるシステムだ』。頭がクラクラしました。こうした認識からスタートする部活改革論議は、結局教員の過重労働を軽減し、教職を魅力あるものにして、意欲と能力のある人材を教職に誘導し、学校の教育活動を活性化させるという改革の目的を達成することなく終わってしまうのです。
 私は、部活は教員に一方的な犠牲を強いることで成り立っている世界に恥ずべきシステムだと考えています。かつて我が国では単身赴任は当たり前でした。企業のために従業員がそのくらいの犠牲、家族団欒を過ごすことを我慢することは当然だと考えられていたのです。しかし、愛する家族と過ごすことは人間として最も基本的な権利の一つであるという考え方が広がり、単身赴任は我が国が人権後進国であることを象徴する悪しき慣習となりました。
 部活も、部活未亡人という言葉を生むほど、教員が個人の生活を犠牲にしなければ成り立たないという点で、世界に恥ずべき我が国の人権後進国の象徴なのです。ちなみに、部活未亡人とは、平日は朝練から放課後の練習、休日も練習や試合などで家を空ける教員の配偶者が、いつも一人で過ごさねばならないことを、未亡人と皮肉ったものです。
 こんな制度を「日本が誇る世界に冠たるシステム」などと言うのは、教員はどんなに忙しくても子供に奉仕すべきで、そのことについて文句をいうべきではないし、家族も我慢すべきだ、と言っているに等しいのです。森岡氏は、その後のインタビューで『教員の負担が大きいため、改革は避けられない状況になってきた』と付け加えていますが、「部活は日本が誇る~」が本音であり、言いたいことであるのは明らかです。そもそも、「避けられない」という言い方の中に、「本当はこのままでいきたいのに…」という思いが込められています。
 部活改革については、教員を不当に搾取する恥ずべきシステムという認識から議論を始めなければならないと思います。

 

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